メモリーズ その弐 囚われの姫君

先日「勉強堂」に行きました。

この「勉強堂」、地元の商店街(超下町)にある家族経営の小さな古本屋で、週刊漫画雑誌などは一冊50円という薄利多売の店なのですが、棚には好事家をうーんと唸らせるラインナップ。 エロ系は出版されているありとあらゆる種類が揃います。 もちろんゲイ雑誌も「バディ」から「Gメン」まで・・・ 漫画ではテニプリなどの人気漫画もガロ系マイナーも、また、文庫ひとつ取っても渋澤龍彦やマルキ・ド・サドは当たり前です。 一度などは「家畜人ヤプー」(※)の初版から各社版、果ては石の森章太郎の漫画版までずらりと揃っていたのにはさすがに腰が抜けそうになりました。 

でもそれは正統派の古書店のように、店主の好みでそういう本に的を絞って買い取りしているのではなく、単に持ち込みする数名の読書家がそういう趣味の持ち主だということのようです。 また入荷した本があっという間にはけてしまうところもまた凄い。 売る方も売る方だけど、買う方も買う方です、自分も含めて。


さて、マニア御用達の店「勉強堂」で、私はとある漫画と数十年ぶりの再会を果たしました。 

それは手塚治虫先生の”子供向けジャングル大帝”「レオちゃん」。 どの手塚作品だったのかが分からず、長い間記憶を探りつつ捜していたのですが、地元の店に転がっていたセコハン本で発見なるとはね・・・


両親自身手塚ファンだったこともあって、当時2,3才だった私の周りには子供向けから大人向けまであらゆる手塚漫画が揃っていました。 自分の幼い頃の事を想い出そうとしても、人間についての記憶は全くなく、想い出すのは本のことと怪物のこと、そしてメリーゴーランドのことばかり。 薄情だなとは思うのですが仕方ないですね。

そんな手塚まみれの幼児だった私ですが、ある漫画の一コマに異常なまでに執着していたのです。 それが上に描いた「レオちゃん」。

囚われのライオンの姫・ライヤが女酋長にむち打たれるというワンシーンですが、今で言うと「萌え」というやつでしょうか、このシーンが好きで好きでたまらず、一日中眺めては空想に耽っていました。


この絵には「むち打たれる姫」と「むち打つ姫」の双方が描かれていますが、幼い私はどちらにそこまで感情移入したのでしょうか。 それは当時の私のお気に入りの遊びを想い出すとイヤと言うほど良く分かります。

父か母「言うことを聞かないとむちで打つよ!!」ビシッ!ビシッ!(むち打つ真似)

わたし「・・・お願いです、ジャングルに帰して下さい・・・」

ー恐ろしい形相をしてむちをふるう真似をする両親、なよなよと女座りをしてか細い声で懇願する私・・・

実にいい教育です。


よくもまあ長じてマゾヒストにならなかったなあ、と胸をなで下ろしつつ「子供の想像力は自由に伸ばしてやる」という教育方針の両親に限りない敬意を払う次第です。 伸ばすにしてもホドというものが、と突っ込みたい気がしないでもありませんが。


家畜人ヤプー 沼正三による日本におけるマゾヒズム文学の金字塔。 余りに作者の妄想を押し出しすぎてくどいので私は好かない。 一般的にはマイナーな作品、でも同人系の友人はほぼ全員知っている「家畜人ヤプー」(笑) 私の大好きな戸川純ちゃんのバンドも「ヤプーズ」です。 全くもう・・・