EVERY MAN HAS A MAN WHO LOVES HIM




「クソッ・・・こんなのアリかよ・・・」
完璧なフォルムの裸身を乱れきったシーツの海の中に投じ、けだるい余韻に酔いながら金髪の青年は呟いた。
「指と口だけで5発だなんて・・・ちょっと・・・酷すぎるんじゃないっスか?」

一方、上半身裸の男はカーゴパンツのサイドポケットから砂漠の猟犬が描かれた青い箱を取り出すと、封を切りながら振り返りもせず嘲笑を交えて答える。
「ふん、5回もイッちまう方の問題だな」
そして一本取り出した煙草に火を付けると深く吸い込み、ため息と共に煙を吐き出した。
「お前、今までよっぽどつまんねえことばっかやってきたんだろうな」
「・・・・・・・・・」
「突っ込むだけのセックス・・・楽しいか?そんなもん」
「・・・そりゃ・・・楽しいですよ・・・」青年はふてくされたように答えたが、何も言わない相手に子供扱いされているように感じて慌ててつけ加える。「でも、こういうのもアリだな」

男はひゃははと乾いた声で笑うと、 こちらに背中を向けたまま右手をひらひらさせてみせた。
さっきまで体の隅々を這い回って自分を翻弄した手。ほの暗い中空に浮かび上がる女郎蜘蛛のような長く白い指を目にすると、腹の底からはまたしても熱気が沸き上がってくる・・・
青年は熱を帯びた瞳で、ベッドに腰掛けたままぼんやりと煙を吐いている男の背中を見つめた。

ゆるやかなカーブを描く頭頂から、滅多に人目にさらされることのない雪白のうなじ。
そして鍛え上げられた両肩から肩胛骨、そして尾てい骨へと向かって流れ落ちる曲線。
いつもは衣装の下に禁欲的に隠された裸体はほんの一握りの人間にしか披露されることはないが、自分はそれを知っている。そして秘密を知っていることに青年はますます興奮した。

「・・・・・・じゃな」
男は銀色の灰皿に煙草を押しつけて立ち上がろうとしたが、骨張った肩をつかむと抵抗はなかった。代わりに投げかけられたのは、かすかに驚きを浮かべた鉛色の視線。
「おいおい・・・冗談はやめてくれ・・・」
何も答えず青年は抜けるように青い瞳に悪戯っぽい笑みを含ませながら、困惑している男の顔を優しく引き寄せる。
「冗談じゃ6発目は出来ませんよ?」「・・・ふざけんな・・・」
だが、深く口づけて舌を絡ませると、こわばっていた体の力が一気に抜け落ちるのが感じられる。

「今度はサージャントの番ですよ、ね?」
唇を離して甘くささやくと、諦めたように肩をすくめてゆっくりと背中に両腕を回してきた男を、青年は二度と離すまいとばかりにしっかり抱きしめた。