『散る花』
どうして。
そんなに、散り急ぐのか。
僕の。
花、よ。
一面。
雪、なのか。
それとも、散る花びらの。
白き。
「・・・綺麗だね」
その中に。
立つ、人は。
やはり、白い。
身も、心も。
だから、こんなにも。
鮮やかに。
「ここで、1句・・・は、詠まないの?」
微笑んで。
小首を傾げながら。
降りしきる、花に。
「龍、斗」
普段、は。
使うことのない、呼称を口にすれば。
何処か、哀しげな。
そんな、顔をして。
「もう、だめだよ」
呼んで。
望んでも。
願っても。
変わらない。
変えることは、出来ない。
星、は。
「それでも・・・・・望む、の?」
その軌道を変えても。
どうか。
彼を。
「でも、だめだよ」
忍び足で。
ほら、すぐそこに。
運命は。
確実に。
「そんな、顔・・・しないで」
一体。
自分が、どんな顔をして。
彼を、見つめているのか。
分からない、けれど。
「淋しく、ないよ」
そういう彼だって。
微笑みながら。
泣きそうな。
そんな。
「・・・少しだけ、離れる・・・けど」
今にも。
消えてしまいそうな。
「・・・・・でも、ゆっくり・・・来てね」
手を伸ばせば、届く距離。
でも。
触れれば。
壊れてしまいそうで。
ただ。
見つめる、ことしか。
出来ずに。
「先に・・・逝くけど・・・・・真琴さんは、ゆっくり来てね」
その、短命を。
知っていて、それでも。
言うのか。
追うな、と。
それでも。
全う、しろと。
「・・・・・綺麗、だね」
天を仰いで。
うっとりと、目を閉じる。
花に。
抱かれて。
彼は。
眠る。
「・・・・・ああ、とても」
綺麗な。
その、ままで。
眠る、君を。
抱き締めて、僕は。
ただ。
この降り注ぐ白に。
共に埋もれてしまいたいと。
そう、願うけれども。
それでも。
君が、望むのなら。
あと、少し。
もう、少し。
残された時間を。
僕は、生きるだろう。
そして。
いつか。
君と。
共に、此処に。
眠ろう。