『好き、だから』



 触れる素肌が。
 泣きそうなくらい、気持ち良くて。
「・・・龍斗、はん」
 耳元で。
 熱い吐息と共に、名を囁けば。
 涙で潤んだ瞳を。
 そろりと、向けて。
「気持ち、ええか?」
「や、ッ・・・・・」
 そんな、こと。
 聞かなくても。
 重ねた、肌で。
 繋がった、ここで。
 分かる。
 感じる。
 それでも、聞いてしまうのは。
 決して。
 余裕からくるものなどでは、なく。
 むしろ。
 逆に。
「聞きたい、んや・・・・・この可愛らし唇から、なぁ
・・・・・言うて、龍斗はん・・・」
 ゆるりと、波のように振動を与え、揺さぶりながら。
 それでも、口調は。
 欲に、掠れてはいても。
 何処か。
 飴玉を強請る、子供のようで。
 ゆるやかに追い上げながら。
 誘うように、唇を舐めあげれば。
「あ、ッ・・・・・い、い・・・・・」
「言うて、・・・・・なぁ」
「・・・気持ち、良い・・・・・よ、ッあァ・・・んッ」
 羞恥故か。
 覆い被さる男の首に縋り付くように。
 顔を。
 埋めて。
 そうすれば、自然より深く肉塊を飲み込む形となって。
 刺激に、喘ぎながら。
 請われるままに、快感を。
 曝け出して。
「イイ、・・・・・們天丸、ッ・・あァ・・・ッ」
「ッわい、も・・・・・気持ち良過ぎ、て・・・・・」
 溶かされてしまいそうだ、と。
 次第に、激しく突き上げる動きに変えながら。
 目眩のするような快楽に流され、どこまでも堕ちて行き
そうな己を、辛うじて繋ぎ留めながら。
 甘い、桜桃の実のような唇を、貪り。
 羽二重よりも、柔らかくしっとりとした肌に、むしゃぶり
つくように。
「こんな身体は、・・・・・知らん」
 白い肌は。
 新雪のように清らかなのに。
 青白い月に照らされ、浮かび上がる様は。
 身震いする程に。
 淫ら。
 猛る雄を受け入れた、そこは。
 初心の狭さと。
 欲を掻き立てる、熱さで。

 もう数え切れぬ程、女を抱いて来た。
 男の身体も、知っている。
 なのに。
 その、どれとも違う。
 まるで。
 別の、生き物。
 組み敷いているのは、自分の方なのに。
 縋り絡み付く、しなやかな腕に。
 囚われる。
 身も。
 心も。
 魂、すら。

「いや、だ・・・・・」
「ん、・・・・・何、や?」
「比べ、るな・・・・・ッ」
 ギリリと。
 喰いちぎらんばかりに、締め付けられて。
 そのまま、放ってしまいそうなのを、寸で堪え。
「ッた、つと・・・・・はん」
「俺を抱いている時に・・・他の事は、考えるな・・・ッ」
 他の事、など。
 龍斗に関わる事でなければ。
 何も。
 考えられない。
 比べようもない。
 もとより。
「わいは、いつでも・・・龍斗はんの事、ばっかりやで」
 大きく開かせていた脚を、肩に抱え上げて。
 深く。
 より深くに。
 己を埋め込んで。
「あ、あああッ・・・ん、ッ」
 震える内壁を、擦り上げ。
 乱し。
 狂わせて。
 自らも。
「朝も昼も晩も、・・・・・気が、おかしゅうなるくらいに
・・・・・ほんま、ハマっとるわ」
「・・・・・な、ッ・・・」
「っちゅうか、・・・・・ハメとるのは、わいやけど」
「・・・・・ッ」
 絶句する、龍斗に。
 ニッ、と。
 悪戯っぽく、笑んで。
 鼻先を、擦りあわせ。
 甘える、ように。
「好きで好きで・・・・・どうしようもないくらい、や」
 囁く、それは。
 ひどく、真摯な響きでもって。
 溜め息のように、低く。
 密やかに。
 龍斗の、身体を。
 心を、震わせる。
 彼、の。
 こういうところ、が。
 堪らなく。
 愛おしい、と。
「・・・・・だったら、もっと・・・・・」
 頭を抱き寄せるようにして。
 強請れば。
 嬉しげに。
 下りて来る、唇。
 落とされる。
 幾つもの、口付け。
「好き、や・・・・・ほんま、気ィ狂いそうなくらい」
 性急に、打ちつけられる熱に。
 縋り、包み込むように。
 抱きしめて。
「ッもっと・・・・」
 見せて。
 曝け出して。
 俺に、だけ。
 お前、を。
 教えて。
「離さ、へん・・・から」
 それ、は。
 お互いに。
 きっと。
「離さない・・・・・よ」
 駆け引きなんか、超えたところで。
 こうして。
 抱き合う。
 だから。
 こんなに。

 好きで。
 好きで。
 気持ち良くって。
 ねぇ。
 どうしよう。




好きな人とが、キモチイイってコトで(何)。
遊び人・もんちゃんですが、本気で惚れたら
一筋です。イッケツ主義です(爽笑)。
その誠意(??)が通じて、めでたくひーたんと。
天狗の嫁かぁ・・・(悦)。