『征服されり我が全て』
彼の存在は酷く、酷く酷く染み渡る。
気づけばもうこの指先までもが彼ばかりを追いかけて。
怖いくらいに、これは征服。
彼が僕を。
これは征服。
「紅葉、…………もっと」
「…………もっと、…?」
「…もっと」
ベッドの中。というよりは纏わないシーツの、だから上。
すらりと伸びやかな腕も足も、惜しげ無く全て僕に絡ませて。
「もっと、…………して」
ねだる言葉は甘く、掠れた音で。
目元は散々した行為の所為で乾く間も無くまだ濡れている。
なのに、更に。
「…………どこから、…しようか?」
「……どこから、でも」
ぎゅ、と首筋へ絡められている腕の力が強まる。キスをねだる彼の癖。
ぺろ、とその唇を舐めたら、そのまま舌は捕まって深く絡められる。小さく息を漏らしながらの深いキス。
もどかしげにゆらりと身体を揺らして。
「───最初からでも、…最後からでも。いいから、…して。………もっと」
「…どうしたんだい」
ゆったりと、穏やかな。けれど明らかに溺れている彼は。何度も身体を繋いだけれど、滅多に見られるものでは無くて。
「どうも、…しない。………紅葉が、……そうしたんじゃないか…」
「…僕が?」
「………だって、…あちこち沢山キスするし、なのにいつもより触らないし、………だから足りないんだよ…?」
見上げて来る彼の目は、濡れた上目遣い。拗ねているようなその表情を酷く効果的に見せつけて。
「…意地悪したつもりは、…無いんだけど、ね…?」
「…………嘘ばっか」
「嘘じゃないよ」
「だって、………じゃあどうしていつもより触らないんだよー」
語尾はやはり甘く拗ねていて。責めるように、腰辺りに絡められている足の拘束を、ぎゅうっと更に強められる。
けれど、そんな問や仕草に、僕はどうしたって苦笑するしか無くて。
だって。
僕はただ。
「…………………がっついたんだよ」
「………え?」
「………だから、……」
だって。
会えなかった三日間。
たったのそれだけだったとしても、僕にはもう十分過ぎるくらいだったから。
「君に会えなくて、触れなくて、…だから。…焦れて、がっついて、どうしようも無くなって。…………触ってる間も無いくらい、だからそれはただ性急だっただけなんだよ」
「───」
きょとん、と。一瞬丸くなった彼の目には確かに僕が映っていて。
束の間落ちた沈黙の後、ぱっと彼は破顔した。
「…………なーんだ」
「………納得、したかい?」
「……ん、……した」
ふ、と彼の唇から嬉しそうな吐息。
その後。
「…………ね、わかったから、さ。………だから、もっと」
「───………」
「しよ?………もっと、いっぱい、しよ。………三日分と、今日の分も。沢山、……しよう」
言われて、またゆるりと身体を揺すられて。
「………明日、…起きられなくなるよ?」
「いいよ、そんなの。…紅葉が居てくれるんだろう?なら全然構わない」
「……全く、……………知らないよ、そんなに甘やかして」
「何言ってんだろ。甘やかされてるんだよ、…俺なんてね」
くすくすと。触れる彼の吐息が甘くて。
「───っ、……と、…………く、れはの、………」
「………素直だからね、身体は大概」
「みたい、だね」
実はまだ、彼の内へ埋めたままだった僕の身体は。そんな彼のもたらす全てに、しっかり反応を返して、また熱を持って。
また彼が笑えば、その小さな振動すらも明らかな刺激になって。
「……ね、このまま…」
「…そう、だね」
ゆるりと、彼の内も熱が上がって。
「………しよ、………朝まで、ずっと」
「…朝まで?」
「足りない?」
ちゅ、と音を立てて彼からのキス。
そして。
「なら、………朝が来て、太陽が真上に上がってもずっと。また夜が来るまでずっとしてたって良いよ、………また次に会う時まで、ずっとずっと感触が残ってるくらいに、…ね?」
彼の言葉も、表情も仕草も。
煽るには十分で、それは過ぎる程で。だから素直に煽られて、過ぎて。
そのまま、ゆるりと身体を揺すり上げた。
怖いくらいの征服、それに。
例え今迄抱えて来た何もかもを覆されても、変えられても。
けれどやはり、その甘やかな支配には、到底。
逃げられないし、逃げるつもりも毛頭無いのだ。
だってそれは、他でもない彼の。
彼のもたらす、征服、なのだから。
★おわり★
★がっつく壬生、実は好きですv(悦)如何で御座いましょう?(笑)
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このSSは、いつも感想を下さる浅生サマのHP開設のお祝いに
進呈致します!!
ええもう無理矢理(笑)(何てヤツだ)