2014年6月27日(金)

ひざにもたれて妹をじっと見つめてる。人間を信頼しきったおだやかな顔。

風邪はまだ治らず、ねちゃねちゃした濃い黄色の鼻水が止まらない。ティッシュをかぴかぴにさせながら、自分が不潔な液体製造器になった気分がしてたまらん……。

それでも精神の方は下の日記を書いた時よりはかなりましなので、この体調なら週末はサイトの更新できそうだ!と喜んでいたら、ではあたくしがお相手いたしましょう!と言わんばかりに、パソコンが、故障した。
朝5時半から張り切って電源を入れると、
「ジャーン!」という元気な起動音が鳴ったまではいいが、ちぃーっとも起動しないのだ!

うぉっ???……。うぉぉおおおぉおおお!!
近頃ちょくちょく変な音がしたりフリーズが増えていたから、早急にHDの交換に出さなきゃとデータのバックアップを取っていた矢先だってのに……間に合わなんだ……。

たまに更新しようと思ったらこれだなんて、誰か異世界から私のことを見張ってる?実はこの世界は舞台で私たちは操り人形なの?と軽い被害者妄想を覚えつつ、狂ったように再起動を繰り返した。
「ジャーン!」(以後無言)「ジャーン!」(当然無言)「ジャーン!」(当たり前のように無言)

やばい。これはデータぜんぶ飛んじゃってるかもしれん……。
虚しく響きわたる起動音に発狂しそうになりながら、次に取った行動は電話に駆け寄ること。とりあえず指示をあおごうとMac工房のオヤジに電話したけれど、いつも徹夜で仕事しているオヤジも朝の7時にはさすがにお留守。店に出てくるのは昼過ぎだろう。

私は当社比三倍速で頭を働かせた。こいつは会社が開くまで待ってから、電動自転車を借りてうちに戻ってパソコンを積み、それを一旦会社に置いておいて昼休みになったらソッコー修理に持って行くしかない!
……なんて考えてたら、そこへ
まで降ってきた。雨の中、チャリンコででかいパソコンは運べない。
あーあ、こういう時にクルマがあったらなぁ。ショーウィンドウのトランペットを見つめる靴磨きの少年みたいに、やるせなく寂しい気持ちになった。

それでも気を取り直し、パソコンに詳しい友人──「ウィンドウズのことは分かりませんから教えてあげられませんよ」という言葉によって、私が初代マシンにリンゴマークを選ぶきっかけを作ったKさんと、WebデザイナーのM君、そしてパソコン教室の先生Aさんにメールした。というのも「10万円もかかる修理に出してまで化石Macを使い続ける必要はないんじゃね?」というアイデアが、フリスクのCMのようにぱあっと頭に浮かんだからである。


私の愛機・Mac G4は10年前、近所のMac工房に頼んで組み立ててもらったOS9&OS10.4のデュアルブート仕様。(デュアルブートとは一台のコンピュータに2つのOSを組み込んで、どちらでも起動できるように設定してあること)それ以降、ハードディスクを交換しながら延々と使っている。

OS9というのは、今どきそんなもん使ってるやついねーよ!と石を投げられそうな代物なのだが、このWeb ページを管理してくれている「ページミル」というカブトガニ並みの化石ソフトがOS9までにしか対応していないため、しょーことなしに使わざるを得ない。
私は便利なものがあるとは分かっていても、新しいことを覚えるくらいなら不便に耐える方が性に合ってるのだ。(めんどくさがりとも機械オンチとも言う)

そしてOS9ではインターネットが全くといっていいほど利用できないもので、カブトガニがオオサンショウウオになった程度には進化したOS・10.4タイガーを組ませてある次第。

まあこいつだってせいぜいなもので、Mac OS Xのバージョン別コードネームでいえば、OS 10.0のチーターからピューマ(10.1)→ジャガー(10.2)→パンサー(10.3)⇒タイガー(10.4)→レオパード(10.5)→スノーレオパード(10.6)→ライオン(10.7)→マウンテンライオン(10.8) 、そして現行のマーヴェリックス(10.9)と並んでいる。
トラのあとにヒョウとユキヒョウとライオンとビューマが続くだなんて、10.4 のタイガーはタイガーでも氷河期の生き物、サーベルタイガーに見えてくるよね。

(なお、マウンテンライオンまでネコ科動物シリーズだったコードネームは、「マーヴェリックス」で カリフォルニアの地名に変更。アップルさん、今度は地名シリーズで行くつもりなのかな)

話がアマゾン川並みに蛇行した。うちのパソコンは周辺機器すら売ってない化石マシンなんですよと言いたかったわけだが、前述の友人達の意見を統合したところ、「今のマシンはあきらめて新しいマシンを買え」に集約された。
たしかに修理代の10万円でウィンドウズなら新しいのが買えるよね。

そんなこんなで昼休みにパソコンショップに走ってマシンを選別する一方、会社のパソコンで「Macトラブルシューティング」を狂ったように検索。ネット住民の世話を焼きたがるパソコン仙人たちのアドバイスに従い復旧作業にいそしんだ結果……。

ありがたや〜!「ジャーン!」からなんとか起動に至った。そしてケツをとろ火であぶられるような焦燥感を覚えつつも、このようにページミルでサイト更新できるまでに復旧。
朝っぱらから血相買えてメールかましたみなさま、お忙しい中すみません、そしてありがとうございました。

とは言っても今はせっせと働いているパソコンの中のこびとさんたちも、いつまたベースアップを要求してストライキを起こすか分からない。

こたびはシステムの問題だったけど、ハードディスクが物理的にぶっ壊れるとどうしようもないので、今後このサイトの管理は新しく購入したゲイツ機へと、徐々に移行する予定である。

そういう次第で、1,2週間ここの更新がなかろうとも、「また精神的ドツボで苦しんでるのかな」と不穏な想像をする代わりに「ああ、ウィンドウズの使い方が分からなくて困ってるのね。オバちゃん機械オンチね (´∀`)」程度に流していただければ有り難い。


郵便局の不在配達受け取り窓口そばで見つけたポスター。

この人なんかハーネマンっぽい! (*´ω`*)と携帯カメラを向けていたら、エレベーターを降りた人が近づいてくる。不在配達の荷物を取りに来た下町のちぃちゃいおっちゃんだけど、ほら、いるでしょ?「人に話しかけたくてたまらないオーラ」を発してる人って。

正にそういうオーラを背後に感じながら構わず写真を撮ってると、おっちゃん、どうコメントしたらいいか思いつかなかったんだろう。しみじみした感じでたった一言「……ヤクザぁ……」とつぶやいた。なんかかわいくてほのぼのした。

2014年6月24日(火)

まやちゃんは11さいのおじいちゃんです。

にんげんなら11さいはまだこどもです。けれどもいぬはにんげんよりもずっとはやくとしをとるのです。

おじいちゃんになったまやちゃんは、このごろよくはなをたらすようになりました。

あれれ?まやちゃん!またおはなをたらしているね。まやちゃん、ながいきするんだよ。

そういいながらはまみずをふいてくれるときのおねちゃんのかおは、いつもちょっぴりさびしそうなのです。

すんません、風邪とうつのシンクロ攻撃で、かなり相当マジでぶっちゃけ辛いです。
抗うつ剤を飲んだら楽になれるんだろうか……とか、もう全てを捨てたい……という考えがぴょこぴょこ頭をもたげるのを、モグラたたきのように叩いてなんとか日常生活を送っている絶壁状態。ぼやいてばかりの自分が嫌いだけど、冗談抜きでマジしんどいっす。

そんな状態ですので今日はヘボピーさんにバトンタッチ。
先日、隣の布団で寝ている時に、突然「オウッ!オウッ!アゥウウウーン!アウッ!へへへへへ……オウッ!へへっへ……アウッ!はがっ!はがっ!」と、なんとも表現しがたい不気味な声を発したヘボピーさん。

これは起こすべきか起こさざるべきか?もしも夢に深くはまりこんでいたら、それをぶった切ったショックで脳梗塞とか起こさないか?いや、すぐに起こさないとこのまま死んでしまうかもしれない……。
10秒の間にさまざまな考えが頭をよぎったものの、結局揺り起こしたのですが……こんな夢を見てたんですね。


この前の土曜日、姉と一緒に電車で三駅向こうの港町まで明石焼きを食べに行った。

漁師町のど真ん中にある明石焼き屋は、小さい店ながら他県からも食べに来る客がいる有名店だった。ダシじゃなくて塩をつけて食べてもグー!な、酒のアテにピッタリな美味しい明石焼きだった。
腹ごなしに漁師町をブラブラしていると、神社と何かを祀っている小さな祠がやたら目につく。漁は危険で命懸けの仕事だから、やっぱり真剣に安全祈願をしてるんだな〜と思った。

その日の晩に見た夢。
姉と2人でどこかをブラブラしていると、神主を乗せた船が川をいくつも通って行くのが見えた。
それを追って行くと、何処かの座敷に入ってしまって、そこは神事が行われる寸前で、氏子のおばちゃん達がお茶を配ってた。

姉と私はなぜかこれは見てはいけない物だと思って座敷を後にするんだけど、その時、奥の座敷から、白い布を被せられた人間の幼児サイズの物がズリーズリーと這いだしてきた。
何これ?人間じゃないよね。蛭子?キモッと思って退散しようとするんだけど、時すでに遅し。蛭子のような物はご神体。くにゃくにゃした幼児で顔が梅図かずお先生の描く「タマミ」にそっくりだった。

儀式として、タマミがこっちをみれば「可愛いね。」とホメなきゃいかんらしく、人々はタマミとにこやかに握手をしている。
私がひきつりながら「可愛いね」と言うと、ガシッツとタマミに手を握られ、「今のは嘘だろう?」とテレパシーで言われた。
1ミリも可愛くなかったけどキモイ手を離したかったので、「可愛いですね」というと、「嘘だろう!」とどんどん強く手を握ってくる。このクソガキめ!ご神体であろうがなかろうが、あたしゃ生意気なガキがこの世で一番嫌いなんだよっ!

キレた私は相手をバカにする為、洋物AVのよがり声で「オウッツ!アハ〜ン!アフーン!」と言ってみたものの、それはさらに蛭子の怒りに油をそそいだようで、凄い形相でニラミ&握力を強めてくる。
怖い!もしかして、ご神体をバカにし過ぎた!?

「オウフッ、オフッツ・・・アハフーッツ!!」キモチいいはずのよがり声が恐怖のよがり声に変わった頃、「大丈夫!?」隣りで寝ている姉にパムパムと肩を叩かれハッ!と目が覚めた・・・。
「あんた、今サルみたいにアフッツアフッツって寝言ゆーとったで。」
でたっ!

私は怖い夢を見た&金縛りにあった時だけ、すんごく寝言を言うのだ。過去、姉がすでにこちらに書いたような「20××年・・」とか「猪木ボンバイエ」とか・・・
ちなみに「猪木ボンバイエ」は、金縛りにあった時に、「絶対にテメーらに命もってかれてたまるか!生きとう人間の方が強いんじゃ!」を霊に知らしめる為に、
私の中で生きている最強人物の名前を意識するのだ。
猪木の他に、最強の人類として「NIVYSEELs」「第一空挺団」「陸上自衛隊特殊作戦群」が浮かんだけど、猪木の名前が浮かんだ瞬間、これしかないと思った。
あっ、最強人類ならリヴァイでもいいかも!
・・・。書いてて、自分が50も近い人間だと思えなくなってきたよ・・・。

この時は隣りで寝いた彼に叩き起こされた。「猪木ボンバイエ言うとったで。ギャハーッ(爆)」と。いや、逆にアンタといると、なぜか金縛りに合う確率が高いんですけど・・・。
まぁ、金縛りたいんならいつでもきやがれ!ワシはテメーらには絶対に負けへんからのぉ〜。生きとるもんが強いんじゃー!!(ビクビク)

2014年6月18日(水)

母の一周忌、父の三回忌が近づいてきたせいで。近い親戚のみならず、会ったこともない遠縁の方から連絡があったりで、ちょっとバタバタしている。

でも私は今や親戚が大好きでたまらないので、その手の付き合いは苦にはならないどころか、自分の知らない父母の話を聞けるのが楽しみだったりする。
まあ、これも二人とも世を去ったからこそ言えることだろう。生前は親戚付き合いなんて面倒なだけで、父に「お前、一緒に○○さんのお見舞いに行かんか?」などと誘われても、「えーっ、めんどくさいよ。お父さん一人で行ってきてよ」と断ることしかしなかったんだから。

よちよち歩きの頃に一度だけ会ったというおばあさんからは、父が幼い私の世話をとてもマメにしていたと聞いた。祖母のきょうだいの息子さん(故人)のそのまたお嫁さんという、お顔も見たことがない遠縁のおばあさんは、父は親戚の誰かが困った時には何やかやと気にかける優しい人だったと言っていた。

私たち三人の娘は父のことを「クセが強くて口ばかりで扱いにくい人」と疎ましがっていたけれど、死後、親戚や友人から話を聞くと、「変わり者だな」と苦笑されつつも、意外に人に好かれていたのでは?と思えてきた。私は父の良い面をもっと見ようとするべきだった。

……と思い出すのは父のことばかりなのは、母とは意志疎通ができなくなって長かったせいで、元気な頃の記憶がすぐには浮かばないからだろう。
けれども来週一周忌を迎えるのは母の方。おとうさんのことばかり言っている!とふざけて怒るまねをする姿が目に浮かぶので、これから命日までは集中的に母の思い出を脳内整理しようと思う。


若いツバメ……と書くと怪しげな香りが漂うがモノはトリ。目と鼻の先の軒先に止まっていたから、逃げられないうちに……と大あわてで携帯カメラを向けたのはいいけれど、解像度がうっかり低モード。せっかくの写真がボケボケですわー(´・ω・`)

普段目に入るツバメの姿といえば、5月のお空を滑空しているか、電線に止まっているか、もしくは甲斐甲斐しくひなにエサを運んでいるところくらいだろう。羽毛の色が見えるくらいまで近寄れるハトやスズメとは違って「身近なようで、そばでまじまじ見る機会の少ない鳥」だと思う。

でも巣立ったばかりのこのツバメは人間のこわさをまだ知らないと見える。顔を2メーターくらいまで近づけても逃げる様子もなくじっとしていた。巣の外の世界で見るものすべてが新しくて、なにやら戸惑っているように見えた。

つい最近まではピーピーわめくブサイクな生き物だったものが、今では素敵なトライカラーの羽毛をまとってる。すーっと長く伸びた尻尾を眺めながら、「燕尾服」とはよく言ったものだなあと妙に感心した。

今の家に引っ越してきたのは小学校5年生の時。コロッケ屋、クリーニング屋、パン屋に喫茶店。家の周辺にある商店の軒先には、その時にはすでに何軒ものツバメの家があった。
40年前から今に至るまで、こいのぼりが飾られる少し前になると律儀に同じ場所に戻ってきては、巣を作り子供を育て、やがて親子で連れだって異国に渡っていくトライカラーの鳥たちは、毎年変わらない初夏の風景として当たり前のようにそばにあった。

だというのに今年はなんだかおかしい。昨日まで巣の中にみっちり詰まってピーピー鳴いていたひなが、次の朝には煙のように姿を消していたり、何者かに叩き落とされて粉々になった巣が道に転がっていたりする。

きっとこれは動物嫌いの人間のしわざだ!と私は憤慨した。ツバメのふんが落ちてくることを嫌う人や、生き物を意味なくいじめて楽しむ子供が、巣を壊してしまうに違いない。
ツバメは幸運のシンボル。昔から人間と共生している益鳥を邪魔者扱いするなんて、昨今は人心がすさんでしまったものだなあ、と嫌な気分がした。

しかし犯人は別のところにいたと知ったのは、数羽のツバメがカラスをはげしく攻撃しているのを目にしたのがきっかけだった。
図体の大きなカラスを零戦のように追いかけ回すツバメを見ながらコロッケ屋のおじさんが、「いくら追い払っても、親がちょっと目を離したすきにひなを取られるからなあ」と無念そうに言ったのだ。

犯人はカラスなのか!ネットで調べてみると、カラスは巣の中の卵のみならず、ひなが食べごたえがあるサイズに育つまでじっと時を待つ利口さもあるそうだ。

カラスも生きて行かなくてはならないのだから、ツバメの肩ばかり持つのはよろしくないと思う気持ちもないでもないけれど、カラスよりもこれから先に過酷な運命──「渡り」が待ち受けているツバメの方を守ってやりたい、というのは人情だろう。

私と同じように感じる人は多いと見えて、ネットにはカラスからツバメの巣を守る方法がいろいろと示されていた。だが、自宅の軒先ならまだしも、ツバメたちが巣を作っているのは人の店。そのほとんどは空き店舗とはいえ、他人の不動産にピアノ線を貼ったり、プラスチックのおおいをするわけにはいかないよね……。

それにしても、どうして今年は周辺のひなが全滅したのだろう?
想像するに、住宅地でもカラスの個体数が増えていること、この1,2年で周辺の空き店舗化が加速したこと。そして、ゴミをネットや金網で隠すようになったせいで、以前はゴミで腹をふくらませていたカラスたちが、ゴミに代わるエサとしてツバメを狙うようになった、そういう種々の原因が重なったせいだろう。

からっぽになった巣、叩き落とされた巣の残骸なんかを眺めながら、悲しい気持ちで家の周辺を歩き回ってきた。すると、わずかながらカラスに襲われない場所に巣を作ったツバメもいると見えて、巣立ったばかりの子供に親が飛び方を教えている姿も目に入って、ほっとした。

それでも我が家のベランダから見えるのは、電線に止まっている親鳥だけ。いつもならこの時期になるとあの電線には親子連れのツバメがとまるのに……。
本能とはすごいもので、この親たちは何度カラスにひなを取られても再び卵を産み、3回か4回、あきらめずにひなを育てていた。けれどもさすがに2,3日前に4度目のひなが全滅した今、6月中旬から子育てをするのは遅すぎるよと本能がささやいたのだろう。ツバメに哀しみを感じる能力はないだろうが、親鳥だけで電線にとまっている姿が目に入るにつけ、なんともいえずわびしい気持ちになる。

3度目のひなの一団。

もうちょっとたてば巣立てるからがんばれ!と近所の人たちみんな思っていたんだけど……。

以前はこの道ももっと人通りが多くて、お店も営業していたのだが、今ではどこもシャッターがおりている。
人目が少なくなったせいでカラスが好き放題できるのもあるんだろうな。

カラスの攻撃を受けるたびに、少しづつ削られてどんどん小さくなった巣。
「巣の残骸」と呼んだ方がいいようなちんまいわらの家で、また新たに生んだ卵を抱いている親鳥のことが、もー気の毒でたまらなかったよ……。

2014年6月12日(木)

インド・スリナガルのボートハウスから見える夕暮れのニギン湖。鏡面のようになめらかな水面に映る薄紫の空を眺めながら、ヘボピーが遠慮がちに口を開いた。
「おねえちゃん、その頭……リヴァイやな……」

うん、分かってる……。自分でも分かってるんだよ……。

そう、当時の私の頭はツーブロック。ガリガリ君並みに刈りあげた後頭部に、長く残したトップがかぶっているスタイルだった。
カットを任せた美容師によれば「1960年代のデヴィッド・ボウイのイメージです(キリッ」だそうだが、いったい誰が中年日本女性のこの頭部を見て、魔性のバイセクシュアルシンガーを連想してくれるというのだろう。

今の日本でツーブロックといえば、「進撃の巨人」のリヴァイ兵士長、ヒトラーの付き人、大正時代の書生さんの三択だろう。
いや、リヴァイはカッコマン分類だからいいようなものの、男ならぎりぎりセーフでも、日本人女性のヘアスタイルとしては余裕でアウト。進撃の巨人ファン以外は避けるべきヘアスタイルだと思う。

「おまかせします」と言った手前耐えたけど、仕上がりを目にした時には「なんでここまで刈ったんやー!?」と美容師の胸ぐらをつかんで揺さぶりたくなったのが本心。ましてや白髪に悩むお年頃なので、刈り上げた部分がゴマ塩になって痛々しさに拍車をかけている。
いつもなら言いたい放題のヘボピーも「リヴァイやな……」で止めたが、内心では「それ、変やで!」と付け加えたかったにちがいない。


そんな羞恥プレイからようやく二ヶ月が経過した。ガリガリ君だった後頭部も、散髪代をケチって短くしすぎたサラリーマンくらいには伸びたので、ごま塩をごまかすために美容院に走った。

この数ヶ月、節約のために髪の毛は自分で染めていたけれど、安もんチェーン店プラージュでさえ3240円取るところを、一箱800円のヘアカラーを2,3回に分けて使ってキレイに染まるはずもない。
ましてや長い部分でごまかせる隠せるロングヘアとは違い、ショートは白髪(黒髪より硬くて太い)が前へ、前へと出しゃばるせいもあって、自分で染めるとだんだら模様でみっともない。これはもう、プロに頼むしか……。

そういうわけでヘアマニキュアをしてもらうと、あら!まあ!鏡の中にはマダームな私。顔から若さは去ってしまったが、いい案配に枯れつつある顔つきが「変に攻撃力が高そうなババア」に見えて、自分で言うのもなんだけど…………悪くねえ。(byリヴァイ)

やっぱケチってばかりじゃダメだよね。中年だからこそ最低限の身だしなみはした方がいいよなーと調子に乗って、昼休みにアナスタシア(眉エステ)にも駆け込んだ。
その結果、髪と眉で散財したゼニは、二日間で1万4千円。使いすぎた……とへこみまくっている。

若ければ美容やおしゃれにはお金をかける必要はないと思う。若い生物はあふれる生命力だけで美しいものだから(典型的な中年発言すみません)。
だが、戦国時代ならぼちぼち死んでる年齢層の女にとって、どこからどこまでが最低限の身だしなみで、どのレベルを超えると「中年の悪あがき」になるのだろう?

モテたいとかカッコいいとかキレイとか思われたいという欲望はすでにないはずだが、「みっともないとは言われたくない」ということは、まだまだ「人からよく見られたい」という自意識が燃えさかっている証拠だろう。

最低限の自己満足をキープしながら貯金も減らさずにすむ落としどころ。老年期への扉を目の前にしている今、そのあたり早急に探らなきゃならん。

シャッタースピード1/2000のマヤちゃん

2014年6月10日(火)

時計屋のくじでもらったキャンドルなんぞをヤフオクに出しとったら出勤前の時間配分に失敗した!

イランいろいろ、更新しました。誤字脱字、文章の骨折、いろいろあってもスルー願います。エラーは帰ってから訂正するよ!

2014年6月6日(金)

きっぱり三色に分かれた雲。きれいなんだけどちょっと不気味でもある。


神さま、ありがとうございます……。
朝一発目のニュースを見た私は、ほっと胸をなでおろした。というのは一時間ほど前に閉場したNY市場で、ダウが98.58ドル高と市場最高値を更新したとあるからだ。あいつら狂ってやがる!!

NYが高値引けということは、今日の日本市場も上昇が確約されたようなもの。いやほんま助かったわ……。昨日ぜんぶ手じまってなかったら死ぬとこだった……。

え?どうして?株が上がるのはいいことじゃないの?と思われる向きも多いだろうが、実はそうばっかりとは言えないのだ。
「株が上がる=景気がよくなる」というのが世間一般の「株式投資」に対する認識とはいえ、少なくとも深く傷ついた私の前ではその台詞は封印して頂ければありがたい。

なぜならネガティブ思考の私が好む「空売り」とは、株が下がれば利益を得られる手法。
そして我々空売り派は、「ここまでNYダウが上げるのは異常。近い内にハシゴを外されて下落するだろう、そいでもってしょぼい「三本目の矢」しか出せなかった日本市場もつられて大崩れするに決まってる」と読んでいた。

だがご存じの通りこの数週間、じわりじわりと上げ続けている株価。
来る日も来る日も真綿で首を締め付けられるような苦しみを味わった私は、ついに昨日ギブア──ップ!このまま続けると頭がおかしくなってドロップの代わりにおはじきを舐めそうだから、ゼニは捨てて命を選んだ。

そう、「買いは家まで、売りは命まで」というおそろしい株式格言にもある通り、「売り」は作戦的にも精神的にもたいそうデンジャラーなものである。

それでも私は世界経済、特に我が国の明るい未来をイマイチ信じられないせいで「買い」は苦手。覚悟の上で売りに回っていたけれど、ストレスは健康の一番の敵と言うではないか。
これ以上ストレスを抱えると、冗談抜きで命をちびらせそうだ。ケチな資産を増やそうなんて欲張るのはやめにして、森に帰ろう……


そんなこんなで昨日、これ以上の損失を回避するために空売っていた株をすべて買い戻した上で、携帯とパソコンの「お気に入り」から証券会社のログイン画面をすべて削除。今度ばかりは本気である。

結果的には今年の収支はマイナス300万。年収に迫る損失はけっこう痛い。ましてや銘柄選びと入るタイミングはどれを取っても間違っていなかったので、いろいろと思い起こすと胃がキリキリ痛む。

そうなのだ、私は株については「ひょっとして霊界通信を受信する才能がある?」とうぬぼれるほど勘が当たる。だが問題は絶望的な売却タイミングの悪さなのだ。

ツイッターやテレビを見ていると、これまで存在すら知らなかったような会社の名前になんとなーく目が吸い寄せられて、株をゲット。そこまではいいが持っている間は動かない。
そして、「これはもうアカン、勘違いだったわ」と抜けたとたん──遅くて3日、早くて30分後に画期的技術の実用化を発表したり、買収計画が飛び出したりした時のイヤーな気持ち、
分かりますか?

その結果、あれよあれよという間に駆け上がる(または暴落する)株価。たったの1,2週間で2、3倍というケースもざらである。
おおお……私が「あとちょっと」を我慢できる人間ならば、今頃は窓から見えているあのタワーマンションの最上階を、鼻をほじりながら「ひとつください。あ、キャッシュで」なんて言えただろうに……。
(でも「あとちょっと」を我慢した時に限って大損するのもお決まりです)


株をはじめて20年。自分にはストレスに耐える精神の強さも、投資の才能もないことをようやく腹の底から理解した。

どうして私は株をするのか?お金が欲しかったから。じゃあどうしてお金が欲しかったのか?「大型犬と一緒に暮らせる家」と「妹たちの老後の安心」を得たいから。

けれども目的達成のためにストレスを感じてさらに健康を損なうくらいなら、多くを求めず今あるもので回して行く方が利口かもしれない。
そもそも大型犬を飼えるような立派な家は管理が重荷だし、妹たちの老後のことまで私が心配しなくても、自分たちで何とかやるだろうしね。

そういうわけでようやく修羅の道から抜け出した今、日経平均がどれだけ上げようと関係ねーわと気分壮快。上昇、バッチこーい!!
でも、でも……ダウが最高値更新したからって日本も上げるとは限らないんだよねえ……。

最後の最後にまたしても逆神っぷりを披露することになると、さすがにキツい。PCの「お気に入り」に証券会社のログイン画面を再登録しないためにも、しばらく経済ニュースは封印する。

これ以上ゼニのことは考えとうない……。通勤途中に咲いていた花の写真でも見て心を落ち着かせよう……。
わざわざ植えられたんじゃなくて、風に乗った種が飛んで開花したみたい。かわいいよね(=´ω`=)

2014年6月5日(木)

4月頃、駅前で違和感をまき散らしていた花。我が国にも黄色い花は色々あるけれど、なんだかすごく落ち着かない。どこがどう違うのだろう……なんというのか、回りの風景との調和を拒んでやたらと前へ、前へと出てくる黄色なのだ。

幹にかけられた札には「イペ:ノウゼンカズラ科」とある。調べてみると原産国はブラジルで、アマゾン川流域に広く分布しているとあって妙に納得。

この写真を撮る私の背後を通ったオバちゃん達も口々に「なんだか外国の景色みたいねえ」と話していたし、ヘボピーに「M駅前の黄色い花知ってる?」と聞いたところ、「知ってる知ってる!なんか違和感があるやつでしょ?」と言っていたから思うところはみな同じなようだ。
菜の花もヒマワリも菊も黄色なのに、ほんのわずかな色の違いを「外国っぽい」とか「見慣れない」と認識する人間の能力って面白い。


「バングラデシュのテレビ」更新しまちた。久々の旅行記更新がテレビかよって感じですねすいません。

2014年6月2日(月)

父が亡くなってまだ日が浅い頃、父の本棚を整理していた時のこと。

ヘビースモーカーだったせいでタバコのやにで真っ茶色の本棚にぞうきんをかけていると、布団にうつ伏せになったままタバコを吸っていた父の背中を思い出す。
最後を迎えることになる病院に入院する直前までタバコをやめられなかった父。もう!お父さん!咳ばかりしてるんだから、いい加減そんなもんやめなよ!と怒る私の目を盗んで、ヘルパーさんに頼んで買ってきてもらったタバコを隠れるように吸っていたものだが、あんなにあっさり死んでしまうなら、病室で一本くらいこっそり吸わせてやればよかった。

そんなことを思いながら茶色くこびりついたヤニをふき取っていると、片隅に立てかけられた小さな額が目に入った。
父が自室に飾っていたのは淡い色調の美人画(誰の作品なのか知らないが、伊藤深水っぽい)だけだと思っていたから、何の絵だろうと不思議に思って手に取ると、古代エジプトの黄金のマスクを写したポストカード。

生前、父は何にもまして縄文時代に興味があって、アマチュアながら一生懸命に資料を集めて研究していた。
私が古代エジプトに夢中だった頃、お前が縄文に興味もってくれたらいいのになあ。縄文はええでー。なあ、お前も縄文やらんか?と言われて、えーっ?興味ないなあ、とすげない答えを返したものだけれども、日本の古代史にしか興味がなかったはずの父の部屋に、なぜ古代エジプトの遺物のポストカードがあるのだろう。

いろいろな絵を飾って楽しむ人なら「気まぐれ」にすぎないかもしれない。しかし他には美人画しか飾られていない部屋にわざわざ額装したものを置くことは、よほど心ひかれてしたことだろう。

残念なことに、あとからゆっくり見ようと思ったまま忘れているうち、額は妹が間違えて処分してしまった。
だから誰のどのマスクかは特定できないけれど、ぱっと見た限りでは、アメンホテップ三世の妻にしてアクエンアテンの母である女傑ティイの、さらにその母親にあたるチュウヤのマスクだったような記憶がある。

どうしようもなくマイナーというわけでもないけれど、けしてメジャーとは呼べない遺物。古代エジプト展でもないと売っていないようなそんなポストカードを、父はどこで手に入れたのだろう。そしてわざわざこれを選んで額に入れたのは、どんな心境からだったのだろう?

今となっては確かめようがない、こういうささいな事柄があとからあとからわき出してきて辛いんだよね……と友人に話したところ、「そうだねえ、お父さんは何を探してたんだろうね」と何気ない返事がかえってきて、はっとさせられた。
ほんとうだ。父は一体何を『探して』いたんだろう?

生きていた頃はうとましいばかりだった父のことが、今ではひどく懐かしく、もう一度話をしたいだなんて無理なことばかり願ってしまう。私と父は精神的に似ていることに気付いた今、父の思考をトレースことは己自身を知ることであるようにも思えるのだ。

また一方、父が好きだったものを知りたいという動機は別にしても、このところ急に縄文時代への興味がわいてきた。幸いなことにまだ整理してない故人の部屋には、手書きの文字でびっしりと埋め尽くされた縄文研究ノートが山積みされている。

父の筆跡を見ても心が大きく揺らがないくらいの落ち着きを取り戻せたら、おいおいそれらを開こうと思っている。