【愛しいヒトのしつけ方】


 好きだから、甘やかしたい。
 好きだから、甘やかしちゃダメ。

 そんなもんでしょ、多分きっと。


「おはよ、京一」
 緋勇龍麻宅、午前8時。
部屋の主は、絵に書いたような爽やかな笑顔で布団を捲る。
 日曜の朝はとても良い天気で。
容赦なく差し込む朝日に、ベッドの上の半裸の青年は眩しそうに顔を顰めた。
「も・・ちょっと」
 うだうだと半覚醒の様子で、布団を引き寄せようとするのだが、
「シーツも洗いたいんだから。起きて」
掴んだ京一の手をスルリと抜けて、あっというまにくるくると畳み込まれてしまう。
「・・うー・・」
 ついでにシーツも捲ってしまおうとするのに、人の重みで思うようにはいかない。
ズリズリと。少しずつ手繰り寄せるのにつられ、横たわったままの躯も移動していくのだが。
 それでも。大きめの枕に顔を埋めるようにして未だ抵抗を試みる往生際の悪さに。
「・・そんなに、眠いの・・?」
 浮かべた笑みは、涼しさを通り越してひんやりと冷気すら感じさせ。
「夕べは・・遅かった・・し・・よ」
 それに気付かぬまま、ムニャムニャと。その言い訳に。
「・・秘拳・・・」
「・・ッえ・・ひ、ひーちゃ・・・」
「黄龍ーーーーーーッ!!!!」

 見愡れる程の麗しい笑顔で。
 龍麻は、キレた。


「ひっでェ・・」
 黄龍様の奥義にフッ飛ばされつつも、昇天することなく。
京一は、トーストにかじり付きつつ、盛大に溜め息を付いていた。
「あんな起こし方、あるかよ・・」
 背中越し。バスルームにシーツの小山を運び込んでいる龍麻にボソリと告げる。
「とっとと起きない、お前が悪い」
 きつい瞳で睨まれて。畏縮するどころか、
「・・怒った顔も、ソソるんだよな」
 反省の色、ナシ。
 にんまりと、笑いながら言われて。
拳をプルプルと震わせながらも、本日2度目の奥義発動とならなかったのは。
「・・ったく・・」

 とにかく早く、洗濯を済ませたかったから。ただそれだけ。


 広いベランダに、洗濯物をすべて干してしまって。
ふと見やると、リビングのソファに寝そべってぼんやりとTVに向かう背中が目に入る。
 やがて、呆れた表情で自分を見つめる龍麻に気付いたのか、ひょいと首を巡らした京一と視線が合う。
「ひーちゃん、洗濯終わったのか」
「・・お陰さまで」
 ちったァ手伝えよ・・このサル!!とは。口に出しては言わないけれど。
 表面上はきっちり笑顔を作りつつ、ソファへと歩み寄る。
「暇だよなぁ・・ナニしよっか、ひーちゃん?」
 意味ありげな笑みを口元に刻む京一に、腕を取られ引き寄せられるまま
「・・俺に言わせるのか・・?」
 覗き込むようにすると、その目は既に熱っぽい欲の色に彩られていて。
「ひーちゃんの口から、聞きてェよ」
 そんな台詞に。龍麻は慈愛すら感じさせる笑顔で。
「ふふ・・ヤる気満々だな」
 京一の頭をそっと撫でると。
 嬉しそうに、言った。

「じゃ、早速始めよっか。現国と数学の課題。プリント各30枚」


 そんな、もんでしょ?
 


霞月ちゃん・・この程度で済まぬ(泣)。
一応、「表用」だというのを意識してみたんだけどね。
それにしても、京一は書いてて楽しいのです(笑)。

by 日下部貢

あああ有難う!!!!ほんとに、表だよ(笑)!!!!京一×主!!
嬉しいっす!!ああもう・・何だかんだ言って、ラブラブなのよね・・うふふ。
貰ってすぐに、続きの催促して済まぬ(笑)。でも、気になるし・・。

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