脳内補完計画・シャダの巻

<年齢>

マハードより1歳、カリムより2歳下の28歳。年寄りのくせしてどうも落ち着きに欠けている。
生まれ月は6月、現代12星座では社交的で明敏な双子座にあたる。なぜ6月かというと、氾濫期の真っ最中のエジプトの気温が最も上がる時期に、暑さにキレた両親が「こんなに暑いならいっそ極限まで熱くなろう」と半分ヤケっぱちでコトに及んだ結果である。

おヒゲのプリンスSAKUJI先生の論文「古代エジプトの老齢者に関する一考察」(1990)によれば、古代エジプト人の平均寿命は農民や下層の職人30才、貴族や役人で40才、ファラオ50才とあり、30歳過ぎになると「老人」として扱われていたそうなので、リアルエジプト的解釈からするとこの年齢設定では相当無理があるということは承知の上である。

しかし、シャダマハカリムはファラオとセトより一回り年上のオヤジだという当家の脳内設定を優先させ、かつファラオとセトは「最後のたたかい」の時には現代編とほぼ同じ年齢だったと設定している都合上、このような数字が導き出された。都合のいい時だけフィクション優先ですみません・・・

<容貌>

クセの少ない分かりやすい美形。見ようによってはカマっぽくてヤバい。
彼の美しさはすんなりとした細腰に形のいい頭部、優美な柳眉とその下のアーモンド型の瞳・・・といった生まれ持っての素質に加え、育ちの良さゆえの上品な身ごなしや話し方など後天的な要素から来ている部分も大きい。

ヒッタイトに滅ぼされたかつての強国・メソポタミアのミタンニからファラオに輿入れしたトゥシュラッタ王の姪を祖母に持つゆえに、フルリ人の血が四分の一混じったシャダの風貌は、普通のエジプト人と比べてかなりエキゾチックである。

マハードやカリムの美を天に向かって梢を伸ばす木々の美、大空に羽ばたく鳥類の美とするならば、シャダの美しさはいわば手入れの行き届いた庭園の花の美。
庭園の花々とは常に水を与えられ手をかけることを必要とするもの。ちょっとナル入ってる彼は、おのれの美を守りそれを磨くことも忘れない。
実はファラオの宴会でアイシスとのコンビで余興としてやった女装がことのほか気に入り、自室でこっそり口紅を塗ったりすることもある。また、それを老師シモンに覗き見られて泡喰ったことも・・・

なお、目の色について言えば、原作で一度だけカラーで小さく描かれた時に紫色に着色されていたもので、当家ではアニメのブルーグレーではなく「アメジスト色」説を採用している。

<職業>

ファラオの片腕として上エジプト宰相の仕事に専念するため、六神官を退いたシモン翁の後任者に指名された千年錠の管理者兼王宮裁判所の判事長。

だが、お気楽な話を主とする当家では、どう切っても悲劇的な「最後の戦い」の時代にはなかなか触れることができず、アテム王が自らを封印する時代より10年以上遡った頃・・・エジプトがまだまだ元気で健康だった頃、という設定のオリエント世界を舞台としている。

とにかく原作の設定である「15年前にやむなく千年宝物が製作された」というエピソードに縛られると、色んな不整合が生まれてしまうのだ。
あのエピソードによると「15年以上前からすでにエジプトはボロボロだった」ということになるが、それではライトな話がむつかしくなるので、原作に沿った「15年前のエジプトと周辺国諸事情」は全く無視することにした。ご都合主義でどうもすみません。

よって、「最後の戦い」から遡ること10数年昔、役人になったばかりの若造がエジプト最高レベルの要職(判事長かつ六神官の一人)に就けるとも思えず、当家の設定では10代〜20代前半におけるシャダの主な仕事は「王宮裁判所の裁判官にしてアテム王子の外国語教師、カルナック神殿の「生命の家」併設の図書館長兼海外からの文書保管庫の長」ということになっている。

<出身> 

下エジプト宰相の長男としてメンフィスに生まれる。

エジプト史上において幾度も王都となったメンフィスは、デルタ地帯と上エジプトの交通・貿易・文化などの交差点として非常に栄えた大都市である。
国際交流の要衝であったこの地は、いわば古代エジプトにおける神戸、横浜。
少年シャダは、海外からの大使を迎える迎賓館や異国の商人の屋敷を見ながら育ったのだ。異国からの風通しのいい土地柄は、彼のあけっぴろげで新進的な人格が形成されるのに大いに役立った。

<生い立ち>

国際都市メンフィスに入ってくる異国の船や外国人を見て育ったシャダは幼い頃「大きくなったら外国を旅して、いろいろな見たことのないものを見たいなぁ」と夢みていた。 
そこで思いついた第一志望の職業は「船乗り」。
だが、商船を持っている叔父にねだってクレタへ向かう船に乗せてもらったところ、船酔いで死ぬほど苦しい思いをしたものでもう海はこりごり・・・「船乗りよりも外交官のがいいな」とあっさり軌道修正したお気楽ゴクラクな少年であった。

有名な教訓文学に「少年の耳は背中に付いている。そこを叩けばいうことを聞くのだ」という一節があるが、それを地でいくシャダは、どうも落ち着きに欠ける生徒でいつも先生に背中をひっぱたかれていた。
記憶力と感覚の鋭敏さという点では群を抜いているので、遊んでばかりの割に学校の成績は優秀だったのだが・・・

<家族構成>

「声を荒だてる姿を誰も見たことがない」というほどおだやかながら、いつの間にか目的を達成している根回し上手なタフネゴシエイターの父、プタメス。
ややヒステリー気味ながらも、子供達に惜しみない愛情を注ぐ心配性の美しい母、キヤ。
そして頼りない弟を猫可愛がりする、サクメト女神並みに力強い4人の姉、イシス、ネフティス、セルケトそしてネイト。
この6人がシャダの家族である。

父は薄毛を気にする太鼓腹で小柄な男なのだが、シャダは古代エジプト人としては平均的な身長168センチ。しかし骨が細いために、実際よりは小柄に見える。
反面、四人の姉たちは揃って樹齢20年のナツメヤシの木のような長身を誇っている。えらの張った顔、大きな口と大きな目、ふさふさした黒髪と濃ゆすぎる眉毛・・・と外観もまことに頼り甲斐たっぷりな彼女たちは、内面的にも行動力と押しの強さに恵まれたアマゾネスタイプであり、パーティーで姉妹四人揃うとある意味かなり壮観である・・・

きょうだい中たった一人の男であるシャダは、小さい頃から母や姉たちにお人形のように大切にされ、主の愛息への土産をさげて屋敷を訪れる客達には可愛い可愛いともてはやされて、何一つ不自由することなくすくすくと育った。

このような恵まれた環境にあった彼は、甘え上手で心優しく愛嬌たっぷりな反面、やや忍耐と決断力に欠ける泣き虫少年に成長したのだった。

<愛犬>

古代エジプト人は豊かな自然とそこに生きる動物たちを愛した人々。
よって当家では古代編の面々は一人残らず生き物好きという設定である。主な登場人物について言えば、アイシスとセトとバクラが猫派、シャダとマハードとアクナムカノン王とシモンが犬派、カリムは鳥派、アクナディンは錦鯉・・・いや観賞魚派、そしてアテム王子は「ドーブツならなんでも好き」。

シャダの記憶に残る愛犬は、メンフィス在住の少年時代に大の仲良しだった巨大な黒犬・ネセル(炎)とセテウト(光線)。
ピンと立った大きな耳とふさふさした尻尾を持つ二頭の護衛犬は、幼い子供の優しい遊び相手であると同時に、暴漢にとっては恐ろしく獰猛な獣であった。

シャダがテーベに上京してから間もなく事故と病気で冥界へと旅立ってしまったネセルとセテウトだが、それから数年後、主人を守るために銀の戦斧をかかげた双頭の精霊として甦るのである。

なお、現在のシャダの愛犬は彼が10代末の頃にアクナムカノン王から下賜された白いサルーキ、リイリイ(牡)。
マハードとの激しい「仔犬争奪戦」を経た結果、大人びた同胎犬の黒犬ケムはマハードのもとへ、落ち着きに欠ける白犬リイリイはシャダの元へと迎え入れられた。飼い主と同様、どうにもおっちょこちょいなリイリイである。

<召使い>

男の単身世帯なのであまり多くの人手は必要ないもので、シャダはそれほど多くの使用人は使っていない。もともと思いつくとさっさと行動に移す身軽さもあって、簡単な事ならばいちいち人に命令するよりも自分で片づける方が性に合っているのだ。

また、シモンの元から独立して居を構えた時に母親が派遣した、シャダが生まれた時からの召使いである老女イネトと、同じく昔から実家に仕えてきた執事センレスは、使用人ながらも人生の先輩として若い主人にやんわりと忠告することすらある一種の人生アドバイサーである。

<テーベへ至る道>

良家の子息を対象にした塾に入ったシャダは、天性の優れた能力であっという間に基本的な学習を終え、エジプトの文字と並行して外国語と法学を学ぶためメンフィスのプタハ神殿併設の生命の家に入った。
そこに在籍中、父の元を訪ねたシモンに鋭い霊的能力を見いだされ、未来の千年錠の担い手としてテーベへと連れ帰られたのが彼の人生の転機であった。その時シャダ9歳。

「ボクは外交官になりたいのに!」と心の中で叫びながらも、「ファラオのために尽くせるなんて素晴らしいこと!お母様はあなたのような息子を持って鼻が高い」と手放しで喜ぶ母親の姿をまのあたりにすると、親元を離れるのはイヤだとどうしても言い出せない親思いの少年シャダであった。

<キャラクター>

<痩せ我慢のプレイボーイ>
「来世を見たものは誰もいない ゆえに現世で心を楽しませよ」

盲目の竪琴弾きの歌うこの歌はシャダの一番好きな曲。享楽的で陽気で調子のいい彼は、これを実践して生きているように思われがちだ。
だがその明るく社交的な仮面の裏には、去りゆくものをはかなむ気持ちや来世への不安・疑念など、憂鬱で繊細な顔が隠されている・・・

悩みはすぐにナイルに流し去るタイプと思いきや、意外に躁鬱の起伏が激しく、悩み始めると一気に谷底まで落ち込むほう。
自尊心がシナイ山ほど高いゆえに「できない自分」がイヤで己に課すものも大きい。ゆえにそれが思い通りにこなせないと、ますますストレスがたまるのだ。

辛いときでもあまり顔には出さないので「いつも気楽でいいねぇ」と皮肉られるのだが、意地っ張りゆえに外では元気なフリをしていても、部屋に戻ると千年錠をゴシゴシ磨きながらぐるぐると果てしなく考え込んでしまう。
十二指腸潰瘍ができかけているのだろうか、最近夜寝ていると急に胸の辺りにさしこみが来るのがヤなカンジ・・・

また、女家族に蝶よ花よと育てられたせいかシスコン&マザコンぎみ。特にすぐヨヨと泣き崩れる美しいお母様は、彼の最大の弱点である。

<魔法の螺旋>
輸入ものインテリアや衣装、貴石を散りばめた凝ったデザインの指輪、工芸家が心血を注いで作った家具・・・
シャダはきれいなものが大好き。洒落好きでファッショナブルな遊び人である。

彼は当時芸人や売春婦のものであった刺青を堂々と額にほどこしているが、これは廃都テルエルアマルナから流れ着き、テーベ西岸で隠れるように生きていた芸術家トトメスがシャダへの謝礼として彼だけに秘密を打ち明けた魔封の螺旋、というアイタタな設定が当家にはある。詳しくはSS「光年の彼方」導入部に。

<去る者は追わず、来る者は拒まず>
恋愛におけるシャダは「限りなくゲイに近いバイセクシュアル」。
女とできないわけではないがどちらかと言えばふわふわしたおっぱいは苦手。固くぶ厚い胸筋のほうに惹かれてしまう。姉のような男まさりの女性ならまだいいのだが・・・よってアイシスとも女友達のような友情を築いている。

ルックスがとても愛らしい上に、ノリが良くて見栄っぱりで情に流されやすいというダメ子の必須条件を満たしているため、エロスに飢えたハゲタカどもを磁石のように引き寄せてしまうシャダ。
そして土下座されるとついつい体を開いてしまい、あとから死ぬほど後悔するそのくり返し・・・立派な恋愛負け犬である。

そんな恋愛負け犬も、表面上は優しいものの一皮むくとお仕置き好きのマスター気質を持つ、カリムというやたら嫉妬深く美しい恋人をもったため、最近ではかろうじて貞操を守っているのが現状である。
だが美形大好きなうえに流されやすい性格ゆえ、本人は気付かぬうちに無口な恋人を振り回しては頭から冷水を浴びせかけるという、けっこうな困ったちゃんなのだ。

<あたって砕けろ>
贅沢好き、遊び好きのシャダだが、頭の回転はたいそう速いので仕事も速い。人に要求するものも多いがそれ以上に自分もきちんと働くので部下の信頼は厚い。
気遣いはできるし部下を大切にするいい上司だが、欠点はちょっと先走りすぎる点。「まぁ仕方ないか、だってシャダ様だからな・・・」と部下も苦笑しながら付いて行ってるのだ。
本人の知らないところでけっこう愛されているのは彼の人徳というものだろう。

調子がよくて身軽でややもすると軽薄な人間に思われがちだが、こと職務に対してはたいそう真面目な熱血漢である。そして生真面目なエジプト官僚であるゆえに、神であるファラオには絶対の忠誠を誓っている。

思い出して欲しい。バクラの王宮襲撃、ファラオ行方不明事件、地下神殿の戦い・・・
結果はひとまずおいといて、やたらバタバタ頑張っていたではないか。身を挺した
自爆型の戦いぶりは、魔力高き神官としていかがなものかとは思うのだが。

マハードの忠誠心の陰に隠れて目立たないが、意外にシャダも臣下の鑑と言えよう。いや、結果は別にして。