2018年2月20日(火)

マヤは「女の子ですか?」とよく言われる。女の子に多い名前に加えて、イングリッシュコッカースパニエルにしては身体が小さいせいもあるだろう。先日公園で会った同じ犬種の飼い主さんも「女の子だと思いました」。その人の連れている白黒ブチの女の子と同じくらいの大きさだったから。

イングリッシュコッカースパニエルのオスは14、5キロくらいの体重があり、タテにもヨコにももっと長い。首だってしゅっと伸びている。(ショードッグ用語ではこれを「首抜けがいい」と呼んで重視するのだ)

一方マヤは体重11キロ。ちんちくりんの丸々とした身体に猪首がくっついて、我が家では「ハコフグ」「豆タンク」だなんて呼ばれている。四本足を動かしてよちよち歩く姿は、遊園地にあるパンダの乗り物そっくりだ。

では今日は「イングリッシュコッカースパニエル」を見たことがなくて、イングリッシュコッカースパニエル=ハコフグだと思っておられる方々の思い違いを改めさせて頂きたい。

誤ったイングリッシュコッカースパニエル。

正統派イングリッシュコッカースパニエル。マヤをフォトショップでタテ方向に120%引き延ばすとこうなる。

しゅっとしている。

マヤとはまったく異なる犬種のようだ。

マヤは本当はおイモの化身かもしれない。

2018年2月17日(土)

木も草も実をつけない玄関の季節、スズメたちの暮らしを少しでも楽にしてやろうと古米をまいている。
だが、マヤの散歩のついでに米をまきに寄る公園のスズメたちは、太った茶色い犬を連れたおばさんが現れるとチュンチュンいいながら木の上に集ってくる一方で、マンションの庭に集まるスズメは警戒心がやたらと強い。
米をつかんで四階の窓から投げてやっても、一羽が視線を感じるとあっという間に逃げてしまうので、お前ら、見るぐらいさせーよ!とイラッとくる。

貴重な冬の栄養源を摂取するスズメたち。天から降ってきた贈り物にもう夢中!

しかし送り主の視線を感じるや否やソッコー待避。
いじめたりしないよ?!エサ食べてるとこを見たいだけなんだよ?という人間の都合なんか通じやしない。
カーテンの影に隠れて四階からそっと見てるだけで気が付くって、お前ら警戒心強すぎじゃ!

母がよく「スズメはエサをやろうと思って近づいてもマメを散らすみたいにばあーっ!と逃げるからかわいげがない」と言っていたことを思い出す。
母も私と同じようにスズメに米をまいては逃げられていたのだろう。

2018年2月15日(木)

2018年1月25日はみき・まやちゃんの15回目の誕生日でした。パチパチパチ〜☆
こっちにパーティーの写真を置いてるから、よかったら見てやってね!→
☆♪♪☆

2018年2月13日(火)

入り口に置いていた写真をまとめてこちらに移動しました→ サイトトップ写真<6>

美容室かえりのまやちゃん。トリマーのおねえさんに「赤いやつにしてやってください」と頼んでいたら、
ミッキさんがついたこんなリボンをつけて帰ってきたよ。女のこみたい!(=´ω`=)

のっしのっしと歩いている。クマさん感あふれる後ろ姿。

公園に連れて行ってもあまり遊ばなくなったまやちゃん。ちょっと歩くと疲れてお団子になる。

でも帰りは足取り軽やかだ。家に戻ったらごはん食べようね!


マヤの病院でバタバタしていた。そういえば先日ここにも書いたんでしたね。全身麻酔をかけて歯石を除去、レントゲンを撮った結果を見てから歯を何本か抜くということ。

結果的には抜歯は2本だけで済んで(外見を見た限りではもっと抜くことになるかもしれない、と言われていたから2本でもまだマシなのだ)、全身麻酔しないと組織採取できなかった「怪しいいぼ」も二カ所くり抜いて、悪性か良性か判断するため検査機関に送ってもらった。

「怪しいいぼ」についてはまだ結果は帰ってきていないものの、多分脂肪腫でしょうということで一息ついている。歯がなくなったのは可哀想だが、2本くらい減っても犬には大きな影響はないそうで、痛むよりはまだマシだと思ってる。

そういうわけでマヤ周辺についてはひとまず落ち着いている。みなさま、ご心配をおかけしました。ミキ・マヤ号、ピンピンしております。

それにしても犬の医療費の高さよ!今年に入ってからすでに一ヶ月分の給料をマヤに突っ込んでいる飼い主は、こりゃゴールデンウィークに旅行しようなんて浮かれたこと言ってる場合じゃないなあ……と預金通帳とにらめっこする毎日である。

2018年2月9日(金)

サッカラの墓に残るマヤのレリーフ。美しい彩色が残っている。
ツタンカーメンの死後、マヤはアイ、ホルエムヘブの二人の王に仕えたが、
ホルエムヘブの治世9年目、サッカラに建設中だった自分の墓が未完成のままに亡くなった。

心がざわざわして落ち着かない。マヤが入院になるかもしれないからだ。病名は「歯周病」。
歯周病とあなどるなかれ。放置するとあごの骨が溶け、死に至る犬も珍しくないからだ。また、死なないまでも骨が溶けて下あごが折れ、命を救うためにあご半分を手術で取った結果、怪物じみた顔になってしまったダックスフンドの写真なんかを見せられて、震え上がっている。

明日はマヤに麻酔をかけて歯の状態を見てもらい、もし歯周病が骨にまで影響を及ぼす危険がありそうなら、危ない歯を抜く手術になる予定だが、第一の関門はこの麻酔である。

犬飼いの方はご存知だろうが、犬に麻酔をかけるのはけっこうな危険が伴う。ましてや腎臓や心臓に問題を抱えるマヤの場合、どういう影響が出るか読み切れない。
その上、歯を抜くとなると抜いたあとを縫い合わせたりと痛みが伴うから、ロキソニンの投与が必要になるかもしれない。鎮痛剤は腎臓の悪い犬にとってはリスクが高いのだ。

悪いことに明日の天気予報は雨。乳母車に乗せられないが、タクシーに乗るほどの距離でもないから、ヘボピーと交代で抱っこして行くのも気が重い。
一本も歯を抜かず歯石除去だけで済むように、どうか皆さんも祈ってやってください。

2018年2月7日(水)

さて、「マヤ」になる前には血統書に書かれた「マークフィールド・アックスストーン」という名前しか持っていなかった仔犬が、なぜ「マヤ」という名前をつけられたのか、そこのところをすこしお話ししよう。

日本では女の人に付けられることの多い名前のせいで、散歩に行くと「マヤちゃん、女の子だと思った」とよく言われる。とんでもない!女の子どころか15才にもなるおじいちゃんわんちゃんなのに。

マヤの家の近くには「摩耶山」という山があるが、名前の由来はこれでもない。古代エジプトが大好きだった飼い主が、今をさかのぼること3350年くらい前にナイルのほとりで生きていた男の名前をもらったのだ。

3350年前のマヤは今は「ルクソール」、当時は「テーベ」と呼ばれていたエジプトの都で、ツタンカーメンという王様に財務大臣としてつかえていた。そしてツタンカーメンが若くして死んだあと、山ほどの金銀財宝に囲まれて眠る王の安らぎが邪魔されないよう、マヤはツタンカーメンの墓を盗賊や身内の裏切り者から守り通した。

今、エジプトにあるカイロ博物館に行けば、ツタンカーメンを守っていた冥界の番人の像やきらびやかな宝剣や、人の手ではとうてい持ち上げられないような量の黄金からなる王の棺を、現代のわたしたちはいつでも見ることができる。
これはマヤのがんばりのお陰だと言ってもいい。墓は何度か盗掘に遭ったけれど大きな被害は出さないままに、マヤがあわてて封印をした跡が残っていたそうだ。

主の墓を守り通した忠義の男マヤ。それに、マヤの墓に残る彼の姿を描いたレリーフを見るとなかなかに男前だ。(古代エジプトの絵はどれも同じだが!)
そういうわけで古代エジプト人マヤのことがとても好きな飼い主のおばさんは、21世紀のイングリッシュコッカースパニエルに彼の名前をもらい、マークフィールド・アックスストーンはそれまでのように「ちちちち」やら「おいお前、こっちにおいで」の代わりに、「マヤ、おいで!」と呼ばれるようになった。

こんな名前の由来を長々と説明する機会はめったにないから、飼い主のおばさんは時々残念に思う。「マヤ」と聞けば誰もが女の人の名前か山の名前だと思うのが当たり前で、まさか3350年前の男から名前をもらっただなんて思いもよらないのが普通だから。

でも、「8月に生まれたから『はっちゃん』」とか「ダルメシアンだから『ダル』」なんてひねりのない命名よりも(いや、ひねりのない名前もそれなりにいいものだけれど)、古代エジプト人の名前の方が自分の犬に合っていると飼い主は考えているようだ。

山のような宝物が積み上げられた王墓の入り口を閉じ、まだ柔らかい壁の泥の上に「ツタンカーメン」のカルトゥーシュを押して封印した男の名前。それがマークフィールド・アックスストーンが14年8ヶ月間付き合ってきた二つ目の名前なのだ。

2018年2月2日(金)

2003年1月25日のことだった。マークフィールド・アックスストーンは4匹きょうだいの一匹として生まれて、お母さんのおっぱいを無心に吸っていた。その4ヶ月後、小さなかごに入れられて電車に揺られて知らない家に着き、「マヤ」と名付けられることなど知らないままに。

さっき1月25日と書いたものの、誕生日が本当にこの日なのかどうか、そこのところは分からない。人間の子供やパンダの子供と違って、年に何十匹も仔犬が生まれる商業ブリーダーにとって、犬の誕生日はさして大切なものではないのかもしれない。だから、本当の日より少しぐらい前後しようとも適当にまとめて登録することもけっこうある。

それでも「マヤ」になった日、ペットショップのショーウィンドウの中でムスッとしていた仔犬は生後3ヶ月から5ヶ月の間といったところで、獣医さんの診察券に書き込んだり、星占いをしたり、お祝いのパーティーをするためには誕生日が必要だから、血統書に記されている通り、生年月日は「2003年1月25日」ということになっている。

さて、2003年5月30日の午後、マークフィールド・アックスストーンはイングリッシュコッカースパニエル専門のペットショップのガラスケースの中でつまらなさそうに座っていた。隣には同じ毛皮の色をした兄弟犬が一匹。ガラスの外が明るくなるとお客さんが来て、寝たり起きたりごはんを食べたりまた寝たりしているといつの間にか暗くなる、そんな毎日。

でもこの日はちょっとちがった。いつもならマークフィールド・アックスストーンの入っているガラスケースを素通りする視線が、頭上に止まったのだ。他に比べてかわいらしさで劣る仔犬にとって、これは驚くべきことだった。

ガラスの向こうにはおばさんとおばあさん。どうやらこの二人は前もって決めている仔犬を迎えに来たらしい。でも、おばさんの方が選んでおいた白黒の女の子ではなくて、おばあさんが目を留めたのは愛想のないやせた赤毛の仔犬だった。

仔犬たちと売れ残りの中犬たちが並んでいるガラスケースをひとしきり眺めたおばあさん、マークフィールド・アックスストーンのそばに近寄ると、ちょんちょん、とガラスをつついた。ちょんちょん。
そしておばさんの方にこう言ったのだ。「ブチより一色の犬の方がいいなあ」。

マークフィールド・アックスストーンの運命を決定づけた一言だった。

どうやらペットショップに来る一週間前、おばあさんの家では「イリ」というクリーム色のとても素敵なサルーキ犬が死んでしまって、おばあさんは誰が見てもかわいらしい元気で明るい白黒ブチの女の子よりも、「イリ」に色だけでも近い、みじめで気が弱くてぶさいくなマークフィールド・アックスストーンのほうを好きになったらしい。

一方、「イリ」が死んでちょっと頭がおかしくなっていたおばさんの方は、自分が決めていた白黒の犬ではなく、赤茶色のみすぼらしい仔犬を連れて帰ることに反対はしなかった。悲しみすぎてもう、あれこれ考える元気がなかったのだ。

そんなわけでマークフィールド・アックスストーンは5人の人間の中に入って、6人目の家族として暮らし始めた。

そしてさまざまな出来事をまじえながら14年8ヶ月という年月が過ぎた。6人の家族は3人になり、マークフィールド・アックスストーンは「マヤ」になってから15回目の誕生日を迎えた。

あの日、おばあさんが指ささなければ「マヤ」は保健所で短い生涯を終えていたかもしれない。なぜならマヤがあのペットショップを出てしばらくたった後、売れ残りのコッカースパニエルたちにまつわる、新聞にも載るようなとても悲しいできごとがあったから。

だというのにマヤはまだ生きている。耳は聞こえず白内障で呆けも始まっているけれど、あの日ガラスケースの中でつまらなさそうに座っていた小さな赤毛の仔犬が、15年もの間、ある家族の一員として暮らして年を取る、これはとんでもなくめでたいことだ。

でもこれで終わりではない。これからもマークフィールド・アックスストーンは、三木家の6番目の家族として、めでたく楽しく生きてゆくだろう。

骨が細くて毛吹きが悪く、ぶっちゃけイマイチかわいくない仔犬だった……。

肉の大パックをひきずっている。小さな頃から食べ物に対する執着はすごかった。
(足が汚くてすみません。母か父だと思います。)

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