氷塊が内腿を滑り落ちていく。
 壬生霜葉の愛撫をそんな風に感じて、龍斗は上体をそらした。
 熱く潤っていた個所がその冷たい愛撫を求めて、先端から透明な液を滴らせている。煽るように腰を浮かせば、すべてわかっているように霜葉は身を進めた。
 わずかに空いた布団と腰との合間に身体を入れ、龍斗の痩せた下肢を持ち上げる。霜葉の腹と密着する格好になって、龍斗は膝を折り相手の腰に足を絡みつかせた。冷たい指はその間も愛撫を続け、だがしかし肝心の個所へは触れようとしない。
「霜葉」
 焦れてねだれば、男は無造作にそこへ手を伸ばした。一瞬その冷たさに身がすくんだが、あふれる滴をすくって扱く手管に溶けた。
 慣れた様子でそれをさぐり、もう片方の手は膝頭から膝裏、内腿をゆるゆるとたどって足の付け根へと伸びる。やんわりと足の付け根を押して、開いていた足をもっと大きく開かせる。そうやっておいて、自分の足で龍斗の腰を上げ後孔をさらした。
 そこは滴る前と同様にひくついて、男の愛撫を待っていた。
 霜葉は構うことなくそこへ口付けて舌先で軽く突つき、抵抗がないと確かめてからねっとりと弄った。龍斗の口から押し殺した嬌声が漏れるも、それはあまりに小さく聴きとりがたい。
 それでも、龍斗にしてみれば内心穏やかではない。なにせすぐ隣には、こちらに背を向けているとはいえ澳継が眠っているのだ。鬼道衆の一人にしては無防備なまでに眠りの深い性質だが、彼とておかしな気配を感じればすぐに目を覚ましてしまうだろう。
 声を殺すことに必死の龍斗を逆に楽しむように、霜葉の愛撫は徐々に激しくなっていた。
 自らの唾液で濡らした後孔へ、あの氷の如く凍えた指がぬるりと侵入する。どんなに長く触れ合っても、決して龍斗の熱に交わることのない指先は、中へ入っても変わらず冷たいままだった。異物感が拭えぬその感覚が、龍斗の喘ぎを一段と高くさせる。
「外、出ようよっ」
 かろうじて掴むことのできた上衣の袖を手にして、龍斗は声を出した。このままこの場所で、仲間のいる前でするにはさしもの龍斗にもためらいがあったのだ。
 だが霜葉は愛撫を止めようとしなかった。それどころかなおも激しく、龍斗の中をえぐった。
「霜葉、霜葉っ!」
 焦って呼ぶ声を無視して、彼は冷えた眼差しで龍斗を見下ろした。
「煽ったのはお前だ」
 ぞくりと、背筋が凍る。それは決して畏怖などではない、むしろそうして欲しいと願う、秘めた淫欲を暴かれる歓喜だった。
 霜葉は静かに自分の着物を脱ぎ捨て、刀傷の残る裸身を惜しげもなくさらし龍斗の身体に触れた。指を中に入れたまま内側を解し、もう片方の手では龍斗のそれを根元で握り吐精をさえぎる。
 龍斗の肌に薄っすらと汗がにじみ、堪えきれず腰が揺れるまで攻めたててから、ゆるりと自身を沈めた。
 指と入れ替わるように侵入したそれも、冷たい氷の塊のようで龍斗は苦しげに眉を寄せた。吐き出しす息までも熱い龍斗に比べ、霜葉のものは冷えたままである。

 ちろりと、龍斗の中に嫉妬が蠢いた。

 突き刺し、ともに快楽を貪っているというのに、霜葉の表情は変わらない。感じていないわけではないと、繋がっているからわかるのに、まったく崩れない男を憎らしく思った。
 龍斗は自分を貫く男の許へ身を起こし、抱きつくようにして捕らえた。
「お前を壊してやろうか、霜葉?」
 くぐもった声音の囁きに、霜葉は嘲笑を浮かべた。
「それが目的か。俺をどう、壊すという?」
「堕とすんだよ」
 そう言って龍斗は腰を揺すった。座った姿勢で正面から抱き合っているため、龍斗自身の体重がかかり深く銜えこむことになる。霜葉にきつく握られているので昂ぶっても吐き出すことができずに苦しいのだが、それも快楽に拍車をかける。
 龍斗は霜葉の熱を求めて激しく腰を揺するも、彼に体温はない。
 何もない、空っぽの身体を愛しげに抱いて、龍斗はにやりと笑った。

「あの森は、お前だろう?」

 不意の捨て台詞に、初めて霜葉が動揺を見せた。

「毎夜忍んで俺を抱くのは村正じゃない、お前だ霜葉。禁じた欲に応じたのが村正だったというだけのこと。あの森で、俺たちを見ていたんだろう? なにかの言い訳が欲しかっただけだ。唆されたと――」

 最後まで言い終えぬうちに、霜葉は哀れなほど痩せた龍斗の身体を押し倒して、狂ったように突き上げた。龍斗のそれから手を離し、両手で足を開かせ壊してしまうつもりのように打ちすえる。二人が繋がった個所からはいやらしく水音がたち、攻めたてられる龍斗の咽喉からはひっきりなしに喘ぎがもれた。

 やがてどろりとした精液を龍斗が吐き、霜葉の腹と自分の腹を濡らした。とろとろとあふれ続ける精液が腹から内股を伝い、繋がる個所までも濡らした。
 そして霜葉も龍斗の中へ吐き出せば、そのときやっと、熱いものが拡がった。
 魂のない男の吐いた熱を味わい、龍斗は満足して笑い声を上げた。
 繋がったまままた硬さを取り戻す霜葉に、龍斗はしなだれかかり、甘い誘う声でねだった。
「霜葉、もっと」
 誘われた方はもとより止める気はなく、体勢を変えながら龍斗へでない人物へ声をかけた。
「もう少し眠った振りをしていろ。小僧」
 部屋の隅で、丸くなった布団がわずかに身じろぎした気がした。
 龍斗は声をたてて笑い、布団の中で息を殺す少年をそれ以上気に留めることなく霜葉との情事に溺れた。





 目を閉じると、再び暗い森にいた。
 その中で、龍斗はまた『それ』と交わっていた。

 『それ』は龍斗の性器を貪り、撫で上げ体液を啜る。性急に後孔へ侵入した『それ』はぐずぐずと音をたてて奥へと進み、龍斗はその犯される感覚に酔いしれ吐精する。人との交わりでは得られぬ快楽に、龍斗の身体はなじんでいた。
 以前と違うことがあるとすれば、『それ』とともに彼が交わりに加わるようになったことだけだった。
 異形の『それ』に犯される歓びにだらしなく口を開け放つ龍斗の顎を、彼が冷たく凍った指先で持ち上げ、口腔へ自身のものを銜えさせる。龍斗は咽喉の奥に達するほど深く銜えいれ、頭を揺すって彼の熱を求めた。
 後ろと口を同時に犯され、秘めていた淫欲を満たして龍斗は微笑んだ。口内から引き抜かれた彼の熱い体液を顔に浴びて、自ら顔中になすりつけた。背後では『それ』も達したらしく、龍斗の中へ流しこむ。

 手足もどこも汚れていない場所はない。
 自身のものも含んだ精液にまみれて、龍斗は彼の冷えた熱のない指先に口付けた。

「霜葉、もっと汚して」


 ――もっと壊れて。


 ――もっと、堕ちて。


 光は射さない。
 音も聴こえない。

 淫蕩な熱だけが澱のようによどんでいる。

 魂のない男の生んだ、暗い森の奥で。






 キリリク2万ゲットの浅生霞月さまへ『押しつけ』(大迷惑)させていただきますv
 こっちが本編なんですが、なにやら説明不足で申し訳ない(汗)
 えぇと、前振りでは龍斗が村正と共謀して、霜葉を煽ったみたいに書きましたが。こっちを読んでいただくと実は逆だったと(笑)
 タイトルにした『暗い森』は霜葉の心……うわ、雰囲気小説意味ないな……すいません、文才が足りませんでした(涙)
 霜葉「氷の男」みたいにキャラファイルで紹介されていたので、そんなカンジで紅葉と区別してみました。
 エロ度ヌルくてすいません(汗)


うはァンvvvわたぽんーーーーッ(愛)vvv
わたぽん宅にて、二万打のキリ番を踏ませて
頂いた際のリクエスト、『霜葉&村正×龍斗』
なのでございます・・・うくくv
私の「激エロでヨロシク(爽笑)」な電波も
しっかとキャッチして頂けていたようで、
まさにエロエロで3●ちっくなステキSSをv
っつーか、霜葉ったら・・・ッ(悶)!!!!!!!!!!
さりげに強かなひーたんにも萌え(悦)v
そして、気の毒な風祭(強く生きろ青少年v)!!
わたぽん・・・ヌルいだなんて、とんでもナイv
官能的なSSを有難うなのよ(恍惚)vvvvv