2015年8月28日(金)

昨日に引き続き「自分がなぜ巨大なストレスを抱えてまでリスク資産に投資をするのか」という問題についてじっくり考えたところ、根本的理由に行き当たったわ。「会社の給料だけでは厳しいから」というむっちゃ単純な理由だったわ。

見た目が奥様っぽいせいか、人様には生活になんの心配もないリッチマンみたいに思われがちで、そう言われるのが嫌いで、いつも「そうじゃないんだYO!」と哀しくなってる私の給料は、ぶっちゃけると手取り20万そこそこ。ボーナスも出たり出なかったりの薄給だ。
まあ、気楽が取り柄の会社だから、安月給でもしゃーないかとは思ってるんだけどね。

これでも運良く正社員に拾ってもらったおかげで、民間給与所得者の女性平均年収である272万円(国税庁発表「民間給与実態調査統計」平成25年度分 なお男性の平均は511万円。むごい差だ。)は上回ってはいる。けれど給料だけでは自分のめんどうを見るだけでカツカツだし、銀行の預金金利がよくて0.2%というご時世のもとでリスクに備えた資産を形成しようとすれば、会社の休日にブラックバイトにいそしむか、投資のリスクを取るかの二択しかない。

で、休日はマヤちゃんの世話にいそしみたい私が選択できるのは後者しかなく、その結果、リスクに備えるためにリスクを取るという、なにやってんだか分からない事態に陥るというわけだ。

「会社の給料だけでは厳しいから」は分かった。でも、養わなくてはならないものは犬だけなので、給料だけでも十分生活はしていける。ではなぜお金を増やしたいと思うのか?
「老後が不安」「病気や怪我で働けなくなる不安」に対しては、家を売れば自分一人ならギリギリ逃げ切れるかな?という状況なのに、なぜ持てるもの以上を求めてしまうんだろう?

そう考えると、一に「ヘボピーの老後不安もなくしたい」で、二に「若い友人たちが選択肢を増やす可能性を広げたい」という欲望に行き当たった。
お金に振り回されるのは馬鹿馬鹿しい生き方だと思う一方、お金とは「可能性と引き替えるツール」でもある。そう多額ではないちょっとしたお金が足りなくて、大きなチャンスを逃がしてしまったり、どうしようもない生活から抜け出せなかったりする人たちをこれまでに色々見るたびに、金銭とは「選択肢を買うためのもの」だと痛感する。

だから自分の面倒だけはなんとか見られる状況に至った中年世代の私が、次に何をできるのだろう?と考えた結果、「友人たちのためにまずは余剰資金を増やしたい」という結論に達したんだな。
こう書くとなにやら崇高だけど、自分の心をさらに掘り下げると「ゼニを働かせないと気が済まない」というセコい正確に行き当たるわけだが。

まあご立派なこと言ってても誤爆で資産を吹っ飛ばしてちゃ世話ないわな。
うすら寂しい残高の預金通帳を手に、中国バブル崩壊爆弾を落とされて壊滅した焼け野原に立つ私は今、背水の陣で材料株への投資を迷っているところだ。

蜘蛛の糸から作ったスーパー繊維と、植物のセルロースから作ったハイパー繊維。
すでに実用段階の寸前まで行ってるこの二つに絡んだ会社は、材料一つでストップ高必至なわけだけど、スパイバー上場&セルロースナノファイバー量産化まで資金と私のMADがもつのか否か、それが問題だ。


またしても生臭い話ばかりしてしまった……。二日連続でゼニの話をしたくなったということは、ひょっとすると今日は「お金の日」だったりして、と調べたろころ、「証券投資の日」は10月4日(とう・し、なわけねw)、「銀行の日」は7月1日、「貯蓄の日」は10月17日で、ぜんぜんカンケーなかった。

けど、一番大事なことを忘れちゃならない。今日はカナの誕生日(だった)んだぜ!生きていれば46才。押しも押されぬオバちゃんだけど、あんたはもう年を取ることがない永遠の44才……ってちっとも嬉しくない表現だね。

今日はあんたが好きそうなケーキと花束を買って帰ってあげるね。シャ乱Qと尾崎のCDもかけてあげるよ。できればマクロスのDVDも借りてきてあげる。

なお、8月28日はなんの日なのかな?カナっぽい日ならいいなあ、と検索したら、こちらも「テレビCMの日」「バイオリンの日」「気象予報士の日」で、さらには毎月28日は「ニワトリの日」と、いい話にはかすりもしない結果でございました。

2015年8月27日(木)

時間がなくてレポートは上げられず仕舞いになりそうですが、先週の土曜日に参加した塚口サンサン劇場の「マッドマックス絶叫上映」の模様が、本日の「ちちんぷいぷい」で放映されます。
関西と北海道の一部のみの放映だけど、よかったら観てください。そしてさらによかったら録画しておいて、私が録画失敗した場合に備えてください。(三倍じゃなくてフルサイズでね!!)

なお、仕事の早い方が書いてくださった絶叫上映のレポとツイッターまとめはこちら。コスプレの私ものってるよ!(恥)

【MAD上映】塚口サンサン劇場でマッドマックス見たら、喉がヴァルハラに逝きかけた(レポ、ネタバレ)

http://ok723.hatenablog.com/entry/2015/08/23/233801

8/22 塚口サンサン劇場「#マッドマックス FR」Screaming "MAD" 上映!(ツイッターまとめ)

http://togetter.com/li/863892


20日午後からの世界同時株安のあおりを受けて、たったの二日半で過去二年間の利益を吹っ飛ばしただけでは飽きたらず、軽く年収分のマイナスを食らったミキですおはようございます。

でもまあリスク資産をいじるということは、リスクと真っ向勝負することなんだから仕方ない。人生そういうもんだよな、うへへへー……となんだか人ごとのように醒めてる自分に少々驚きを感じないでもない。以前なら仕事に手が着かないほどブルーだっただろうに。

やっぱカナが死んでからいい意味でも悪い意味でも執着がなくなった。いや、なくなったのではなく、執着、特に金銭に対する執着を捨てようと悪あがきした結果、アクセルを踏み込みすぎてこんな破滅的な売買をしてしまう気がする。

私は人に対してはセコくはないが、己の金銭マネジメントに対してはかなりシビアで執着も強い。(強くなければ株なんかやらんわな)
これはどうやら「三つ子の魂百まで」のようで、小学生の頃の日記にはお小遣いや手伝いのお駄賃によって得られる対価をどう配分するか、ある金額を得るためにはどう動けばいいか、綿密な計算をしていて我ながらびっくりした。

それは具体的に「あれが欲しいからお金を集める」というよりも、いざという局面に発揮されるお金の力にあこがれて、そのパワーを少しでも近くに置いておきたかったように思われる。カイジの黒幕かよ。

その甲斐あって、成人してからもお金には翻弄された。されまくった。
親友と思っていた女の保証人になって借金を背負い、そこから仕事を三つ掛け持ちして、死ぬほど働いて年収一千万超えて貯金ができるまでに回復。その貯金を詐欺師にぜんぶ持って行かれて、そこからさらに人の助けを得てフェニックスのように復活、株で丁半バクチできるまでに心のゆとりを取り戻せたり……と、これまでお金はいつも人生を良くも悪くも派手に彩ってくれた。

でも、カナの死を契機として、私は今、「人生におけるお金の立ち位置」を根本的に変えようともがいている。
カナが金銭問題に苦しむ中で死んでしまったせいで、お金に対しては憎しみすら覚えるようになったけれど、残念ながらアマゾンの奥地で孤立して生きる人たちの仲間に入れてもらわない限り、お金と無縁で生きることはできない。
執着の程度に差はあれど、付き合うことを絶対に避けて通れないお金に囚われず、かつリスクにも備えるためにはどうすればいいのか?

まあ、「リスクに備える」なんて発言をしている限り、執着せずにいるなんて絵に描いたショートケーキなわけだけど、色々と考えてみますわー。

それにしても腹立たしいのが皆さんもご存知の通り、ネガティブでペシミスティックで人類はもうすぐ滅亡すると思ってるデビルマン世代の私は、株は空売り、為替はショート、投資信託はベアファンドしかやらない主義。
下の日記で「カラスが鳴いてる。なんか不安」と書いた翌日の午前中までは、おなかいっぱいベアファンド(株価が下がれば下がるほどヤッホーな側ね)を購入していたというのに……。

何を思ったか20日の午後一番で全力でもって株は「買い」、ドル円はロングで入ってしまってな……。
結果、その二時間後より四日間に渡って株価は暴落、為替は円高、あとに残ったのは口座残高の焼け野原なわけだが、毎度のことながらギリギリで反対の行動を取ってしまう自分が、ここまで来るとものすごく眩しい。前世はデルフォイの巫女か卑弥呼だったかもと本気で思えてきた。

2015年8月21日(金)

ツイッターで紹介されていたハフィントンポストのこんな記事。リンク先に飛んだとたんにうるっときた。

犬のおじいちゃん、その瞳に映る豊かな人生(画像集)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/17/dog-years-faithful-friends_n_8001606.html

コッカースパニエルと同じ垂れ耳で、目のあたりがちょっと似ているせいだろう、中でもバセットハウンドのポッピーの写真(上から三匹目)が大好き。これを眺めていると12年もの間、私たちと一緒にいてくれた老犬マヤが愛しくて涙が出る。

サイトで紹介されている老犬は3匹だけだけど、アマンダ・ジョーンズさんの写真集では30匹の写真が載っているらしいので、迷うことなくカートにイン!

Dog Years: Faithful Friends, Then & Now
http://www.amazon.com/Dog-Years-Faithful-Friends-Then/dp/1452137455/

洋書はたいてい海外アマゾンに直接注文する方が安いのだが、この本については本体は安くても送料が30ドル以上かかるため、トータルでは日本アマゾンの方が安くつきますよ念のため。

老犬を撮った写真集で思い出したのが、秋元良平さんの「老人と犬」。
この写真集では老いているのは犬ではなく人で、老人介護施設でお年寄りに寄り添う犬たちを捉えたものなんだけど、長い人生を歩んできたヒトがイヌに向ける優しいまなざしと、それに応えるイヌのまっすぐな表情がシンプルな愛の姿を示していて、ページを開くたびに胸がしめつけられる。

アマゾンで在庫を調べたところ、残念ながらタイトルすらヒットしないから絶版なのかな。
秋元良平さんといえば「盲導犬になったクイール」シリーズの写真家でもあり、こちらは何種類か入手可能のよう。犬の表情を捉えるのがとても上手い方なので、興味があったら古本ででも手に入れてみてください。

マヤ 6ヶ月

マヤ 12才3ヶ月

2015年8月19日(水)

今日は早朝からカラスがやたらと鳴いている。鳥の声を聞くときまって思い出すのが、阪神大震災の後のカナとの会話。
あの日の思い出話になると、カナは「地震のすぐ後に窓の外を見てたら、鳥が石みたいにぴゅーっと落ちていってんで!」と、なにかすごい世界の秘密を見つけたみたいに語るのがお決まりで、私はそんなこと地震には関係ねーだろ!この子はいつまでたってもガキだなあ、と内心鼻で笑いながら、「ふーん、そうなんだー」とうなづいていたのが懐かしい。ああ、カナともう一度話したい。

カラスは鳴きやまないし、昨日までとはうってかわった低い気温とどんより薄暗い空の灰色も相まって、なにかよからぬことが起こりそうな陰鬱な雰囲気……。
とは言っても幼少時に人類滅亡をテーマにした作品に触れすぎた影響で、年中無休で「何かとんでもないことが起こりそうな予感」を抱えて生きている私の予感はめざましテレビの星占い並みに当たらないから、きっと今日もなにごともなく過ぎて、夜が来て、また朝が来るのだろう。

関係ないけどおとといあたりから目がしくしく痛んでまっかっかなのだが、みなさんは異常ありませんか?
私の場合、目が充血するなんてことは滅多にないから、二日連続で赤いのはなんだかおかしい、とまたしても人類滅亡センサーが作動。
天津の化学プラント爆発の影響で、有害な物質が風に乗ってやってきているのか、それとも寝ている間に目をこすったせいで軽い結膜炎になってるんだろうか……。
もし前者ならマヤちゃんを散歩に行かせるのが怖くなるから(犬は体が小さくて有害物質の影響が出やすいし、人間よりも地表に近いところを歩きますからね)、ひとまず後者説を採用するしかないのだが。

いかんいかん。湿気のせいか今日は目覚めた時から足がしびれてうっとうしいし、うっとうしいモードのせいでついカナのことを思い出して哀しくてたまらない。
こんな時には大好きなANAの空飛ぶワンちゃんを見て癒されよう。これを見ると涙で前が見えなくなって、飛行機を降りる時にはいつも目がまっかっかだよ。

ANA NEW Branding Video 【Boarding】 機内ビデオ【搭乗時】篇
https://www.youtube.com/watch?v=bka9G0x0CWM

ANA 機内ブランドビデオ【降機時】篇 Another Sky
https://www.youtube.com/watch?v=J_GGp6Phnrg

2015年8月12日(水)

お散歩スタンバイのマヤちっち。

マッドマックスを観に東京に行ってます。
シネマシティでイモータン印のTシャツを着たまっ白髪の女を見かけたら、それは多分私です。

ご用の方は携帯かツイッター(@horemheb_18)から連絡くだちゃいませ。

2015年8月10日(月)

本日は1万円で1万2千円分のお買い物ができる「ときめき商品券」の発売日。K市に先んじて発売された同種の券(どこの自治体でも「ときめき」なのかな?)には老若男女が殺到、数百名の行列からは熱中症で脱落者続出と、不況不況といいながら庶民の旺盛な消費意欲を示してくれたものだが、さて地元ではどうなることやら。

市役所のほか数カ所でしか販売しなかったと聞く自治体に比べると、数十カ所の販売所をもうけている商売上手なK市では、呼吸をするように簡単にゲットできると読んではいるものの、今日10時、銀行回りのついでに目指す近所のコロッケ屋に人々が列をなしていたとしたら、クソ暑い中並んでまで買うかどうかは微妙である。

お得な商品券に人々が殺到、「不公平だ!」「あの人は一人で50冊も買ってた!」などのクレームが続出した他自治体の混乱をよそに、へぇー、みんな安いものには目がないねー(笑)、ま、うちの市では出さないんなら関係ないわとダルマのついた耳かきで耳ほじくっていた私。

だが、たまたま市報ペーパーをびりびり裂いて、マヤのフン拾い用の紙を作っていた時、目に飛び込んできた「ときめき商品券」の文字。えっ?!こっちでもやるのぉ?
そして翌日、各家庭のポストに商品券のおしらせが本格的に投げ入れられたのであった。

だが、私は市報を目にするちょうど前日、ピラミッドのてっぺんから飛び降りる気持ちでもするメガネを注文。もちろん支払いも完了していたのだあああああああ!!!!!

それがまた悔しいことに、眼科の処方箋を書いてもらったのは2週間も前のことで、その足で眼鏡屋に向かえば購入と商品券発売の間に一ヶ月の間があるから、しゃーないと諦めもできたというもの。

しかし、なんとなくめんどくさくて注文をダラダラ引き延ばした末に、重い腰を上げてようやく眼鏡屋に行ってフレーム5万、レンズ9万(←ド近眼ゆえ薄さを求めるとこうなるのだよ)のブツを注文したその翌日にこの仕打ち!ひどいっ!!
株でもしょっちゅうやらかすことだが、「材料が飛び出して、大きく動くギリギリ直前にいらんことする」のは、きっと私が超能力者だからだろう。

そんなこんなであと一日待っていれば3万円近い節約ができた悲劇のメガネ。
これがメガネスーパーとかJINSなら、「あれ、一旦返品という形でカードをマイナス金額で切ってから、ときめき商品券を使わせてもらえませんかねー。でへへ。いや、サングラスも買うから!.頼むっ!」と言いかねない。
でも、ドイツでメガネマイスターになったスタッフを擁し(レア資格らしい)、お高い絵画コレクションなんか飾ってる村一番のスカした眼鏡屋でそれをやるのは、さすがに見栄が邪魔をする。

そんなこんなで今日は取りあえず販売所に向かってみるが、すでに大物を入手した私にとって、ときめき商品券はただ心がもやもやするだけのブツである。
欲しいものなんてもうない。でも損をするのはイヤッ!……ということで、ここは自分に罰を与えるため、めでたく「ときめき商品券」をゲットできたら、「好きに使いな」とヘボピーにぜんぶ渡してときめかせてやろうかな。

<追記>その後、ときめき商品券の発売日を一週間間違えてたことが発覚。8月17日発売でした。でもやっぱり悔しさが紛れることはない。ほんと自分のセコさがイヤになる。

2015年8月8日(土)

昨日、カナの一周忌のために向かった花屋。今日びなんでもかんでも高くなってるけど、花の値段もぜんぜん変わってる。消費税アップ前は一束398円が中心価格帯だったのに、今は698円。キツいなあ。

……と戸惑いながら店頭を物色していると、目に入った「お風呂用 一本20円」の札。あと一押しで首を垂れそうなピンク系の可愛いバラの花がぞんざいにバケツに放りこまれている。

一周忌にこんなもん買うのはカナが可哀想?という思いが頭をよぎったものの、5秒後にはバケツごとレジに運んでいた。遺骨のある居間は日中は蒸し風呂状態になるので、高いお金を出してピンピンした花を買ったとしても、あっという間にうなだれてしまうに決まってる。

それにカナはすごいしまり屋だったから、生きていればきっと「ちゃあちゃ、花にそんなにお金かけてくれなくてええで」と言うに決まってる。そう都合良く解釈して払った支払った代金は640円。

この店で一本20円の花なんて初めて見た。タイミングが良かったなあ。これもカナのお陰かなあ、とお得気分で帰宅したのであった。


盆前にもなってツバメの話でもないんだが、先日のレスキュープロジェクトの顛末を少々。

カラスからツバメのひなを守るため、人目を盗んで空き店舗の軒先に黄色い糸を張ったのは6月の日記に書いたとおり。
早起きとドキドキの甲斐あって二羽のひなはめでたく大空へと放たれ、私たちは期日前ギリで年賀状をポストに投函したような安堵で胸いっぱいだった。

さて、巣立ちを果たしたツバメ一家、そのまま北国目指して飛び去ると思いきや、ひなが飛び方を会得するまで巣のそばから離れないものなのだろうか。日が落ちると巣の近くの電線で、親子四羽が肩を寄せ合って休む姿が観察できた。
しゅっとしたフォルムの両親とずんぐりした二羽の子供。黒いシルエットを目にするたびに「巣立ちの手伝いができてよかったなあ」と胸がきゅうんとなって、マヤの散歩の際には必ず電線を見上げたものだ。

だが、すぐに私は野生動物が生き延びることの難しさを思い知ることになる。


それは巣立ちから一週間ほど経ったある朝のこと。ツバメご指定の電線の下を通って散歩に行く途中のマヤが、坂の上の黒い塊に向かってまっしぐらに突進した。
意地汚いマヤは誰かが投げ捨てたコンビニチキンのひからびた骨や、ネコばあさんがまいたキャットフード、ラーメンのだしを取ったあとのゲンコツや、除草剤をかぶったパンのかけらでも、食べ物と見るや0.2秒でパクッといくから油断は禁物。
「マヤーっ!ダメーっ!」と叫びながらワン公を引き寄せて黒い物体に目を凝らすと、なにやらイワシの頭のよう。カラスがゴミ袋を漁ったのかな。

でも、目を近寄せて見たらイワシじゃなかった。口を半開きにして目を固く閉じたツバメの頭だった。頭の大きさとくちばしの黄色さからして、あれは親ではなくひなの片方だったと思う。

昨日まで楽しげにじゃれあっていたものが、一夜明けると無残な死体になっている。
ショックのあまり体が震えた。カナの遺体を発見した時の衝撃が蘇って、すこし安定しつつあった精神状態が一瞬で後戻りするくらいの大きな一撃を食らった。
それから2週間ほどの間、憂鬱に苛まされた。


かつてツバメだったものの残骸が落ちている道は、マヤの散歩で通らざるを得ない道。仕方なく毎日それの横を通り過ぎた。
卵からかえって巣立つまで、どうか上手く育ちますように!と祈りを込めて成長を見守った生き物の「死」。それに直接触れると落ち込みがひどくなりそうなのが怖くて、自分ではどうすることもできなかった。

哀れに思った誰かが拾って処分してくれるか、ネコかカラスが持って行ってくれることを願ったけれど、ツバメの頭はいつまでも坂道の中途に転がっていた。
だが車のタイヤに押しつぶされ、太陽に照らされ風にさらされるうちに、ツバメは少しづつひからびて小さくなってゆき、元がツバメだと知らない限りゴミとしか思えない様子になって、ある朝姿を消していた。
それに気づいた時には言い知れない虚しさを感じると同時に、肩の荷をおろしたようにほっとしたものだ。


そんなできごとから数週間がたったある早朝のこと。威嚇するようなカラスの声に混じって、たくさんの鳥たちが激しくさえずる声に飛び起きた。
マンションの向かいにある肉屋の軒下で別のツバメが子育てをしていたのを知っていたから、ひなを狙ってカラスが来たんだ!とベランダに走り出た。

そのとき私の目に入ったのは、目前の電柱に止まってツバメたちを威嚇する一羽のカラスと、聞き慣れない警戒音を発しながらカラスの周りをゼロ戦のように飛び回る黒いかたまり。
肉屋のツバメ夫婦だけではない。華麗な宙返りを繰り返しながら目にも止まらぬスピードで眼下の空中を飛び回る鳥たちを数えると、1,2,3、4……ぜんぶで7羽いる。
家族ではない個体でも、危機に際して協力することを初めて知った。

我が家の周辺で子育てを確認していたつがいは3組6羽で、ここには7羽……ということは、半端の一羽は私たちがレスキューしたひなに違いない。
頭だけ残して食われてしまったきょうだいの、生き延びた方は親と同じくらい速く飛べるようになって、同族の危機に立ち向かっている!
泣きそうになった。あの時無理してカラスよけを作って本当によかった。
両親にも妹にも何もできなかった自分がささやかな役に立てたことが嬉しくて、ひらひら飛び回るツバメたちをずっと眺めていた。



その一週間後、レーザーポインタを買った。カラスはひなが食べごろの大きさになるまでツバメの巣の観察を続けると聞いたが、その通りの事態が毎朝、ベランダから10メーターほど離れた電柱で起きていたからだ。

前回のレスキュープロジェクトの対象ペアは空き店舗に巣をかけていたおかげで、数年来閉まったままのシャッターに細工をすることができた。
でも、眼下の肉屋はバリバリ営業中で、勝手に黄色い糸を張るのは無理。どうすりゃいいんだ!

そこで「カラスよけ」でネット検索したところ、「軒先にカラスの死骸をぶら下げる」なんて過激なものとか「カカシを立てる」なんて無理がすぎるものに混じって私にもできそうなプランを発見。
それは「レーザーポインタでカラスを狙って身の危険を察知させる」方法であった。

残念ながらプレゼンを要求される派手めの職種ではないから、レーザーポインタは持っていないし価格も知らないが、調べてみると2千円〜2万円と幅がある。
どうやらカラスよけに一番いいのはグリーンのレーザーポインタで、照射距離は長ければ長いほどグッド。

でも、たとえ強力なやつを買ったとしても、空間認識能力が人並みはずれてダメダメな自分のこと。うまくカラスに当たらないどころか、誤って自分に向けて照射しかねない。
そういった危険性とふところ具合を考慮した結果、そこまで強烈ではないグリーンの光線を発射する、2千円のやつに落ち着いた。

数日後、届いたレーザーポインタは申し訳程度に必要最小面積のエアキャップにくるまれた上、50枚入り100円のダイソーの商品みたいな茶封筒にダイレクト封入で到着。
こっちが申し訳なくなるほど腰が低い楽天ショップが多数派の中、「お買い上げありがとうございます」のメモの一枚すら入ってないのが胡散臭くて、外国の消印じゃないか思わず確認した。

それでも電源をオンにすると発射された緑の光がまっしぐらに肉屋の店頭に詰まれた「豚ロース」の空き箱に到達、緑の点を描いた時には、電球の光を初めて目にした木こりくらいびっくりした。

人生初ポインタが空飛ぶ車のプレゼンではなくカラスいびりというあたりはわびしいが、その日からレーザーポインタを枕元に置いて就寝。
カラスvsツバメの空気を嗅ぎ取るや否やベランダに飛び出すべく、準備万端でスタンばっていたのだが……。

結果から言えば、知らないうちに無事に巣立った元気なひなが5羽、下手っぴな飛行を披露するのを洗濯物を干しながら眺めることになるのであった。(※)

使われずじまいだったレーザーポインタは、被災した時にでも使えないかと考えたものの、救助を求めるポインタの光でパイロットが目をやられて、瓦礫と化した街に墜落するヘリコプターの映像しか想像できなかったので、おとなしく電池を抜いて封印することにした。

せっかく買ったのに使うことがなくて残念だけど、来年の春、これを使ってツバメを狙うカラスをおどす日はくるのかな。それまでおやすみなさいポインタ。

……と思ってたら、肉屋の隣にある年寄り向け弁当配送センターからひながエサをねだる声が!
そう、気づかないうちに新たな巣が設置されていたのだ。それもカラスから見てむちゃくちゃイージーモードの軒下に……。

レスキュー隊はまだしばらくツバメ界の平和を守るために活躍なくてはならないようだ。

←肉屋のつばめっこ。5羽生まれてぜんぶ元気に巣立ったよ!(あとのことは知らん)

(※)……カラスは羽が何かに当たるのを非常に嫌うという。だからこそ30センチおきに黄色い糸を張るというお手軽なカラスよけが有効だったのだ。

だが、どうやら肉屋のツバメはカラスの翼が軒下の鉄骨に当たる位置に、たぶん偶然に巣を作っていたおかげで巣を壊されなかったらしい。とってもラッキーなスワローちゃん!(=´ω`=)

2015年8月7日(金)

今日はカナの一周忌だってこと、起床後2時間して気が付いた。こんな大事なこと、目覚めると同時に思い出さなくてごめんね、カナ。
会社が終わったら値段のことなんか気にせずあんたが好きそうな可愛いお花をいっぱい買って帰って、今夜はロウソクと線香を絶やさないようにしてあげるね。ロウソクと線香が死んでしまったあんたにとって、何かの役に立つのかどうかは分からんけど。

一周忌だからといってうつモード再発するまで落ち込むことはなさそうだけど、それでも楽しい記念日ではないからそこはかとなく悲しい気分。ましてや今日も窓の外では太陽がギラギラ輝いて、凶悪とすら感じる強烈な光線を照射しているのだから、どうしても一年前に思いを馳せてしまう。

今日も暑くなりそうだ。あの日みたいに。

カナは栄養不良が引き起こした内臓障害と、二日前に新しく投薬されたばかりの精神安定剤、そして料金を滞納して電気代を節約しようとしたであろうこと、そしてエアコンのリモコンを探す気力すらなかったこと……。
そういったいくつもの要素が絡み合った結果、一年前の今日の夕刻、エアコンも扇風機もつけていない部屋、熱中症で44年の人生を終えた。
猛烈に苦しんだ跡はなかったのがせめてもの救いとはいえ、やっぱり暑かっただろうなあ、最期は苦しかったかなあと想像して涙が出る。

でも、カナのノートに遺された走り書きには「自分が40代後半まで生きることがどうしてもイメージできない。46くらいまで生きたら自分をほめてやりたい」とあったことだし、霊能者の「妹さんの死は事故ではなくて、自身の人生の閉じ方を屈強な意志で選び取った結果」という言葉は胸にすとんと落ちたから、過剰に悲しむことはもうしない。

それでも今日はカナのことばかり思い出すデーにしよう。私の中から「そんなん別にいいよぉ〜〜(笑)」というカナの声が響いてくる感覚があるけれど、今日一日くらいはまあ、いいでしょ?

2015年8月4日(火)

ジョージ・ミラーの「ハッピーフィート2 踊るペンギンレスキュー隊」が観たくてTSUTAYAに行ったよ。
ジョージさんというのはマッドマックス全作品の監督さん。でも、ファイアー&ブラッドの世界に生きるマックス・ロカタンスキーの前の作品の主人公は、礼儀正しいこぶたちゃん(「ベイブ2」)と、ダンスが大好きなペンペンちゃん(「ハッピーフィート」)なんだぜ?!MADだろぉ? 
(そんでもって「ベイブ」と入力すると
「部威武」と即変換するマイMacもMADだろぉ?単語登録したわけでもないのに、主人のモードを読みとる能力があるのか?このマシンには!!)

で、TSUTAYAでペンギンレスキュー隊を探していると、別の意味で心臓がドキドキするこんなアニメを見つけたよ。
ヒックとドラゴンやアイス・エイジシリーズよりもベターなポジションを陣取って、あまつさえ面陳(カバーを表に陳列)されているこいつは、スタッフ的にはお勧め作品ってことなんだろうけど……。CGが安すぎて、見てはならないものを見てしまった感すらある。
2004年発売のウォートランものけぞるポリゴン臭だが、これで「2012年制作」やったら怒るでぇ〜〜!!……と思って裏カバーを見たら、しっかり「2012年 イギリス・スコットランド作品」だったわ。プンプン。

この爺さんの声優はなんとショーン・コネリーと知った瞬間、クソミソ言ってたくせして「そ、そんならそこまでは酷くはないのかな?」と思ってしまった私はブランドに弱いジャパニーズ庶民。

そんな大物を起用するなんて意外とゼニかけてる?コネリーのギャラが高くてCGに十分な資金を回せなかったってこと?……と思いつつさらに目を凝らすと、「製作総指揮・声優主演『007』シリーズ ショーン・コネリー」。
そりゃアカンわ。

ショーンおじいちゃんが孫のために作ったプライベートアニメってわけでもないだろうけど、「イギリス・スコットランド作品」とあるあたりで、愛国心を刺激されたスコティッシュのコネリーが、プロデューサーに「お名前だけ貸してくださいよ〜」って担ぎ出されたんかな?なーんて邪推してしまう。

そもそもわざわざ「007シリーズのショーン・コネリー」って銘打たなくたって、たいていの人は分かるから!!

動きがカクカクしてそうな村のひとたち。

「スコットランドのハイランドと呼ばれる町に 相棒のヤギ・ゴードンと一緒に住むビリーじいさん。
ある日、ウサギのデイブとビーバーのベッシー・ブーが川に流されてしまうのだった。ビリーじいさんはハイランドに住むみんなと力を合わせて二匹を救出に向かうが……。」

「死亡遊戯」のブルース・リーか「キル・ビル」のユマ・サーマンみたいな黄色のジャンプスーツを着てるくせして、肩を落として150%無害そうなヤギにわけもなくムカムカっ。お局さまってこういう気持ちになって新入社員をいぢめるのかしら。

ビリーじいさんが「ヤギと同居」って点にもエロ的な意味で邪悪な印象を抱いてしまう。(ヤギさんは獣姦のホームラン王です!)

村のセクスィー担当。名前は「カルメン」か「プリシラ」と予想。これだけおちちをでっかくするなら、おかおももうちょっとなんとかしてあげてぇ!

ほほぉ、彼がビーバーのベッシー・ブーだね(デスクの上で指を組み合わせながら)

マジキモい。1ミリたりとも可愛くない。……ってか、お前ビーバーなら泳げるやろ!?なんで「川に流されてしまう」ねん!!!

……次TSUTAYAに行ったら「ビリーじいさんのミラクル脱出大作戦」借りてみようと思います(=´ω`=)