突然炎の如く

あれは・・・もう遠く過ぎ去った2003年1月の爽やかな朝・・・

コンビニで開いた少年ジャンプ、眼下のマハードの「私めに裁きを!」にプッツンきてその足で駆け込んだ旅行会社のカウンター、なし崩しにそのまま申し込んだ5日後出発の40数万円のツアー・・・

このように生まれて初めてのエジプト行き、通称「マハ萌えエジプト旅行」は萌えのみを友とした思いつきの旅でした。

月曜日に週末出発の旅行を決めるなんて・・・とは思いつつも、火ダルマ萌えパワーでロケットスタートしたエジプトは、思ったよりはるかに心身共にしっくりきて、も〜その快適さといったら「自分ひょっとして前世はエジプト人?」とやや危うい妄想を膨らませてしまうほど。

「我が心の故郷ルクソール、来年までサラバ!」そう思いつつ後にした雲一つない青い空と埃舞い上がる乾いた大地でしたが、来年どころかまさかその8ヶ月後、まだまだ暑さ本番で草木の一本も生えぬハゲ山連なる地を再び訪れることになるとは・・・

でもね、ジャンプ誌上、王家の谷でファラオを捜して駆けずり回るタイミングの悪いハゲの子を飽きず眺めていると・・・一万キロ先から呼び声が聞こえたんですよ。そう、王家の谷が私を呼ぶ声が・・・

その微弱な呼び声をソコロ国立電波天文台のパラボラアンテナのごとく受信して、行って参りましたこの9月。ノリと萌えだけをスーツケースに詰め込んで思いつきの旅ふたたび。
通称
「シャダ萌えエジプト旅行」へフラ〜イハ〜イ。


とはいえ、私はしがないサラリーマン・・・

さすがに「帰国してデスクがありませんでした」では今後女一人で雄々しく生きていくという人生設計に大きな狂いが生じて困ってしまいますので、「王家の谷が呼んだから」というキッカイな事情だけでは4日も会社を留守になんぞできませんよねフツー。

・・・ところが不思議なことに前回も今回も超忙しい時期なのにも関わらず、奇跡のようにぽこっと仕事のスケジュールが空いたんですよ。これって古代エジプト七柱神のお導き?

じゃあ神の気が変わらない内にさっさと旅行会社や航空券屋ににあたらなきゃ!・・・タイムリミットは8日間。

←ルクソールのホテルテラスからネクロポリス・テーベをながめつつコミックス33巻とジャンプ切り抜きを味わう。遊戯王ファンで良かったと思うこの一瞬。

初めは又気楽にツアーに入ろうと思ってたんですが、ツアーのコースは各社だいたい同じで、「『地上の星』をBGMに黒部ダム見てた方が千倍いいんじゃないの?」と思わせるアスワンハイダムや、「モスクはトルコで腹一杯なんじゃ!(怒)」というモハメッド・アリ・モスクなど、二度と見たくないスポットも有無を言わさず組み入れられているのが大問題。

エジプト知識は白紙状態だった前回の旅行から8ヶ月、今の私はもうエジプト処女じゃございません。
「もっと知りたい神官サマのことv」というポップティーン的動機はひとまず脇においといて、この8ヶ月自分にしては一生懸命エジプト資料と格闘した結果多少なりとも知恵づいて、この度見たいスポットはかなり絞り込まれております。

・・・テーベ東岸の神殿群、西岸の葬祭殿、貴族と職人の墓、古代エジプト人の気分になってアビドス詣、そしてシャダ萌え旅行ゆえぜったい落とせないのは王家の谷散策・・・

これら、一見「ちょっとエジプト慣れした人のマニアックセレクション」。
しかしてその実体は・・・
遊戯王「ファラオの記憶編」オタクセレクション以外の何者でもない。人に胸はって言えねー。

このような事情から、己の欲望実現のため今回はルクソールにマンツーマンのガイドを派遣してもらうことにしました。だってアラビア語ができない私が短い期間で出来る限り効率的に動くためには、ガイド雇うにこしたことありませんからね。
ホテルの予約も旅行会社を通した方がずっと安いと分かったのでほぼすべてお任せ。いつもは節約のためネットやファックスで予約を入れたりするんですが、人に任せっきりって何て楽ちんなんだ!


→カイロのデラックスホテル、ラムセスヒルトンのお部屋。不動産屋のCMに出てきそうな部屋だが、一人では空しいだけ・・・キングサイズのベッドのすみっこで寝るとしみじみロンリーだった。

さて、関空ーカイロとカイロールクソールのチケットを押さえてからの一週間は襲いくる仕事と闘い目的地の資料を作り、海外用電気製品を調達し、万一自分が死んだ場合の家族への申し送り書まで作製して・・・おまけに神社仏閣へのご挨拶まで行くという周到さ。自分、マメですから・・・

え?どうしてエジプト旅行前に神社仏閣に行く必要があるのかって?

それはね、自分の気力&体力が余りいい状態でない時に、死者の眠る西岸ネクロポリス・テーベ、そして何より「世界で最も古い聖地の一つ」アビドスへ向かうのに相当ビビってたからなんですよ。下手して異国の神さまの不興をかったりしたら・・・言葉通じなさそうでマジ怖いじゃないスか。(このあたり「遺跡から邪神パズズの像が発掘されてから災いが襲い来る」という映画「エクソシスト」の影響丸かぶりです)

遊戯王の舞台となった18王朝どころか、それをはるかに遡り上下エジプトが統一された頃からギリシアローマ時代までエジプト全土のオシリス信仰の中心地であったアビドス、歴代ファラオが「空墓」を造営した地アビドス・・・セトによってバラバラにされたオシリスのよりによって頭が埋められたという、古代エジプト人の信仰心が渦巻く中の台風の目っぽい聖地は、生半可な気持ちで行くとかなりヤバげ・・・

そこで慎重には慎重を期して、ことある度ごとにお参りする地元の神社に旅行安全祈願をお願いしに行きました。
迷信深いやつだと思われるでしょうが、ベッドの足元に何か立たれて「あぁ、アビドスのせいだ・・・」なんて金縛りにあいながら後悔するのはヤじゃないですか。

私は神社で神主さんに質問してみました。
「古代エジプトの聖地に行くもんで失礼がないようにしたいんですけれども、何か注意すべき点はありますか?」
「・・・・・うーん・・・・・・・・あそこは古いところですからねぇ・・・・・・・・・」
(しばし無言)

なに?なんなのさその間は?!
そして沈黙の後、神主さん「まぁ清潔にして行くくらいで十分かと思いますよ」って、ホンマか?ホンマなんか?!かえって不安増大・・・

取りあえずその日は「9がつ〜20に〜ち〜からぁ〜28にぃち〜い〜までぇ〜〜エ〜ジ〜プ〜ト〜へ〜まいる〜〜ミキチサ〜トの〜お〜」などと祈願してもらったその足で、いつものお寺に先祖の遠場供養に行き、仕上げにイリのいる霊園に行って来ました。まさにお参りフルコース。これだけやったら十分でしょ。

ペット霊園では「姉ちゃんね、今度お前のご先祖のいたエジプトに行くんだけどさ、お前も一緒に行くか?」と遺影に話しかけると「うん行く行く!」とイリが答えたような気がしたので、彼の尻尾の毛を一房財布の中に入れていくことにしました。はたから見るとヤバい人ですが、愛犬家にはナチュラルに理解いただけかと。ある意味私にとって最強のお守りですな。


→ラムセスヒルトン26階から見下ろすカイロ市街。うかれ気分で「ワハハハハハハ」と高笑いしそうだった。

このように可能な限りの準備を怠らず、おまけに「しばらく更新できないから出発前に・・・」と寝る間を惜しんで描いたサイトトップはよりによって「お色気カリムん」

こんなホモ晒したままでは恥ずかしくて死ねねえ!無事に帰国せねば!・・・という動機付けのためのカリムん。

・・・と、そこまで万端の準備をして旅出ったエジプト、結果から申しますと今までの旅で一番いい旅行でした。

ほぼすべてが思い通りに進んだ正に「神のご加護を得た」ような理想的な旅行。

あ、でも一つだけ発生した問題はといえば・・・
アビドスの中心地を写真に撮った直後ね、カメラがブチ壊れてフィルムが感光しちゃったんですよ。それも36枚全部撮ったあとに・・・
そういば阪神大震災の時も、とある有名神社が潰れてるのを後先考えずにカメラに収めた直後カメラ壊れたんだっけ。

でもこれは祟りとかバチがあたったというよりむしろ「私のカメラは旅行先で三度に一度は壊れる」というジンクスゆえかもしれませんけど。
あそこでもここでもカメラが謎の故障を起こすもので今では海外旅行には押さえに2、3台持って行くくらい故障には慣れっこなので、「またまた〜!」ってライトな感じでしたが、次の日に写真を撮り直すため同じ場所に行ったのは結構無駄な時間でしたわ。

まぁハプニングといえばこの程度だったもので、「ミキさんと言えばハプニング」とばかりに私の帰国を期待していた方々からは「え〜っ?何もないなんて珍しい!」と半ばがっかりした声を出された時には、友人達がちょっと憎たらしくなったものでした・・・