『初めての恋』



 指先が。
 こんな風に、あからさまな情慾の意思を持って、自分とは
別の人間の、その肌に。
 触れたことなど、なかった。
 震えている、のは。
 おそらく、自分の方で。
 どうしたら良いのか、なんて。
 実のところは、未だによく分かってはいないのだ。
 それでも、もう既に幾度かこうして触れて。
 重ねた。
 熱く、濡れた肢体。
「っ、・・・・・あ」
「・・・・・、っ」
 シーツの上、仰向けに横たわっているから、少しだけ浮き出て
見える肋に、するりと手の平を這わせれば。
 堪え切れなかった、というように上がった声に、咄嗟に手の
動きが止まる。
「・・・・・伊藤」
 伺うように。
 確かめるように。
 請う、ように。
 呼べば、熱にうかされたように潤んだ瞳が、ゆるりとこちらを
見遣って、小さく瞬き。
 その弾みに、目尻に溜まっていた涙が、ほんのり朱に染まった
頬を伝うのに。
「・・・・・ん」
 それは、殆ど無意識に。
 舐め取ったしずくは、甘いとすら感じた。
「し、のみや・・・さん」
 吐息混じりに。
 呼ばれて、視線を合わせれば。
「・・・・・大丈夫、です・・・から・・・っ」
 何が、なんて。
 聞かなくても、分かる。
 初めて肌を合わせた、あの時とは違う。
 少しずつ、だけど確かに。
 2人の間に通じ合えるようになった、ことがある。
「・・・・・ああ」
 それが。
 気恥ずかしくもあるし、けれど嬉しくもあるから。
 そっと微笑みで応えれば、やはり恥ずかしそうな気配を残し
つつ返される、柔らかな笑み。
「・・・啓太」
 お互いに、まだきっと手探りな行為。
 だけど、戸惑いながらも触れる指先は、いつしかその体温に
馴染んで。
 そして、また新たな熱を。
 呼んで、伝えて。
 混ざって、融けていくみたいに。
「篠宮、さん・・・」
 呼ばれるままに、重ねる唇。
 そんなキス、だって。
 どうしたら良いのかと考える前に、もう覚えてしまっている。
 誰に教えられた訳でもなく、それはまるで本能のようなもの。
 何もかも、初めてのことが。
 なのに、そうであるべきであったかのように、こんなにも。
「・・・・・好き、です・・・っ篠宮さ・・・ん」
 自然に。
 感じ合えるのは、きっと。
 互いが、望んでいるから。
 触れて、もっともっと、ずっとと。
 手を伸ばしている、から。
「好き、ぃ・・・・・っ」
 繋がりたいと。
 ただ、そう願ったから。
「啓太、・・・・・好きだ、俺も・・・」
 戸惑いながら、震えながら。
 それでも、触れて、確かめて。
 安堵して。
 もっと深く、繋がりたいと切望して。
 やまない。

 ただ。
 愛おしくて。
 愛おしくて、ただ。

「・・・・・啓太」

 誰かに教えられた訳でも、なく。
 誰かが教えた教えた訳でも、ない。

 自分の中で生まれて、そして彼と育んだ。
 初めての。
 恋、なんだ。





ナニもかも初めてでございますとも、ええv
2人でアレコレ育んでいって下さい!!