<デコる・デコれば・デコるとき ーパキスタンのトラック>

ヤンキー成分は皆無だし、車の運転はしないけれども、自分、改造車はキライじゃない。いじった車そのものもいいけれど、車にアホみたく熱くなる人間を見ていると、こっちも楽しい気分になるのだ。

「ライバルより速いこと」にすべてを捧げ、エンジンや足回りをいじり倒した頭文字Dタイプも好きだし、燃費、空気抵抗、道交法ぜんぶ無視して、デコることに命をかけた車もいい。

竹ヤリ出っ歯、チバラギ仕様のクラウンも、八代亜紀とネオン街をしょって走るデコトラも、果ては中坊があふれるパッションをぶつけた結果、ハウルの動く城みたくなったママチャリすらも、その「無駄なことに払われた労力」が愛おしい。

だが残念なことに近年は、日本列島を呑み込む不況の波の影響か、それともユニクロの売り上げに現れているように、日本人がシンプル好きになってしまったせいだろうか・・・・・・。

街で観測できるデコ車体といえば、萌えキャラを貼り付けた痛車ばかり(痛車も好きなんですけどね)クラシックなデコレーションをほどこされた勇姿を目にすることは、まずもってなくなった。
「ゼニがかかる」「嫁が怒る」「時代遅れでカッコ悪い」といった諸々の事情があるのだろうが、寂しいことだ。

だが、そんな寂しさは、パキスタンに来て吹き飛んだ。
時速60キロ出そうものならバラバラになりそうな目的不明のパーツの数々。目を閉じると残像が残るものすごいカラーリング。ボディーに描かれた模様は、じっと見つめていると異次元からのささやきが聞こえて何かを悟れそう・・・・・・。

ハイウェイに咲き誇る色とりどりの花にファインダーを向けながら、我々は叫んでいた。
「パキスタン人、やりすぎや!!」

イスラマバード空港をおりてバスに乗り換え、幹線道路に入ってすぐに、鮮やかな色彩が目に飛び込んできた。
おおっと!これがあの有名なパキスタンのデコトラか!

パキスタンのトラックが異次元方向に進化していることは、『地球の歩き方』とかで少しは知っていた。
それでも実際に目にすると、「パキスタン?危ないからやめときなよ!」との制止を振り切って、はるばるここまで来たのだなあ、と実感がわいてくる。

すごい!すごいよねあのトラック!(爆笑)と、このレベルの車両に対しても、みんな大興奮でシャッターをバシャバシャ。

これから9日間、吐きそうになるほどデコトラを見ることになるとは、この時点では誰も知らない・・・・・・。

オオクワガタみたいで強そうだ。
だが、ブラックベースの車は、旅行中この一台しか目にしなかった。黒という色はあんましパキスタン人の好みには合わないのかもしれない。

市内に近づくにつれて、走っているトラックがますます派手になってきた。これに愛称を付けるなら「大伽藍」にしたい。

白が基調だとファンシーな感じだよね。運転席の後ろの張り出し部分が、女子高生が持ってるスケジュール帳っぽい。

色をむちゃくちゃたくさん使ってるのに、不思議なまとまりがある。
かもし出される小宇宙感が何かに似ていると思ったら、チベットの曼陀羅だった。よってこのトラックの名前は「RIN−NE」に決定。

イスラマバード中心部は頭痛がしてくるほど混んでいる。

はじめは「トラックだぁ!」とはしゃいでいた一行も、目に入るのが延々こういうシーンで徐々に無口になってきた。

駄菓子屋さんの店頭的カラーリング。合成着色料っぽい。眺めているとイチゴアメとか食べたくなる。

積載能力や燃費には一切関係ないが、シャラシャラ鳴って気分を明るくしてくれる。東京カワイイ★TVで紹介したくなる。

パキスタンのデコパーツにはやたらとキュートなのが多い。日本だとデコトラといえば「いかめしい、男らしい、運ちゃんがケンカに強そう」ってイメージだけど、パキスタン人はトラックに何を求めているのやら・・・・・・。

脳味噌にズドンと一発スゲエ色!卵の黄身色っていうの?こういう黄色、日本ではまず見かけないよね。

風車がクルクル回っている。言うまでもなく何の役にも立ちはしない。純粋な飾りである。

100%無駄なものに、汗水たらしてかせいだゼニを投入する心意気が素晴らしい!と思ったのもつかの間、隣の車線でひたすらクルクルするのを眺めていると、だんだんムカッ腹たってきた。

運転手さーん!うしろうしろー!\(◎o◎)/
屋根に変なモノが寄生してますよ!

船首に目を描いて邪眼(evil eye)除けとするのと同様に、トラックにも目のペイントをほどこすものらしく、あっちでもギロギロ、こっちでもギロギロ。

それにしてもこいつの三白眼は特別こわい。効果ありそうだよね・・・というよりむしろこいつの方が邪悪なかんじ。

一方こいつはにやけている。『ついでにとんちんかん』の間抜作そっくりだ。

足元までぬかりなくデコるのがパキスタン流。メタルのおサカナとチョウチョで人とちがったおしゃれを楽しんじゃお!

いや、その、だんじりじゃないんですから・・・・・・。

イスラマバード近郊のカオスっぷり。

ナチュラルに並ぶデコトラの手前では、幸せいっぱいの新婚さんが乗った車が、ピンクのリボンをかけられていたりと、白い車ばっか走っているシンプルな道路に慣れた日本人にはキツい渋滞。

幹線道路なのにお馬さんやらロバさんも平気で歩いている。
もう勝手にしてください・・・・・・。

スタートレックのミスタースコットみたいな交通整理のおまわりさん。イマイチ仕事する気が見えてこない。
「どうして傘さしてるんですか?」とガイドに聞くと「日よけです」としごくまっとうな返事が返ってきた。

<パキスタンのトラック2につづく>