『 不可解な感情 』



  図書館でばったり顔を合わせる事は決して珍しい事ではない。
「 おや。伊藤君」
「 あ…っ。し、七条さん、こんにちはっ!」
  書棚から少し離れた、窓際の自習用机に啓太はいた。宿題だろうか、必死にペンを走らせていたようだが、声をかけてきた七条にいつもの屈託ない笑顔を向けてくる。
  七条はこの瞬間が割と好きだ。
「 こちらの席は空いていますか」
「 あ、勿論です! どうぞ!」
  遠慮がちに微笑しながら七条が前の座席を指でこつんとつつくと、啓太は慌てて自分が広げていた辞書やらルーズリーフやらをばたばたと端に寄せ始めた。
  七条はそんなせかせかとした啓太の仕草を見ることも好きだ。
「 ありがとうございます」
「 いえ…っ」
  丁寧に礼を言う七条に啓太は照れたようになって俯いた。


  啓太が教室以外でよく足を運ぶ場所を七条は知っている。
  一つは学生会室。人の良い啓太はいつでも忙しない彼らの仕事を進んで手伝いに行っている。
  一つは校舎裏・芝生の上。丹羽から教えてもらったらしいとっておきの昼寝の場所だとかで、時々そこへ足を運ぶ啓太を七条は窓越しに見る事がある。
  そうしてもう一つがこの図書室だった。学生会で頼まれた書籍を探したり、こうして宿題を片付けたりする為に利用しているようだ。今日は後者の理由でここへ来たのだろう。
「 宿題ですか」
「 はい! 今週末に提出しなくちゃいけなくて」
  元気に応える啓太を七条は目を細め、じっと眺めやった。こういう視線を向けると啓太はいつも困惑したようになって下を向いてしまうが、その表情を眺めるのも実に楽しいと七条は思う。
「 宿題をきちんとやるとは感心ですね」
  こちらを見ない啓太にそう言う。すると下がっていた顔がぐんと上がり、焦ったような視線がすぐさま七条の元にやってきた。
「 こ、こんなのは当たり前ですよっ。俺、トロイから早いうちに取り掛からないとギリギリまで終わらないんで」
「 そうですか? …ところで、もし僕で分かる事があったなら訊いて下さい。伊藤君のお力になれたら僕も嬉しいですから」
  これは本心。
  きっと。多分。
「 あの…ありがとうございます。でも大丈夫です。あとちょっとで終わるし」
  しかし啓太はひどく嬉しそうな顔をしつつも、遠慮がちにそう言った。七条は心の中で「やはりな」と思ったものの、変わらぬ態度でにっこりと笑った。
「 そうですか。頑張って下さいね」
「 は、はいっ! ありがとうございます!!」
「 …………」
  ほんの少し笑いかけてやるだけで。
  ほんの少し優しい言葉を投げるだけで。
  こんなに躊躇いのない目を向け、礼を言う。不思議な人だと七条は思う。この伊藤啓太という少年がこの学園に転校してきた当初、友人である西園寺の態度は明らかにおかしくなった。彼を気にかける時の言葉が柔らかい。彼を見つめる時、語りかける時の目や口調が温かい。無論、付き合いの長い友人を冷たい人間だなどと言う気はないが、これほどまでに彼の気を惹いた人物が未だかつていただろうか。それを思うとあの見慣れない風景には正直どうしても躊躇いを覚えてしまったのだった。
  だから最初はそんなところからこの伊藤啓太のことが気に掛かった七条である。そうして、気づけば自分自身でも彼に関心を持ち、目で追う事が多くなっていた。
  だから、知っている。
「 あ…ふふ…」
「 ……どうかしましたか?」
「 あっ、すみません、突然!」
  ノートをめくった啓太が突然くすりと小さく笑うのを見て、七条は顔を上げ首をかしげた。すると啓太はすぐに申し訳なさそうな顔になって「うるさくしてごめんなさい」と律儀に謝り、しゅんとなった。別に責める気などなかったのに。
「 いいんですよ。何か楽しいことでも思い出しましたか?」
  優しく優しく訊いてみると、啓太はすぐにぱっと明るい顔になった。怒られていないという事を感じとったのだろう。心なしか少しはしゃいで、啓太はめくった先のノートを七条に向け、指を差した。
「 ほら、ここです。王様の落書き!」
「 へえ…?」
  啓太も知らないうちに書かれていたのだろう、数学のノートの端に、遠慮のえの字も感じられない大きな落書きが一つ。お世辞にもうまいとは言えないそれは、丹羽のいばったような自画像がずんと描かれていた。「ちゃんと宿題やれよ!」などと書き添えられて。
「 丹羽会長も随分お茶目なことをするのですね」
  控えめな感想を漏らすと、啓太は誉め言葉と取ったのだろうか、ますます嬉しそうな顔をして目を輝かせた。
「 王様って結構こういうことするんですよ。学生会の資料にも時々こういうの描いて遊んで。中嶋さんに叱られたり」
「 …………」
「 あっ!」
  意図せず中嶋の名前を出してしまった啓太は、一瞬無言になった七条に慌てて開いていた口を閉ざした。それからオロオロと焦ったようになって視線を彷徨わせた後、啓太は開いていたノートを引き寄せがばりと頭を下げた。
  ころころ変わるその表情。
  こういうところが面白くて好きだと、七条は思う。
「 す、すみません!! 七条さん、あの…!」
「 ふふ…。別に怒っていませんよ?」
「 え…あの…でも…」
  本当に大丈夫だろうか、と言う顔で恐る恐るこちらを見上げてくる啓太。
  その顔は本当にこちらの事を心配しているようで、どうしてこういう顔が自然にできるのかと七条は思う。
  だから何だか意地悪をしてみたくなってしまうのだが。
「 伊藤君は本当に学生会の人たちと仲が良いのですね」
「 え…?」
「 知っています? 今週の伊藤君の訪問回数」
「 訪問回数…ですか…?」
「 学生会室5.会計部は1.その会計部訪問回数1というのは、学生会の資料を届けに来て下さった時の数です」
「 な……っ」
「 何だか寂しいです」
「 し、七条さん…?」
  だらだらと冷や汗をかいている啓太。
  面白い。
  笑みがこぼれそうになるのを必死に堪えながら、七条はすました顔で手にしていた本をぱたんと閉じた。びくつく啓太の肩が揺れるのが視覚の隅でも捉えられた。
「 本当に…寂しいです。伊藤君を取られてしまったみたいで」
「 と…とられただなんて、そんな…!」
  しかし実際に中嶋はともかく、啓太が丹羽を慕って行動をしているのは確かなようだった。思えば転校はじめ、退学騒動で問題が持ち上がった時も、啓太が1番に頼ったのは学生会長の丹羽だった。学園の中心に立つ会長の丹羽に縋った事は決して間違った選択ではないと思うが。
  それでも、自分とて全く啓太と接触がなかったわけではない。少しは恨みがましい事も言いたくなってしまう。そんな自分が今までの自分「らしくない」という事を十分承知の上で。
  そう思ってしまう気持ちは止められない。
  これが最近七条の自身に対する不可解なこと、だったりする。
「 あの…あの七条さん…!」
「 はい?」
  密かに考えを巡らそうとしていたとき、しかし不意に啓太が声をかけた。
  焦っている風なのは変わらない。どことなく落ち着かず、そわそわしているその態度はいっそ哀れだ。自分のような人間と2人きりでいるのはさぞかし息苦しいのだろう、そう思った。
「 すみません、伊藤君。くだらない妬きもちをやいてしまって」
「 え…っ?」
  啓太の驚いたような顔を眺めながら七条はいつもの笑みを向けた。
「 困らせてしまいましたね。ただの冗談ですよ。あまり気にしないで下さいね」
「 き、気にします…!!」
  しかし啓太はそう言った七条に対し、突然机を両手でバンッと叩くと、椅子を蹴って立ち上がった。
「 ……伊藤くん?」
「 あの…七条さん! きょ、きょきょきょ…!」
「 きょ?」
  何故か急にどもる啓太を七条はきょとんとした目で見つめた。どうかしたのだろうか、そう言えば自分の台詞にただ焦った割にはひどく顔が赤い。熱でもあるのだろうかと問い質そうとした時、啓太が再び声を上げた。
「 あの! きょ、今日、今日、俺、七条さんの部屋へお邪魔しても良いですかっ?」
「 ……はあ」
「 !! だ、駄目なら…!!」
「 いえ、駄目なんて事はありませんよ。ですが…」
「 な、なら、そういう事で!!」
「 伊藤くー」
  しかし啓太はそれだけを言うと、後はだっと机の上のノートもそのままに猛烈な勢いで図書室から出て行ってしまった。
「 ……どうしたのでしょうか」
  開かれたままのノートを見つめながら七条は思わず独りごちた。
  啓太を自室に招いた事がないわけではないが、ああやって自分から行っても良いかと訊かれたのは初めてかもしれない。思えば学園内で啓太と顔を合わせても、いつもいつも先に話しかけるのは自分、啓太はそれに返事をするだけ。だから一体どういう風の吹き回しだろうか、何だか疑わしい気持ちすら抱いてしまう。
「 これは郁にも話せませんね」
  とはいえ喜ばしいことに変わりはない。これは如何に親友の西園寺と言えども教えるわけにはいかないなと七条は思った。
  西園寺に啓太に関する秘密を作る。これも七条の割と好きな事柄の一つだったから。



「 お、お邪魔します!」
「 はい、お邪魔して下さい」
  何時来るのだろうと思っていたが、夕食を終えてすぐに啓太はやってきた。どうやら自分が食堂から戻るのを何処かから見張って待っていたような節がある。見張られるなどあまり良い気分ではないが、啓太ならは話は別だ。何の意図を持ってやっているのかは知らないが、七条は素直に嬉しいと思った。
  そう感じる自分が、七条にはまた不可解だったのだが。
「 伊藤君が遊びに来てくれると言うものですから、会計部から美味しいお茶を拝借しておきました。一緒に飲みましょう?」
「 え、い、いいんですか?」
「 はい」
  どうにもどもりが治りませんね、という事を心の中でつぶやきながら、七条は相変わらず啓太には笑みを向けたまま、手にした紅茶の葉が入った瓶の蓋を開けた。お茶の用意をする自分を啓太はベッドの縁に背を向けた格好、テーブルの前にきちんと正座してじっと大人しくして待っている。何を硬くなっているのか、よくは分からないがとにかく啓太の様子はおかしかった。
  だからだろうか。悪戯心に火がついた。
「 はい、伊藤君」
「 あ、ありがとうございます! いただきます!」
  紅茶を目の前のテーブルに置き、七条は自分の分には手をつけずただ礼を言ってカップを取る啓太を見つめた。啓太は最初、香りの良い美味しそうな紅茶に目を注ぎ、一瞬緊張を解いたように嬉しそうな顔をしたが、七条がいつまで経っても自分から視線を逸らしてくれないことに気づき、また焦りだした。
「 あの…七条さん?」
「 はい」
「 あの…その…」
  あまり見ないでくれと言いたいのでしょうね。
  それが分かっていたが、七条はくすりと小さく笑うと、ますます啓太に顔を近づけ「どうしました」とわざとらしい質問を浴びせた。
「 七条さん…っ」
  啓太はいよいよ困ったようになり、背後のベッドに背をくっつけ、七条から身体を逸らそうとした。七条は肩肘をベッドに乗せ、そんな啓太を拘束するようにより身体を近づけた。
「 はい、どうしました?」
「 あの…そんな…か、顔近づけないで下さい…」
「 そうですか? すみません、でもこうしていると伊藤君の顔がよく見えるので」
  心の中ではもう可笑しくて仕方なかったが、啓太には冷静な顔で通し、七条は今度は自らの唇をそっと近づけた。
「 えっ!?」
  するとキスされるとでも思ったのだろうか、啓太が思い切り素っ頓狂な声をあげ、カチンと音が聞こえるくらいの勢いで固まった。身体を竦め、ぎゅっと目をつむっている。
  面白すぎる。
「 ………困りましたね」
  それに。
「 伊藤君…そういう顔をされると…」 
  本当にキスしたくなってしまうのですが。
「 伊藤君」
  それでも七条は自分の中に人並み以上にあるであろう理性をとりあえず優先させた。
  啓太が今日突然ここに来たいと言った真意が知りたかった。いつもいつも、それこそこちらがくだらぬ妬きもちを本気で抱いてしまうくらいに、普段は丹羽とばかりいる啓太。その啓太が何故ここへ来たのか。いつもしどろもどろになり、自分を避けているような啓太が。
「 伊藤君」
  七条はもう一度優しく声をかけると、目をつむる啓太の髪の毛をそっと撫でた。
「 ………七条さん」
  その所作に誘われるように、啓太がそっと目を開いた。至近距離に七条の顔があると知るとやはり「わっ」と言ってまた目を閉じてしまったのだが。
「 僕のこと…怖いのですか?」
  訊くと、啓太は必死に首を左右に振り、それから下を向いて目を開いた。
  今ではすっかり赤くなってしまっている頬が何をかを物語っていた。
「 伊藤君?」
「 あの…俺、昨日王様に言われて…」
「 丹羽会長に?」
  何故こんな時にあの男の名前が出てくるのだと思ったが、とりあえず黙っていた。啓太がまだ話を続けようとしていたので。
「 ちゃんと言わないと…伝わらないって。俺がそういうの苦手だからってずっと避けていたら……ずっとずっと、相手には分かってもらえないって」
  啓太の顔が急にぐにゃりと歪められるのを七条は見た。よく変わるその表情をいつもはただ楽しんでいただけだったが、この時は何故だかひどく胸が痛んだ。
  もうしばらく感じていなかった、感じることができなくなっていた、他者から与えられる痛み。
「 伊藤君…」
「 俺…分かってもらえないの、嫌だって思って…」
「 ……何をです?」
「 俺…俺……」
  啓太は少しだけ言い淀んだが、しばらくして意を決したようになり、ぽつりとその言葉を口にした。
「 俺、本当は七条さんともっと話がしたかったんです…」
「 え?」
「 あの…俺、すぐ顔に出るし…。そういうの恥ずかしいから、だから…」
「 ……だから?」
「 俺、男なのに、こんなのヘンだってずっと思っていたから…! 王様となら男同士の会話だって、一緒にバカやって中嶋さんに怒られるのだって全然普通にできるのに!」
「 ………」
「 あっ、また!! すみません!!」
  中嶋の名前を出してしまったことを言っているのだろう。啓太はまた慌てたようになって、七条の視線から逃げようとした。
  勿論七条は啓太を解放する気はなく、それどころかより身体を前傾姿勢に保って啓太に近づいた。
「 し、七条さん…」
「 伊藤君。僕はあまり理解力がないので」
「 え……」
「 こうして確かめてみても良いですか?」
「 し……」
  七条は啓太がばっちりと目を開き、自分を見つめているのを確認してから唇を寄せた。
  そして、すぐに。
「 ん…っ!」
  面食らったような啓太の視線が間近にある。七条はそれをじっくりと眺めてから、更にその口づけを深くしていった。
「 ふ…んん…!」
  角度を変え、舐るように唇を弄んでから舌を中へ滑り込ませる。啓太がびくりと身体を震わせ、七条の腕をぎゅっと掴んだ。
  その時七条は初めて自分の背中がゾクリと震えるのを感じた。
「 七、条さ…、ふ、んぅ…ッ」
「 ……っ」
  調子に乗って何度も放しては吸い付くキスを続ける。啓太が縋るように七条のシャツを掴む手に力を込めた。しかしそれには構わずに七条が空いている方の手でズボン越し、啓太のものに触れるとその動きは完全に止まった。
「 い…!」
  掌全体で回すように撫で上げ、それからぎゅっと握りこむように力をこめると、啓太はキスされ続けている唇から悲鳴のような声を微かに漏らした。
「 ……ぃ…嫌…ッ」
「 嫌、ですか?」
  冷たい声になってしまっただろうか。そうは思ったが、啓太をじっと見つめてその声を出すと、啓太は瞬時静かになった。
「 あ……違…違い、ます…」
「 違うんですか?」
「 あの…はい…」
「 伊藤君」
  そうして七条は不意に繰り返していた口づけをやめ、啓太を真っ直ぐに見つめた。笑顔が消えている自覚はあった。けれどそれを作ってやる余裕が今の七条にはなかった。
  分かってしまったから。
  自分の気持ち。ここ最近の、不可解な感情。
「 伊藤君」
  だからこの時の七条は笑えなかった。
「 伊藤君、もしかして僕のことが好きなんですか?」
「 え…っ」
「 思い上がった事を訊いてしまって本当に恥ずかしいのですが」
「 そ、そんな!!」
「 伊藤君はいつも僕のことを避けてらっしゃったから」
  そうだ。ずっと丹羽といた啓太。楽しそうに、あんなに自然な笑顔を見せられては、こちらが気づかないのも道理というものだろう。
「 ち、違います!」
「 違う?」
  けれど今、目の前のこの愛しい存在は必死になって自分を見ている。見つめてきている。
  七条にはその光景が何故だか滑稽にすら感じられた。
「 違います! あの…俺、俺は…嫌じゃ、ないんです…。本当に…。俺、俺、七条さんのことが…!」
  けれど啓太はそんな七条にただ必死になって「その言葉」を言おうとしていた。
  人間はここまで赤く熱くなれるものなのだろうか。七条がそんな事を真剣に思ってしまうほどに、啓太の顔はひどく愛らしかった。
  そう、愛らしかったのだ。
「 好きですよ」
  だから先に言ってしまった。
「 え……?」
  啓太が予想通り、驚いたような顔で口をぱくぱくしている姿が目に入る。
「 好きです」
  七条はやはり笑ってやる事ができなかったが、頭を撫でてやる事はできた。その手を移動させ、啓太の頬を優しくなぞってやる事も。
  自然にできた。
「 僕は伊藤君が好きです」
「 七条さ……」
「 いいんですよ、貴方は言えなくても。その分、僕がたくさん言いますから」
「 そ、それは、でも…!」
「 あの、それでたくさん言う為にも、これからはもう少し会計部の方にも顔を出して下さいますか?」
「 ………は?」
「 こういうことも、たくさんしたいので」
  そうして七条がもう一度確かめるようなキスを「ちゅっ」とすると。
「 七条さん…っ」
  啓太は何だか今にも崩れ落ちそうなぐしゃぐしゃな顔になって、けれどもがばりと七条の胸に飛び込んできて。
「 俺、毎日…! 本当は言いたかったのに…!」
  そう言って、七条の胸で突然わっと泣き出したのだった。
「 ………伊藤君」

  言いたいことを言えない人間が。
  自分だけではないということ。
  こんなに愛しいということ。

「 伊藤君」
「 ずっと…逃げていて、ごめんなさい…!」
「 ……伊藤君」
  ああ、何だろうこの感情は。
  不可解なあの気持ちの意味が分かったら、今また新しい何か温かいものが自分を包み込んでいる。
  七条はその新たな感覚を胸に抱いたまま、自分に縋りつく啓太をじっと見つめた。ぎゅっと抱きしめて顔を寄せると、柔らかい啓太の髪の毛の感触とぶつかった。ひどく、気持ちが良かった。
  とりあえず。
「 好きですよ、伊藤君」
  この感覚はとても嬉しいもののようだ。それは七条にもよく分かった。
「 ……好きです」

  七条はふっと笑うと、もう一度啓太のことを強く激しく抱きしめた。




<完>








■後記…ヘヴンプレイの仕方が甘い私はどうも七条さんの性格を掴み損ねているような気が…(汗)。でも私の中で七条さんはこんな感じです。相手に何かを与えてもらうなんて事は全く期待していない。そして感情を表に出さないでいるうちに自分自身の内に何か変化が起こっても(啓太と出会って変わっている自分について)理解できない。で、啓太は啓太で好きな人には話せない!という受けなので(私的理想の受けです・笑)、フツーに話せてラクな王様に逃げちゃって、だから密かに想い続けていた七条ともすれ違ってしまっていた、と。実はこれを書く前に丹羽×啓太が書きたいと思っていたので自然王様びいきな感じになってしまったというのもあるのですが(笑)。そして本当は出来上がってラブラブな七啓が書きたいとも思っていたのですが、何故か出来上がる前を書いてしまいました…。何はともあれ、こちらはいつもお世話になっている浅生様のサイト2周年記念に奉げさせてもらうのです!おめでとうございますvこれからも萌えな七啓、その他いっぱい!を期待してますねー!



うにゃああああああvvvvvvvvvvvvvvv七啓!!上総さんの七啓ーーーーーーッvvv
拙宅の2周年の御祝にと、ステキSSを書いて下さいましたのです・・・有難うございます!!
や、こういうカンジなのです・・・臣!!もうナチュラルに臣です(どんな)!!とにもかくにも
臣の中に静かに、だけどしっかりと確実に変化をもたらしたのは啓太なのです・・・ッ!!
理解する前に、でもソレは確かに恋なのです・・・(悦)vvv
自覚したら、もうサクリとアレコレ進展させてしまいそうです、臣!!
そして、密かに王様×啓太も見てみたかったわ・・・vとか、呟いてみたり(笑)v
ともあれ、萌えなお話を本当に有難うございました!!愛してます(今更!?)!!
これを励みに、これからも頑張りますのです・・・ッvvvvv