めばえ コレクション#1 三木千里 女 労働者

「あなたが最初に感じたエロは?」・・・簡単な気持ちで問うてみたのですが、いざ思い出そうとすると「あれもそうだったんじゃないか、これもそうじゃないかと非常に迷ってしまうものですね。 そこでソファーに座ってゆっくりと過去を振り返ってみました。

小学校なかばにはすでに「エッチなもの」「良く分からないけど変な気分になるもの」について、揺らぎない嗜好が確立されていたようです。 それは一言で言うと「変身譚」。 変身する人物が苦しめば苦しむほど、額の脂汗の量が多ければ多いほど、胸キュン度はいや増していました。

中でも三大フェヴァリット変身は「原作仮面ライダーの改造シーン(※1)」「原作デビルマンでヒッピーの女がデーモンに合体されて怪物化するシーン(※2)」「手塚治虫のバンパイヤで主人公が変身する時、苦し紛れに畳をかきむしるシーン」であったと記憶しています。

※1)クサリで手術台に縛られた主人公が麻酔から目覚める場面。 「ここはどこなんだ?!オレの体に何をした!?」 ー縛めから逃れようと必死でもがく主人公・・・だが超人に改造された彼の力の前では、太いクサリなど何の意味も成さない・・・「ブッチーン!!」窓外の月をバックに、主人公が逆光で手術台の上に身を起こすコマには忘れがたいものがあります。 目を閉じると今でもまぶたに蘇るのです。 男の黒ブリーフと鎖を断ち切った瞬間の腹筋の割れようが・・・

(※2)飛鳥了の準備した地下室、酒とクスリでラリパッパの不良達。 やがてむっちゃ凶暴な彼らは主人公に絡み始めた。 サバトさながらの血の祝宴、痛めつけられる主人公。「あーら、ママのおっぱい欲しいの?」真っ裸のその女はフラフラになった主人公に言う。「・・・コップでも食ってな!」(ここらの台詞はあいまいです) 割れたコップを彼の顔に叩き付けた女は狂ったように笑うのだが、その瞬間デーモンに合体されて怪物に変身・・・おっぱいが割れて2匹のデーモンの顔になるのが一番のポイントだった。 当時の落書き帳にもこのシーンの絵が残っている・・・

でもね、考えてみるとそういった「変身萌え」というのは、自分の中で「エロい」という感覚がある程度確立されてからの話です。さらにエロの源流を求めてさかのぼると・・・見えます見えます、ドラクロワの画集を食い入るように眺めている幼い自分が。

どうやら私のめばえはドラクロワの「サルダナパールの死」に対してだったようです。

ドラクロワがバイロンの詩劇にインスパイアされ描いたという「サルダナパールの死」。

今にも陥落せんとする宮殿の中、死を覚悟したアッシリア王は奴隷に命じ愛妾と愛馬たちを殺させる。

右手前で苦悶に体をのけぞらせるオダリスクと、それを冷酷に見下ろす王の姿にたまらなくモヤモヤしたものだ。 左端の奴隷は王の自決のための毒杯を捧げ持っている、という説明を読んでより一層めばえた。