☆☆ファラオの風呂(ハンマーム・ファラウン)☆☆

真っ青な海を横目に、アラビア語の書かれたゴミの散らばった浜辺に入っていくと、まず初めに視界に飛び込んだのはデカパン一丁のヒゲオヤジ。(日本人は温泉といえば素っ裸になるが、あちらの人はパンツまでは脱がないらしい)

砂を蹴立てて突然目の前に現れたベンツ(レンタカーです)、そしてそこからバラバラっ!と降りてきた三人の女(私とヘボピーとマルワさん)に目を白黒させるオヤジの、水に濡れた紫のデカパンを見た瞬間、私の心の暴れん棒将軍は一気に張りを失っていた……。

そして15分後……。
靴の中を砂まみれにしながら登った砂山の奥でそれを見た瞬間、私は心の中で叫んでいた。

名前にだまされた〜〜っ!!

マルワどんに先導されて向かった先には、こんな無愛想な小山あるのみ……。

急激に襲い来る不安と大格闘!

だが結果は不安の完全勝利!!見事なジャーマンスープレックスホールドでマットに沈められた。

昔は温泉が湧いていたかもしれないが、今はただの小汚い穴。隅っこに埋もれたスーパーのビニール袋が旅情をさそう。

ガイドブックを繰ってみても「ハンマーム・ファラウン」はほとんど載っていない。
だが、ただ一つ見つけた記述ではだいたいこんなカンジで紹介されている。

「海辺に湧き出る『王の風呂』という名の温泉。特に聖書には出てこないが、天然の洞窟サウナがあり、砂浜にもブシュブシュと湯が沸き出している」

我々が行った時にはブシュブシュではなくダラダラと出ていたが、これはきっと実際にファラオが使ったスポットではなく、「ファラオ」という言葉のゴージャスさゆえ命名された場所なんじゃなかろうか。

「あ〜気持ちええなぁ!こんなとこに湯が出てるなんてええ場所見つけたの」
「ホンマじゃなぁ、気持ちええなぁ〜。まったくファラオ気分じゃ!(笑)」
「ならこれから『ファラオの風呂』ゆうて呼ぶことにするべ」
「ワハハ〜!それがええそれがええ!」(笑)

おおおお!ここを発見したオヤジどもの会話までが脳裏に浮かんできた……。

ガッカリ感ではエロビデオ「ファラオの男風呂」(※)を買った時といい勝負の「ハンマーム・ファラウン」。
けど、海辺の温泉で一服するベドウィンやトラック運転手のパンツ姿に萌える方面の方には、とってもオススメのポイントだわよv

(写真右)地元オヤジ御用達の天然温泉はこの奥に。パンツ一丁のオヤジに萌え〜!......ってそれは無理!

※ビデオ「ファラオの男風呂」......「ガッカリした」と言いつつも、聖典「遊戯王デュエルモンスターズ」の隣にしっかり並べて大切にしているお宝ゲイビデオ。

「ファラオの風呂」というよりオスマントルコ風呂、いやむしろ「大阪通天閣・世界の温泉スパワールド」のオリエント風呂を100倍チープにしたセットで、マッチョなアニキ達がただひたすら犯って犯られてやりまくる。

オープニングではとりあえず気持ちだけでも「テレ東古代エジプトミステリー」程度のコスプレはしているものの、開始5分後に全てを脱ぎ捨てて生まれたままの姿になられては……「エジプト」の意味を全くなしていない。でも男優はけっこうイケメン揃いなので見たいお友達はメール下さい(笑)


☆☆モーセの井戸☆☆

カイロからスエズ運河に向かう途中にある、ナツメヤシの木に囲まれた水も枯れかけの井戸。
出エジプトの際、モーセが喉の渇きに苦しむ人々のため、何もない土地から水を沸き出させるという奇跡を起こしたとされる場所で、12の井戸の跡が遺されている。

モーセの井戸。説明がなければただの井戸。

井戸のすぐそばに屋台がずらりと並んだ手作り横町。

屋内制手工業によって生み出されたビーズ細工やら木彫品やらは、ここから物好きな観光客と共にさまざまな国へと散ってゆくのだ。

聖書に興味がある人以外は連れてこられると怒り出しそうな場所なのだが、女性にとっては、井戸の回りで地元の奥さんたちがずらっと出しているアクセサリー屋台がすごく楽しい!
ビーズ細工が中心で、色もデザインもかなり豊富かつけっこう垢抜けている。一本2,30円〜と値段もお安いので、土産物にまとめ買いするのには最適。

ここにしかないものが多いので、寄ればとりあえず押さえておこう。私は行きも帰りも寄ってもらってアホほど沢山買ったよ。ここで150円だったものがカイロのハーンハリーリ市場では600円。
それでも日本の三分の一以下なんだからね……。人の手を経てモノの値段がどんどん高くなっていく過程がよく分かる。

モーセの井戸の近所に住む奥さんたちが、家計の助けにとコツコツ手作りしたアクセたち。主婦それぞれのオリジナリティーが光っている。
現地では「きゃーステキー!カワイー!」とエキサイトしたお品でも、日本に帰ってきて着けてみると、「こんなアラビアンナイトみたいなアクセ、どこにして行くねん……」ってトホホな気分になるのもご愛嬌。

どこの会社でも同じだと思うが、会社の土産として食べ物はあまり喜ばれない。いや、アメリカ、ヨーロッパのこぎれいな国のお菓子は別枠として、インドやパキスタン、韓国や中国、エジプトやケニアといった国からやってきた土産菓子たちが、消費期限が切れるまでデスクの上に放置されたあげく、贈り主の目を盗んでそっとゴミ箱に移動させられる姿を、これまでにいったい幾度目にしたことだろう。

旅行から戻って出社した朝、「みんなが働いてる時に休んで外国に行っちまった」という居心地の悪さに身体を小さくしながら土産を配ると、大方の人は顔では「あっ、ありがとう!」と微笑みを浮かべてはくれる。それでもその多くは封すら切られないまま、消費期限を迎えることを私たちは知っている……。

だからこそ人は、どこの国の空港の免税店でも売っている、トブラローネ(三角のチョコね)やマカデミアナッツチョコを「くっそー!街の売店ならもっと安くすむのに、なんでこんな無個性なもんを高いゼニ出して買わんならんのだ!」ともやもやしつつも購入しちゃうんだろう。

その点、アクセサリーや財布といった小物は、50円〜200円とお財布にやさしい割に見栄えがいい。
また、たとえその人の好みに合わなくてもきょうだいや友達に回してもらえるという点において、女性へのばらまき土産として最適だろう。まあ、写真のベリーダンサーみたいなクセの強いアクセは避けて、右みたいなごく無難なやつを選ぶ必要はあるのだが。

これがトブラローネな。これまでに国際空港で、スイス製のこのチョコレートの姿を目撃しなかったことは一度もない。

ホンマ、なんでバングラデシュでスイスのチョコ(それもアホ高い)買わんならんのだよ……と思いつつも、万人に好まれる、というか苦手な人が少ない無難な味ゆえに、エスニック臭がキツすぎる国では、土産のレスキュー隊みたいな立ち位置で売られているのだろう。

実のところ、私はこのチョコの名が「トブラローネ」であることを初めて知った。いや、高いからこれまで売り場に近寄ったことすらなかったもんで、いつも遠巻きに眺めては「トロバトーン?」とか「トボルトーン?」だとなんとなく思っていたのだ。「ト」しか合っとらんがな。


☆☆スエズ運河☆☆

地元の垂水漁港に来たのかと思った。エジプト軍人さんに「立ち止まっちゃダメ!写真も絶対ダメっ!」と叱られたい方以外は見なくてよろしいっ!

……と言ってる私が、軍人さんの目を盗んでポーチに隠したカメラで一枚だけ撮影に成功した写真がこれ→→→ 鋭い目をした迷彩ウェアのアンちゃんはいるわ、戦車みたいな車両もあるわで心臓がばくばくした。

だが、見とがめられようものなら、SDカードごと没収されるリスクを冒してまで撮ったにしては地味すぎる。垂水漁港だってハゼ釣りのおっさんがいたりともう少し華やかだ。

なお、カメラを向けられないせいで、残念ながら写真は残っていないのだが、この狭い運河をでかいコンテナ船がおそるおそる通航するのを運良く目撃できたのには、けっこう感動した。


余談だが、この狭い運河を通航できる船(主にタンカー)の最大サイズを表す用語が「スエズマックス」。

同様にパナマ運河を通れるのが「パナマックス」、マラッカ海峡は「マラッカマックス」。大きすぎてスエズ運河を通れないから、南アフリカの希望峰回りで航海するサイズの貨物船を「ケープサイズ」と呼ぶ。

これらの言葉は商船に関係ある仕事柄ちょくちょく使うんだけどさ、急に自分がワールドワイドなビジネスマンになったみたいな錯覚を抱けて、ちょっぴり気持いい (*´ω`*)