『妖(あやかし)』


   人ならざる者と、誰が言っていたのだろう


「天戒って、本当に『鬼』なんだね」
 そう言って、クスクスと笑う唇は、艶やかに濡れて
紅く染まり、闇夜にもそれは鮮やかに映り、雄を煽る。
 喰らいつきたい衝動のままに、己の唇でもって塞ぎ、
噛み付くような勢いで貪って。歯列を割って舌を忍び
込ませ、ねっとりと絡ませれば、それを待っていたかの
ように、積極的に応えてくる、様に。
 身体の芯が痺れ。
 熱く。
 熱く、滾るもの。
「今更、何を言うかと思えば・・・」
 銀糸を引きながら、名残惜しげに唇を解放し。
 己の下で艶やかに微笑う龍斗を見下ろせぱ。
 伸ばされたしなやかな腕が、紅の髪をかき分けるように
して、首筋に絡む。
「だって、・・・・・俺、今日は疲れてるって言ったよ」
 そういう意味での『鬼』かと、天戒は軽く溜め息をつく。
 今日に限らず。鬼道衆の一員としての連日の、ありと
あらゆる任務で、屋敷に戻れば少なからず、龍斗は疲労の
色を滲ませるのに。
 それでも、湯上がりのまま。こうして無防備に、天戒の
寝所を訪れて。
 それで、おやすみの一言だけで、済まされるはずは。
「ならば、・・・・・ッ」
 何故ここに来る、と問いかけて。
 首筋に絡み付いていた白い腕が、するりと滑り落ちて。
 そして、僅かに乱れた天戒の寝着の合わせを辿るよう
にして、指先が触れたのは。
「『鬼』には、角があるんだよね・・・」
 既に昂らせたその形を確かめるように這う指に、知らず
喉を鳴らせば。フ、と龍斗が吐息で笑う。
「太くて固くて、・・・・・とても、熱い」
 軽く握りしめるように、されれば。
 どうしたって、その刺激に。
「あァ、・・・また大きくなった」
 笑う吐息が、黒く濡れた瞳が、ゆるりと弧を描く紅い唇が。
 言葉も、淫らに蠢く指も、重なる肌も。
 どうしようもなく。
 欲を、煽れるだけ煽って。
「・・・・・濡れてる、よ」
「お前の、せいだ・・・・・龍」
 先走りの滑りを、拭う指先の触感に。
 呻くように、告げれば。
「そうだね、・・・・・これは俺のせい・・・全部、俺の」
 己に言い聞かせるかのように、呟きながら。
 投げ出されていた、脚がゆっくりと。
 覆い被さる天戒の腰を、挟み込むように。
「この『鬼』も、・・・・・俺のものだね」
 誘う、仕種に。
 やや戸惑ったように、龍斗を伺い見れば。
「これ、で・・・俺を貫いて、・・・・・滅茶苦茶にして」
 猛々しい、その。
 『鬼』の証で。
「・・・・・望む、ままに」
 あからさまに、強請る言葉に突き動かされるままに。
 脚を抱え上げ、その間に腰を押し進め。
 先刻、龍斗が絡めた先走りの体液の滑りだけでもって、
捩じ込むように。
 貫いて、深く。
 熱い内へと、埋め込む。
「あ、ァ・・・・・」
 全て、収めてしまえば。
 そろりと、安堵のような溜め息が零れて。
 嬉しげに絡む、肉襞と。
 背を掻き抱く、しなやかな両腕。
「動い、て・・・・・いっぱい、頂戴・・・天戒、の・・・」
 切なげに喘ぎながら、自らも腰を揺らめかせる様は、酷く
淫らに艶かしく。情欲のままに突き上げてやれば、絶えまなく
零れる嬌声に、更に煽られるままに。
 何度抱いて、こうして貫いても龍斗のそこは、狭く。きつい
締め付けに、すぐに埒を開けそうになってしまいそうなのを、
どうにか堪えれば。
「我慢、・・・・・しないで・・・中で、・・・」
 そうして誘い掛けながら。また、もっとと強請る、彼は。
 己が、夜毎尽きぬ欲のまま龍斗を抱く『鬼』だというのならば。
 自ら褥に忍び込み、甘い誘惑を持ちかけて。男の下で身体を
開き、その精を強請る、彼は。
「天戒、・・・ッ天戒・・・・・」
 考えても、詮無きことと。
 ゆるりと首を振り、また目の前の身体に溺れる。
「や、・・・ん、ああァ・・・・・ッ」
 欲しがるままに、最奥に打ち付け注ぎ込んでやれば。
 一層高い嬌声を上げて、龍斗もまた天戒の腹に白濁を放つ。
 射精の余韻に震える内壁に、自身を閉じ込めたまま。
 ぐったりと褥に沈む龍斗の肢体を抱え上げるようにして、また。
「・・・・・欲しいのだろう?」
 向い合せに、座る形で。耳朶に唇を寄せ、低く囁きかければ。
「天戒が、欲しい・・・」
 ぎゅっと、抱き締められて。
 もう、それだけで。
 自分だって、嬉しくて。
「やろう、・・・・・俺の全てを」
「ん、ッ・・・うん・・・・・」
 そう、全て。
 捧げてしまおうと、ここに。

 人ならざる者だと、誰かが言っていた。
 さながら、白い妖し。

 己が鬼と呼ばれるのなら、彼もまた。

 例えそれが、妖しであれ。
 今、ここに。
 この腕の中に。
 確かに、在るもの。

 それだけで。




小悪魔です(断言)v←ヲイ
まあ、妖であれ何であれ、『龍斗』である
コトには、何ら変わり無いので。
御屋形様は、鬼の頭目の名に相応しく、かなりの
絶倫サマ(伏せないv)であると、確信してvvv
でも、ひーたんも相当のものですよ・・・ふふv
しかし、いつ寝てるんでしょう、この人達(真顔問い)。