<バングラデシュのテレビ>

新聞の折り込み広告より泡沫政党のマスコットキャラ。理想のために闘うことは素晴らしいけど、もうちょっとこう、いろいろ考えた方が……そうだよ!そこの青いお前のことだよ!!

ここに描かれた山や十徳ナイフやベレー帽のマーク、これらは字の読み書きができない人も投票を可能にするためのシステムである。聞くところによれば投票所ではシンボルマークを示して、自分が選んだ政党のシンボルの上にシールを貼るとオッケーだそうだ。

なお、この選挙には多数の政党と立候補者が名乗りを挙げたものの、つまるところハシナ首相の与党「アワミ連盟」とカレダ・ジアを党首とする最大野党「 BNP(バングラデシュ民族主義党」の一騎打ち。結果的には野党の選挙ボイコットにより、アワミ連盟が無投票で大多数の議席を獲得という無茶な結果に落ち着いたのだった。


2013年の年末から2014年年明けにかけて、バングラデシュは1月5日の総選挙を前に揺れに揺れていた。
道路は連日封鎖され、デモ隊と警察がぶつかり多数の死者を出した騒動は、日本のニュース番組でも頻繁に取りあげられたので目にした方もいらっしゃるかもしれない。

そんな最悪のタイミングで遊びに行く方が悪いといえばおしまいだが、夏の終わりに航空券を押さえた時にはここまでえげつない事態になるとは予想できなかったと言い訳したい。

くわえて正月休みのタイ航空券はプラチナチケット。一年で運賃が一番高い時期に好きこのんでバングラデシュに行く人間は多くないけれど、ダッカに行くにはバンコクで乗り換える必要がある。そして正月休みにパッポンのゴーゴーバーを目指す人が多いせいだろうか、バンコク行きの座席は受付開始と同時に一気に埋まるそうだ。

バングラデシュ行きを決めた夏にはすでに「タイ航空:一応キャンセル待ちとは表示してるけど、キャンセル入れても無理ですよwww」という状態だったところを、S旅行社の敏腕添スタッフW氏に無理言って、裏技を駆使して取ってもらった貴重なチケット。直前になって「選挙でもめそうだからやっぱ行くのやめまーす」なんてワガママ、かなり言いにくい雰囲気だったのである……。


そして予想通り、プリンセスでもない我々がダッカ入りしたからといって事態が沈静化するはずもなく、旅程の後半には警官の数はますます増え、道路封鎖はよりハードに。日中はダッカ中心部から出ることができず、夜間はもっと怖いからホテルに巣ごもり。
(まあ事前に「最悪ホテルに缶詰になる可能性もあります」と聞いていたので、テヘランのアメリカ大使館が占拠された時くらいの缶詰かと覚悟を決めていたけれどが、実際にはそこまでの缶詰ではなく、ザル詰めって程度で助かった)

そんな中にあって、やることといえばビールを飲みながらテレビを眺めるくらい……。
ホテルにはケーブルテレビが入っていたお陰で、我が家の10倍はあるチャンネルをザッピング。ヘボピーと一緒に画面に突っ込みまくる遊びは開き直ればけっこう楽しかった。
ここではそんな異国で拾ったテレビ映像をいくつかご紹介しよう。

さて、2012年から13年にかけて、私とヘボピーはインドのシッキムという街で、スーパーハイテンションなインド人たちにもまれて年を越していた。

そして2014年元旦。ハッピーニューイヤー!の声を聞いたのはダッカのしょぼいビジネスホテルの一室。

その頃、ドバイの金満ビル、ブルジュ・ハリファでは50万発の花火が打ち上げられていた。

キャーステキー!わーわー!ハッピーニューイヤー!童心に返るドバイの善男善女。

だが本来イスラム教徒にとっては1月1日はべつにめでたくもなんでもない。

チャンネルを替えるとイスラムの坊さんが無表情で講釈を垂れていた。

バングラデシュはイスラム教徒が大多数を占める。よって宗教番組は選びたいほうだい。

とつとつと語る上の先生に対して、こちらの先生は憑依タイプ。身ぶり手ぶりを交えて衆生を導く。

どこかの議会?それとも経団連の寄り合い?

眺めているだけで胃がもたれる。

メッカのライブ映像をひたすらながし続けるチャンネルを発見!!イスラム教徒にならない限りメッカ内部には入れないので、おおっ!これは!って感じ。

じべたに座り込んでるおじいちゃんとかいて、いかにもLIVE。

カーバ神殿とその回りを回る人々。7周するのがきまりだそうだ。

世界16億人の教徒の崇敬を集めるカーバ神殿。テレビ画面を通してもものすごいオーラが伝わってくるようで、なんだか見てはならないものを見てしまった気分になった。

たたみかけてくるイスラーム映像に「ゆく年くる年みたいな日本のお正月の映像が見たい」と不平タラタラのヘボピー。仕方なくチャンネルを変えると、おおっ!NHK!

だが、めでたい映像は次の瞬間、不吉きわまりない絵にチェンジ。正月からやめて──!縁起でもないー!

どうやら津波で大打撃を受けた養鯉業者が事業を再開できました、という映像だったようだ。

多分インドのテレビドラマ。脇役、突っ立ってるだけ。

どれどれ、仏さんを拝むか……。

アジの干物より死んでますね。

インド版「相棒」か、それとも「噂の刑事トミーとマツ」か。

ま ゆ げ

ダンス甲子園みたいな番組も。

ウッ!ハッ!

スチャッ!

オウオウ〜!(ぐりんぐりん)

シェイク!シェイク!シェイク!

う────っ!!ハッ!
「バングラデシュのテレビ」2につづく!!!