『鎖』



「霜葉、霜葉、待って!」

 そういって息を切らせて追いかけてくる龍斗に、霜葉はゆるりと振り返る。しばし立ち止まっていれば、肩で荒い呼吸を繰り返しながら龍斗が追いついた。

「龍?どうかしたのか?」

「はぁ…あの…はぁ、はぁ…」

 滅多に息を切らすことのない龍斗がここまで息を切らすとは。火急の用とはなんだと霜葉が眉をひそめる。そして龍斗の背を優しく撫で、ひとまず落ち着かせようと口を開いた。

「ほら、息を吸って、吐いて、吸って――」

 霜葉の言葉通り幾度か深呼吸を繰り返せば、龍斗の肩の動きが徐々になくなる。それでもまだ口を開かない龍斗を責めるでもなく、霜葉は辛抱強く待った。

「はぁ……。あのね、霜葉、これ」

 最後に深い溜息のような吐息をつくと、龍斗はズタ袋のような道具袋から一本の鎖を取り出した。

「霜葉にね、あげようと思って」

 にっこりと笑って龍斗が言うと、霜葉は一瞬驚いたように目を瞬く。だが次の瞬間ふわりと穏やかな笑みを浮かべると、有難うと受け取った。

「これは…」

 手に取った瞬間、それがそこら辺に転がっているものではないと理解する。霊場の地下深くまで潜らないと手に入らない代物――太玉の鎖。

「もしかして、一人で?」

「だって…霜葉にあげるんだし、誰かが先に取っちゃったら意味ないじゃん」

 少しばかり拗ねたように言うと、龍斗は霜葉にぎゅっと抱きついた。その胸に顔を埋め、小さくつぶやく。

「俺じゃない別な人が手に入れたものを、大好きな人にあげるなんて出来ない。…霜葉には、俺が手にしたものだけを、あげたいから…」

 我が儘でごめんね。

 そうささやく龍斗が愛おしくて、霜葉は思わずきつく抱きしめ返す。そしてそのまま深く深く唇をあわせれば、龍斗が苦しそうながらも必死で応えた。

「んっ…は…」

 苦しくても離れたくなくて、このままずっとこうしていて欲しくて。それでもやはり限界はある。やがてどちらからともなく唇を離せば、龍斗がくたりと霜葉にもたれ掛かった。

「そうはぁ…」

 甘い声に、背筋がぞくりとして。

 今すぐ此処で、押し倒してしまいたい衝動に駆られる。

「…龍」

 今度は音を立てるだけの軽い口付けを与え、霜葉は龍斗を緩く抱きしめた。

「龍斗。俺のために、危険に身をさらさないでくれ。もしも龍斗に何かあったら、どうすればいい?お前を…失いたくない」

「霜葉……。……ごめんなさい」

 良かれと思ってやったことが裏目に出て。喜びの顔ではなく、悲しい顔に龍斗はしゅんとうなだれる。そんな龍斗の背をぽんぽんと撫でると、霜葉は優しく笑った。

「龍、愛している。それから有難う。お前が一生懸命取ってきてくれた鎖だ。大切に使う」

「霜葉…」

 霜葉の優しい微笑と何よりも嬉しい言葉に、龍斗はにっこりと満面の笑みを浮かべる。そしてぎゅっと首に腕を回すと、精一杯背伸びをして唇を重ねた。

「ね、霜葉。その鎖は村正を縛るものだけど…霜葉で、霜葉自身で、俺のことを縛って。雁字搦めにして、離さないで」

 僅かに目元を赤く染めたままささやくその顔は、誘惑者。霜葉は一瞬目を見開き、次の瞬間不敵に笑った。

「離れたいと言っても、離しはしない。お前は…俺のものだ」

 そういいきって、恥ずかしそうに微笑む龍斗に口づける。腕の中に閉じこめて、再度ささやいた。

「愛している。…離さない」





霞月さん、お誕生日おめでとう御座いますvv遅ればせながら御祝いの品です☆
……全然大したものじゃないですが(汗)
文中では明確にしてませんが、お誕生日と言うことで、霜葉さんのも祝ってみました(^^;)霞月さんトコは剣風帖のひーたんだから難かなぁとは思ったんですが…(汗)
す、すみませんです〜(汗)お気に召さなきゃ速攻ゴミ箱でお願いします!


あああ有り難うございます・・・ッ!!!!私の●●回目(笑)の
誕生日の御祝にと、こんなステキSSを・・・ッ(ドキドキ)v
そして、12/4の霜葉の生誕祝いも兼ねて、というコトでvvv
うにゃー・・・私も霜葉も、そしてひーたんも、とても
幸せなのです・・・うはーvvv
いつも、本当に有難うございますなのです・・・ッ(愛)vvv