テーベいやルクソールでは東岸に宿泊施設が集中しているため、夕日は簡単に見られても地平線から顔を出す朝日はよほど早くからネクロポリスに渡らない限り見ることが出来ません。 そこで「古代エジプト人と同じものを見たい」というミーハー気分なこの度の旅では、大枚(250ドル)はたいて西岸の気球から朝日を拝んで参りました。

ホテルロビーへのピックアップ時間は5:30。眠いっつーの!
これは朝靄に沈むナイル。右方向ずずーっと遡るとアスワンさらにヌビア、左方向に下るとアマルナやメンフィスでございま〜す。

気球船長のしゃべくりを何とはなしに聞いているとやがてラーの船がしずしずと姿を見せた。

「太陽はどの方角から昇るか?」と問われるとつい頭の中で素早く「天才バカボンのテーマ(♪西から昇ったお日様は♪)の逆!」と考えるのは私だけでしょうか?

しばらく見つめているとあっという間にここまで昇った。
数千年前のファラオも神官さまもラクダのウインク酔っぱらいオヤジもみんな見ていたのと同じ太陽・・それにしてもラーの船、船足速っ!感傷に浸る間もありゃしない。

ここまで昇るとさすがに毎日見てるのと同じ太陽であんましありがたみがない。
今モニタを見てるだけでもじりじりと焼け付くようなあの暑さを思い出す・・・エジプト旅行はサングラス必携。目ぇ焼けます。

背後にはネクロポリスの断崖。小さく見えるのは実はでかいハトシェプスト葬祭殿、さらに豆粒みたいなのはクル・エルナいやエル・クルナの慎ましい住宅群である。子バクラはいなかった。
エル・クルナは「泥棒村」なんて不名誉な名で呼ばれることがあるが、フツーは石工などとして仕事している人が多いと聞いた。

ハトシェプスト葬祭殿からもう少し南の山。こう見えても結構険しい。ファラオが行方不明になったのはこういう場所か?

よくこんな所から転げ落ちて生きてたな・・・さすがヒキの強いお方だ!それをちまちま捜してたお方はさすがヒキが・・・(以下略) 

気球というのはこういうカンジでネクロポリス上空を観光客を乗せてフラフラ飛んでいる。
一見気楽に上がってるようだが、カゴの中身はずっしり太った欧米人でみっちりきつきつ。自分の乗った気球も「えっ?こんなにみっちり乗せんの?」と思わず顔が引きつった。

だから写真にもけっこう隣の人が写り込んでいる。
ここに写ってるのは隣のいちゃいちゃイタリア人カップルの肩。
ちぇっ!いちゃいちゃするならイタリアでやれYO!!

今回は私の気球初体験。

大枚三万円も払って高所恐怖症の自分が気球体験したわけは、「王墓警備で靴底を減らして駆けずり回った警察官僚や、王を捜して額に汗したハゲ法官の目線に立ってネクロポリスから朝日を見たいから」というごくシンプルなオタク的動機・・・古代編マニアの本能に忠実に行動した結果でございます。

理想を言うなら古代エジプト人が望むべくもなかったこんな高度からではなく王家の谷の裏山から朝日を拝みたかったのですが、暗い内から山登りするのは相当危険なので現世的に妥協。カーやバーになってから見ても仕方ないもんね。

朝日は確かに感動した!でも私は気球にはもう二度と乗りたくないです。

気球って水素を燃やして上がるんですかね?そこらへんのメカニズムはよく知らないんですが、最初から最後まで頭の後ろでゴォオオーーッゴォオオーーッというエイリアン退治の火炎放射器みたいなおっそろしい音を立てられては・・・いつ火がついてヒンデンブルグ状態になるかと生きた心地がしませんでした。

加えて地上からの高さもけっこうあるんで、今頃になって
「風船おじさんは偉いなぁ・・・行方不明になったけどどこまでも飛んでいって怖かっただろうなぁ」と思いました。

遠いエジプトの空から風船おじさんに合掌・・・