+やさしいひと+
篠宮さんの神社へお手伝いに来て1週間が経った。
今はもう、お手伝いすることはほとんどなく、俺はゆっくりと篠宮さんの実家に滞在しているんだけど・・・。
31日から3日に掛けて、本当にすごかった。
三が日を終えるまで、それは本当にたくさんの人が初詣に訪れて、お参りをしたり、色んな祈願をしたり・・・。
鳥居から次の鳥居までの道沿いにある梅の木はおみくじで白くなって、絵馬には様々なお願いことを書かれていて、その数で参拝客がいかに多かったかが分かる。
大賑わいだった。
由緒ある神社というのはこうもすごいんだなぁ・・・。
俺も篠宮さんの実家へ来てから、お手伝いの打ち合わせをしたり、着物の着付け、袴の穿きかたを覚えたり、お客さんに道案内をしたり、それはもう色々なことをした。
毎日、その日一日が終わる頃にはへとへとに疲れてしまって、お風呂へ入って泥のように寝て、朝早く起きたら、また寒い中掃除をして、それからまた社所でおみくじを売ったり雑用をして・・。
大変じゃなかった、と言えば嘘になる。
大変だった・・・本当にてんてこ舞いになるほど日々疲れた。
それに・・・篠宮さんに会うことだってなくって・・・実はちょっぴり寂しかったりもした。
いや・・・勿論、完全に会えなかったわけじゃない。
見かけた時だってあった・・・。
忙しそうで言葉は掛けられなかったけれど・・・。
遠くからその姿を見ただけだったけれど・・・。
お参りに来た人に参拝の仕方を教えたり、境内を案内したり・・・。
・・・今年はご両親がいないこともあって、本当に大変そうだった・・・。
篠宮さんのご両親は今アメリカにいる。
心臓移植する弟さんの側にいるため、渡米しているんだ。
だから・・・神社を切り盛りするのは篠宮さんと篠宮さんのお祖父さんということになる。
勿論、神主はお祖父さんがやってらっしゃるんだけど、基本的に動いたり、人に指示を出したりするのは篠宮さん本人だった。
本当は神主は国での検定試験みたいなものがあって、その資格みたいなものが無いと出来ないらしいんだけど、今回は少し例外ということあり、篠宮さんが今まで手伝ってきた経験を元に、神主であるお祖父さんの教示のもと、やっていた。
今でもその光景を思い出すんだ・・・。
まぶたに今でも思い浮かぶ篠宮さんは・・・本当に素敵だった。
今思い出してもちょっと恥ずかしくなるんだけど・・・。
本当に・・・格好よかった。
日頃から弓道で着慣れていることもあって、着物をさらりと着こなしていて、堂々としていた。
それが本当に格好よくて・・・。
白の白衣に薄水色の袴・・・。
お手伝いだったということもあって衣服はそこまでだったんだけど、それでも俺が見惚れるには十分だった。
本当はお祖父さんみたいな服装とか見てみたかったりもしたんだけど・・・。
お祖父さんの服装は本当にすごかったんだ。
帽子とか靴とかそれから着物の上着がすごく凝っていたんだ。
立烏帽子に浅沓、それから狩衣なんだと後で篠宮さんに教えてもらったんだけど。
いつかこんな服装の篠宮さんを見てみたいな・・・って本当に思った。
あとあと!ちょっぴり特した気分にもなったんだ。
俺の知らない篠宮さんを見ることが出来て、嬉しかった。
だから、日々キツかったけれど、でも篠宮さんの動く姿を見ることが出来て、俺は毎日ドキドキしていたんだ。
お祖父さんやお祖母さんも本当に良い方たちだった。
由緒正しい神社の神主さんに相応しく、篠宮さんのおじいさんは眼光が鋭く、けれども視線は暖かい人だった。
掃き掃除をしている俺の前を通りかかる時でも「寒かったら休んで暖まりなさいよ」と物静かに優しく気遣ってくれる人だった。
お祖母さんはいつも暖かいお汁粉や甘酒を作っては休憩の時に皆に届けてくれた。
こういう素敵な環境で篠宮さんが育った・・。
生まれ故郷の様子なども見ることが出来て、俺は本当に嬉しかった。
そんなこんなで忙しい日々を過ごして、お手伝いを終えた俺は、三が日を終え、四日には帰る予定でいた。
だってさ、いつまでも長居しちゃいけないと思ってさ。
篠宮さんたちはやっと一息つけるんだ。
ご家族でゆっくり過ごせるんだ。
そんな中俺が何時までもいても邪魔だし、家族水入らずで過ごしたいだろうと思ったんだ。
けれども、篠宮さんはそんな俺を引き止めてくれたんだ。
折角来てくれたんだし、慌しい毎日を送らせたままこのまま帰すわけにはいかないって。
もっとゆっくりしていけって。
そうして小声で言ったんだ。
「俺達は、なかなかゆっくり2人で過ごす時間はなかっただろう?
だから、新学期前日まで2人でゆっくり過ごして、2人で帰ろう・・・」って。
それを聞いて嬉しくないはずなんて、ない。
俺はすぐに実家に連絡して、帰れない旨を告げた。
勿論正月に顔を見せない息子に対して、電話越しの母さんは少し不服そうだったけれど、篠宮さんが電話を代わってくれて事情をちゃんと話してくれたら、納得してくれた。
母さんは再び電話を代わった俺に「迷惑かけないようにね」なんて言っていたけど、声はルンルンだった・・。
そりゃそうだろうな・・・BL学園の生徒と話したら誰だってなると思うんだ・・。
篠宮さんの声っておだかやかだし、母さん・・・そういうの・・・弱いもんな・・・。
・・・・まぁ・・・篠宮さんが恋人同士だっていうのは・・・母さんたちには・・・内緒にしているんだけれど・・・。
ゆっくり出来るようになってから、俺は篠宮さんと思う存分一緒に時間を過ごすことが出来て、本当に嬉しかった。
篠宮さんいつでも側にいてくれた。
家にいるときは自分の部屋へ呼んでくれて、小さかった頃の話や色々なことを話してくれた。
必ず側にいてくれて、俺はそれだけで本当に幸せだった。
何をするにも側にいてくれて、本当に優しくしてもらっている・・。
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そして今日も2人でのんびり山道を歩きながら散歩に来ている。
海と山に囲まれたこの地域は、寒いけれども、豊かな自然に恵まれている。
今俺達が歩いているのは篠宮さんお気に入りの散歩コース。
散歩道の両脇には杉が植えられている。
しばらく歩くと桜の木が植えられいて、春になると花見の客で一杯になるという。。
春になったときの薄桃色が美しくあたりを取り巻き、しだれ桜が風に優しく揺れて、それは美しい場所になるんだそうだ。
嬉しそうに語る篠宮さんを見ると、俺も嬉しくなる。
でもさ・・・。
ちょっと思うんだ。
・・・優しくされすぎ・・・というか・・・。
こう・・・甘やかされすぎというか・・・なんというか・・・。
頭なでたり、外に出るときに寒いだろうからってすぐに手を握ってくれたり・・・。
いや・・・嬉しくないはずはないんだけど・・・。
恋人というより・・・弟扱いをされている感じがして・・・。
優しくされすぎると、時々不安になる。
困った奴だとか・・・仕方のない奴だ、とかどうしようもない奴って思われたらどうしよう・・・。
だってさ・・・ゆっくり出来るようになって滞在してから3日も経つのに俺・・・・キス1つもらってないんだよな・・・。
だからつい不安になるというか・・・。
篠宮さんの誕生日前日に渡した俺からの手紙・・・ちゃんと気持ちは伝わっていたはずだよな・・・?
だっておみくじをお互い引いて、2人分のおみくじをあの縁結びの木に結びつけた時に篠宮さんは言ってくれたもんな。
「添い遂げる」ってさ・・・。
息が止まるまで一緒にいてくれるって・・・。
俺を弟みたいに扱ってくれる篠宮さん・・。
優しくて大好きだけど・・・なんか・・・寂しいな・・・。
それに・・・
俺は・・・もっとあなたに触れたいなって思っている・・・。
・・・こんなことを考えている俺が変なのかな・・・。
こうして触れている今でも・・・。
ねぇ・・・篠宮さんはどう思っているんだろう?
俺のすぐ横に篠宮さんはいる。
暖かい黒の厚手のロングコートを羽織り、中はカシミヤで出来た灰色のタートルネック。
コーデュロイで出来た黒のパンツに茶色の靴。
ポイント代わりに手触りの気持ちいいモコモコした白いマフラーをぐるりとつけている。
「寒くないか、伊藤」
「大丈夫ですよ」
「今日は格別に寒いからな・・・お前が風邪を引かなければいいんだが・・・」
「本当に・・・もう・・・篠宮さんは心配し過ぎですよ」
「いや、新年早々風邪を引いたら大変だからな。
・・・そうだ・・これを使うといい。」
そしてマフラーを取って、俺の首元にかけてくれた。
さっきまでつけられていたこともあり、篠宮さんのぬくもりが直に伝わってくる。
「あ・・・・ありがとうございます」
「これぐらい気にするな」
にっこりと優しく微笑む篠宮さんの顔をなんだか照れて見られなくなった俺は急いで話しを切り替えた。
「それにしても・・・いよいよ明日・・・学園に戻る日ですね」
「ああ・・・そうだな・・・伊藤には本当に世話を掛けたな」
「いえ、気にしないで下さい!俺、篠宮さんのお手伝いが出来て良かったって思っているんですから」
「そうか・・・・ありがとう」
「明日はもう7日かぁ・・・なんだかあっという間に冬休みも終わりですね」
「ああ、明日は7日なのか・・・。よし、七草粥を作ろう」
「ななくさがゆ・・・?」
「伊藤は食べたことあるか?」
「ない・・・です」
「なら、明日作るから食べるといい。これは縁起の良い食べ物だからな」
「そうなんですか」
「ああ・・・本当は材料が全部揃えばいいんだが、なかなか今だと揃わないから、完全には七草までにはいかないかもしれないが・・・」
「どんな料理でも、篠宮さんが作るものは皆美味しいから!俺、楽しみにしていますね!」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
穏やかに篠宮さんはまた、笑う。
優しくて暖かくて・・・。
繋いだ手から伝わる温度は本当に心地よく、このままでいたい気持ちになる。
けれど・・・衝動的な気持ちを押さえるのが今ちょっと耐えられなくなっていて・・・。
例えば、今笑っている篠宮さんにいきなりキスをしたらどうなるんだろう・・。
受け入れてくれるかな・・・。
それとも何もなかったような素振りを見せるんだろうか?
唇に触れたくなる、黒く艶やかな髪に手を滑り込ませてみたい・・・。
って・・・・こんなことばっかり・・・。
俺・・・さっきから何を考えているんだよ・・・。
「伊藤・・・どうした?」
「っ・・・!」
心配している・・・けれども真っ直ぐな視線が俺の瞳を覗き込んでくる。
こんな後ろめたい気持ちを知られたくなくって、その動揺が顔に出る。
ブンブン首を振って否定する。
「なんでもないです!!」
繋いでいる手が熱を帯びて少し汗っぽくなる。
勿論、それに篠宮さんが気付かないはずがない。
「どうしたんだ?」
「な・・・・なんでもないですってば」
「そんなはずはないだろう、顔が赤くなってる」
「気にしないで下さい・・・」
「ひょっとして気分が悪くなったのか?」
そう言って空いた手を額に持ってこようとする。
その気遣いが嬉しくって、けれども恥ずかしくって、後ろめたくって、俺は思わず反射的にはたいてしまった。
パン!
大きな音が響く。
思わず自分でやっておきながら呆気に取られている俺は、はたかれてびっくりしてこちらを見ている篠宮さんと目が合ってしまう。
「・・・・伊藤?」
ちょっといぶかしんでいる声・・・。
当たり前だ・・・だって・・・心配してくれている篠宮さんの手を乱暴とも受け取れかねない形で拒絶してしまったんだから・・。
でも・・・・・一人でとんでもないことを考えていた、だなんて知られたくないじゃないか・・。
「すみません・・あの・・・何でもないんです」
「そのようには見えないが・・・」
「気分が悪いんじゃないんで・・・・本当です」
「・・・伊藤?」
「何でもないですったら!!」
慌てて繋いでいた手も離す。
「・・・・・・っ!!」
ぱっと振りほどいた手を大きく振ってしまったため、手の甲をむき出しになっている木の枝の先端で思いっきりこすってしまった。
思った以上に先端が鋭かったらしく、皮がえぐられ、引掻かれたような傷になってる。
毛細血管から破裂した血が集まりだして、ぷっくりと膨れていく。
「ああ・・・大丈夫か?見せてみろ」
俺の手を取ろうとする篠宮さん。
ものすごく心配している・・・。
・・・でもまだ恥ずかしさが残っていたから、俺はついつい、つっけんどんに返してしまう。
「大丈夫ですから!」
「伊藤・・・」
「・・・お・・・俺、子どもじゃないんですから!これぐらい自分で手当てできます!」
「何を意地になっているんだ・・。
・・・ほら・・早く見せろ」
重力に逆らって垂れる。
一筋の川を作って、中指に流れていく。
中指の先端からつららが出来ていくような感じで血が集まって、重力に負けたその雫が・・・落ちる。
砂利の道に出来る不自然な赤いドット。
それを見て、篠宮さんは急いでハンカチを取り出して、乱暴に手を取るとぐるぐる巻いてきた。
「俺・・・大じょ・・・」
「大丈夫なわけないだろう!」
怒鳴られて思わずびっくりしてしまう。
叫んだ篠宮さん自身もびっくりしていた。
気まずい空気が流れる。
2人で山道で硬直する・・。
口火を切ったのは篠宮さんだった。
傷ついた手をそうっと包み込んでくれた。
「・・・その・・・怒鳴って悪かった・・・」
「篠宮さんは・・・こうやって優しすぎるんです・・」
「伊藤・・」
「俺のこと・・・甘やかしすぎなんです・・・」
「・・・・・」
「甘やかされすぎると、嬉しいけど、不安になるんです・・・俺のこと・・仕方のない奴だ、とか手のかかる奴だ、とか思ってないですか?」
「そんなことを考えていたのか・・・。
馬鹿だな伊藤は・・・」
一呼吸置いて、言葉を続ける。
「お前のことは・・・誰よりも大事に思っている・・・前にも言っただろう」
優しく髪に触れる篠宮さん・・・。
「・・・・だ・・・・だけど・・・」
「・・・・・・?」
「最近・・・・キス・・・とか・・・くれないし・・・」
「・・・・・」
そうして沈黙。
耐え切れなくなって見上げてみれば・・・・耳まで真っ赤になっている篠宮さんがいた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「別に・・・したくなかったわけじゃない・・・」
「え・・・?」
多分俺の顔も真っ赤で・・・。
お互い真っ赤で・・・。
今までだって・・その・・寝たことだってあるのに・・・・どうして俺達こんなに照れているんだろう・・。
でも・・・嬉しい。
嬉しいから確認したい。
「あの・・・俺のこと・・・好きですか?」
「当たり前だろう・・・」
「俺のこと・・・恋人として好きですか?」
「ああ」
「・・・・じゃ・・・キス下さい」
「ここでか・・?」
「ここじゃなきゃイヤです」
「・・・・・仕方のない奴だ」
駄々をこねた俺に困ったように照れながら笑うと、もう一度俺の髪を撫でて、そのまま引き寄せて、キスしてくれた。
外の空気でお互いの唇は冷えていたけれど、でも吐息は熱くて・・・・気持ちよかった。
そのうち腰を引き寄せられ、さらに深くキスをして・・・。
何度も何度もキスをした。
「手当てをしに帰ろう」
「・・・そうですね」
勿論、手当てが終わったら、その後に何があるのか、お互い分かっていた。
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翌朝、俺は篠宮さんの声で目が覚めた。
「伊藤・・・起きろ」
目を開けると、篠宮さんがこちらを見ていた。
障子に指す日光がまぶしいけれど暖かい。
ああ・・・そういえば今日はBL学園に戻る日だ・・・。
遠慮がちに篠宮さんが声を掛けてきた。
「その・・・起き上がれるか」
「は・・はい」
お腹に力を入れて起き上がろうとしたけれど・・・痛みがあって無理だった・・。
再び布団へリターン・・・。
腰が痛い・・・。
「・・・・・大丈夫か・・・」
大丈夫じゃないと言ったら、どうするのかな・・・。
おんぶされて学園まで連れ戻されそうだ・・・。
・・・・・・・本気でやられそうだ・・・。
それは・・・多分良くない・・・。
絶対良くない・・・。
和希が見たら大笑いするだろう・・。
成瀬さんがみたら、大絶叫するかもしれない・・・。
だ・・・ダメだ・・・。
「大丈夫です!!」
片肘に重力を移して、ゆっくり身を起こした。
篠宮さんが優しく手を背中に添えて助けてくれる。
昨日は手当ての後、そのまま晩御飯になった。
食べて、お互い入浴を済ませて・・・んで・・・その・・・なんというか・・・。
久々に・・・沢山・・・やってしまったんだけど・・・。
俺は流石にぐったりしてしまって・・・。
・・・だのに・・篠宮さんは全然ぴんぴんしている・・・。
そういう部分はなんだか悔しい・・。
なんだか不公平だ・・。
なんと気遣ったらいいのかわからない感じの面持ちで篠宮さんは言ってくる。
「その・・・・やっぱりちょっと辛いみたいだな」
「大丈夫ですったら!!」
悔し紛れに言い返した。
あれ・・・それより・・・なんだか良い匂いがしてくる・・・。
なんだろう・・。
「篠宮さん・・・すごく良い匂いがしますね」
「ああ・・・・そうだ・・・伊藤にも食べてもらおうと思ってな」
「それは・・・?お粥・・・ですか?」
「昨日話していただろう?七草粥だよ」
「ああ!」
「ただナズナが手に入らなくて、他のもので代用したんだが・・・」
「美味しそうですねぇ・・」
丸いお盆に白いお粥の入った御椀が見える。
中に七草なんだろう、青い葉が見える。
湯気が立っていて、出来立てみたいだ。
わぁ・・・すっごく美味しそうだ。
「食べるか?」
「はい!・・・えっと急いで着替えるんで待ってくださいね・・・」
やっぱりパジャマ着たまま、布団の中で朝食はいくらなんでも行儀悪いだろう・・。
「あ・・・伊藤・・無理はしなくていい・・・」
無理に起き上がろうとしたら・・・本当に響いた・・。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「ほら・・・だから言っただろう・・・今日は出立するギリギリまでゆっくり休んでいろ」
「でも・・・帰り支度とか」
「ああ・・・やっておいた」
「・・・・って!!!だってあれは・・・・下着とか・・色々・・・いろいろ・・・」
「全部入れておいた。」
「・・・・・・・篠宮さん!!」
「心配するな忘れ物はないだろう」
「・・・いや・・・そういう問題じゃ・・・」
「ほら。伊藤・・・冷めないうちに食べろ」
「・・・・・・・・・・・」
俺・・・・本当に甘やかされすぎだ・・・。
でも・・・その気遣いが本当に嬉しいと思っちゃったり・・・俺・・・薄情者かなぁ・・。
御椀とスプーンを手渡される。
「熱いから気をつけろよ」
「はーい。いただきます!!!
・・・・あちっ!」
「・・だから言っただろう。熱いからって、ほら、舌を見せてみろ」
「大丈夫ですって・・・」
「いいから・・・火傷していたら大変だろう」
「・・・・・」
甘やかされて、いつでも優しくて困ってしまうけど・・・、本当に篠宮さん・・・あなたが大好きです。
日頃の暖かい恨み言も含めて、あっかんべーーっと出す。
近付いた篠宮さんの顔が間近で、思わずこんなことをしなければ良かった・・・と思ってももう遅い。
唇が目に入る・・・。
そうだ・・・昨日はさんざん・・・この人の唇で・・・・。
「良かった・・・火傷はしてないみたい・・・・だ・・・・」
俺の異変に気付いたらしい。
「ああ・・・その・・・伊藤」
「・・・・・」
「あまりそういう顔をされると・・・」
「・・・・・・・・・・・」
そうして恥ずかしい気持ちが伝染したらしい。
「全くお前は・・・」
額に1つキスをくれた。
「これだから放っておけないんだ・・・」
耳元でささやかれたバリトンの声。
耳朶に、首筋に柔らかい唇が触れてきて、くすぐったくて、心地よくて・・・・。
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寮に着く頃にはぐったりしていた。
荷物は全部篠宮さん持ち、ほとんどタクシーを利用して歩くのは至難のワザだった・・・。
そんなこんなで明日から新学期・・・。
大丈夫かな・・・。
っていうか・・俺・・・・一体何をしているんだろう・・・・。
でも・・・。
でも・・・これだけは本当だ・・・。
篠宮さんとお正月を過ごせて、一緒に休みを過ごせて本当に良かった。
本当に・・・良かったって思ってる。
そして冷めてしまった七草粥も・・・美味しかった。
今年も一年・・・あなたとこうして一緒に歩んでいけますように・・・。
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<コメント>
篠宮の魅力を沢山教えて頂き、本当にありがとうございました。
新しい世界が広がった気が致しました!!!
篠宮の素晴らしさに本当にうっとりしてしまいました。
本当に・・・なんだかダメな篠宮と積極的な啓太ですが・・・・少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
これからも浅生さんの篠啓を楽しみにしております!!
2004/01/06/修善寺じゃが
うわあああ!!こちらこそ有難うなのです・・・ッ!!
じゃがさんの初・篠啓・・・もう、もう、もう!!
私がガッツリ語り、刷り込んだ篠啓のアレコレに
更に、じゃがさんテイストが加わって、転げ回る
くらいにメロメロしちゃう篠啓SSがーvvv
幸せです・・・有難うございますーーーーッvvvvv