『言葉、より。言葉、でも。』



「君は・・・・・俺が、好きだろう?」
 それは。
 確信の、響きでもって。
 龍斗を。
 捕らえる。
 ゆっくりと、近付く気配。
 振り向く事も、出来ずに。
 立ち尽くす、龍斗の。
 肩に、そっと手が置かれて。
 白い、首筋に。
 熱い唇を、感じ。
 それ、を。
 拒絶することも、なく。
 ただ、小刻みに震える身体は。
 怯え、故か。
 それとも。
「・・・・・ッ、あ・・・」
 否定も。
 肯定も、出来ずに。
 背後から、抱き締められ。
 骨董品を扱う、繊細な手は。
 衣服越し、しなやかな身体の線を辿るように。
 やがて、確かな意志を持った指が。
 潜り込ませた、胸元。
 滑らかな肌を弄り。
 胸の突起を、転がすように撫でれば。
 溜め息とも、つかぬ。
 甘い、吐息が。
 否応無しに、龍斗の唇から零れ。
 掠れた、押し殺すような声も。
 その温度を、緩やかに高めて。
「んッ・・・・・あ、あ・・・・・ッ」
 下肢に伸ばされた手は。
 ゆるりと頭を擡げた、龍斗の欲望の証を。
 優しく、そして大胆に。
 追い詰めて。
「あ、あああ・・・んッ・・・」
 もはや。
 喉をついて出る、嬌声を。
 止める術は、なく。
 それを、聞くものは。
 その柔らかな物腰で。
 龍斗を捕らえた、男と。
 ひっそりと、息を殺した。
 骨董品と呼ばれる、ものの数々。
「好き、だろう・・・?」
 熱い、吐息と共に。
 囁かれて。
 それだけで、ヒクリと他人の手の内にあるものが、反応する
けれど。
 龍斗は。
 その答えを、見つけられずに。
 ただ。
 巧みな愛撫に。
 喘ぐ事、しか。
 出来なくて。
 袂に忍ばせていたらしい小瓶から滴らせた、滑る何かを塗り
付けた長い指が。
 龍斗の、双丘を割って。
 その奥に密やかに息づく蕾に、ゆっくりと。
 押し入れられても。
 微かな痛みに、一瞬強張らせた身体は。
 じわじわと。
 撫で擦る、刺激に。
 沸き上がる、得体の知れぬ熱に。
 溶かされて。
「あ、・・・・・ッあああああ・・・ッ」
 そろりと。
 指が引き抜かれ。
 代わりに、宛てがわれた。
 灼熱の、塊を。
 それが、何なのかさえ。
 考える、余裕もなく。
 突き込まれた時。
 上がった、悲鳴は。
 何処か、悩ましげに。
 決して、苦痛だけを訴えるものではなく。
 滲む、艶が。
 かき抱くような、強い締め付けが。
 男を。
 煽って。
「・・・・・好き、だろう・・・?」
「あッん・・・・・ふ、あァ・・・んッ」
 欲に、上擦った声で。
 激しく、突き上げながら。
 耳朶に、ねっとりと絡み付くように。
 囁く、のに。
 龍斗の唇から漏れるのは、甘い嬌声ばかりで。
 それが、肯定を意味するのかは。
 龍斗自身にも。
 分からなくて。
 薄暗い、蔵の中で。
 初めて。
 龍斗は、奈涸に抱かれた。



「蔵の片付けを、手伝って欲しいんだが」
 涼しげに、微笑んで。
 龍斗を誘う、言葉には。
 断る、事など。
 その選択には、存在しないかのように。
 揺るぎない、何かがあって。
 そして。
 やはり、いつも龍斗は頷き。
 蔵で。
 でなければ、御茶をと誘われ。
 部屋の、中。
 畳の上。
 周到に用意された、褥の上で。
 奈涸に。
 抱かれる。
 そして。
 彼が、聞くのは。
 いつも、同じ。
「君は、俺が好き・・・だろう?」
 そして、龍斗は。
 彼が与える、優しく激しい快楽に。
 ひたすら、狂わされるばかりで。
 答えは。
 自分の中の、何処かにあるはずの。
 奈涸への、気持ちは。
 見失った、ままに。
 それでも。
 抱かれれば。
 沸き起こる、ものは。
 快感、だけではなく。
 それ、は。
 これ、は。
 何。
「奈涸・・・・・」
 呼べば。
 下りて来る、唇。
 舌を絡め。
 互いに。
 互いを、貪るように。
 一方的に、与えられるのではなく。
 龍斗もまた、求めているのだと。
 それだけは。
 分かる、のに。

 好き、だと。
 答えれば。
 好き、だと。

「なが、れ・・・・・」
 ふたり、一糸纏わぬ裸体を絡め。
 縺れるように、抱き合って。
 しなやかに、伸びをするように。
 男の上に、跨がる姿勢。
 その狂暴な肉塊でもって。
 下から、貫かれ。
 いつしか、自分でも緩やかに腰を揺らしながら。
 濡れた瞳で。
 征服者を、見下ろして。
「奈涸、は・・・・・」

 俺の、こと。
 好き、だろう?

 同じ、言葉で。
 問えば。
 一瞬。
 虚を突かれた、のか。
 欲に染まり、細められた目が。
 見開かれて。
「・・・・・俺、は・・・」

 さあ。
 答え、を。
 吐き出して。
 ここ、に。

「ッあ、ああああッ、ん・・・・あァッ」
 ふ、と。
 唇が、笑みを形どったと思った。
 瞬間。
 顎を仰け反らせる、程に。
 最奥を、突かれて。
 そのまま。
 まともに言葉さえ、接げぬ程に。
 激しく、揺さぶられ。
 攻め立てられて。
「あァ、ん・・・ッああああ・・・・・ッ」
 やがて。
 飲み込んだ、肉杭が震え。
 内に。
 熱い迸りを感じて。
 中を侵す、それに息を飲み。
 龍斗もまた、一層高い嬌声を上げながら、達し。
「・・・・・は、ッあ・・・ん」
 余韻に、身を震わせながら。
 汗を纏う胸に倒れ込めば。
 何処か、遠くで。
 囁く声が、聞こえる。

 俺、は。
 君が、好きだ。

「・・・・・好き、だよ・・・・・俺、も」

 呟いた、言葉が。
 届いていたのか。
 確かめるより、前に。
 龍斗の意識は、ゆっくりと眠りの淵に沈んで。
 ただ。
 髪を梳く、優しい手の感触に。
 酷く、安心して。

 目が、覚めたら。
 もう1度。
 告げて。

 気持ちも。
 繋がっているのだと。
 互いに。
 そこ、から。



コクる前に、突っ込んだらしいです(爽笑)。
っつーか、催眠学習的な・・・ブルブル(怯)。
まあでも、身体の相性はバッチリのようなので
気持ちを確かめ合いつつ、励んで下さい(そんな)。
やはり、侮り難し・・・・・忍者め(地団駄)。