「おつかい龍斗くん」



「こんにちはー、奈涸いる?」
 元気な声とともに店に入ってきた常連客に、年若い店主は少しだけ表情を柔らげた。
「やあ龍君。待ってたよ。何か気に入るものが見つかるといいんだが」
「えっと、皆の武器を新調したいんだけど、ここに書いてあるのをお願い。あと俺も新しい手甲が欲しいな。ちょっと見せてもらっていい?」
「ああ。ゆっくり見て行ってくれ」
 早速、物珍しそうに店内の品物をあれこれ見始める龍斗。
 奈涸は渡された紙に書かれた品を揃えつつ、その後ろ姿を微笑ましく眺めた。
(―――業物、あと2回くらいで大業物ってところか・・・)
 我ながら上手に育てたものだとこっそり満足げな笑みをもらす。
 自分の腰の辺りにそのような鑑定結果が出ているとは露知らず、龍斗は呑気に売り物を眺めていたが、その視線がある商品の上で止まった。
「これ、強そうだね」
「ああ、黄龍の甲か。これはかなりの掘り出し物でね。・・・残念だが金額が足りないようだ」
「あとどのくらい?」
「他の買い物を全部やめたら何とかなるかも知れないが」
「うーん、そういうわけにはいかないけど、でも欲しいし・・・何とかまけてよ。ね、奈涸?」
 首を傾げて「お願いv」ポーズの龍斗に軽く悩殺されつつ、奈涸は何とか平静を装う。
「仕方ない、他ならぬ龍君の頼みでは聞かないわけにはいかないな」
「わーい、ありがと。だから奈涸って好きーv」
 よほど嬉しかったのか、龍斗は奈涸に飛びついた。
 首に腕を回して、甘えた猫のように額をすりすりと擦りつけてくる。
(か、可愛い・・・)
 ぷちんと、奈涸の中で理性の糸が音を立てて切れた。
 龍斗を驚かさないように、そっと背中に腕を回して優しく抱きしめる。
「但し、こちらも商売なのでね。そうだな、下取り購入なら何とか」
「本当?でも俺、今装備してるの小手なんだけど」
「大丈夫。(龍君の)価値を上乗せしてあげよう。では下取りのために鑑定をさせてもらうよ」
「あ、あの・・・奈涸?んっ・・・」
 龍斗の顎を捉えて深く唇を重ねる。
 舌で優しく口腔内を探れば、おずおずと応える龍斗の舌。
 馴らされた身体はすでに力が抜け、奈涸に縋るようにして立つのがやっとだった。
 しかし、奈涸の手が着物の裾を割って入って来た途端、龍斗の全身に緊張が走る。
 苦笑して、龍斗を宥める奈涸。
「力を抜いて。正しい鑑定が出来なくなってしまうよ」
「だ・・・って」
 さわさわと太腿を撫でられ、思わず龍斗が抗議の声を上げる。
「だ、ダメだよ。こんなところでっ・・・あ、ん!奈涸・・・っ」
 巧みに弱いところを攻めてくる指の動きに龍斗が流されそうになったそのとき。

「寸鉄!」
 ヒュッと飛んできた何かが後頭部を直撃し、奈涸はその場に倒れこんだ。
「海栗・・・?」
 龍斗が飛んできたものの正体を見極めたとき、更に何かが奈涸を直撃。
 そして。
「地に水流るるは自然の理・・・飛水流奥義・流剋刃ッ!!」
「ぐはあ!!」
 悲鳴とともに弾き飛ばされる奈涸。
 レベルアップの音楽が鳴り響く中、颯爽と登場したのは。
「涼浬―――?」
「この地の穢れを祓うが飛水の役目―――」
 天井の隠しカメラ(何故そんなものが/汗)に向かって、海栗を手に決めポーズで決め台詞を言う涼浬を、龍斗は呆気に取られて眺める。
「龍斗さん、お怪我はありませんか?」
「う、うん。俺は大丈夫だけど・・・奈涸が」
 龍斗の視線の先には、壁にめり込んで痙攣する亀の姿。
「涼浬って呪詛使えたんだ」
 妙なところに感心する龍斗に、涼浬は微笑んで答えた。
「ちょうどいいところに外法頭がありましたから」
「それって売り物なんじゃ・・・」
「お気になさらず。それよりも龍斗さん、このような危険なところに長居は無用です。さ、あちらへ」
 そう言って龍斗を奥の座敷へと促す涼浬に、龍斗は躊躇いがちに口を開く。
「で、でも奈涸の手当てしないと」
「彼も元は一流の忍です。あの程度の怪我、自力で治せなくては」
「え―――ちょっと、涼浬。だってお兄さんでしょ?」
「私には兄などおりません」
 即座にきっぱり言い切る涼浬。
「さ、早く奥へ。あの者が触れたところを消毒しなくては」
「え、いいよ。俺よりも奈涸を・・・ねえ、涼浬ってば」
 意外に力のある涼浬に引きずられるように座敷へと連れ込まれる龍斗。
 畳の上に押し倒されるような格好で見上げると、涼浬は恍惚とした表情で龍斗に覆い被さってきた。
「さあ、私にお任せ下さい。力を抜いて・・・」
 言いながらさっさと龍斗の着物の裾を捲る涼浬。
「涼浬・・・ダメだってば、そんなとこ。あっん!!」
 太腿に舌を這わされて、思わず悲鳴を上げる龍斗。
「唾液には殺菌作用があると言います。私が責任持って消毒させて頂きます」
 そう言いながら、涼浬の舌はだんだん龍斗の中心に向かって這い上がっていく。
「んんっ!あ、あん、そこはまだ触られてないっ・・・」

「―――た、龍君・・・」
 せっかくここまで大切に育てたのに、このまま妹に横取りされて大業物になってしまうのか。
 奈涸は薄れゆく意識のなか、ぼんやりとそんなことを思っていた。


−END−
 


弘樹さんより頂いた、飛水兄妹×龍斗ですッ!!
すごい・・・まさに、ツボ直撃なのです・・・ッ(悦)!!
そう、そうなの!!こんなカンジなのーーーーーッ(興奮)!!
龍斗が神代物になるのは、果たしてどちらの手による
ものなのでしょう・・・うくくくく(妄想∞)。
くはー・・・私も鑑定したい・・・ッ(真顔)!!!!
弘樹さん、本当に有難うございましたvvv