『 好きで好きで…。 』



「 なぁ最近成瀬さん、元気ないよな」
  授業合間の休み時間、俺にそう言ってきた和希は明らかに何か言いたそうな顔をしていた。
「 そ、そうかな…」
  努めて顔に出さないよう、普通に答えようとしているのに、俺の顔、今絶対強張ってる。俺ってどうしてこう、平然とした態度が取れないんだろう?
「 成瀬さんと何かあったのか」
  ああ、やっぱりだ。
  和希の伺い見るような視線…窮屈な気持ち。
「 何かって…」
「 ハニーッ!!」
「 あ…!」
  けれど口を開きかけた時、成瀬さんがいつものように教室に入ってきて、クラス中に聞こえるだろうって程の大きな声で俺を呼んだ。それからすたすたと当然のようにそのまま俺の席の傍にやって来て、いつものにこやかな笑顔を見せてきた。
  いつもの成瀬さんだ。
  でも、俺は…。
「 成瀬さん。そうやって毎度毎度こんな中休みの時まで1年の教室に来る事ないじゃないですか?」
  俯いて成瀬さんから視線を逸らしている俺に代わって、和希が呆れたような声を出した。
  でも、下を向いていても分かる。
  成瀬さんは和希の声を耳には入れてるんだろうけど、ずっと俺の方を見てる。見てくれてる。きっとすごく優しい目をして。
  でも、だから俺は……。
「 ちょっと成瀬さん、聞いてるんですか?」
「 えっ? あ、ごめん。ハニーに見惚れていて聞く事ができなかったよ」
「 あのですねえ!」
「 もう、いいじゃないか。ちょっと顔を出すくらい。本当なら僕はハニーとは1分1秒だって離れていたくないんだよ? ハニーの顔を見ていないと僕はあっという間に死んでしまう生き物なんだからね」
「 ……はいはい、そうですか」
  和希のため息交じりの諦めたような顔。
  成瀬さんの余裕の笑み。
「 …………」
  やっぱり分かる。下を向いていたって、今2人がどんな顔をしているのかくらい。
  でも、何だか俺、顔を上げられない。
  けれどそんな俺に遂に成瀬さんが直接話しかけてきた。
「 ハニー、今日のお弁当はねえ、ハニーの好きなハンバーグだよ。味付けにもまた一工夫していてね…」
「 あの、成瀬さんっ」
「 え、何ハニー?」
  でも、やっぱり俺駄目だ! しかもこんなにたくさんのクラスメイトがいるっていうのに…!
「 あの…あの…!」
  俺はただひたすらに下を向いたまま絞り出すように声を発した。
「 も、もうすぐ予鈴鳴りますよっ! 教室に戻った方がいいです!」
「 ……………」
  俺は相変わらず成瀬さんを見られない。
「 ち、遅刻しちゃいますから…っ」
  ただ、ぶっきらぼうにそんな言い方をしてしまった。成瀬さん、気を悪くしたかもしれない。
  でも。
「 ……うん、分かったよ」
  成瀬さんは言った。
「 ハニーの言う事はちゃんときかないとね」
「 あ……」
「 ハニーの顔も見られたし。僕は満足」
  成瀬さんはそう言ってにっこり笑ってくれた。俺が驚いて思わず顔を上げると、成瀬さんはその笑顔を更に大きくして俺の前髪にさらりと触れた。成瀬さんの綺麗な長い指先が俺の鼻先を掠めた気がして、俺は何だかそれだけでどきりとしてしまった。
「 それじゃハニー、また昼休みにね!」
「 は、はい…」
  ひらひらと片手を振って去って行く成瀬さん。
  今日も成瀬さんは朝からテニス部の練習で忙しかっただろうに、俺の為にお弁当を作ってくれている。いつもいつだって、成瀬さんは俺の喜ぶことをってやってくれるんだ。
「 なあ、啓太」
「 えっ」
  思わずぼけっとしていたら、和希がそんな俺に急に神妙な口調で言ってきた。
「 やっぱりお前、ヘンだな。何か成瀬さんのこと避けてないか?」
「 なっ…何でっ。そんな事ないよ!」
「 そうか?……でも何か、お前にあそこまで目を逸らされているのを見ると、あの人といえども憐れだな」
「 か、和希…いつもは成瀬さんを甘やかし過ぎだとか何とか言って俺のこと怒るくせに…!」
「 まあ、そりゃそうだけど…」
  俺の責める言葉に複雑そうな顔をして、和希はいつもの癖で顎先をぽりぽりと掻きながら困ったような顔をした。
「 でも…うーん、ほら、あの人ってホントに死にそうだからさ。もし嘘でも啓太が成瀬さんのこと、『 嫌いになりました 』なんて言った日には、あの人本当に死ぬと思うんだよな。波打ち際に打ち上げられたクラゲみたいにさ」
「 き、嫌いになんかならないよ…! 大体、何だよその喩え!」
  慌ててそう言ったけれど、その時丁度予鈴が鳴って、俺はその先の言葉を続ける事ができなくなってしまった。
  それに、和希の指摘は当たっている。あ、勿論、成瀬さんがクラゲみたいに死んじゃうとかその部分の事じゃなくて。



  確かにここ数日。
  俺は成瀬さんのことを避けていたと思うから。
  勿論、避けたくて避けていたわけじゃないんだけど…。



  俺と成瀬さんが一応「恋人」同士になったのは、あのMVP戦が終わって俺が学園に残れるようになった直後の事だ。俺がどんなに弱音を吐いても我がままを言ってもいつでも温かく受け入れて優しい言葉をくれた成瀬さん。俺の事好きだって言い続けてくれた成瀬さん。
  何だか苦しいくらいに成瀬さんの、あの人の俺への想いが嬉しくて。
  俺もそんな成瀬さんのことが好きだなあって思った。
  好きで、それであの人とずっと一緒にいられたらなって思って。
  だけど。



「 あ…雨だ……」
  昼休み。
  いつもの通り、成瀬さんと昼食を一緒にする約束をしていた俺は、気持ちが落ち着かないながらも落ち合う場所…校舎裏の中庭へ向かっていた。
  けれど、廊下の窓から見えた雨粒。結構激しく降っている。
「 そういえば雨の時って何処で待ち合わせればいいのかな。教室で待ってればいいのかな。それとも食堂…?」
  1人でぶつぶつ言いながら、俺はとりあえず教室に戻った。
  けれど、成瀬さんは幾ら待っても来ない。
  おかしいと思ってクラスメイトには成瀬さんの教室へ行くと託し、俺はもう一度教室を出た。
  けれど、いない。それはそうだよな。俺と約束しているのに、ここに成瀬さんがいるわけない。
  それじゃやっぱり食堂? それとも、もしかして雨の時は何処か特定の場所で待ち合わせをする約束でもしていたっけ? 最近俺、成瀬さんの話をちゃんと聞けていなかったから、もしかしてその場所で待たせてしまっているのかもしれない!
  俺は段々焦ってきた。
  昼休みだから皆教室なり食堂なりで食事をしている。俺はそこら中を駆けずり回ってとにかく成瀬さんを探した。
「 成瀬さんっていつも目立つ人なんだけど…っ」
  探そうとすると案外見つからないものだ。
  思えばいつも成瀬さんの方が俺の所に来てくれるから、俺ってこうやってあの人を探す事ってあまりなかったかもしれない。
「 何処にいるんだろ…。どうしよう、本当に。待たせていたら」
  ぐるぐると頭が混乱してきた時。
「 あ…!」
  1階の廊下のところで、何となく目をやった外の景色に俺は思わず声を漏らした。

  成瀬さんは、約束していた中庭に突っ立っていた。

「 な…成…!」
  雨がザーザー降っていて、外にいる人なんて成瀬さん以外誰もいない。
  傘も持ってきていなかったのか、成瀬さんはそこに立ったまま、何だからしくもなくずっとぼんやりとした目で薄黒く濁った雨雲を見上げていた。
「 成瀬さん…?」
  背の高い成瀬さんがそうやって空を見上げている横顔は、何だか無条件にカッコ良かった。成瀬さんの綺麗な髪が雨で濡れて余計にキラキラして見える。…って、俺は呑気にそんな事を考えている場合じゃないんだけど。
「 成瀬さん!!」
  俺は急いで自分も上履きのまま、外へ駆け出して成瀬さんを呼んだ。冷たい雨。こんな雨にたくさん降られたら成瀬さんの肩が冷えちゃうよ。この人はテニス界の宝、期待の新人なんだから、こんな事で身体を壊したら大変だ。
「 成瀬さん、何してるんですか!」
「 あ……ああ、啓太! 来てくれたんだ!?」
  成瀬さんは最初こそぼーっとしていたけれど、俺の声を聞くとすぐにぱあっといつもの笑顔全開になって、元気な声を出した。大袈裟に両手を広げて俺を迎え入れる姿はやはりいつもの成瀬さんで、でも俺はそれで逆に何だか頭にきてしまった。
「 啓太、じゃないですよ! 何してんですか、こんなに雨降っているのに! どうして…!」
「 だって啓太とここでお弁当食べる約束してたじゃないか」
  成瀬さんは怒鳴る俺にきょとんとして、不思議そうな顔をした。
  時々天然なのか何なのか分からなくなるんだよな、この人。
「 だ…っ! だ、だって、こんなに雨が降ってるんですよ! 外でなんて食べられるわけないじゃないですか!」
「 うん。でも雨が降った時の待ち合わせ場所を決めていなかったし、もし啓太がここに来てしまったらいけないと思ってね」
「 そ……」
  成瀬さんは飄々としてそんな事をさらりと言った。
  俺は何だか胸がズキンって痛んだ。
「 それにここは広いから。立っていれば何処にいてもすぐに分かるだろうって思ったし」
「 か、風邪…風邪引きます…!」
「 いいよ。啓太を待つためだからね」
「 …………」
「 ああ、でもいつまでもここにいたら啓太が濡れてしまうね。大変だ、それじゃあ、 そろそろ移動しよう?」
「 …………」
「 啓太?」
  俺はなかなか声を出す事ができなかった。何だかズキズキする胸の痛みと、どうしようもなく熱くなっていく身体全身を抑えられなくて。
  とても成瀬さんのことを見て何か言う事なんてできない。
「 どうして…どうして…そんなに優しいんですかっ」
  優しい成瀬さんに、だから俺は何だか八つ当たりみたいな言い方をしてしまった。
「 どうして…って…?」
  やっぱりだ。そんな俺に成瀬さんは分からないって声を出す。
  ますます顔を上げられない。
「 俺…最近、成瀬さんと全然話できていないのに…! 俺、成瀬さんを見ようともしてなかった…! 今だって…!」
「 …………」
  俺が叩きつけるようにそう言うと、成瀬さんはぴたりと動きを止めて俺の方を見た…と思う。下を向いているから分からないけど、多分そうだ。
  俺はざんざんと降りしきる雨の音に負けないくらいの声で続けた。
「 成瀬さん、いつもと同じで…。俺、こんなにひどい態度取ってるのに優しくて…明るくて…。俺、俺、余計どうして良いか分からなくて…!」
「 啓太」
  不意に成瀬さんがすごく真面目な声で俺を呼んだ。
「 ………っ」
  びっくりして顔を上げると、すぐ傍に成瀬さんの優しい眼差しがあった。それがもろにこちらに注がれていて、俺は面食らって思わずそんな成瀬さんから逃げようと後ずさりしようとした。
「 待って、啓太」
  でもそんな俺の身体は、成瀬さんにすぐに抑えつけられてしまった。俺はまた段々と自分の顔が赤くなるのを感じた。
  それを誤魔化したくてまた声があがる。ちょっと上ずった声だったかもしれないけれど。
「 は…放して下さい…!」
「 ………」
「 成瀬さん…っ」
「 駄目」
「 え…」
「 ねえ、啓太。あっちの屋根のある所、行こう? 僕、これ以上可愛い啓太の身体をこんな冷たい雨に濡らされたくないんだ」
「 ……っ」
  まだこんな事言ってる。
  俺はもう絶対赤面してる。でもそれを紛らわそうとまた目を逸らして口を引き結んでしまった俺に、成瀬さんは相変わらず優しい仕草でそっと抱くようにして歩いてくれた。



  渡り廊下の軒下に来ると、成瀬さんは制服のズボンのポケットから綺麗な白いハンカチを出し、雨に濡れた僕の額や頬を丁寧に拭いてくれた。
「 成瀬さんも…濡れてる…」
「 僕は平気」
「 でもっ」
「 平気」
  たしなめるように成瀬さんは言って、それから尚も食い下がろうとする俺にすかさずキスをしてきた。
「 ん…っ!」
  いつものよりも深いキス。すぐに舌が差し込まれてきて俺は一瞬面食らった。
  だけど。
「 んぅ…ふっ…」
  成瀬さんのキスが嬉しくて、熱っぽくて、俺は自分の唇を思わず成瀬さんの方に突き出すようにして、もっとって、もっとして欲しいってせがんでしまった。
「 ふぅ…ん、ん…」
  そうしたら成瀬さんはそれに応えるように、今度は俺の身体全部を引き寄せると顎先に指をかけ、何度も何度も舐るようにして熱い口づけを続けてくれた。
「 はぁ…ッ」
  どうにかなってしまいそうだ。
  こんな、誰が通りかかるかも分からないところで。
「 ……成瀬さん」
「 啓太、大好き」
  成瀬さんは俺から唇をそっと離すとそう言ってくれた。
  俺はその声だけでまた身体中がかーっと熱くなってしまった。
「 俺…俺……」
  だから今はちゃんと言いたかった。顔を見て、言葉を出さなきゃって思った。
  けれど俺が口を開く前に成瀬さんが言った。
「 本当はね。僕、啓太の教室に行くのが怖かったんだ」
「 え……?」
  突然の成瀬さんのその台詞に俺は驚いて聞き返した。
  成瀬さんは苦笑して続けた。
「 さっき、啓太も言っていたよね。僕のこと見てなかったって。勿論僕はそんな事気づいていたけど、でも啓太からもう嫌いになったんだって言われるのが怖くて。だから聞けなかった。離れたくないけど、でも聞くのが怖くて…。だからあそこに立っていたんだ。ごめんよ、すぐに迎えに行かなくて」
「 な、成瀬さん…?」
「 啓太の傍にいたいのに、啓太の傍にいるのが怖い。啓太の事が好き過ぎるから」
「 そ、そんなの…成瀬さ…!」
  ……何だかヤバイ。
  成瀬さん、やっぱり和希と同じように考えているのかもしれない。ああ、そりゃそう思うのが自然なのかもしれないけど、でも、でも俺は…!
  思考がパニックになりかけの俺に、成瀬さんは更に堰を切ったように話し続ける。
「 でも、ねえ啓太。さっきね、空を見ながら考えていたんだけど。僕はきっと、啓太に嫌われても、啓太のことがずっと好きだよ? 啓太だけ、ずっと愛してる」
「 成瀬さん、お、俺…!」
「 啓太は優しいから僕にひどい事を言えないんだよね。だからこんな僕に付き合ってくれた。でも…うん、覚悟はもうできてるから、何でも言って? 啓太を苦しめてるのが1番嫌なんだから、僕は」
「 ち、違…違います! 嫌ってなんかいません!」
  俺はやっとそう言って、ついでに成瀬さんの口を両手で塞いだ。
「 んぐ!」
  成瀬さんは俺のその所作に思い切り面食らって目をぱちくりやっていたけど、俺は構わずに続けた。今言わないと、絶対誤解されたままになる。勿論、元はといえば失礼な態度を取っていた俺が全部悪いんだけれど。
「 俺…俺が、成瀬さんを見られなかったのは……」
「 ……啓太?」
  話す事に集中したらもう成瀬さんに当てていた手をどかされてしまった。でも成瀬さんは俺のその手を優しく握ってくれて。
  俺のことを待って、俺の言葉を聞いてくれるようだった。
「 俺…俺、成瀬さん…」
  あ、駄目だ。また見られない。俺、こんな時まで下を向いてしまっている。
  でも、でも言わないと!
「 俺…俺、成瀬さんのこと好き過ぎて…一緒にいると緊張しちゃって…な…何も言えなくなっちゃってたんです…!」
「 …………」
「 最近ずっと…。何だか、テニスをしている時の成瀬さんとか、俺に笑いかけてくれる成瀬さんとか…本当に突然なんですけど、何だか急に…急に、心臓がおかしくなってきちゃって……」
「 …………」
「 それで……」


「 へ……?」


  何か成瀬さんの声なのか何なのか分からないような声が聞こえた気がしたけど、俺は夢中になって更に続けた。
「 俺…最近、本当ヘンで…。他にも、成瀬さんの優しい目とか、声とか、成瀬さんが俺に触れてくれたところとか…全部…ヘンになっちゃって…熱くなっちゃって…。こんなの、俺、おかしいから、だから何だか…だから成瀬さんのことまともに見られなくなっちゃってたんです…」
「 ………………」
「 あの…あの、俺……」

  それから多分、1秒もしてなかったと思うけど。
  一瞬はしーんとした沈黙があったと思うんだけど。

「 ハニ―――――――――ッ!!!!!」
「 ぎゃっ!!?」
  耳をつんざく程の絶叫が聞こえた、と思ってびっくりして顔を上げたら、この世のものとも思えないほどの成瀬さんの崩れた顔が…いや、崩れててもカッコいいんだけど。いやそんな事言ってる場合じゃないんだけど。
「 成…わ…っぷ、苦し…!」
「 ハニーハニーハニーッ!もうもうもうもう大好きだよーッ!!」
「 成瀬さ……」
「 何何何何、それは一体何ー!? それはハニー、ものすっごい愛の告白だよね!? 僕の事が好き過ぎて僕の顔がまともに見られない!? 僕と話すと緊張しちゃうの!?」
「 は、はい…っ、ちょ、でも今は違う事で苦しくて声が…」
「 ああもうどうしよう、幸せすぎて死んでしまうよ。ハニーは僕を殺す気かい!? この世で一番幸せ者だね僕は! どうしよう、興奮しすぎて何言ってるんだか自分で分からなくなってきたよ! ここ数日間の僕の苦悩は一体何だったんだろう!!」
「 あ…ご、ごめんなさ…」
「 いいのいいの! 喜びもまた一入ってね! ああもう本当にもう、今日は駄目だね、勉強もテニスも全部放棄!今日の僕は本当に完全に啓太のためだけにあるんだからね! 啓太、さあ行こう帰ろう、僕の部屋へ行こう?」
  成瀬さんのマシンガントークを断片的に拾ってあわあわとしていた俺は、最後のその台詞に一間隔後、叫んでしまった。
「 え…え、えええええ!? い、今からですか!?」
「 当たり前だろう! 誰もこの僕たちの愛を止められないよ! 誰が来たって僕がやっつけるよ、この勢いを邪魔する人間はっ」
「 で、でもまだ午後の授業が…」
「 啓太っ! 午後の授業って何だいそれは? それは何か僕たちの愛を育むために必要なものなのかい? いらないよね、とりあえず今は! もしかして将来的に何か役立つ日が来るかもしれないけれど、とりあえず今の僕たちのこの愛の成就には必要ないものだよね? というか、邪魔だよね!?」
「 …………は、はい」
  どうしよう、成瀬さんが止まらない。


  俺のここ数日の途惑いも一体何だったんだってくらい。
  その後の成瀬さんのテンションは上がりっぱなしだった。


「 啓太啓太っ。大好き大好き! 啓太だけだよ、僕には、啓太だけっ!」
「 は、はい…。お、お、俺も……」
  勢いに負けながら、俺は成瀬さんにもう手を引っ張られながら、そのまま校舎を後にしてしまった。カバンとか、靴とかそんなもの、今の成瀬さんに言ったら必要ないって言われるに決まっているし。
  それに。



  俺も、こんな成瀬さんが好きで好きでしょうがないから。




<完>







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■後記…テンション高い時は「ハニー」呼び、大切なところでは「啓太」呼びの成瀬さんが大好きです。何だかとてもバカバカしいエピソードのバカップルですみません。でも成啓はこんな感じだよなあと思って書きました。ただ真面目な成瀬さんも書いてみたかったので、とりあえず雨の中でたそがれるってのもやってもらいました。うーん、ちなみに成瀬さんと啓太がいつもお弁当を食べている場所とか、あの学院は上履きがあるのかとか…そういうのはちょっと分からなかったので勝手に作ってしまいました(汗)。ところで、この後2人はまず一緒にお風呂ですよね。だってびしょびしょでベッドに行ったら後が大変だし…。そして夜になったら寮長さんに授業をサボった罪で叱られる…。でもしょんぼりの啓太をかばうようにして寮長に立ち向かう成瀬さん!カッコいい〜!(そうか・汗?)/何にせよ、これは当サイト7万1キリの浅生様に奉げます。お粗末さまでした。



上総さんの成瀬×啓太ーーーーーッvvvvv
ああああもう、愛です!!どうしましょう!!!!!!
そうですよね、成瀬は「ハニーv」呼びと「啓太」呼びの
使い分けというか、その辺りが堪りませんのですvvv
軽そうに見えて、ても中身は一途!!とてつもなく!!
啓太まっすぐ!!ってところが、安心出来るし嬉しいですv
そしてー!!風呂、風呂ですよ!!そこも見たかったー(絶叫)!!!!
はー・・・それにしても、改めて成啓の素晴らしさを
再認識しましたのです・・・くふーv
上総さん宅で70001と、キリ番のニアピンというコトで
頂いたステキSSでございますv
上総さん、有難うございましたーvvvvvvvvvvvvvvv