脳内補完計画 カリムの巻

人によってキャラ解釈がかなり異なるマハードとは反対に、カリムの場合はどなたが想像してもある一定のカリム像(実直、溢れる包容力など)からそれほど大きく離れることがないのでは、と思います。

よって私のカリム観もさして新奇なものではないと思われるのですが、原作では最初から最後まで「謎の人」カリムのあれこれを自分なりに設定してみました。完璧に捏造ですのでご注意下さいませね。

<年齢>
シャダより2歳上、マハードより1歳上の30歳。


当サイトは「リアル古代エジプト18王朝という背景を重視する」というスタンスなため、全体的に現代人ほど高年齢には設定しにくいかな(詳細はシャダの項を)と思っていたのだが、いろいろ無理が出てきたのでこの際こだわりは捨てることにした・・・

<出身地>
上エジプト宰相の三男としてテーベに生まれる。
後年ホメロスが「イーリアス」の中で百門の都と呼んだテーベは、新王国の首都として栄華を誇っていた。

<生い立ち>
生まれも育ちもテーベっ子のカリムは、プライマリースクール卒業後そのままカルナック付属の生命の家に入学。
その後しばらくしてメンフィスより上京してきたシャダ、さらにかなり間をおいてド田舎より連れてこられたマハードと出会う。

メンフィス時代のシャダのように、外交官になりたいなどとはっきりした将来をカリムは思い描いているわけではなかったが、数学が得意な上鋭い観察眼を持ち、こつこつと収集したデータをまとめ上げてなにがしかの結果を導き出すことに喜びを感じていたため、父や兄からは天文学者か建築家を目指せばどうか、と勧められていた。

人と話すのが下手(と思いこんでいた)な彼としてはできるだけ人と接さずに済み、石やパピルスや空と向かい合っていればいい仕事につきたいと思っていたのだが、結果的には
建築家としての道を選んだ。

<職業>
私は専門職の神官はアクナディン(大神官)とセト(第二位神官)の二人だけで、他の四人は名誉職の神官と考えている。

本来の担当は、シャダが大法官、マハードが警察長官、アイシスは財務長官、そしてカリムはいわば
建設大臣
ただ、現代の建設大臣と異なるのは、古代エジプトでは自らも王墓や神殿、葬祭殿の設計施工に携わるポジションだったということ。

建設大臣の仕事は、理数系の素養だけではなく資材や人員調達などのためのコーディネイト能力も必要とされるという、現代で言えばゼネコンのような職務内容であるが、カリムは意外に調整能力にも恵まれていたようで、彼の受け持ったテーベ周辺の現場ではもろもろのトラブル発生率がひじょうに低いのでファラオもお喜びである。

・・・実はカリムのポジションについては「建築家」と「財務長官」を兼任してもらおうかとかなり迷ったのだが・・・

なぜなら「偉大なるマンネリズム文明」古代エジプトにおいては、新たな建造物を設計する場合でも古来から使用されていたデザインに大きな変更が加えられることが少なかったため、古い図面に少し手直すればそれで事が足りたそうだからだ。
ならば設計そのものにはそれほど時間を割かなくても済んだのかもしれない・・・
・・・できる男カリムとしては「財務長官にして設計技師」も可能ではないだろうか?

一時はこのように考えたのだが、やはり財務長官は忙しくて他の仕事との兼任はむつかしいように思い、そのポジションはやり手のアイシス様に任せることにした。
女王ハトシェプストの寵臣、センムトのように独創的な葬祭殿の設計をした人間もいることだし、カリムにも時間をかけて先鋭的デザインの設計をしてもらうことにしよう。
そう、「空中回廊のある牢獄」とか「動く彫像のある迷路のような王墓」、そんな遊戯王的なるものを・・・

<家族構成>
女ばかりのきょうだいに囲まれて育ったシャダとは反対に、カリムの家は男系家族。
上38歳と35歳、下10歳の双子というかなり年の離れた5人兄弟の上から三番目である。

宰相であった父(故人)は薄くなってきた頭髪にきっぱりと別れを告げ、神官のように頭を剃り上げたがっしりした体格の男であり、外観と同じく性格も質実剛健、正義感に溢れ公正を旨とする反面、いささか厳格にすぎ融通に欠ける人物であった。
因みに私はこの「カリム父」像として、「ハムナプトラ」のハゲマッチョ、イムホテプ様を思い描いている・・・
ちなみに先代千年秤の担い手、ヒゲだるまのオカッパは彼の兄・・・カリムの叔父にあたる。

かつて「上エジプトで結婚したい男ナンバーワン」の誉れ高かった父は、黙っていても女性の方が放ってはおかず非常にモテた男なのだが、どうも結婚運はなかったようで二人の妻に先立たれ最後の妻・・・つまり双子の母は娘ほどに年の離れた女性であった。
・・・いや、若い妻をめとれたという点では結婚運はあったと言うべきだろうか。

このような事情により、ほかの兄弟4人とカリムは異母兄弟である。
実はカリムと父母を同じくする3歳年下の弟がいたのだが、10数年前まだ幼いカリムと遊びに行った先で毒蛇に噛まれて
死亡。この弟の死はカリムの心に今でも暗い影を落としている・・・

母はカリムの弟を生んだ直後に合併症にて死亡。「物心つく前から母がいなかった」という点では当家のマハード設定と同じである。(※1)
彼女はファラオのハレム(※2)出身で、カリムの祖母に当たる女性はヌビア候の娘であったが、父がファラオに恭順を示すためにエジプトへと送った。
よってカリムには四分の一ほどヌビアの血が混じっており、肌の色も回りのエジプト人よりかなり黒い。

<趣味>
読書と写本。性格そのままにかっちりした字はヒエログリフ書体にはもってこいである。
他、古代エジプト人の常として動物も好き。
当家ではマハードもシャダも愛犬家という設定だが、カリムは意外なところで愛鳥家。少年の頃からタゲリを手乗りに仕込んだり、外国から来たばかりの珍しい鳥(ニワトリ)を手に入れて可愛がったりしていた。愛らしい姿を眺めているといつまでも飽きないらしい。

<キャラクター>
「寡黙な情熱家」

古代エジプトの上流階級では、自己の心と行動を統御できる人間が理想とされた。
息子達を集めてはプタハホテプやアメンエムオペトの教訓を読み聞かせていた父が、ことある度ごとに繰り返していたのは「慢心するな」「マアトの前に誠実であれ」
その影響だろうか、長じて神官兼天文学者、王室付きの医師という職に就いた上の兄二人、就学中の下の弟たちそしてカリム・・・揃いもそろって寡黙なカタブツである。

青春を謳歌する友人達を横目で見ながら、学生時代からカリムは真面目一徹、ペンとパピルスを友とする学究タイプであった。
そんなカリムの座右の銘は「プタハホテプの教訓」の一節である。

「賢者の言葉はエメラルドよりも見つけ難い
 だがそれは石臼の横の下女のところにあったりするものだ」


「何者にも動じない男」と思われているカリムであるが、とは言ってもまだ若い男性。
行動を起こす前にはひとまず立ち止まって状況を分析するとか、自分を常に客観視することを心がけてはいるが、彼とて聖人君子ではないから心の中では結構動揺したり腹を立てたりぐるぐる悩んだりしているに違いない。

ただ、それがすぐ顔に出る同僚たちと違って、激しい感情の動きを人に悟らせないという点でカリムは一枚上手なのだ。
その実は不正を憎みファラオに絶対の忠実を誓う六神官一の「熱い男」なのかもしれない。

「意外とジェラス・ガイ」
内に秘めた「熱い男」っぷりは恋愛関係においては一層顕著に認められる。

朴念仁かと思いきや、意外に的を得たマメさで相手を喜ばせる一面も・・・
無口でやや融通を欠くが、誠実さや包容力、見るからに頼りがいの有りそうな男性的ルックスで彼は異性にもモテる。
遊び相手としては面白みに欠けるが、密かに上エジプトの
「結婚したい男ナンバーワン」なのだ。

しかし「実はモテモテ」であろうともカリムはそんなことは意に介しない。何故なら彼は一旦惚れるとその相手だけをただひたすら見つめ続けるタイプだから。
どちらかと言うとフツーに女性と結婚し、良き家庭人になるタイプだろう。ただ、今はたまたま愛した相手が男性だったというだけなのだ。
もちろん浮気などとんでもない。一人だけを愛し続ける「熱しにくく冷めにくい」誠実な恋人である。

ただ、自分が浮気をしない代わりに相手の浮気も許さない。クールに見えて実はカレ、恐ろしく嫉妬深いのだ・・・
しかしカリムは浮気が発覚しても怒鳴ったりしない。
ただ無言で踵を返し部屋から出て行き、二人の関係はそこでALL OVER・・・怖い・・・罵声を浴びせられる方がよほどマシだ。

実は今まで二度ほどシャダの浮気がバレたことがあるのだが、その時は一週間のシカト+シャダの土下座と泣き落としで何とか続いたのだが・・・三度目は・・・けしてなかろう。

「トリプルS」(すごい、しつこい、底がない)
閨房ではあの体格を見ていただければお分かりの通り、強烈なパワーファイターである。
さすが高い身体能力を誇るヌビア人のクォーター。

「前戯のシャダ、後戯のカリム」とは仲間内で良く持ち出される表現だが、相当ねちこい。
・・・かつ
ブツのクオリティーについても・・・言うことなし。
ただ、ややでかすぎるゆえに相手の体力の消耗が激しいこと、そして睦言ひとつ言わず力任せに無言でガンガン直線的に責めるのでやや飽きがくるのが問題といえば問題か。


※1・・・当時女性にとって出産は命に関わる危険な大事業であり、その際に命を落とす女性もひじょうに多かった。
古代エジプト人の平均寿命は30〜40歳(文献によって幅がある)であったが、平均年齢を引き下げる大きな要因として乳幼児と妊婦の死亡率の高さがあったそうだ。

※2・・・「ハレム」(ハーレム)というと、主人のために快楽を提供する女性が幽閉状態に置かれている場所、という誤解を抱かれるかもしれないが、古代エジプトのハレムとはオスマントルコの後宮のようなエロティックな場所とは異なる。
王が新たな妃や側室を迎えたとき彼女に付き従う次女は相当な数にのぼったが、そういった侍女や生まれてきた子供達、さらには外国人捕虜の子息が生活する場をこう呼んだ。