<薔薇と詩人の街ーシラーズ>

大詩人の霊をお祀りしているハーフェズ廟から庭園をのぞむ。
5月は薔薇の季節。イランのどこへ行っても薔薇が咲き乱れていた。

イランの人たちは詩が大好き。学校で習うから子供だって有名な詩人の詩くらい知ってるし、寄り合いがあれば誰からともなく詩が朗詠される。各家庭にはコーランがあるのは当然として、詩集があるのもごく普通のことらしい。

そんなイランの人たちが「ペルシャ三大詩人」として格別に愛するのが、サアディー、モラウヴィー、そしてハーフェズ。
私とヘボピーが2010年5月に訪れたシラーズは、その三人の内二人、サアディーとハーフェズを生んだ「薔薇と詩人の街」と呼ばれている。

道路側から見たハーフェズ廟。イランの庭園術はシンメトリーが好き。樹木もだいたい左右対称に植わっていて精神的に落ち着く。

ひきもきらず詰めかける観光客。イランでは「はいチーズ」の代わりになんていうのか今度聞いてみたいな。

管理人もはいチーズ。観光客も肌見せ御法度ゆえ、スカーフとコートは必須です。

古着屋で買ったこのコート(800円)の下には、バカ面した犬の絵の横に「WAN!WAN!」なんて書いてある、普通なら寝間着にしかならないロングT(300円)。 そいでもって頭は白髪伸び放題の山んば状態。
そう、コートとスカーフがすべて隠してくれるから、おしゃれがめんどい向きにはイランのドレスコードって意外と楽なんです。

廟の中心部には大理石の棺(遺体は入ってないと思うんだけど……)

花を捧げる人々の横では、ハーフェズの詩集を小さな声で朗読する若い女性。私たちが行く前からいて、帰る時までずっとこうしていた文学少女。
よほどハーフェズを愛しているのだろう。自然と酒と愛を詠った抒情詩人の面目躍如というところだ。

女学生がわさわさやってきて、スズメのごとくかしましくさえずっても、ハーフェズマニアはたじろがない。自分の世界に引きこもり、ひたすら詩集を朗読している。

廟のドーム部分は下から見るとこんな感じ。
おおおおお!なんという美しさまさに天国!こんな色柄の絨毯があったなら、ソッコー定期預金解約して買うだろう。

イランってどこへ行ってもこういうパターンであふれてるもんで、ペルシャ絨毯好きの管理人、気を抜くところがなくて三日目にはすでにへとへとで目がうつろだった……。

ハーフェズ廟の前の道路では、むくつけきひげ面のオッサンたちがウロウロ。よく見るとみんな手に小鳥を乗せている。一体なにをしてるのかな?

こっちのヒゲオヤジは小鳥とひとやすみ。なんか癒されるワー。

小鳥を腕に乗せてゼニを数えるアンちゃん。
よしよし、今日はなかなか調子がいいぞ。仕事がひけたらお前にも粟を買ってやるからな。

アンちゃんの手元をクローズアーップ!お仕事中のセキセイインコ。
これ、「ハーフェズ占い」といって、ハーフェズの詩集から取った一節を印刷した紙片を小鳥に引かせるおみくじなんです。

翼のある相棒といっしょにポーズを取ってくれたアンちゃん。お金を渡してインコにおみくじを引いてもらった。

おみくじにはこういうことが書かれてるよ。なになに?今日の運勢は?きゃっ!「素敵な人と出会う」ですって……ってペルシャ語読まれへんっつーの!

でも見ているだけで気持が安らぐ美しい文字。シャベ・ヤルダー(冬至)の夜には、各家庭でもこのハーフェズ占いをするそうだ。詩が浸透している日常っていいよなー。

「あたり」が出るとこんな素敵なカードがもらえるよ。フレームを彩る花々と小鳥たち。眺めているとFXで疲れた心が癒されてゆく……。

小鳥に引かせるおみくじといえば、かつては日本でもお祭りの時なんかにヤマガラの芸が見られたものだ。
小銭を渡すとヤマガラがちょんちょんとミニチュアの神社の鳥居をくぐりぬけて、小さな鈴を鳴らしてからおみくじをくわえてくる、胸がキュンとくる見せ物だった。私は子供の頃に見かけたけれど、今はもうやって無いんだろうか……。

イスタンブールでは小鳥の代わりにウサギがくじを引いていた。その時に書いた絵が残ってたから貼ってみたよ。(→)
当時(約15年前)の管理人はこのイラストまんまのライオンばりの金髪で、トルコ人に「アーユーイタリアン?」なんて言われて無邪気に喜んでいたもんだ。