dependence/side-K



 伝え切れていないかもしれないと、思うこともあるけれど。
 だけど、この想いは確かに、俺の中にあるものだから。

 七条さんに触れられるのは、イヤじゃない。
 むしろ。
 好き。
 恥ずかしかったり、照れくさかったりするけれど。
 優しく、時に激しい。
 俺に触れる時、七条さんは普段見せない表情や空気を纏って
いるのだけれど。
 それが、あんまり性急だったり凄かったりした日は、未だに
その行為に慣れない俺は、本当にどうにかなっちゃったんじゃ
ないかってくらいに、声を上げて。
 抑え切れずに、きっと。
 泣いたりしてしまっている、から。
 押し寄せる快楽に、意識さえあやふやで。
 でも、七条さんの身体の熱や、重みや。
 存在が、どうにか俺を繋ぎ止めてくれていて。
 それでも、やっぱり意識を飛ばすようにして先に眠ってしまう
のは、俺の方。
 もっと、ずっと。
 七条さんを、感じていたいのに。
 何度も、名を呼ぶ声を聞いていたいのに。
 涙で霞んで、よく見えないけれど、たけどその顔をしっかり
見つめ続けていたいと、思うのに。
 だって。
 愛しています、と熱っぽい吐息と共に囁きながら、いつも。
 いつだって、七条さんは。
 泣き出してしまいそうに、見えたから。

 どうして、とは多分きっと聞けないのに。
 それでも、もしもその綺麗なラベンダー色をした瞳から、涙が
零れ落ちそうになったら、その時は。
 絶対に、どうにかして。
 それを拭ってあげたいし、その涙を止めてあげたい。
 泣いている。その訳を。
 知りたいと、思うんだ。

 もしも、そこに不安や悲しみが存在するのなら。
 俺が、なんておこがましいのかもしれない、だけど。
 俺に出来る、のなら。
 どうか。
 俺にも、その痛みを教えて下さい。
 聞いても、その笑顔でいつものように誤魔化されてしまいそう
ではあるんだけど、それでも。
 知りたい、から。
 どうか、俺に。
 俺の前で、全部。
 七条さん、を見せて下さい。
 その中身は、俺には想像もつかない何かが存在しているのかも
しれないし、そういう部分を七条さんは隠してしまいたいと思って
いるかもしれない。
 俺だって、俺にだって見せたくない部分は、あるのだから。
 けれど、そんな俺の中の、決してキレイじゃないところだって、
七条さんは沢山愛してくれた、から。
 曝け出すのは、まだ恥ずかしいけれど。
 隠さなくても、良いんだって。
 この人には、知られてしまいたくないことでも。
 この人だから。
 だから、怯えなくても怖がらなくても良いんだ、って。
 まだ、戸惑うこともあるけれど。
 そう、教えてくれたのは七条さん、なんだから。

 夢心地。
 きつく抱きしめてくる腕に、遠くなりそうな意識もけだるい身体
も、全て委ねていれば。
 囁くように。
 おそらく、それが俺の耳には届かないのを確信しているように。
 震える、声で。

「僕を、・・・・・」
 厭わないで。
 嫌わないで。
 離さないで。
 どうか。
 捨ててしまわないで。

 そんな、ことを。
 言わないで。
 言わなくて、いいから。
 そんな悲しい言葉を言わせてしまう、俺は。
 何かが、足りなかったりするんだろうか。
 こんなに。
 いつだって、七条さんのことばかりで。
 好きで。
 好きで、どうしようもないのに。
 離したくないのは、むしろ。
 俺の方かもしれないのに、だけどそれは。
 伝え切れていないのかもしれなくて。

「・・・・・、き・・・です」

 ああ、今夜も。
 言わなくちゃって思うのに、また。
 深い眠りに、俺は落ちていってしまう。

「好き、・・・です、七条さ、ん・・・・・俺、に・・・・・」

 どうか。
 少しずつ、でも。
 溢れそうな想いの欠片、でも。
 零れた、それを。
 拾って、そして。
 気付いて、くれればいい。

 こんなにも。
 こんなにも、俺は。
 貴方のことが、知りたいんです。





開き直ると、したたかかもしれません・・・啓太の方が。
でも、更に開き直りまくると、臣はアレです(何)。
今更なので、もう包み隠さずイっとけv
『dependence』の啓太視点(?)でございましたv