「暗い森」
また迷いこんでしまった。
龍斗は真っ暗な世界にため息をついた。
周囲を覆う鬱蒼たる木々に遮られ、光はまったく射しこまない。足裏には腐った落葉のふわふわとした感触があり、だが不思議なことに臭いはなかった。
ないものは光と臭いだけではない。
音もなかった。
まるで深い海の底に沈んだような、静謐な空間。
――あぁ、まただ……
足首に絡む何かの感触に、龍斗は閉じた空を仰いだ。
『それ』は内股を伝って這い上がり、龍斗の生殖器に到達する。細長い糸か何かのようだった『それ』は、龍斗をまさぐるうちにだんだんと人の身体へと変容する。
先端をさぐられて痺れるような快感に息を乱した龍斗に、『それ』は応えるように触れてくる部分を指の形へ変えた。人のように触れ、犯す『それ』は龍斗の性器を思うさま弄り、がくがくと膝を震わせる龍斗を抱く。
決して正面からは抱かない。背後から忍び寄り、犯す。龍斗の着ている着物を脱がさずに、袖や襟から侵入する行為は『犯す』という意図が明確にみてとれた。
当初は龍斗も抵抗していたのだが、逆らいきれなかった。
否、抗うことより先に、受け容れてしまっていた。
『それ』は龍斗がそうされたいと思っていた秘めた欲望を、そのまま行動に移しているようだった。乱暴にされたいわけではないのだが、優しくされたいわけでもない。
欲しいのは。
貪りつくすような愉楽、快楽だけの嬌態。
「っんぅっ!」
人の指に模した『それ』の一部が、龍斗の後孔に入っていく。内部を確かめ慎重に入り口付近で留まっていたかと思うと、突然狂ったように奥へと進む。中で膨張する『それ』はもはや指とはいえず、男性器そのままの質量だった。違うところがあるとすれば、精液が出ないという点だけだ。
湿り気のない交わりは痛みをもたらし、龍斗は耐えるために息をついだ。しかし乱れる呼吸は苦痛を訴えるものとは微妙に異なる、淫猥な響きを含んでいた。
「ま……えも……」
ねだれば『それ』の指が龍斗の性器へ絡みついた。ねっとりと丹念に愛撫する手つきは人そのもので、『それ』の正体が何なのか判断できなくなる。
後孔と同時に前を責めたてられ、腰が自然と揺れた。自ら快楽を得るために腰を振り、自身の性器に手を添えた。
『それ』に握られ、自分でも激しくこすり龍斗はうめいた。じわりと滲んだ汗に混じって、先走りの体液が漏れる。
「あぁっ!!」
叫んで、身体を震わせた。
内腿が痙攣して後孔が縮まる。銜えこんでいた『それ』の一部に、合わせるように突かれ龍斗は達した。
白濁した体液を撒き散らし、だが一向に衰える気配のない勃起したままの性器がひくひくとうごめく。触れるとそれだけでまた達してしまいそうだ。
自分の指についた精液を掬い取り、龍斗は自分で未だ繋がったままの後孔へなすりつけた。指で触れば自分がきっちりと銜えこんでいることがわかって、羞恥とともに快楽を感じる。自分の中に入っている『それ』を撫でながら、地面へ膝を落とした。
受身も取らずに前へ倒れる。顔から地面へ落ちたが、ふわふわとした落葉らしきもののおかげで痛くもない。両腕を尻にやり、後孔と入っている『それ』を撫でる。もう他のことなど考えていられなかった。
「して、もっと」
上がる息の下でそう告げると、『それ』は龍斗の中へ大量に何かを吐き出した。
注ぎこまれているのがわかる。水を飲んだとき咽喉に流れ落ちるのを感じるように、腸を逆流していく『それ』の吐き出したものを感じた。
長い吐精だった。
その間、龍斗は足を突っ張らせて『それ』に注がれるのを受け容れていた。それさえも気持ちいいのだ。
龍斗の中をいっぱいにして『それ』が自身を引き抜くと、後孔からはとろとろと白濁したものが伝った。必死に漏らさぬよう腹に力を入れて堪えるのだが、耐え切れない。身体に満たされた『それ』の体液が、内側から意志を持つかのように龍斗を犯す。ただ突かれるのとはまた違う、内臓まで犯しつくすような激しさに屈した。
苦しげに喘いで、龍斗は再び射精する。
そして後孔からもだらだらと注ぎこまれたものを垂れ流した。
下半身がべっとりと汚れる。内股はてらてらと濡れて光り、龍斗の全身は火照って肌も赤く染まっていた。
「うんっ」
快楽の余韻に浸っていた龍斗は、押し当てられたものに身を捩った。
先ほどのものより一まわり大きなものが、こすりつけられる。
拒むことなどできない。
足を開き、腰を突き出して迎え入れた。
侵入する『それ』はわざと焦らすようにゆっくりと進み、途中で止まっては引っ掻くように中をこする。そのたびに龍斗はあられもない声を上げて、奥へと急かすように腰を振った。
時間をかけて龍斗の体内に収まった『それ』は、動きを止めてじっとしている。ただ繋がっているだけの状態に、龍斗が我慢しきれずそろりと腰を動かした。
途端に『それ』の質量が増えた。
体内で膨張した『それ』は後孔をめいいっぱいに押し拡げて、龍斗に悲鳴をあげさせた。
「ひ、ひぁっっ」
今までにない大きさに、怖れが先立った。慌てて前へ這いずり、『それ』を抜こうとするが半ばまで抜けるときの気持ちよさに目がくらむ。かといって再び銜えこむには恐怖がある。一瞬動きを止めた龍斗の躊躇を咎めるように、『それ』が大きく龍斗を突き上げた。
「――っ!!」
声にならない衝撃に、龍斗は口を開けて肺の空気だけ吐き出した。
突き、抜いて、また突き上げる。緩慢に龍斗を慣らすようにその動きを続け、完全に抜こうとするぎりぎりのところで止める。入り口で誘うようにぐりぐりと動かす『それ』に、龍斗は大きく息を吐いた。
そろりと尻を下ろす。
怒張している『それ』へと、自分から腰を落としたのだ。
中に銜えこむことの歓喜に身体を震わせる龍斗を、『それ』は一気に貫いた。
「うぁっっ!」
それまでのゆったりとした動きとはまったく違う、壊さんばかりに激しく打ちつけて龍斗の体を揺すった。全身を揺さぶられ、龍斗は首を横に振るのが精一杯で悲鳴もあげられない。
開けっ放しの口元から涎が伝い、性器からは精液が垂れ流れる。後孔をえぐられているため、射精が止まらなくなってしまったのだ。
身体すべてを犯されているような錯覚に陥り、龍斗は泣いた。
だがそれは、もちろん悲しみのための涙などではない。過ぎた快楽を与えられ、神経が麻痺して流した涙だった。
どろどろと下半身が、身体が、脳が、心が溶かされ汚される。支配される。刻みつけられた快楽に身を裂かれながら、龍斗の意識は飛んだ。
そして、目が覚めた。
目を開けても闇しかない。しかしその闇は、よく目を凝らせば外から月の灯りが差しこむ柔らかな闇だった。顔だけ動かし、部屋の隅へ視線をやれば布団に包まれた澳継の寝姿が見える。
鬼哭村、九角屋敷の一室。澳継と二人で使っている私室に、龍斗は横たわっていた。時刻は夜更け――あたりに人の活動している気配はない。
龍斗はそっと息を吐いた。
布団にこもった臭いにむせそうになる。足の間に伝う生温かなものは、龍斗の吐いた精である。夢の中での出来事なのに、身体が勝手に反応してしまったらしい。
こんなことがこのところ毎晩続いていた。
決まって暗い森の中、背後から襲われ犯される。目が覚めても植えつけられた快楽はまとわりついて離れない。たまらず自身で慰めることもしたが、あの激しい行為には到底及びもつかない。
もどかしくて劣情に突き動かされ、村の男の誰かれかまわずに犯されたくなる。何度ひざまずいて男のものに縋りつこうとしたかわからない。
龍斗は冷えていく精液の始末をするのも億劫で、ただ膝を立てて足を広げた。
この身体を誰か突きたててくれないだろうか。
追い立てられる切実さで吐息をつく。
「してよ……もっと」
淫欲の隠し切れない囁きに、闇が動いた。
す、と襖が開く。何者かが身を滑らせて室内へ入り、外気を連れ立ったせいで布団から出ていた顔が寒い。澳継が寒そうに身を縮ませて布団の中へ潜りこみ、また寝息を立てる。侵入者の気配に気づかないなど、鬼道衆の一人としては甘すぎる。
もっとも侵入者に人の気配がないのでは、仕方がないことだろう。
龍斗には彼が何者か見当がついていた。ここまで見事に気配を絶てる者は、魂のない者である。つまり。
「霜葉」
身体が疼いた。
闇夜に紛れる狼の双眸に、酷薄な劣情を見つけて龍斗は熱く息をついだ。
「毎夜俺を狂わす化生はお前だったか。龍斗」
苛立たしげに吐き捨てる声に熱はない。そのくせ陰惨な、怖いくらいの欲がこもっている。
「村正が俺に淫夢を見せ、嘲笑っているのかと思えば……お前が煽っていたか」
そんな覚えはなかった。だが、そういわれるとそんな気もする。
誘ったのは、煽ったのは自分かもしれない。
刀に宿る陰氣までもを誑かしたのは。
龍斗は布団の裾をわずかにめくり、足を見せた。吐いた精の臭いがむっと漂う。ぬめる足の付け根を閉じて、ねちゃりと音を響かせた。
「でもお前も、たまらなくなったんだろう?」
挑発するような言い草に、霜葉は形のよい眉を跳ね上げた。
彼は一瞬、自尊心と欲望をはかり立ち上がりかけたものの、龍斗の白い足が再び開いたのを見てその場に留まった。
寝巻きがはだけて、太腿もあらわになる。
付け根にある性器も寝巻きの裾からはみ出した。
勃ちあがっているその先端からは、白い体液が溢れ根元までを濡らしている。
龍斗の指がそれを掬い、後ろへと伸ばす。
浮かした腰の下から手をまわし、後孔へ塗りこめた。爪のあたりまで指が入り、龍斗が咽喉を鳴らす。霜葉がそこにいることを忘れたかのように、自慰に没頭しかけている。
「俺を煽るか。お前も、村正も」
羽織っていた上着を脱ぎ捨て、布団を剥いだ霜葉に龍斗は薄く笑った。
暗い森の奥で――
刀の陰氣と交わり、企んだ。
魂ない男の欲を引きずり出そうと。
龍斗の肌に、霜葉の手のひらが触れる。
冷たく血の通うことが信じられない、凍えた指先が。
龍斗の熱にあてられて、深く爪を立てた。
血が伝う。
二人を重なり合わせるために。
キリリク2万ゲットしてくださった浅生霞月さまに捧ぐv
正確には『押しつける!』←おぉ、やっと日本語をちゃんと使えたぞv
オーダーは「霜葉主含む村正18禁」でしたので、エロってみました。
えぇ、テーマはひたすらエロくっ! 全編えっちーでっ!!
そうしろって電波をキャッチいたしました(はぁとv)
そんなワケで刀そのものとヤるワケにはいかなかったので、ちょい反則気味に人間化しつつ……あ、はい。コレは前振りっす(笑)
ほほほ、私の中ではオーダー内容は「霜葉&村正×主3ピー」←伏せれていません!
なのでこっからです。こっからもっとヤっていただきます!!