『比翼ノ鳥』




 白き雪に、君を想う


 白い。
 季節外れの、雪が舞い散る。
 うっすらと降り積もった、白い大地に、ポツリと。
 幾つもの、紅い印を落としながら、ただ歩き続け。

 お主は、生き延びろ。
 ここも、長くは持たぬ。
 
 最期まで、戦い続けるつもりだった。
 そのつもりで、蝦夷地まで赴いたのだ。
 全てを、置いて。
 彼を、置き去りにして。

 俺が戦うのは、お前の傍らだと。
 忘れるなと、そう告げたのに。
 離れないと誓ったのは、自分の方であったのに。

 ふと、立ち止まる。
 否、もう。
 もう一歩とて、動けない。
 そのまま、倒れ臥し。冷たい大地に身を横たえて。
 最期の命令だと。それに従い、ここまで逃げ延びて。
 それでも、流れ弾に負った傷は、癒えることなく片腕を
蝕んでいく。
 もう、痛みすらも感じない。
 このまま。
 この白銀の大地が、永遠の褥になるのだろうか。
 容赦なく降り続く雪に、身体が白く染められても。
 じわりと、それすらも紅く溶かす、止まらぬ血が。
 ああ、そうだ。
 あの、白い彼を。
 こうして、汚したのは他でもなく。

 ここで果てるのは。
 幾つもの罪の、代償なのか。
 そう。
 彼に。
 彼を、置いてきてしまった。
 彼を、独り。

「・・・・・龍・・・」
 名を呼べば。
 それだけで、胸に溢れる。狂おしい、感情。
 そっと手を当てると、そこに忍ばせた念珠がジャラリと
微かな音を立てる。
 離れないと。
 離さないと誓いあった、あの日の。
「・・・・・龍・・・・お前、に・・・・・」
 逢いたいと。
 お前に逢いたいと。
 どんなに、願っても。
 鳥になって、愛しい人の所へ飛んでいくという魂すら。
 自分には、なくて。

「俺、は・・・・・お前を・・・・・」
 言葉は、通り過ぎる風に吹き消されて。

   霜葉・・・・

 ふと。
 彼の声を聞いた。

 そんな、気がした。




 暖かい。
 雪の中に、埋もれていたはずなのに。
 ああ、もうここは。
「・・・・・・・」
 ぼんやりと。
 傍らの温もりに手を伸ばせば。
「・・・・・霜葉」
 声が。
 彼の。
「・・・・・ッ」
 すぐ、隣に横たわる。
 温もりは、彼の。
「・・・・・幻、ではないの・・・か・・・?」
 目の前の、彼の形をしたものは、その言葉にフワリと
笑って。
「・・・・俺は、ここにいるよ」
 伸ばした手を取って。
 確かめさせるように、頬に導いて。
 それが。
 夢でも幻でもないのだと。
「まだ、冷たい・・・ね」
 擦りよってくる、身体。
 ふと気付けば、互いの衣服は取り払われて。
 素肌のまま。
 その熱を、与えるために彼が。
「・・・龍・・・・・」
 その背を抱こうとして。
 そう、しようと伸ばした、はずの。
 左手、は。
「・・・・・ああ」
 包帯で、縛るようにしている、それは。
 恐らくもう。
「・・・・・霜葉・・・」
 彼を抱き締めることは、叶わないのだと。
 それでも。
「・・・・・こうしてる、から」
 彼に。
 抱き締められる。
 抱き締められて、いる。
「だから・・・・・この手は、離さないで」
 残りの、手で。
 胸に埋められた頭を、抱き寄せて。
「・・・・・龍・・・・・」
 髪に、顔を寄せれば。
 彼の、匂い。
「・・・・・お前を・・・・・」
 抱き締めたい。
 今、ありったけの自分で。その、全てで。
 そっと告げれば。
 顔を上げ、まっすぐに見つめ返してくる。
 ああ、その瞳が。
 こんなにも、俺を。
「・・・・・うん」

 柔らかい弧を描く、朱に。
 唇を寄せて。

 まだ凍えている、身体。
 それでも、その内の熱は。こんなにも、もう。

「俺がいる、から・・・・・」

 あの日。
 誓ったように。

 彼の、傍らで。


 死ぬのではなく。
 共に、生きていこうと。





霜葉×龍斗!!書きたくて書きたくて、うにゃーんな
カンジで(謎)!!特に、あのEDそ、それに続く
スタッフロールでの、彼のその後を見てしまったら
もう・・・ッ!!
五稜郭。新撰組、最期の地ですね。
そこで散る、というのも・・・・考えつつ。
でも、念珠パワーで(何)。
龍斗が、なんであそこにいたのか(笑)。
・・・・・ミラクルです。