『して。』



「キス、…して下さい」

 薄暗闇の中、それでもきっと。
 分かってしまっている、この頬が。
 耳までも。
 赤く染まってしまっている、コト。
「…篠宮、さん」
 呼べば、微かに笑った気配。
 柔らかな吐息が近付く、そして。
 触れる。
 優しい、キス。
 何度か、啄むように触れて。
 離れても、その距離は。
 互いの表情が分かるだけの。
 互いの体温が、きっと鼓動さえ聞こえてしまうくらいの。
「…啓太」
 『伊藤』、じゃなくて。
 『啓太』、と呼ぶ時は少しだけ。
 声には、微かな戸惑いにもにた震えと。
 そして、熱を帯びた欲とが交ざりあって。
 伝わって、耳から。
 そして、身体中が訴える。

 好き。
 大好き。

「今年…最後のキス、だな」
「…そうですね」
 フワリと、微笑い合う吐息が。
 また近付いて、どちらともなく。
 触れて、また。
 重なり合う。
 今度は、さっきのより長く。
 深く。
 熱く。
 そして、これが。

 今年最初の。
 キス。

「篠宮さん…」
「…どうした」

 ゆっくりと離れていく唇に、追い縋るように。
 コツリと、額をぶつけるように、して。

「あの、…もっと……して、良いですか…?」
「…それなら」

 今度は、お前から。
 囁かれて、熱くなる身体を。
 添わせて、そっと。
 微笑む唇に、自分のそれを合わせれば。
 大きな手が、腰を抱き寄せて。
 分かって、しまう。
 こうして、もっと触れ合いたいと思っているのは。
 自分だけじゃない、こと。

「…良い、だろうか…」
 それでも、こうして尋ねてくるのは。
 この人の、優しさで。
「して、…下さい…」
 腕を伸ばせば、ゆっくりと重なってくる身体を。
 抱き締めて。
「篠宮さん…」
 大好き、です。
 何度も。
 何度でも、囁く。

 今年、初めての。





篠宮さん、御誕生日おめでとうございますッvvv
元旦生まれで、あらゆる意味でめでたいカンジ
ですが(笑)v
誕生祝いと姫はじ●は、啓太で確定(悦)v