『caress』




 ひとりになりたくなる時、というのは特に何かあったから
というわけでもなく、ただしばしば訪れるもので。
 そういう時には、いつも西園寺はお気に入りの場所-----
学園の外れに在る東屋で、時を過ごす。
 木漏れ日と、木の枝のさざめく波のような音。
 居心地が良すぎて、ついうとうとと微睡んでしまうことも
あるのだけれど。

 この日は。
 静かに、読みかけの本を開いて。
 そして、傍らには。
 子犬のような目をした、愛おしい少年。

 誰かと連れ立って、ここに来ることは稀で。
 今日だって、落ち着いた場所で本が読みたくて、フラリと
この場所を訪れた。
 何ページか読み進めていれば、ふと。
 頬に掛かる髪を揺らす風。
 ゆるりと視線をあげると、そこにはきょとんとしたような、
そんな表情の、啓太が。
「あ、・・・済みません、お邪魔・・・しちゃって」
 特に何か用があったのでは、ないようで。
 天気の良い昼下がり。おそらく、ブラブラと散歩でもして
いて、近くを通り掛かったのだろう。
 ペコリと頭を下げて、踵を返そうとするのを。
「啓太」
 呼び掛けて。
 引き留めて。
「・・・・・おいで」
 微笑んで、告げれば。
 途端、微かに頬を朱に染めて。やや戸惑ったように軽く首を
傾げてみせながら、やがて言われるままに西園寺の傍らへと歩み
寄って来る。
「ここに」
 そっと指し示した場所、長い腰掛けの隣に座らせて。
 そのまま、何をしろというでもなく。
 西園寺は、また読みかけのページへと視線を落とす。
「・・・・・」
 困った、ような。
 どことなく落ち着かないような気配が、すぐ隣から伝わって
くるけれど。
 だけど、話し掛けて来ないのは、やはり読書中なのを気遣って
のことなのだろうか。

 …さて、どうするかな。

 きっちりと揃えた膝の上に置かれた手は、軽く握られたまま。
 少し、緊張しているのかもしれない。
 そんな啓太の様子を視線の隅に捉え、ゆるりと口元に笑みを
浮かべながら。
 本の続きに、意識を戻した。


「・・・・・?」
 半分まで読み終えたところで、ふと。
 肩口に、暖かな気配。
 コトリ、と。
 掛かる、微かな重み。
「・・・・・啓太」
 殆ど吐息だけで呼んだのは、聞こえてくる規則正しい呼吸が。
 彼が、穏やかな眠りへと誘われていったのを、知らせていた
から。
 西園寺の肩に、凭れ掛かって。
 すやすやと眠る、その顔は。
 起きている時も、そうなのだけれど。
 無垢で。
 可愛らしいものだと、自然口元が綻んでしまう。
 肩に掛かる重みは、そうたいしたものではないけれど。
 だけど、その温もりは。
 髪をくすぐる吐息は、どうしても。
「・・・・・全く」
 胸の奥の、何かを。
 乱す。
「首が痛くならないのか・・・」
 独り言のように、呟いて。
 手元の本に栞を挟んで閉じ、啓太の座る場所の反対側へと
静かに置いて。
 そっと跳ねた髪を撫でつけてやれば、それにつられるように
傾いた上体。眠りが相当深かったのだろうか、そのままコトリ
と、滑り落ちるようにして。
 小さな頭が、西園寺の膝の上に。
「・・・・・ん」
 微かに、何か呟いていたけれど、それでも目を覚ますことは
なく。
 膝を、枕にしたまま。
 無心に眠る、穏やかな寝顔。
「啓太・・・・・」
 思わず洩らした声は、溜息をつれて。
 微苦笑と共に、漏れる。
「・・・無防備にも程があるぞ」
 起きていたって、この少年は呆れる程に警戒心というものが
ないのだけれど。
 こうして深い眠りに落ちていては、それはもう極まりなく。
 だから。
「いけないオトナに、つけ込まれるんだ」
 くすり、と微笑った唇を。
 そっと、膝の上。
 眠る啓太のそれに、触れ合わせる。
 軽く何度か啄むように口付ければ、微かに伏せた睫毛が震えて
いたけれど。
 それでも、目は覚ますことはなく。
 薄らと開き気味の唇に、忍び込みたい欲求に駆られるけれど。
 ペロリと。
 悪戯のように、舐めるだけに留めて。
「お前といると、・・・自分が、本当にただの男だというのを
実感してしまうな」
 額に掛かる前髪を梳き上げながら、白い額にもキスをひとつ。
「可愛がってやりたくて、たまらなくなる・・・その肌を曝して、
私のものだという証を、全身に刻んでやりたい」
 ククッと、漏らした笑いは微かに欲を含んで。
 それにも気付かぬまま、眠り続ける啓太の。
「・・・・・今の内に、しっかり睡眠をとっておくのだな」
 耳元。
「今夜を楽しみにしているといい・・・私の可愛い啓太」
 囁けば。
 また、小さく。
 睫毛が、それに応えるように震えた。






今夜ーーーーーーーーーッ(何)!!!!
可愛がるんですね・・・ああああああン(身悶え)v
女王様は体力がない分、やたらと愛撫が丹念のような
気がしますのです(しつこいとも言う・・・)!!
挿れて出すだけが、えっちじゃナイんだね(しみじみ)v