やっと分かったから、もう。




「・・・大丈夫、か?」
「・・・・・ん・・・」
 心得があった訳じゃない。
 女なら、ともかく。
 だけど、不思議と。そんなことに対しての迷いは
なくて。
 ただ、愛しくて。それだけで。
 肌に、僅かに手を滑らせただけで、震えるような
吐息を漏らしながら、微かな声をあげて。
 自分の声に、戸惑ったように。不安げに見上げてくる、
瞳に。まぶたに、そっと唇を落として。
「・・・・・全部、くれんだろ・・・?」
 囁けば。
 頬に朱を敷いて、恥ずかしそうにコクリと頷いて。
「・・・・・何か、ドキドキ・・・する」
 その呟きどおりに。触れあう身体、肌の下には、
常より早い鼓動が感じられて。
「そ、だな・・・俺も・・・」
 すげー、ドキドキしてる。
 シーツを掴んでいた手を取り、己の胸に圧し当てて。
そう告げると。
「同じ、だね」
 フワリと。安心したように、微笑んで。
 誘われるように。薄く開いた唇に、啄むように
軽く口付ける。
「・・・・・あ・・・」
 そして、そのまま。顎から、首のラインに沿って
唇を這わせ、薄い皮膚を吸い上げれば。
 ピクリと身体を震わせ、溜息を零す。
 紅く、小さな印を。
 幾つも幾つも、白い肌に。
 そして、胸元に。
 薄く色付いた飾りに舌を這わせ、舐めあげると
瞬間、息を飲んで。
「・・・・ッきょ、ういち・・・・ヤ・・・」
「悦く・・・ねぇ?」
「・・・そ、じゃ・・・なくて」
 微かに笑いを含んだ声色で、問いかけながら、その
突起を含んで吸い上げれば。
「あ、・・・・ッう・・・・そ・・ッ」
 明らかに。艶を帯びた、悲鳴にも似た声を。
「・・・・・キモチイイ・・・?」
「・・・や、ッ・・・あ、あァ・・・ん」
 もっと反応を引き出したくて、執拗に攻め続ければ、
フルフルと首を打ち振りながらも、その嬌声は隠すことが
出来ないようで。
「・・・・ヘン・・・なん、か・・・も・・・・」
 ジワリと、涙を滲ませながらも。それでも、拒絶は
微塵も感じられないから。
「・・・・・可愛い、ひーちゃん・・・・俺も、何か・・・」
 おかしくなっちまいそうだ。
 もう、どうしようもなく。
「な、一緒に・・・ヘンになろう、ぜ」
 色を濃くした胸の飾りを指の腹で撫で上げて。
 ゆっくりと。
 既に半ば起ち上がって、先走りを滲ませている、それに。
 もう片方の手で包み込み、そっと指を絡ませてやれば。
「・・・ひ、ャ・・・ッ」
 あからさまに、跳ね上がる身体。
 目尻に溜まっていた涙が、ポロリと零れて頬を濡らして。
 同じように、ヒクリと震えて涙を零し続ける、半身に。
 濡れた指を絡め、ゆっくりと快楽を導いて。
「あ、・・・・ダ、メ・・・・・ッん・・・ふ・・・」
 こういう時に。男同士だから、良く分かる。
 何処が、イイのか。
 急速に張り詰めていく、それに。敏感な先端を、親指で
強く刺激してやれば。
「・・・・・や、・・・・ッあ・・・あァァ・・・・ッ」
 そのまま。
 一層高い、嬌声をあげて。
「・・・あ・・・・あァ・・・」
 あっけなく達してしまう、その様を眺めながら。
 でも、まだその余韻に、小刻みに震える身体を。
 投げ出された脚を、自分の身体を割り込ませるように
して、そっと押し開いて。
 龍麻が吐き出したものに、存分に湿らせた指を。
 そこへ。
「・・・・・んッ」
 圧し当てて。滑る勢いのままに、内へと。
「・・・・・痛い、か?」
 2本分、収めてしまって。
 やはり狭い、そこに。ふと、不安に駆られて顔を
覗き込んでみれば。
 突然の衝撃に、身を強張らせながらも。少しでもそれを
和らげようとするのか、そろそろと息を吐きながら濡れた
瞳で、見つめ返されて。
「きょうい、ち」
 呼ばれて。
 もう。
「・・・・・も、限界・・・・」
 ごめん、と呟きながら。
 既に張り詰めて濡れそぼっている、自分のそれを。
 性急に引き抜いた指の代わりに、当てがって。
「・・・・・あ」
 滑りに、導かれるままに。
「・・・・・たつ、ま」
「・・ッきょ、う・・い、・・・ッあ、アァァ・・・ッ」
 龍麻の、内へ。
 自分の証を、刻み込ませた。





「・・・・・きょうい、ち」
 掠れた声に、呼ばれて。
 視線を落とせば、腕の中で微睡んでいた龍麻と、目が
合う。
「・・・・・平気、か・・・?その・・・・喉、とか」
 初めてだというのに。
 散々、啼かせてしまって。
 申し訳なさげに、前髪をかき分け、額にキスを落とせば。
「ん・・・・・身体、大丈夫・・・とは、いかないけど・・・」
 甘えるように、胸元に顔を埋めて来て。
「・・・・・京一は・・?」
「・・・え・・・?」
「・・・・・・平気・・・・・?」
 何を言っているのか。その意味は、すぐには分からなくて。
 表情だって見えないから、どうしようもなく不安になった
のだけれども。
「・・・・・ひーちゃん・・・」
 心細気に、縋り付く様子に。
 それが。
「・・・・・好きだぜ」
 何となく、照れくさかったけれど。
 それでも。
「惚れなおした・・・っつーか、ますます惚れちまった」
 その気持ちは、本当で。
 そのままに、伝えれば。
「・・・・・バカ・・・」
 ゆっくりと。恥ずかしそうに、顔をあげて。
 それでも、とても綺麗に笑うから。
「・・・・・貰ったもんは、返さねぇし。離さねぇからな」
 そう、宣言してみせて。
「うん・・・・・身を持って、知りました」
 クスクスと。笑いあって。
「・・・・・御誕生日、おめでとう」
 今の今まで。忘れていた、諸々のきっかけ。
「そんで・・・これからも、よろしく」
「・・・・・おぅ、こちらこそ」
 やっぱり、照れくささが込み上げてきて。
 ふたり、肩を震わせながら笑って。
 そして。

 どちらともなく、また。

 キスを、して。

 今日も。明日も。
 これからも。

 一緒に、いよう。