『彩(いろ)』




 彩(いろ)のない、世界。
 視界に映る『色』は、何ら感慨を齎すもので、なく。

 目に焼き付いていたのは、赤い色。
 流れ出る、鮮血の。

 そして。
 そして、もうひとつ。

「・・・・・龍」

 お前の。
 彩(いろ)。




「綺麗だね」
 舞い散る落ち葉の中、歩く。
 ふたり。
 肩に舞い降りた紅葉を、白い指先で摘んで。
 彼は、微笑んだ。
「・・・・・そうだな」
 艶やかな黒髪に、ハラリと降る葉を掠め取って。
 同じ仕種で目の前に翳してみせると、途端破顔して。
 猫の子が懐くように、胸元に頭を擦り付ける、そんな。
 何処か甘えた様子も、とても。
 眩しく。
 愛おしい。
「お前といると・・・世界が、彩(いろ)に満ちて見える」
「・・・・・何、それ」
「言葉通りだ・・・・・紅葉の色も、ただ紅いというだけで
・・・・・ただ、それだけで美しい、などと感じたことすら
なかった・・・今までの、俺は」
 困惑したように見上げてくる、瞳の色はきっと。
 深く深い海の。
 遠く、遠い空の。
 彩(いろ)。
「・・・・・お前がいて、お前を取り巻く全てが・・・彩(いろ)
を持つ。鮮やかに・・・映る」
 それ、は。
 それは逆に、彼が。
 いなければ、世界はきっと。
 目に焼き付いた、血の赤。
 それだけ。
「・・・・・俺と一緒に見る世界は・・・霜葉の目に、どう
映っているのかな・・・」
 ポツリと呟く唇に、そろりと指を這わせ。
 下唇を親指の腹で撫でれば、微かに睫毛が震えて。
「とても、・・・・・美しいと思う」
 囁いて、そのまま。
 己のそれと触れ合わせれば、薄く開いた柔らかい唇が、何の
抵抗もなく受け入れて。
 軽く。
 深く。
 幾度も、繰り返し。
「・・・・・霜、葉」
 溜め息のように、名を呼ばれて。
 ゆるりと弛緩した身体を、落ち葉の褥に横たえる。
 躊躇いもなく衣服を乱して、現れた白い素肌に口付ける。
 散り落ちる色付いた葉を、吐息で払い除けて。
 自分だけの色を、そこに刻んで。
 染め上げて、いく。
「・・・・・龍」
 鮮やかに。
 映る。
 目の前に広がる。

「ずっと、・・・・・いよう」

 一緒に。
 彩りある、この世界を。
 共に。

「もう、・・・・・離さないで」




 北の大地。
 足早に、秋は通り過ぎていく。





・・・・・微妙だ(何)。
霜葉にとって、龍斗と彼を取り巻く世界が
総天然色です。眩しいのですv
アレコレ済んで、やっとこさ・・・です(微笑)v
っつーか、添い遂げてくれないと、めーです(何)。