どうして、分からないんだろう。




「・・・・・いつかは、そうくると思ってたけど」
 教室を、飛び出して。
 まだ、午後からの授業が残っていたけれども。
 だけど。
「・・・・・どうしろってんだよ・・・俺に」
 本当は。
 分かっている。
 いつだって、京一は。俺を見つめてくる京一の瞳の中には。
 震えが走る程に、狂暴な雄が見え隠れしていて。
 それを。
「・・・・・ずっと・・・」
 見ないように。
 気付かないように。
 そう、してきたのに。

 お互いを意識しだしたのは、いつだったのだろう。
 気が付くと、彼ばかり目が追っていた。
 そして、彼も同じだったのだと、聞かされて。
 好きだ、と。
 告げて、告げられて。
「・・・・・嬉しかった、のに」
 そして。
 フワリと、掠めるように口付けられて。
 驚いて。唇を押さえて後ずさってしまったけれど。
 困ったように笑う京一に、自分もまた恥ずかし気に
笑みを返して。
 また、ゆっくりと。
 唇を合わせて。

 それからも。
 キスは、本当に数え切れないくらい、たくさん。
 啄むような。やがて、深く吐息を分け合うような。
 そんな、キスだって。した、けれど。

 熱くなる躯に。その腕に抱き締められると。

 何かが壊れてしまう。
 そんな気がして。
 怖くて。だから。

 不安や恐怖。それだけではない何かに、震える躯を。
 心を。

 見ない振りを、した。

                          ◇Next◇