サッカラ・ニアンククヌムとクヌムホテプのマスタバ墳墓
(通称・「兄弟の墓」)

ニアンククヌム(クヌム神は生命なり)&クヌムホテプ(クヌム神は満足する)
ネウセルラー王の太陽神殿におけるラーの神託者にして王のマニキュア師たちの監督官(第5王朝)

ニアンククヌムとクヌムホテプは、神官兼、王のマニキュア師・美容師の長として生ける神の体に触れる栄誉に浴した古王国のお役人。
一般的にはほとんど知られていない彼らの名前ですが、当サイトに来て下さる皆さまにはサッカラと聞くと、ぜひとも兄弟の墓を思い起こして頂きたいのです。

なぜって男同士だというのに王によって下賜されたひとつ墓に仲良く入った彼らは、墓壁のレリーフに見る者を嫉妬させるほどの、濃ゆく愛あふれる姿を残しているからです。

彼らはいったいどういう関係だったのか?
専門家の間では「兄弟?双子?友人?それとも恋人?」などと諸説あるそうですが・・・この時代における男女カップルの表現様式で描かれているというからには、その示すところは火を見るより明らかじゃないか?と思うのは単に素人のうがった解釈にすぎないのかもしれません。

ただ、現在私の手元にある程度の文献では、墳墓の形態やレリーフについての情報が得られるだけで、本当に知りたいことー「最新の学説においては、彼らの関係をどう解釈するのが最も有力なのか?」という問いにはズバッと明快な答えを呈示してはくれません。(Michael Rice のWHO'S WHO IN ANCIENT EGYPT"によると「二人は双子だったので、共に埋葬されることを希望した」と書かれていますが・・・)
また、過去にいくつかのエジプト学会機関誌にこの墓の報告が載ったそうですが、今のところそういったバックナンバーを閲覧するチャンスにも恵まれていないのが現状です。

よってアマチュアとしては、彼らの関係については無責任な推測を避けるべきなのでしょうが「HOMO・エロ・下世話」の三位一体で構成される当サイト管理人といたしましては、シナプスにここまでビビッとくるものをむざむざスルーするわけにもまいりません。
・・・というわけでまぁ取りあえずは堅苦しく考えずに、写真にちょこっとコメントをつけてあとは皆様の解釈にゆだねることにいたしましょう。

エジプトを訪れた時には必ず彼らの墓参りに行くほど大好きなこのマスタバ墳。
二人ははたして兄弟だったのか友達だったのか、それともそれ以上に離れがたい関係だったのか?

4400年の時の彼方に去ってしまった彼らは、現代人に何も答えてくれはしない・・・
一見そう思えるものの、実のところ分かる筋のヒトには、耳を澄ますと聞こえてくるやたらと饒舌なメッセージを送っているような、そんな気がしてならないのです。

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「マスタバ」とはアラビア語で「ベンチ」の意味だが、その名の通り上部構造が泥レンガ製のベンチの形をしている。

私はかつて一度だけこの墓をカタブツの友人Y氏以外のエジプト人と訪ねたのだが、その時のガイドさんは「ここって『兄弟の墓』と呼ばれてますが、実はホモの墓なんですよね〜!ほら、見てください指とか絡ませてますから!ワハハ〜!」とズバリなことを言っていたからには、二人が恋人同士だったのは実のところ周知の事実なのかもしれない・・・

入り口を一歩入ったとたんにいきなりコレなんだよ・・・
そのガイドさんが指摘した「絡ませた指と指」レリーフ。

クヌムホテプの手を引いて次の部屋(又は冥界)に導くニアンククヌム。

入って一番はじめの部屋の壁は、エジプト美術オフィシャルモードにて展開。人々は来世でも額に汗して魚を捕り、家畜を飼い、畑をたがやしている。

なんでもこの部屋の壁に「世界最古のビール製造過程を描いたレリーフ」があるそうだが、フォルダをひっくりかえしても分からずじまい。脚立&ストロボなしでは撮影できなかったのかな。

ガッチリと肩を抱き合い供物を受け取る二人。普通ここには妻の姿が入りそうなものだが・・・・・・。

この部屋にいるニアンククヌムさんとクヌムホテプさんは、ちょっぴりフォーマルな感じ。ないしょで付き合っている同僚のごとく、互いにどこかよそよそしい。
でも心配は無用。奥に行けば行くほど空気はどんどん濃ゆくなり、「さっ、酸素ボンベを!」と叫びたくなることうけ合いなんですよ!

古王国の私人墓壁には、かなりの高確率で登場するバセンジー・タイプの犬がここにも。

耳をピンと立てたキツネ顔で、尻尾は太鼓型に堅く巻きあがり、「吠えない犬」として名を知られた現代バセンジーにかなり近い。

犬つながりでついでにご紹介。一般的に「世界最古の犬種」はサルーキとされることが多く、サルーキ・タイプの犬のミイラはホルエムヘブ王墓のそばからも発見されている。
こちらはホルホルよりも時代をさらにさかのぼって中王国、アスワンの岩窟墓にいたサルーキとおともだち。赤ちゃんを産んだばかり?短足犬のおっぱいが愛らしい。

岩盤を彫りこんだ部屋への入り口では、両脇に配置された彼らがお出迎えしてくれる。どこでもいっしょ、どこでも対照。

左の写真じゃ入り口が邪魔だからこころもちくっつけてあげた。
二人共とりあえずは結婚していたようで、足元には息子たちの姿も見える。

杖を持って立つ二人の奥の壁。左の壁も・・・・・・。

・・・・・・右の壁も、すがすがしいほど女っ気を欠いている。

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