『STEP』




 最初から一歩ずつ、なんて。
 本当は性に合わないのだ。
 そんなのんびりしていたら、いつどこで誰にカッ攫われちゃうか
知れないでしょ?
 だから。
 けどね。
「伊波ちゃん、発見」
 それでなくとも、ちょっとばかり出遅れてしまってるワケで。
 ガッコという組織のアレコレで、対立なんてしちゃってた時期
なんかもあったワケで、だからもしかしたらスタート地点で既に
スッ転んでたようなものかもしれないのに。
「・・・京羅樹」
 だけど、こうして声を掛けて、隣に並んで肩を抱いて。
 顔を覗き込めば。
 キレイな目を、パチパチってして。
 そして、はにかんだ貌を向けてくれる。
「何、京羅樹も散歩?」
「伊波ちゃんとデート。これから、ね」
「何だよ、それ」
 くすくすと笑う、その小さな唇に、今ここで触れたりしたら。
 どんな顔、するんだろうね。
「というか、その他人行儀な呼び方そろそろ止めにしない?」
「え、・・・・・」
「ラギーで良いって、言ったよねえ・・・オレっち」
「う、・・・・・」
 だけど、なかなかそう呼んではくれない。
 まあ、理由くらい分かってるんだけど。
「恥ずかしい?」
「・・・・・ちょっと、ね」
「変なあだ名だって思ってる?」
「っ、そ・・・そんなわけじゃ・・・」
 きっぱりと否定しないのは、多分ちょっと変だと思っちゃってる
ワケで、まあこのコにいつもくっ付いてるあの元気なお嬢ちゃんも、
前にそう面と向かって言ってくれたりしたから。
「んー、まあね・・・無理にとは言わないよ、うん」
 なんて、口先だけで諦めた振り。
 残念だ、というように肩を落としてみせれば。
「ご、ごめん・・・そ、そのうち・・・」
 そう言ってくれるのはホント有り難いけれど、努力して言わなきゃ
ならないってモンでもナイでしょ。
「伊波ちゃん」
「は、はい」
「崇志」
「え」
「た・か・し」
「・・・たかし」
「そう、崇志。呼べたね、オレっちの名前」
「・・・・・え、・・・」
 どうせなら。
 京羅樹、なんて姓で呼ばれるより。
 崇志、って名前で呼ばれる方がイイ。
 たったそれだけで、親密度アップなカンジしない?
「崇志、って言うんだ・・・」
「何ソレ。もしかして、覚えてくれてナイわけ?」
「あ、え・・・ううん、そんなコトないよ」
 …覚えてくれてなかったんだな、コレは。
 まあでも。
「そうか、崇志か・・・崇志・・・」
「イイねえ・・・もっと呼んでよ、伊波ちゃん」
 キモチイイ。
 もっとずっと、呼んでて欲しい。
「・・・・・あのさ」
「何かな、伊波ちゃん」
「・・・・・飛鳥」
「へ?」
「ずるいから、僕も・・・・・飛鳥、って・・・」
「・・・・・っ」
 ズルイ、のは。
 そっちでしょ。
「う、わ・・・マジ、キたよ」
「え、え・・・何?」
 心臓わしづかみ。
 ちょっと拗ねたように上目遣いで。
 そんなセリフ。
 コロサレソウ。
「伊波ちゃん、ちょっとこっち」
「っ、だから飛鳥だって・・・・・」
 そんな顔して。
 そんなコト、言ったりしたらね。
「往来でも、オレっち的には全然問題ナイんだけどさ」
「な、ん・・・・・っ」
 路地裏、腕を引いて引き込んで。
 押し付けた、壁。
 何か言いかけていた言葉ごと、包み込むようにして。
「飛鳥、ちゃん」
「ん、っ・・・・・」
 口付ければ。
 掴んだ肩が、小さく震えて。
 それでも、ちっとも抵抗してくれないものだから、だったらもう
このままイっちまってもイイんじゃないかって気がしたけれど。
「・・・・・ふ、あ・・・・・」
 名残惜しげに唇を離せば、大きく肩で息をする真っ赤な顔。
「・・・・・もしかして、息止めてたんじゃ・・・」
「息、して良いのか!?」
 …ああ。
 このとてつもなくカワイイコを、どうしたらイイんだろう。
「・・・まあ、そういうコトはオレっちが直々に教えてあげるから」
 間違っても、他の奴らには聞いたりしちゃダメだよ。
「あ、・・・うん、任せる」
 任せちゃってイイのかな、子猫ちゃん。
 知らないよ、ホントに。
 どうなっても。
「じゃあ、次のステップいってみるかい?」
「え、え・・・もう?」
 ちょっと怯えたような瞳。
 でも、大丈夫。
「目を閉じて・・・飛鳥ちゃん」
「う、ん・・・」
 素直だね、困っちゃうくらい。
 伏せた睫毛に、ガラにもなくこっちがドキドキしちまうんだけど。
「怖くないから」
 ホントのホンキで怯えさせたりはしない。
 ゆっくり。
 じっくりと、ね。

 アイシテアゲル、カラ。





ラギー、御誕生日おめでとーう(拍手)v
初・京羅樹です・・・ナニはともあれ、御祝がてらv
じっくりまったり、愛のステップをばvvvvv