<シャダ萌えエジプト旅行 RE-MIX>
アケトアテンで萌えを極める<2>

<1>はこちらよ〜ん

アマルナにはツタンカーメンの後に王座についたアイが、平民時代に築いた建築途中の墓もある。
レリーフには当然ながらアイの仕えた王の姿が・・・

廷臣に報償を投げ与えるアクエンアテン、ネフェルティティそして二人の娘。
彼らのカルトゥーシュは、完膚無きまでに破壊されている。


さて、テル・エル・アマルナの太陽神殿跡に立ち、「アケト」のヒエログリフそのままに昇る朝日を拝んで萌え死にたい!という私の願い、叶えるのは一見イージーなことに思われるかもしれない。

だが思い出して頂きたい。ルクソールだと2万払って気球に乗れば簡単にご来光は拝めるが、ここアマルナは昼間の移動にまで警護のパトカーがついてくるという、観光客のセキュリティーにやたらめったら神経質なお土地柄。

そして太陽神殿とは、8時にならないとオープンしない=ツーリストポリスが来てくれない、東岸砂漠ド真ん中の遺跡エリアに位置するということを。

よってアマルナ初訪問から6ヶ月後、私の「アケトアテンで萌えを極める」というトッパな願いが実現されるまでには、観光局&地元警察との交渉に際しての、ものすごい根回し(友人Y氏の)とものすごい苦労(友人Y氏の)とものすごい手間(友人Y氏の)が注入されているのだ!!

ワガママ女優の現地ロケじゃあるまいし、私との友情を重んじてくれた侠気溢れるY氏には、もうホントに心から感謝している。
彼が地元出身だというのも交渉に有利に働いたのだろうが、それにしてもめんどくさいのには変わりない。
しょせん遠い日本からの旅行者、「ぜったい無理です」と答えたって分からないだろうに・・・Yさん、アンタこそ漢の中の漢、男塾塾生inエジプトだよ。


さて、「アケトアテンでご来光」の前日にも、Y氏はカイローアマルナ間数百キロを往復して、地元警察と打ち合わせ。
なんでもエジプトの役所は、ギリギリになってからもう一度現場と確認しとかないと、ナチュラルに約束を反故にすることもあるから油断は禁物だそうだ。
彼は年季の入ったガイドゆえそのあたりはぬかりがないが、まったく自分も大変なこと頼んじゃったもんだなぁ。

そして当日。
ヘボピーを叩き起こしたのは朝の4時。夜が明けるのはまだまだ先だが、ミニアのホテルから現地までは一時間かかるので、早めに移動しなきゃならないのだ。ね、眠い・・・なんでこんなに早くから・・・

だが、冷たい夜の空気の中、ツーリストポリスの準備したワゴンと直立不動の警官たちを目にしたとたん、申し訳なさに吹き飛ぶ眠気。ああ、自分が皇帝ネロ並の人でなしに思えてきた。

それがまた、ホテルから太陽神殿跡へは車で一直線に行けるわけじゃあない。西岸から東岸へは船に乗り換える必要があり、当然朝の4時には定期船は動いてないので、渡し船もSPECIALオーダー。

船着き場には早朝出勤の船着き場の職員さん&船頭さんが5,6名。対する乗客はY氏とヘボピー、警察そして私のみ・・・いたたまれなさも最高潮。

昼間は人でワサワサにぎわっている船着き場も、朝5時前には当然ながらとっても静か。

そして船を下りてからは、また別のツーリストポリス車両で現場へ向かい、数名の警官を伴ってご来光を待つことに。
すまん、なんぼ特別手当を奮発しているとはいえ、朝っぱらからオタクの萌えに付き合わされる警官もたまったもんじゃなかろうて。

夜明け前の太陽神殿跡。5月とはいえまだ冷たい空気に震えながら、玉座方面を眺める。

ここからまっすぐに参道がのび、アクエンアテン王や神官がアテンに祈りを捧げていたのだ。

遠くから時折聞こえる鳥の声や風の音を聞きながらここに立つと、三千年以上前に生きた王や神官の姿が、時間の壁のあちら側から浮かび上がってきそうな錯覚に陥った。

エジプトのホテルが作ってくれる弁当には、なぜかもれなく丸ままのリンゴが入っている。
リンゴがゴロンゴロンする弁当パックを抱えながら眺める山の稜線。もうすぐこの中心から「アケト」のヒエログリフが拝めるのだ。

ヒマそーにあたりをブラブラする警官たちに囲まれつつ、神殿跡で待つこと約20分。だんだん東の空が白み始めた。
萌えの準備はいいか?!クソ虫野郎ども!
イエッサー!イエス!!

いよいよ夢にまで見たアケトアテンのご来光!
・・・おおっと!!萌える!萌えるぞぉ!!
・・・「アケト」のヒエログリフそのものに!!

・・・ってぜんぜんズレとるやんけ!!!


・・・そう、アホな私は太陽が昇る位置は365日動かないと思い込んでいたのだ。

そう言われればアブシンベル神殿でも、神殿の最奥にある神像に朝日が当たるのは、年にたった二度。その日には早朝から観光客がどっと押し寄せると知っていたはずなのに。
まさかこれほどまでにズレるものだとは・・・夢にも考えやしなかった。

ああああ!ごめんなさいYさんツーリストポリスのみなさん!まぁ彼らには「アケトのヒエログリフで萌えまくりたい」とまでは伝えてなかったんだけどね。(ヲタすぎる動機でさすがに恥ずかしかったから)

だからこの場所でご来光を拝めただけで、現代のアテン信者のように感動しているように見せかけつつ(※)、いや、じっさいご来光には深く感動したのだが・・・
むしろ○○才過ぎてはじめて「太陽が昇る位置は移動する」ことを知った自分の無知っぷりに、私は究極のマイナス感動していた。

そしてこの数日後には「カルナック大神殿でご来光プレイ」。
ご来光ばかり見てなにやってんだとY氏には思われてそうだが、日出ずる国の住人の例にもれず私もご来光が大好きなのだ。

だが、カルナックでも大列柱室の中心線どころか、聖池のはるか向こうあたりから、それもぼんやりしてる間にちゃっかり昇っていた太陽・・・

このように「シャダ萌え旅行REMIX」でのご来光は、100%恵まれたものではなかった。どうやら「萌え」を求めてご来光を拝もうとする邪な心がラーの怒りに触れたと見える。
ならば次回こそは萌えへの渇望を捨て去り、生まれたての赤ちゃんのような真っ白な心で
「王家の谷でご来光プレイ」にチャレンジしたいものだ。

※欧米では、古代エジプトの太陽信仰を踏襲するカルト系教団の信者がかなり存在するらしく、彼らはこの場所で太陽を拝んで号泣、ガイドをびびらせるそうだ。