朝靄の中、ナイル東岸から臨むネクロポリス・テーベの山々。萌え一つで遠くへ来たもんだ。

胸を高ぶらせせつつ人気のない朝のルクソール、ホテルへの帰路を辿っていると、
前方約10メートルにいる男に突然声をかけられた。
「何やねん?」と思いつつ目をやると、男は股間にそえた手を
激しくシェイクさせている。

エジプトくんだりまで来て露出狂に出会うとは・・・

朝っぱらからこんなもんに遭遇とは・・・とむかつきつつ「ノーサンキュー」と通り過ぎたが、
その時意図せずして視界の隅に入ったブツをちらっと目にして驚いた。

「黒っ!!!」・・・・・・さすがだ。

・・・いや、「さすが」じゃなくって。せっかくの感動を汚しやがって・・・去勢しちゃうぞ?!

それにしても「ノーサンキュー」の「サンキュー」はないよなぁ。
日本なら「クスッ、粗末ね!」なんて言うのだが、エジプトの露出狂にはどう接するべきか、
なんて朝っぱらから物思いにふけったルクソールであった。

「神官たちの勤務先を辿る旅」の仕上げは、このナイル西岸、太陽の沈む死者の町であるネクロポリス・テーベ

古代エジプト人はここをイメンテト・エン・ウアセト(テーベの西)、タ・ジュセル(神聖な土地)と呼び、王家や貴族の墓、各種葬祭殿などを建設した。

シャンポリオンによって「王家の谷」と名付けられたテーベ山の麓の二本のワディ(枯れ谷)に位置するこの墓所は、24基の王墓を含む62基の墓が含まれており、ここを監視するのが警察部隊・メジャゥイの仕事だったそうだ。ゆえにマハードはいわば「古代エジプトのFBI」

メジャゥイは王墓に通じる道を監視するかたわら、定期的にパトロールし墓の封印が破られていないかを確かめるのが仕事だったらしい。しかしそういった尽力にも関わらず、盗賊のみならず葬儀を取り持つ神官や埋葬者の親戚など内部事情に通じた者によっても墓は暴かれ、20王朝に至った時にはすでにかなりの墓が盗掘の憂き目にあっていた・・・

若くして亡くなったツタンカーメンの王墓でさえ未盗掘ならばあれだけの見事な品々が埋葬されていたのだから、治世の長かった偉大なファラオの王墓から一体どれだけの宝物が盗掘されたのか! 

金銭的な価値だけを求める人間によって無惨にも分解され、金を溶かされてその美しい姿が永遠に失われる、といった事が何千年の間続けられたのか・・・それを想像するだけで悔しくて胸が痛くなってくる・・・まぁ明日のパンにすら困窮する生活にあっては、美もなんもない気持ちも分からんでもないけどね・・・

王家の谷はこんな岩だらけの場所である。 涼しいはずの1月でさえ、太陽を遮るものが何もなく 強い日差しに気が滅入りそうだった。 多分日の高い内は盗賊も警察も仕事にならず、お互い 暗くなってから活動したのだろう。 「ご職業は?」「・・・夜の仕事です」とか ホスト神官たちに言わせたいなとか思わず妄想。 跪いてライターを差し出すのだけは上手そうだ。

シャダ子が走り回ったあたりをバックに21世紀極東の住民。 アラブ人のシンボル的存在であるこのかぶりものは、 強い太陽から肌を守ってくれ、かつかぶってる方が涼しい。 でもヒョウ柄に合わせるクドいコーディネートはよしましょう。 それにしてもこの背景・・・(笑) 高速道路の工事現場だよと言っても十分通じそうだ。

ラムセス6世の王墓だったかな。 輝ける来世を祈願するためにのみ、神に向かってのみ描かれた 観賞者なき、美術ならざるものの美しさ。

ラムセス9世の王墓の壁に掘られたヒエログリフ。 石灰岩に着色。 古代エジプト人の識字率は1パーセント程度だったが、 王家の谷の職人達に限って言えば約40パーセントという、 古代社会においては驚異的な識字率を示していたと聞く。

捕虜となった敗戦国戦士の哀れな姿。 「後ろ手に縛られた全裸」という姿に「うへへへ、古代のSMだぁ」 と大喜びで激しくシャッターを切った。 ツアー同行者からけげんな眼差しを向けられていたのは 確実であるが、その冷たい視線に 王家の谷でテンパった女が気付く由もない・・・

「泥棒村」という不名誉な名でも呼ばれるクルナ村。 村人達は先祖代々ここに住み続けている。 これらの家々の下にはまだ多くの墓が残されているのだが、 クルナ村住民の居住権を守る必要もあり、 エジプト政府は苦慮している。 実際、村民は自分の家の下を掘り、埋葬品を少しずつ売って 生計を立てたりもしていたそうだ。

「写真を撮っていいかな?」と尋ねると大喜びで整列したクルナ村の少女達。 しっかり胸に抱きしめている布人形はぼろぼろのドロドロ。 「バクシーシ、マダム」と言われなんとなく悲しかったが お金を上げるのもなぁと、日本から準備していた髪留めセットを配布。 ものすごく喜んでた。 ※この「ドロドロの布人形」なのだが、この後何度か西岸を訪ねた結果 少女達の玩具ではなく「売り物」だと判明。 それもボロボロのくせして、びびるほど強気な価格設定なのだ。

ルクソールのホテル・ソネスタ・セントジョージの フロントの兄ちゃん。 とても愛想が良く、マメに動くので好感を持ち 「写真撮ってもいいかな?」と尋ねると 「え?ボクを?」と一瞬驚いたものの 嬉しそうにポーズを取ってくれた。キュートじゃのお・・・ 次回のホテルもアンタんとこに決定!