静かな僅かにかびと埃臭い湿った一室……
変わらず薄暗い湿った空気が残る場所…僅かに入る光も今いる場所には余り届かない…
目を凝らして漸くお互いの姿と周りの様子がやっと見える状態だ……
「さてと…ここ抜け出なきゃ…な…」
京一は息をつくと背後を振り返る…京一が技をかけて壊した場所……
そこしか出る場所はない…
「立てるか?」
「うん…」
京一が腕の中の存在に問い掛けると。
コクリと頷いた龍麻は…京一の手を借りて起き上がった…
だが龍麻に手を貸したそのときズキリと走った腕の痛みに京一は僅かに眉を潜める……
さっきわずかによけ損ねた怪我、だがこれはひーちゃんに知られるわけには行かない…
幸い暗闇だ…袖を下ろしていればごまかせる…
「ほら…行こうぜ…っと木刀あそこだな…」
「きょういち…」
少し不安そうな龍麻の頭をクシャリと撫でてやり…
目を凝らせば人物が見える程度のうすやみの中。
判別できた木刀を取り上げると同時、そっと京一は自らの袖を傷が隠れるように下ろして。
そうして京一は龍麻の傍らに戻り…そうして龍麻を促して共にその部屋を出た…

地下1階……
明かりがついている…瓦礫混じりの廃墟と化している鉄筋作りのその家…
コンクリートに2人の足音が響く…龍麻がいた場所は地下2階の一番奥…
どの部屋も開いていたが…そこだけしまっていたカギがかけられた部屋だった…
「ひーちゃん俺から離れるなよ…」
不安げな龍麻に京一は告げると…
「うん…」
頷きと共に歩きながら京一の裾を掴んでくる
そんな龍麻の不安を取り除いてやりたくて…京一は自らの手を見下ろす…
負傷しているのは右腕だ…対処できるのは左側の腕のみ…
だが、油断はできない…
誰がそんなことをしたのかはわからなかったが、龍麻を2度までも奪われるのは耐えられなかった…
一息つくと京一は右腕を持ち上げる…痛みはあるが動かせる…
「ひーちゃん…」
告げると京一は右手で龍麻の手を握る…
「きょういち…?」
「こうしてたら安心するだろ?」
京一が告げると、躊躇してそれでも漸く安心したように龍麻はコクリと頷いた…
その様子に京一は目を細めて、左手に木刀を持ち…又歩き始める…
古ぼけたかつては誰かが頻繁に行き来したであろう廊下。
そうして光の殆どささない地下室から出て…
1階の一番奥まで来たとき京一は出口に近い場所に息をつく…
だが1階だというのにここから途中までは窓が作られていない…
そうしてそのままかなり先に見える窓のある場所までいこうとした時…
先の窓のある少し手前で何かが動いた…
窓から差し込む明かりに暴かれる場所には居らず、その少し手前…
妖気と共にただそこに何かがいるということだけを京一に感じ取らせている…
龍麻もそれを感じたらしい…
「きょういち…」
小さく息を呑むと共に京一に小さくつぶやいてきた……
「…下がってろよ…ひーちゃん…」
告げ返し…京一は握っていた龍麻の手をそっと離すと。京一はゆっくりと左手で木刀を眼前に構える…
そうして構えたとき、それはムクリと起き上がり、月明かりの下にたった……
月明かり…見えたのは…
「鬼!?」
「ググウ…シクジッタナ…黄龍ヲ正気ニ戻シタトハ…黄龍ノ傍ラニ一番近クイル、オ前ハ帰ス訳ニハイカナイ…オ前ニハココデ命ヲ落トシテモラウ…」
告げるなり襲ってきた鬼…
「ひーちゃんよけろッ!」
告げられる同時に京一は技を行使する…
だがその技は打ち込みが弱かったからか、鬼にさほどは効いては居なかった…
咄嗟に分かれた右側と左側…
龍麻が階段に近い側、そうして京一は鬼に近い側……
それを見た鬼はニヤリと笑う、そうして京一に技を仕掛けてきた…
「ぐ…ッ」
鬼の技を受け止めきれず京一は眉を顰める。
かなりの強さの鬼…
腕の傷があっても、右手で対処しなければ…対処できないほどの…
「ククク…オヌシハココデ命ヲオトスコトニナル…ククク…ソウシテ黄龍…オ前ハ、ソチラダ…」
「ッ!?」
告げられたと同時に龍麻の前現れたのは、今出てきた階段から現れた多量の念と既に生を終えているそれ…
「なっ!?ひーちゃん!!ッ!?」
咄嗟に京一は叫び、その瞬間襲ってきた鬼を京一は間一髪避ける……
「ククク…カワシタカ…ククク…果タシテ心ガ弱イモノにソレラガ倒セルカ?ククク…」
「お前卑怯だぜッ!!くっ……ひーちゃん!!」
叫んだ京一の前…フワリと龍麻は笑んだ。
「大丈夫…京一はその鬼に専念して…」
「ひーちゃん!?」
「ナニイ!!」
一瞬だった…龍麻の前…気が上昇し龍麻の周りの空気が変化する…
「…秘拳…黄龍!!」
同時に前方の多量の敵が消滅した…
だが僅か取りこぼした念が龍麻めがけて押し寄せる…
"グググェ…ッ!!"
「ひーちゃん!!!!」
そうして確かにかけられた呪詛…しかしそれは龍麻には効かず、静かに龍麻はそこにたたずんでいた…
安定した…呪詛をも跳ね返す精神。
「ナニイッ!!バカナッ!!サッキマデハッ!!」
それを見ていた鬼が叫びを上げる…龍麻は一息ついて静かに告げ返す…
「さっきまではね…確かに僕一人だけじゃ弱いよ…僕の精神はのっとられるほどに確かに弱い…だけど京一が傍にいるなら幾らでも強くなれる…京一が傷つくくらいなら…いくらでも僕は修羅になれる…ッ!!」
告げると同時龍麻は動いた残りの数体の念に向かって再度の黄龍…一瞬でそれらは消し飛んだ…
同時にそれを見た京一はほっと笑みを浮かべて鬼に向き直る…
「…へへ…形勢逆転、だな?舐めてもらっちゃ困るぜ…行くぜっ!!」
言葉と共に京一は動揺した鬼の隙をついて鬼剄を行使する…
"グオオオッ!!"
反動で後ろに引いた鬼……
京一は目を眇める…一気にたたかないと鬼を倒せない…
それも生半可な威力の落ちる利き腕ではない左では駄目だ…
「食らいやがれっ!!!」
そうして一歩退いてうめきを上げた鬼に京一は一撃にかけ、そうして鬼に最高技をかけた…
天地無双……一瞬で鬼は吹き飛び壁にあたり落ちた…そうしてうめきと共に告げた言葉。
「グググ…クチオシイ…ヨモヤ技ヲウケタ右デ…技ヲ行使スルトハ…」
その告げられた言葉に龍麻は目を見開く龍麻…
そうして共に眼を見開いた京一…
「どういうこと…?」
「聞くな!ひーちゃん!!」
「ククク…操ラレタオヌシがコノ者ニ技ヲツカッタダロウ…ククク……」
「僕…が?」
「ひーちゃんッ聞くな!」
「クククク……黄龍…オ前ガコヤツニツケタ傷ダ…クククク…コノ男ノ怪我ハ浅クナイ…コノ男ガ傍ニ居ル限リ…イズレオ前自身ガ傍ラノ存在ヲ殺ス…クククク…グアアアッ!!」
捨て台詞と共にもはや維持できなくなったのか…消滅した鬼……
「…」
そうしていなくなっても動かない龍麻…
京一が近寄る気配がしたが龍麻は顔を見ることもできず動けなかった…
その鬼に告げられた言葉を龍麻は聞いてしまった…
(僕が…京一を…?)
怪我を負った上での戦闘、敵を撃破した京一…
確かに最初左手で木刀を振るっていた…
だがそれを鬼にいわれるまで怪我を微塵も龍麻にかんじさせはしなかった…。
「ひーちゃん…気にするなよ?あんなの嘘だからさ…何ともないんだぜ?」
手を持ち上げ告げた京一に龍麻は顔を歪める……
「だけど…袖、下ろしてる…何でもなかったらきょういち腕見せれるよね…腕…見せて…」
告げると一瞬京一は困った表情を浮かべた…
月明かりで表情が見えるためにそれははっきりと分かってしまう…。
それが何よりの肯定。恐らく…龍麻の為を思ってのやわらかい嘘……
「ごめんね…京一…僕のせいで……」
小さく龍麻は震え、京一の表情を正面から直視など出来なくてただ龍麻はうつむく…
そうして京一はそんな龍麻に、一息つくと左手を伸ばす…
「きょ…う…いち?」
少し震えている龍麻に、そんな声を出させたくなくて…
「そんな顔するなよ…本当になんともないからさ…」
そうして京一はその続きの言葉を飲み込む…
"ひーちゃんの為ならどんな事だってつらくないんだぜ?"
そう…これはひーちゃんに言えば確実に悲しまれるから…
だから告げることは無くそっとその言葉を心でつぶやいて……
そうして龍麻を柔らかく胸の中に抱きしめたと同時…
突然轟音を立てて家が震えた…其れと同時に崩れはじめる壁…
「!?」
其れと同時に声が聞こえた…そうして2人が出てきた階段のところに見えたのは…
京一が最初見た少女…
(早ク逃ゲテ…家ガコワレル…モウ余リ…モタナイ)
それにいち早く反応した京一は…木刀を手に叫ぶ…
「ひーちゃん早く外出るぞッ!やべえっ、たぶんここは消滅する…!!」
「う…うんッ」
はっとした龍麻と共に…京一と龍麻、2人は出口に向かって駆ける。
長いような短いような廊下…
そうして玄関のドアを開き、そうして2人そこから出た瞬間…家が消滅した…
「!?」
立っていたのは…もう通いなれた人通りのない見知った路地……
あの家の痕跡は影も形もなくなっていた……
「………」
暫く立ち止まっていた京一だが…一息ついて龍麻の肩を抱く…
「きょういち…」
いぶかしげに見上げた龍麻に京一は笑う…
「なんでもないからさ…ただ…行く場所は違うだろうけどな…向こうで一瞬でも会えてると…いいな…ってな」
そう笑って見せた京一…
「???」
「気にするなよ、ほら行こうぜっ」
そうして分からないといった表情のいぶかしげな龍麻を促して京一はその場を後にする…

そう…龍麻には少女の姿は見えず…聞こえていなかったらしいが…
(ありがと…う…お父さんを救ってくれて…)
逃げる途中確かに京一の耳には…確かにそう少女がつぶやいた言葉が聞こえていた…

静かな龍麻の家……
あれから…病院にいくこともないと、京一に押し切られた龍麻は2人で龍麻の家に戻っていた…
そうして玄関のキーを置いて、救急箱を取ってきた龍麻に京一はつげる…
「かすり傷だから自分で出来るからよ」
なんとか傷を龍麻に見せまいと強固な京一の言葉に。
「それじゃ無理だったら京一…いってね…」
折れた龍麻……
「ん?おう…ついでに先に風呂使って良いか?」
「ん…いいよ…」
そうしてつげかえした龍麻に京一は内心息をついた…
少なくともこれで龍麻に腕をさらすことはない…京一は即座に風呂場に向かう…
そうして埃だらけの身体と共に、傷口を洗い…京一は利き腕を悪戦苦闘しながらも自ら治療を施す…
なんとか終え京一は居間に戻ると、龍麻が1つカップを持ってソファに座っていた…
そうしてもう一個はテーブルの上に置かれている……
「サンキュひーちゃん」
まだ暖かいそのコーヒーは香ばしい良いにおいを漂わせていた…
告げると同時に京一は龍麻の隣に座ってそれを取る。
まだ暖かいそのコーヒーを一口飲んで…
そうして京一は龍麻が何かいいたげな表情を浮かべているのに気づき…京一は目を細める。
「どうした…ひーちゃん?」
問うと躊躇した後、龍麻は告げてくる…
"魯班尺使って…駄目もとでやってみていい?" と…。
恐る恐る龍麻に問われて京一は笑みを浮かべる…
「ん?良いぜ?」
どうやら装備していたらしい、京一がそう告げると龍麻は力を行使した。
フワリと龍麻の気が上昇する…
其れと同時に流れ込んでくる力、そうして龍麻の顔に汗が浮かぶ…同時に痛みが消えていくような気がした。
そうしてそれが数分も続いた後。龍麻の高い"気"が薄らいで、龍麻は漸く顔を上げる…
「どう?」
不安げな表情の龍麻に京一は笑みを浮かべる。
「ん?心なしか良くなった気がするぜ?」
告げると嬉しそうに龍麻は笑む…そうして直後顔を曇らせた…
「あのね京一…本当に僕が一緒にいて迷惑じゃない…?」
「ひーちゃん…鬼に感化されて離れたほうがいいなんて思ってるんじゃないだろうな?」
京一にそう告げられて覗き込まれ…龍麻は視線を避けるようにうつむく…
「だって…あの鬼の言うとおり…いずれ強大な力に狂ったとき京一を殺してしまうかもしれない…」
「やれやれ…自分で敵の術中に嵌ってたらしかたねぇだろ?」
告げられて龍麻は恐る恐る見上げてくる。
「それともひーちゃんは俺と離れたいのかよ?」
ん?
龍麻を覗き込み返答を促すと、龍麻はフルフルと横に首をふった…
「一緒に居たい…よ…京一と一緒に…」
「なら…一緒に居ようぜ?ぜったい何があっても…俺は倒れないからよ、もしひーちゃんが操られるような事があったら、幾度でも戻してやるからさ…」
そう京一が告げたとたん…龍麻の目に涙が浮かぶ…
「京一…きょういち…ッ」
そうして漸く、京一の名前だけを…
そう其れだけを告げると龍麻はただ京一にしがみ付いて、漸く安心したかのように泣きじゃくった……


そうしてどれくらいたったのか…小さく腕の中で身じろいた存在に京一は目を落とす…
「ひどい顔になっちゃった?」
龍麻にそうとわれ、京一は目を細める…
「ん?目は真っ赤だけどな?」
泣き疲れて放心状態らしい…ぼんやりとした表情で、京一に髪を梳かれたまま龍麻は告げ返す…
「明日がっこまでにひくかな…?」
問われた言葉に京一は笑みを浮かべる…龍麻らしい言葉…
頻繁にサボっている京一と違って龍麻はまじめだ…
「気になるなら学校休めよ…俺も明日は休むつもりだからよ…」
京一はそう告げ返して…右腕に目をやる…
龍麻に治療をしてもらったおかげだろうか、
痛くないが…怪我の状態から手当てをしたものの一度桜ヶ丘には行ったほうがいいだろう…
「明日は休もうぜ?」
だが桜ヶ丘とは言わずに京一は言葉を飲み込んで言葉を告げ返した…
すると…小さく龍麻は口ごもる…
「うん…だけど…」
躊躇した龍麻に京一は苦笑する。頻繁にサボっている京一と違って龍麻はまじめだ…
理由もなくふけるなど出来ないのだろう…
「理由がないと休み辛いのかよ?…それじゃこんなのはどうだ?」
小さく京一は龍麻の耳元で提案を述べる…
「あ…」
囁かれた龍麻の顔が紅く染まり、龍麻は硬直する…
そうして京一を正視できず抱きついたまま固まってしまった龍麻に。
「それなら嫌でも休めるだろ…?」
答えは聞かず…
ソファに座って龍麻を抱きしめたまま、目を細めて京一はそっと龍麻の額にキスを落とした…

そうして数十分…キイと寝室の扉が開く…
せめて風呂に入りたいという龍麻の願いを承諾して、寝室で待っていた京一は開かれた寝室の扉に目をやる。
今から行われることにやはり躊躇いと羞恥が混ざっているのだろう…
おずおずと躊躇いがちに扉が開かれて龍麻が入ってきた…
「来いよ…ひーちゃん」
告げて手をやると…少し泣きそうな表情で龍麻は近寄ってくる…
だが…途中で羞恥に耐え切れなくなったのか。
京一の視線に耐えかねてあと数歩のところで動けなくなってしまった龍麻に京一は目を細める…
いつまでたっても行為にぜんぜん慣れることはない龍麻……
これから行われる行為にか羞恥に震える龍麻を迎えるべく、京一は立ち上がる…
5歩…
「あ…」
立ち上がり、龍麻に歩みよって腕のうちに抱きしめると龍麻は身体を震わせる…
「ひーちゃん…」
小さく身体を震わせている龍麻にそっと京一は名をよんでやり、京一は龍麻を覗き込むと…
羞恥にか、顔を見られるのを嫌がってふるふると首を振る…
そんな龍麻をたとえようもなく愛しく思えて…京一はそっと龍麻に告げる…
「好きだぜ?ひーちゃん」
告げると龍麻は紅く染まった顔をそのままに龍麻は漸く京一を見返した。
そうして龍麻の口から告げられた言葉…
「きょういち…が…僕も好きだよ…」
小さく、けれども想いのこもった言葉に、京一は目を細めて。
そうして強く龍麻を抱きしめキスを仕掛ける…
龍麻の口内に舌を侵入させ龍麻の舌を絡め取ると、龍麻は一瞬腕の中、驚いたように身体を強張らせたが…
直に力を抜いて京一にもたれかかってきた…
甘い…龍麻とのキス…そうして幾度目かの口付け…
龍麻との甘いキスは京一を夢中にさせ…そうして更に龍麻の唇をむさぼっていく…
そうして龍麻の身体がガクリと落ちたところで漸く開放してやり、京一は龍麻を抱き上げるとベットに向かった…

ベットの上…喘ぐ愛しい存在を愛しそうに見やり、そうして肌に手を這わせ…
弱い場所を暴き出し愛撫を施してもうどれくらいたったのだろう…
愛撫に堪えきれず跳ね上がる…飽きることはない愛しい存在の裸体は、京一の欲望に火をつけてその愛撫を執拗なものとしていた…
そうして龍麻を貪る愛撫の手を更に強め…龍麻の意識を朦朧とさせていく…
「や…んぅッ…」
最初…羞恥にもうたえきれないと…涙ぐんで押しのけようと京一を押しのけようとしていた龍麻は…
京一がそれを封じようと愛撫を施して、身体をずらし龍麻自身に自らの舌を絡めると…
堪えきれないのか直に龍麻は陥落した…
今は悦楽に、京一の腕の中で小さく泣きじゃくって喘いでいるだけだ…そんな表情にそそる物を覚えて。
京一は龍麻の身体を貫いて泣かせたい…全て暴きたい衝動に駆られる…
けれど…無理強いをしてひーちゃんを泣かせることだけはしたくなかったから…
かろうじてそれを抑えて京一は龍麻にキスを落とすと…
じわじわと龍麻の身体の力を完全に取り去るべく更に乱れさせようと、準備をさせようと…龍麻には負担となる行為をかしていく…
最奥へと指を僅かに含ませると小さく竦みあがったが…
龍麻の弱い場所を執拗に弄ってやると見る間に自身が反応を始める…
其れと同時に堪えきれない悦楽にか……
「も…いいから…きょ…ういち…」
泣き声で小さく名前をつぶやいて懇願した龍麻。なだめるように京一はそっとキスを落としてやる…
「駄目だ…まだそんなになれてねぇ…ひーちゃんに絶対怪我だけはさせたくねぇからさ…」
そうして更に行為を続けようとした京一に龍麻は涙を浮かべたまま告げ返してきた…
「駄目なら…それじゃ…僕が口で……する…から…だって…京一我慢してる…辛いよね…?」
「ひーちゃん…?」
あまりにも唐突なその言葉に思考回路が止まってしまった京一…
その隙をついて億劫そうに龍麻は起き上がる。既に立ち上がっている京一自身に目をやり躊躇を見せた龍麻……
けれどもその直後…龍麻は京一自身に唇を寄せる…
そうして一生懸命舌を使って舐めてくる…京一がいつも龍麻にしていること…みようみまねでやっているのだろう…
たどたどしい愛撫に先に欲よりも愛しさが募って、京一は目を細める…
立ち上がっている京一自身を一生懸命舌を使って舐めてくる龍麻…
そうして次第にそれは京一を追い詰める…だがかろうじて京一は龍麻の口に出させるのは躊躇われて堪えていた…
そのうち一向にイかない京一に龍麻は涙ぐむ…
「…京一…やっぱり僕下手…?」
そうして小さくつぶやかれた言葉に…京一は薄く汗をかきながら苦笑いを浮かべる…
「いや…十分だけどな…だけどイくならひーちゃんのこっちの方が良いからさ…ちょっとひーちゃん意識とぶかもしれねぇけど…がまんな?」
そうして告げるなり京一は優しく龍麻を押しのけると、龍麻を後ろ向きに捕らえる…
「な…に?」
視界が反転しそうして京一の姿が見えなくなったことに、怯えた声を出した龍麻は直後甘い絶叫を上げる…
「や…やあああっ…う…ん…」
そう…自身へ再開された容赦ない弱点ばかりを狙った的確な自身への愛撫と…最奥への京一による舌での愛撫…
相手の顔が見えない、次に何をされるのか分からない状況は…確実に龍麻を怯えと混乱におとし…
そうして弱点ばかりを攻めてくる指に確実に翻弄される…そうしていつもよりもいっそう乱れさせる原因となる…
「やああっやだ…きょう…いち…ッ」
泣きじゃくる龍麻への京一の返答はない…
耐え切れない場所へと息が掛かることに、龍麻は泣きじゃくり…
そうして愛撫と共に幾度も注ぎ込まれる唾液と…
そうしていつもより早い荒々しい焦らしすらもない弱点ばかりを突いた指の進入に、次第に声すらも出なくなってしまう……
「…あっ……んぅ…っ…」
漏れるのはもはや意味を持たない喘ぎのみ…
そうして指が3本楽に入ってしまうようになった頃…漸く指が抜かれて龍麻は開放される…
イかせて貰っていない感じてしまって立ち上がった龍麻自身……
そうして表を向かされて…京一の顔が見えたことにか、悦楽にけぶった表情を見せながらもほっとした表情を見せた龍麻は。
だが直後京一の行動に身体を震わせる……
京一が龍麻の最奥に…京一自身を侵入させたために…
「…ぅ…」
「ひーちゃん…力抜けよ…ほら…」
京一自身が最奥へ侵入してきた衝撃に息をつめてしまった龍麻に、京一は龍麻の唇を奪う…
そうして息苦しくなったのか息をする為にわずか唇を開いたところを、舌を強引に割り込ませて、龍麻の舌を絡めとる…
息を止める術を失ってしまった龍麻の身体から僅かに力が抜けたのを見計らって、
そのまま休むことなく最奥まで到達させると、涙を浮かべたまま龍麻の唇が僅かに震えた…
「辛いか?」
「大丈夫…京一…動いて……」
問うと…小さく首が横に振られて龍麻は京一にしがみ付いてくる…
その表情に京一の中で何かが壊れる…そうして京一が堪えられたのはそこまでだった…
龍麻のぬくもりと龍麻の潤んだ表情に京一は理性を手放し…
飽きることなく幾度も愛しい大切な龍麻の身体を貪り…
そうして軽く龍麻が気を失っても、龍麻の身体を手放すことはできず…
そのまま結局夜が明けるまで京一はただ龍麻の身体を貪り続けた……


そうして数時間後…夜が白々と明ける頃…
濡れたタオルで清めてやりながら京一はそっと龍麻を見る…
怪我はさせていないとは言え…
あれから数度気絶して目を覚ました龍麻を更に甘い悦楽に落として、幾度も龍麻を泣かせた…
手加減無しで龍麻を抱いてしまったためか、今は龍麻は触れてもビクリとも動かない…
「結局無理させちまったよな…ごめんな?ひーちゃん」
そっとつぶやいて京一は、意識のないぐったりと横たわる存在に京一はそっと額にキスを落とす。
そうして風邪を引かさないように毛布を引っ張り上げてやり…
そこまでして、怪我があったことにいまさらのように気づいて…
龍麻を抱いてなお、痛みの無い腕に京一は不思議に思い…包帯に手をやる。
だが、やはり痛まない…
「?」
気になった京一はそのままそっと包帯を取る…現れたのは傷の無い自らの腕…
「………!?」
龍麻が魯班尺をもって施した結跏趺坐が全て治したのだろうか…?
ありえないことではなかったが…傷まで消滅させるほどの力…
本来ならばこれは龍麻自身の、自らの為にしか使えないものの筈だ…
龍麻はある程度の傷なら消滅させ、治すほどの力を持っているのだろうか…?
全てのものを一撃殺傷するほどの力…黄龍と。傷を癒す回復技…
だがそれだけの力を持っていても…龍麻の心は繊細で弱く脆い…
「ひーちゃん…必ず守ってやるからな…」
小さく京一は吐息をついて、それはそこまでだというように京一は首をふる…
そうして京一はそれ以上余計なことは考えず…
明日は一日学校を休んでひーちゃんと一緒に居られる、目の前の現状に素直に喜ぶことにして。
そっと腕の中の愛しい存在にキスを落とすと自らもまた眠る為に京一は眠りに着いた…

そうして数週間…
「京一……帰ろう?」
近寄ってきて嬉しそうに告げた存在に京一も又笑みを浮かべて立ち上がる…
あれから下手に禁止して攫われるよりは、傍らにいる状況の方が良いと…
京一が龍麻に新たに約束させたことが一つあった…
”首を突っ込んでも構わないけどよ…行動する前に必ず俺を呼べよ…?”
そう告げると戸惑ったような表情の後、嬉しそうに笑みを返してきた龍麻……
(俺も甘いよな…)
苦笑気味に笑みを浮かべて…ちらと先だっての事件に想いをはせる…
そう…あれからもう数週間が過ぎていた…
あれから行方不明者はピタリといなくなったらしい……
"連続猟奇事件!!行方不明者の失踪手がかりなし!?"
時が過ぎ。今は…週刊誌タイトルに話題を残すのみとなっていた…
余談だが…遠野の友人はそれから3日後に戻ってきたらしい…
どうやら家出して彼氏の所にいたらしく…数日後見つかってその友人は親から、先生から大目玉を食らったという…
だが…起きていた事件の大半の行方不明者は…
大部分の真相は全て闇の中…そう…その真相は鬼がらみの事件…
これは確かにあったこと…
行方不明者がどこに行ったのか…そう恐らくあの館にあったものが多分…
だが…もはやあの館が無い今、証拠はない。そう、探す手ががりすらも、もうない…
だからそれはもはや胸のうちにしまっておくだけしかできない…
決して口外できない出来事…
「京一?」
京一が思考をちらとそのことにはせていると、首を傾げて龍麻は尋ねてくる……
京一は目を細めて首を振る。
「悪い、ちょっと考え事な。さてと…今日は何処かいくか?」
「んっラーメン行きたいッあと京一の家にいきたいな…」
告げると嬉しそうに龍麻は告げてくる…
それを見ながら京一は思いおこす…あの時告げられた言葉…
そう…それは又同じ事が起きると暗示するかのような…
"イズレオ前自身ガ傍ラノ存在ヲ殺ス…"
そうしてあの鬼に龍麻が告げられた言葉…
たぶん京一自身が倒れたらひーちゃんは間違いなく壊れる……
"何が来てもひーちゃんを守り抜いて…俺も絶対に倒れたりはしないぜッ…来るならきやがれッ…"
倒れるわけにはいかないと。心で決意と共にそっとつぶやいて後。
京一は笑って龍麻に手を伸ばして頭をクシャリと撫ぜる…
「わっ」
「へへッそれじゃラーメン行ってから俺の家いくかッ!」
「いいの?」
びっくりしたようなそれでいて嬉しそうな表情の愛しい存在…
うれしそうな…龍麻の笑顔。それを見ているだけで、例え様もなくいとおしさがこみ上げてきて…
「おうッ」
京一は笑って龍麻の背を押す…
そうして…傍らにいる、龍麻という何よりも大切な存在の…
小さな今ひとつの願いをかなえる為に…京一は告げた……
「それじゃラーメン行こうぜッ」
「うん…ッ」
返ってきたのは嬉しそうな笑顔と声…その表情につられるように京一もまた笑みを浮かべ…
そうして…
京一と龍麻、二人はゆっくりとその教室を出た………




広也サマから頂いた、ステキSSですーーッ(愛)!!
ホラーチックな中に、ラブが(悦)!!
可愛いひーちゃんと、カッコイイ京一でございます。
大切な人を、危険な目に遭わせたくない気持ち・・・
そんな京一の葛藤が分かるのです・・・・・。
そして、大変なコトになって泣いてるひーちゃんに
悦なワタシ(殴)。
読みごたえたっぷりな長編、本当に有難うございました!!