カルナック西側参道にずらりと並んだ羊頭スフィンクス。 遊闘295ではここがモデルと思われる参道をセトがふんぞり返って輿で運ばれておりましたね。 後ろの塔門は今ではすっかり崩れていますが、当時は旗がハタハタとはためいていました。 そこらへん和希センセ、さすがちゃんとチェックして描いてらっしゃいます。

古代エジプトの代表的神殿として一般に最も広く知られており、遊戯王エジプト編の舞台であろうと思われる当時の首都テーベ(古代エジプト人は“ワセト”と呼んだ)に置かれた人類史上最大の巨大神殿複合体。

このカルナックとルクソールの神殿は王家の谷と並んで、「マハードの勤務先を訪ねる」という大きな声では言えないゆがんだ動機からも、私がこの度の旅行で最も楽しみにしていたものであった。

バスを降り、放し飼いのヤギ親子を追いかけ回しながら街路樹の小道を抜けると、突然広がる古代の風景・・・
余りにも唐突に訪れた感動に、胃から逆流する昼食のハト料理。参道からこんなに浮き足だってどないするんよ自分・・・

とはいえ、写真で飽かず眺めたのとおんなじだよ〜!あたし今カルナックの参道にいるんだよ〜!と我ながらミーハーだとは思いつつもこの心の高ぶりは押さえ切れるもんじゃない。ガイドさん、説明は要らんっ!一刻も早く神殿内部へと馳せ参じたいっ!


さて、前足の間にファラオの小像を抱えた羊頭スフィンクスの並ぶ参道と第一中庭を通り抜け、第二塔門を越えたところで目に映った光景を見た瞬間、体の震えを押さえることが出来なかった。

それは134本の列柱が立ち並ぶ「大列柱室」

これらの列柱はアメンホテップ三世が「その柱は天空の四つの柱の如く天空に達す」と述べたとおり、エジプト神話に於ける「天を支える柱」としての象徴的な意味合いも付与されており、また「原初の湿地帯」に繁茂する植物群を象徴するものでもあったそうだ。

すべては神の御為という信仰心から作られたその場所は、数千年を経てもなおひんやりとして神聖な空気を残している。大きいものでは21メートルに達するという巨大なパピルス型列柱が居並ぶさまは緊張感あるバランスを保ち、柱の一本一本が品格に充ちた佇まいですっくと空に向かって伸びている。その光景は正に「創世の丘を取り巻くパピルスの林」そのもの。

例えようもなく美しいその姿に胸を締め付けられ、こっそり柱の一本に抱きついて物思いに耽る乙女のように冷たい石灰岩にそっと頬を寄せてみた。
指先でレリーフをなぞると、古代の職人の息づかいが感じられるようだ。いや、実際はかなり修復されてるもんで、古代の職人ならぬ「ルクソール在住51歳独身・高血圧・糖尿ぎみ」なんてオッサンの息づかいかもしれないのだが。

このカルナック神殿については「感動した」「素晴らしかった」等のありきたりの言葉しか出てこないほど、またどんな言葉で表現しようとも陳腐に思えたので、この項はこれにて収めさせていただきたい。

語り尽くせないほど美しく、そして何だかとても懐かしいような気持ちになったこの場所で、私はずっと泣きそうな気分になっていた。畳の上でないならば、願わくはここで死にたいものだとまで思ったりして。

野良ヤギの母。子を連れてウロウロしていた。帰るおうちはあるのだろうか。まぁ多分飼い主いるよね、ヤギだし。

写真を撮ろうと追いかけるとおびえた顔で逃げていった。

後ろのベンチでは白人のオッサンが三人、鈴なりになって座っている。なにもそこまでぎゅうぎゅうに座らんでも・・・

「メジロ押し」という言葉って当たってるよなぁ。

神殿横の聖池。ここでお勤めの神官達が水くみをしたり沐浴したりしたところである。全裸の神官を想像し、興奮のあまり池の生水をがぶ飲みしそうになったが、腹でボウフラが湧くと困るので思いとどまった。

アメン神殿の至聖所。ファラオと高級神官のみが入れたというVIPルーム。

大列柱室。古代にはこれらの柱は天井を支えており、ここに差し込む明かりといえば小さな高窓から入る光だけであった。

天井のない状態の現代でも冷たく薄暗いのに三千年前はさぞ・・・と想像するとなんかすごく萌えた。

大きさの比較のためヒマそうにだべる現地のオヤジ達を撮ってみました。ね?でかいでしょ?

見上げる列柱。余り目に触れないはずの柱の上部までびっしりとレリーフがほどこされており、手を抜かない古代エジプト人のこだわりを感じた。

実際にこの場所を訪れるまでは「列柱室での○○と○○の逢い引き」という設定のための資料写真を撮るつもりだったのだが、実際には余りにも柱が大きすぎて人物と柱のバランスが取れないと分かりこのシーンは泣く泣く諦めた・・・
しかしきっと声はかなり響いたと思う(笑)

アメン大神殿の第四と第五塔門の間に立つハトシェプストのオベリスク。高さ約30m、重量約320t。

エジプトの空は真っ青だった。日本の空の青さとは全く異質な青、まさに紺碧の空。