冬コミ修羅場差し入れにと、義恋ーGIREN-の晶山嵐子さんからカリシャダSSを頂きました。
当家のGALLERYに置いているイラスト「お疲れシャダ坊」のイメージで描いて下さったものです。
嵐子さんいいものどうも有り難うございました!

シャラシャラ……
自分の手首で揺れてかすかな音を立てる細い金細工を見つめてシャダはぐっ たりしていた。
そりゃぁね。教えたのは私だけどね。
シャダは重たい体を寝椅子に横たえてうろんげに目を上げる。

ここはシャダの隠れ家で。いつも管理してくれている老人をにチップを渡して外出させると誰もいなくなる。
そこに恋人を連れ込んでお楽しみ。
したのはシャダなのだけれど。
恋人の底知れない体力を考えていなかった。
王宮から三日の休暇を戴いて。恋人とすごそうとした甘い時間。
「昨日ここに来てから犯りっぱなし……って……どう?」
ぐったりした自分の声にシャダはうんざりする。
いつだって、セトほどではないけれど。コロコロと良く通る自分の声がお気 に入りだったのに。
かすれて自分の耳にさえ聞こえ辛い。
昨日この家に来て、気がついたら一晩明けてた。
下半身は痺れて感覚が無いし。愛しい男の背中を抱き続けた腕はたまに筋が突っ張るほど疲労している。
「喉が渇かないかい? カリム……」
起きてすぐ、抱きしめてきた恋人にシャダは枯れた声で囁いた。
朝だからだと信じたい……カリムの腰のものの大きさにシャダは息を呑む。
快楽は好きだし、カリムとするのは心まで灼くなって素敵だけれど。
何分、私には体力の限界、って言うものがあるんですよ、カリム……
少し申し訳なく思い、少し拗ねても見る。
カリムの手を軽く押し退けて、シャダは寝台の端にごろん、ところがった。
声には出さないけれど、カリムが『どうした?』という顔をしている。自分の腕の中から逃げた恋人が、カリムには不思議らしい。
「シーツが濡れているのが気持ち悪いんです」
とりあえず、一人で転がっていたかったシャダはそう言って目を閉じた。
カリムが寝台から降りる気配。
ああ、どうしよう。爺を呼ばないと食事ができないじゃないか。
ぼんやりと目を開けたシャダの目に映ったのは、たくましい胸筋。
ぐいっ、と。抱き上げられて、シャダは一瞬慌てた。
のっしのっし、と。たくましいシャダの恋人はゆっくりとシャダを抱き上げて歩き、寝椅子にシャダを降ろす。
そして、何も言わずに部屋を出て行った。
全裸で。
まー、なんてかっこいいお尻。
なんて広い背中。
歩いていくカリムを見てシャダはくすくすと微笑んでしまう。
シャダの選んだ恋人は、誰よりもかっこよくて素敵。彼に比べれば、今までの恋人達は随分と色あせて見える、とシャダは思った。
少し腰が痛いけれど。
『もうだめっ……もうっだめぇっ……カリ……ム……ーっ…………』
何度そう叫んだか判らない。
何度叫んでもカリムは止まらなかったし、シャダも何度でもイッた。
その感覚を思い出して、中心が熱くなったのにシャダは息を詰める。
もう、イきすぎて痛い。
シャダの愛しい人は朴念仁で。ずっと無理だと思っていたけれど玉砕覚悟で酒をかっくらって告白したらいけた。
多分、愛されてる、と……思う。
シャダはなんとなく紅くなって自分に呟いた。
熱くなった頬を抑えると、手首に巻いていた細い金細工がシャラシャラ音を立てる。
無骨で朴念仁で、装飾品になどなんの興味も無いシャダの愛しい人がくれたもの。
休暇明けにやっと会えた、と思ったら。再会の挨拶よりも先に手を取られて手首に巻き付けられた。
それは神殿で祈祷をする寸前だったので、六神官はおろか、ファラオまでいたのに。
たしかに祈祷するまでは職務ではないけれど。
「ふん。仲の良い事だな」
と、ファラオにまで揶揄されてシャダは慌てたのに。彼はいつもどおりうっそりとして何の反応も無い。
お前の為に買ってきたんだよ、とか一言あってもいいのに。
そのまま祈祷に入ってしまって。その後も何も聞き出せなかった。
そんな無骨な所も好きなのだけれど。無口すぎるのもどうかと思う。

のそっ、と。
シャダの恋人が部屋に帰ってきた。
わぉ。
シャダは思わず息を呑む。
何をしていたのか知らないけれど。帰ってきたカリムはまだ腰に大きな物をいきりたたせていた。
それがシャダの目の前でぐらり、と揺れてもっと反り返る。
ぐんにゃり、と動けないシャダは逃げる事もできなかったけれど。心はダッシュして逃げていた。
もう無理もう無理もう無理っ!
のっそり。
カリムは静かに歩いて、さっきと同じ無表情でシャダに手を差し出す。
陶器の杯を持っていた。差し出されたそれは水だ。
「ありがとう、カリム。喉が渇いてたんだよ」
シャダは嬉し気に笑みを浮かべて杯に手を延ばす。
まだ体に疲労が残っているのか、指先が震えていた。
あと少しでシャダの手にわたるはずだった杯をカリムがすい、と遠ざける。
「カリム?…………あ」
シャダの背中に手を差し入れて、カリムがシャダの上半身を起こした。そして、シャダの口許に杯を持っていく。シャダもそれに手を添えてこくこくと呑み込んだ。
カリムがシャダのもう片方の手を取り上げ、両手で杯を持たせる。
そして、寝台へと歩き出した。
何をするんだろう……と、思っていたシャダは。カリムがどこからかシーツを持ち出していた事に気づく。前の汚れたシーツをのそのそと外し、新しいシーツを覆って、のそのそとしつらえる。
慣れているはずが無いから綺麗に施設できるはずがなくてぐちゃっ、となっているけれど。のそのそとカリムは寝台の上をまっすぐにするためにシーツを引っ張っていた。引っ張り過ぎて反対側に回ったり。のそのそうろうろしている。
その姿にシャダはクスッ、と笑ってしまった。

カリムがまた寝台に戻ってくる。
シャダに手を出した。
杯を渡す為に、シャダが慌てて中の水を呑み込む。
のたっ、と大きなカリムの手にシャダは杯を返した。カリムはそれをテーブルに置いて、のそっとシャダの前に立つ。
ぐいっ、とシャダはまた抱き上げられて、のそのそと移動させられた。
ゆっくりと寝台に降ろされる。
「え……? まさか……」
カリムが寝台に膝を上げてきた事に、シャダはサー、と顔から血の気が引いた。
ゆっくりと、カリムの顔がシャダに近づいてきて……口接け、られる。
大きくて分厚いのたっとしたカリムの舌に舐められてシャダはゾクゾクッ、と体を震わせた。
最初は何もできなかったカリムも、シャダの教えをきちんと聞いてきちんと巧くなった。
ああ、ここまで成長してくれてありがとう。
無垢な僕ちゃんを調教したお姉様の気分のシャダ。
けれど、顔にキスされながら腰を抱き寄せられてはそんな感慨に浸っているときではない。
カリムのものはすでに準備良し、と出番を待ち構えているのだ。
「か……カリム……? ちょっと……待って……」
大きなカリムの肩をシャダは自分の細い腕で押し返す。カリムが本気ならそんなもの、全然役には立たないけれど。カリムは少し動きを止めてその手に従うように体を離した。
「シーツは替えたぞ」
シャダを見つめてカリムはボソッ、と呟く。
「えっ?」
と、シャダが笑顔のまま固まった。
もしかして……と、シャダは自分の言動を思い返す。
もしかして……最初からカリムはする気だった?
シーツが濡れてるから、喉が渇いたから……と言ったシャダの言葉を全部叶えて……始めようとしている……らしい。
「プフッ……」
思わずカリムの肩にシャダは吹き出した。
シャダが笑った事に、カリムは少し不思議そうな顔をしたけれど。ふわっ、とカリムも笑う。
滅多に見る事のできないカリムの笑顔に、シャダはもう、いいや、とカリムの首にだるい手を延ばした。
するために来たのは確かなんだし?
と開き直る。
「愛してるよ、カリム。私の最愛の人」
シャダの言葉にカリムはもっとにっこりと笑ってシャダの額に口接けた。
「わたしも………………愛してる……シャダ……」
くすくすくすくす……
シャダの笑い声が甘く変わるのはすぐ。
シャダの手首で細い金鎖がシャンシャンと綺麗な音を立てた。

(後編へつづく)

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