『無自覚』




「ずっと、・・・君を見ていた」

 その値踏みするような目が、嫌い。

「触れてみたいと・・・思っていた」

 品物を扱うような手の動きが、嫌い。

「・・・・・君に」

 絡み付く。
 声も、その長い髪さえ。
 捕らえられて、逃げられない。
 錯覚。

「い、や・・・・・」

 微かな抵抗を示す声は、震えて。
 怖い、わけじゃない。
 この男に、怯えているわけじゃない。

「や、ァ・・・・・ッ」

 見つめられて。
 触れられて。

「龍、君・・・」

 耳元で囁く、声に。
 どうしようもなく、震える。
 身体。
 そして、心。

 怖いのは。
 自分自身。

「奈涸、・・・・・ッん・・・」

 見つめられて。
 触れられて。
 それが嫌だ、と言いながら。
 見つめられることで。
 触れられることで。
 どうしようもなく、この男を感じて。
 恐怖ではない、何かに。
 身も心も震わせてしまう。
 そんな自分が。

「・・・ッ嫌い、・・・・・ッ」
 喘ぐように、その言葉を漏らせば。
 見下ろす貌は、困ったように。
 ただ、微かに笑って。
「俺は、・・・・・好きだ」
 そう言って、下りて来る唇。
 それは。
 頬に。
「・・・・・甘い、な」
 いつしか零していた涙を、舐め取る感触。
 その行為と、落ちて来た言葉に。
 ゆるゆると、首を振れば。
「哀しみや苦しみ・・・・・そういう辛い時に流す涙は、苦いの
だそうだ」
「・・・・・何が、・・・言いたい」
「いつまで、知らない振りをするんだろうな・・・君は」
 そして、微苦笑。
 この、表情は。
 多分、嫌いじゃない。
「・・・・・何を言ってるのか、分からない・・・」
「今は、・・・な」

 だが、すぐに分かる。

 低い声で、囁かれて。
 微かに震える身体を抱き締めるように、覆い被さる重み。
 ああ、これも。
 嫌いじゃない。

「・・・・・奈涸」
 ふと、呼べば。
 ゆっくりと覗き込む貌、そこには。
 狂暴な。
 優しさ。
「・・・・・嫌い、じゃ・・・ない」
 ポツリと呟けば。
 微笑う顔が、多分。
 きっと。
 とても。

 好き、なんだ。





・・・・・珍しく、誘ってない!?ひーたん!?
そこはかとなく、自覚のないアレで(何)。
奈涸さんは、知ってます。気付いてます。
ええ、ずっと見ていますからね、あやつは!!
それこそ、天井と言わず、壁や床下・・・
あらゆるところに要注意です(ストーカー
もしくはシロアリ状態←そこに愛は!?)v