この地上に生きとし生ける者全てに等しく与えられた時間は一日24時間。

突発的なエジプト行きを決めてからというもの、次々に襲いかかってくる仕事を阿修羅の形相でこなし、それなりにHPの更新もして家の雑事も片づけ・・・
お兄ちゃん、もういいの。あたし精一杯生きたから・・・」と微笑む白血病の美少女の気分を味わえる程度には24時間を一杯一杯に有効利用していた私。もちろん睡眠時間はガリガリ削られるから顔色はどんどん悪くなっていく。

そして「あいつ何か悪いクスリやっとんちゃうか?」と囁かれそうなほどに顔のドス黒さが最高潮に達し、それと同時にほぼ全ての仕事と家事に目算がついたいよいよ旅行前日のこと。

突然軽やかに鳴るケータイの着メロ「甘き死よ来たれ」(映画版エヴァンゲリオン挿入歌。所詮オタク)。え?何で不動産屋から?

「ハイもしもし」「吉報ですよ、ミキさんっ!家に買い手が付きました!!
「ゲゲ〜ンチョ!!!!!」

実は去年から旧宅を売りに出していたのだが、急激に下降線をたどる日本経済のせいもあってか、一年たっても売れる気配なく半分あきらめかけだったのだ。
それがよりによって旅行前日を狙って買い手が付くとは・・・なぁ、これって神の悪ふざけ?

でもこの度の旅行ばかりは、何かよからぬアクシデントに巻き込まれた時のために棺桶に入れる物の選別までやったほどの「何があっても行く」という固い決意があったたため、不動産屋には何とか対処したものの、まったく疲れた・・・


このトドメの一発によって、私は詰め物を抜かれたぬいぐるみのようにクタクタではあったが、人間って思ったより丈夫なもんですな。
当日は集合時間よりかなり早めに関空に到着の上、航空会社のカウンターには一番乗り、と
すげぇ張り切りぶり。我ながら萌えのエネルギーのえげつなさをひしひしと感じていた。

そして「すごく体調悪いもんで・・・」とヨロヨロしながら一芝居打って、狙っていた座席を確保!これで「関空ーカイロ間14時間」という、聞いただけで嘔吐感をもよおす地獄の旅路もこころもち快適に過ごせそう。


ご存じの通り、飛行機に詰め込まれて14時間というのは、ヨーロッパ方面に行く人間が必ずくぐらなくてはならない最初の関門である。

ましてや「エジプト航空では機内サービスで酒が出ない」というアル中にとっては非常に問題ある情報をゲットしていたため、カイロまでは辛い旅になるだろうなと思い切り身構えていた。ぐでんぐでんに酔っちゃえば機内でグースカ寝られるが、酒が抜きのブロイラー状態14時間はなぁ・・・かなりキツいものがあろう。

ポケットには無理にでも眠るためにと、犯罪的に効きすぎるハルシオン(睡眠薬)も忍ばせた。気分はもうシルクロード縦断に乗り出す商人のように悲壮。そしてその悲壮感は今まで目にしたこともないマークの飛行機を目にした瞬間にいや増すのであった。・・・ウゲッ!機内食むっちゃマズそう!

<左>エジプト航空のマークは古代エジプトのホルス神。季刊の機内誌「ホルス」では、SCA(エジプト考古庁最高評議会)議長、テレビのエジプト番組でも時折見られるザヒ・ハワス博士が愉快なエッセイを書いている。


隣で泣き叫ぶエジプト人赤子の声と果てしなく続く韓国語のおしゃべりをBGMに、予想をはるかに超えてマズい機内ディナーをエンジョイしながら満席の機内に縛り付けられ、それでも何とかハルシオンのお世話にならずに済んだのは、桜ならいままさに満開という萌え心のお陰であった。

「神官服の前部分がテント張ってる表現をどうしようかなぁ、グフグフ・・・」・・・など、果てしなく広がるお下劣妄想を心の赴くままにメモ帳に書き付けていると意外に早かった14時間。

ククク・・・回りのヤツらはあたしがこんなエロネタをカリカリ書いてるとは思わんだろうな・・・オタクで良かったと思えるこのひととき。

<右>機内でもらったエジプトの新聞(アラビア語)。気分はもうシャンポリオン。


妄想の翼をはためかせている内に日本人と韓国人を満載した飛行機はカイロ空港に到着。

初めて降り立つエジプトの地は・・・うわっ!なんかごっつ埃っぽい!さすが「埃及」と書いて「エジプト」なだけあるなあ。

今回は13人構成(※)のツアーメンバーだったので、ビザの受給やホテルへの送迎など全て旅行会社にお任せなもので気分は楽々。
カイロ空港は世界から観光客を迎え入れる玄関口なわりに、トルコ・アタチュルク空港の規模5分の1にしてボロさ5倍。同じイスラム圏でも色々なんだなぁ。
でも、空港入り口にひしめいて
「タクシー、タクシーいらんかね!?」と絶叫するヒゲオヤジの数はトルコの10倍にてエジプトの完全勝利!!

「アンタが大将!」と心の中で勝者への月桂樹の冠を掲げている内にバスはホテル・オベロイに到着。

うおおぉっ!?叶姉妹が泊まりそうなゴージャス系ホテル!

その驚きはホテルの部屋のテラスに出た瞬間に、胸が震えるような喜びへと変わったのだった。
萌えひとつではるばる来たぜエジプト!

<右>カイロ・ホテルオベロイのテラスより臨むギザのピラミッド

・・・何故奇数か? ーそれはカップル3組と勉強会の名目でエジプトに来た税理士のグループが6人。そして私をプラスして13ウォーリアーズ。・・・ひとりぼっちはオレだけかい!!