『邪誘繋恋〜zyaayuukeiren


シトシトと雨が降る中…
「手ごわいぞ…」
その人物は振り返る…この世界で拾った存在を…
「分っています柳生様。あの黄龍を手に入れる策があるんです」
告げた声は明るいまだ変声期前の少年の声…
「ここ数日、見てたんですが。面白いことになっていまして…力をそう使わずにちょっとしたことを考え付きましたから」
「引き際は覚えておくのだな…」
その柳生と呼ばれた男がそう告げると少年は頷いて消えうせた…あとは暗闇ばかり…
柳生は外を見る。とどろく雷鳴は雨とともに止むことはない…
今いた少年は最後の黄龍との決戦のときコマとして役に立つかと実体と力を与えた者だった。
肉体をもう持っておらぬこの地に縛されていたこの地に在する少年。
そうして力と実体を身に付けたことにより剣鬼としてその少年は存在していた…
静かに柳生は呟く…
「無理だと思うがな…やれるならやってみるがいい…」
呟いたのはいなくなったその少年にたいしての言葉。
あの少年には無理だとその男は確信していた。
それゆえの言葉。

降り続ける雨は雷鳴とともにまだ止まない――――
これからおきる事を暗示するかのように…


邪誘繋恋〜zyayuukeiren〜18禁京主

それより2週間前…
金曜日の時刻は夜10時…嵐ともいえるその吹きつけ。
季節外れの少し遅い台風がきているらしい…
時折窓を叩く雨がやけに耳障りでその青年はため息を吐く。
暗闇の中でもその茶色の髪は僅かに色彩を持っており…
そうして寝るつもりだったらしい其の青年から再度のため息と言葉が漏れた。
「知られちゃまずいよな…」
けれどもう押さえ切れない…
ため息をついてうす暗闇の中その青年は机の上の写真に目をやる…
その青年に抱きつかれてびっくりしたような表情の。
黒髪のやや可愛いといった顔立ちのその人物、緋勇龍麻。
薄暗闇だったが…
その青年はその写真をもう飽きるほど見ていたので目を閉じても思い出せる状態で。
「ひーちゃん」
そっと大切そうに其の名を呟くと。其の青年、蓬莱寺京一は吐息をついた…

翌日…昨日の嵐が嘘のように引き穏やかな土曜午後。
ここにも悩んでいるものが1人。
「1人でも大丈夫だよね…そんなに深く行かないし…」
その少年はため息をつく。彼の名前は緋勇龍麻。
そうしてここは旧校舎の前だった…
週に一回決めた鍛錬の日…
無駄な殺戮は辛かったが…足手まといになるのは嫌だったから…
毎週嫌でも腕を上げるために龍麻はここにきていた…
だがいつも付き合ってくれている劉が用事を言いつけられたとかで
いない状態に龍麻は1人決行を余儀なくされ。行こうかどうしようかとまよっていたのだが…
「仕方ないよね」
ため息をついて入ろうとしたまさにその瞬間。
「ひーちゃん?!」
叫びに龍麻は驚いて振り返る。
そこにいたのは何時も行動をともにしている何よりも頼れる存在で。
そうして袴といういでたちに京一は部活をしていたのだとしれた。
「京一…?」
その人物の名を口にしておずおずと告げると、幾分険しい顔をして京一はこちらにやってくる。
「劉から連絡受けて急いできたけど…まさか旧校舎…1人で入るつもりかよッ?!」
きつめに問われて龍麻は決まり悪げに俯く。
「今日は劉が用事があるから…」
怒られる…ギュウっと目を瞑って俯いた龍麻に。ため息が降ってくる。
「付き合ってやるからちょっと待ってろ…着替えて五分で戻ってくるから先に絶対1人で入るなよッ!」
そう念押しして京一はまた踵を返していってしまう。
「…」
龍麻はたちすくむ。京一は困ったとき何時も付き合ってくれる。
「ごめんね…」
それだけで申し訳ないような気持ちになってしまう…
そっと呟いて龍麻はポツリと呟いた。

そう…このときは龍麻は知るよしもなかったのだ…
京一の感情を…2時間後それを京一の口からきくまでは…

午後3時…
2時間ほどもぐった旧校舎からでて…
多量の戦利品を如月骨董店に持っていって換金してもらって帰り…
「ごめんね…部活あったのにつき合わせちゃって…」
申し訳なさそうにつげた龍麻。京一は笑む、
「気にするなよ…ひーちゃん…おかげでサボれたしよ。それにこれくらいどうってことないからさ」
告げられて龍麻は申し訳なさそうに俯く。
「でも何時も助けてくれるから…本と迷惑かけてごめんね…」
「迷惑じゃねェよ」
きっぱりと告げた口調の京一に龍麻は京一を見上げ目を見開き首をかしげる。
「京一…?」
躊躇していた京一は…暫くして思い切ったようにそれを告げた。
「……ひーちゃんのこと好きだから…これくらいどうってことねぇからさ」
告げられた言葉…
「好き?」
反芻した龍麻の言葉に京一は更につむぐ。
「ひーちゃんに惚れてるからさ…」
告げられた京一の目。
保護の優しげな目でも友人の目でもなく…
同姓だというのに完全な龍麻に対しての欲情の目。
男としての目に龍麻は震える…言葉にならない…
混乱とそうして…僅かに生じた感情。それは…
「……ッ」
龍麻は自らの感情を持て余し。
耐え切れなくなって龍麻は思わずその場から逃げ出す。
京一は追いかけてくる様子はなく…
龍麻はひたすらそこから逃げるようにその場を後にした…

走り続けてどれ位しただろうか…息切れを起こして龍麻は立ち止まる。
「……」
京一から逃げてきてしまった…どうしたらいい?
龍麻は途方にくれる…こんなときどうしたらいいのか分らない…
どれ位歩いていたのか暮れ行く町並みにボンヤリとたたずんで…
そうしてふと龍麻は優しい存在を思い出す…
そう…もう1人龍麻が頼っている存在のことを…
今日用事があって付き合えなかった存在。劉弦月。
彼なら相談に乗ってくれるだろう…と。
龍麻はおずおずとポケットから携帯を取り出して番号を押す…
そうしてコール1回。
「どうしたんやアニキ…?」
出た相手に…
「劉……どうしよう……」
龍麻は半泣きで告げていた……

指定された劉の何時もいる公園…龍麻は劉の姿を認めて駆け寄る。
「劉…どうしよう…あのね…京一が…」
泣きそうになって告げた言葉はだが最後まで言うことはなかった…
かがみこんでズバリ告げられた言葉に…
「京一はん告白したんか?」
「なんで?」
しってるの?と…動揺して見上げ告げた龍麻に劉はため息をつく。
「そりゃワイある程度京一はんとは仲ええしな…そうか告白したんかいな…あんな顔してくるから…」
「え?」
「あ〜いやなんでもないんや…」
一息ついて劉は目の前の龍麻をみる。
「で…アニキびっくりして逃げてきたんか?」
「う…うん…」
逃げてきたのかと問われ…
告げられるままその意味を深く意味を考えずうつむいてしまった龍麻に。
劉は苦笑して目を細める。
「しゃあないな……でアニキ…アニキ京一はんに言われて嫌なんか?」
問われて龍麻は劉を見る。
「え?」
「いわれて京一はんを見るのもいやか?」
問われて龍麻は途方にくれる。びっくりしただけで嫌ではなかった…
そう生じた感情は混乱と僅かな嬉しさだった…
むしろそれを喜んでしまっている自分がいる…いつも京一は傍らにいてくれる存在。
それがいつのまにかいなくては不安になってしまっていたから…
「嫌いじゃない…嬉しかった…」
フルフルと首を振って正直に答えると劉が笑った気配がした。
「アニキ、京一はんと会って話しや…でないと京一はんこのままやったらかわいそうやで?」
つんと額をつつかれて龍麻は劉の服を掴んで俯く。
「だって…京一の顔見たらドキドキして何はなしたらいいかわかんないよ…」
小さく…けれど正直に告げて俯いたままの龍麻に劉は少し笑って見つめ。
それから顔をあげて背後の木に向かってそれを告げる。
「嫌ってるわけやないで。良かったな京一はん」
問いかけに龍麻はびっくりして目を見開く。
木の陰…いつからいたのか…
全く気配を感じなかったところを見ると気配をまるきり断っていたらしい…
呆然としている龍麻に向かって劉は更に告げた。
「アニキが少し来る前に理由は話さんかったけどな…京一はん悲壮な顔してきとったんや…だまっとって悪かったな」
告げて劉はポンポンと龍麻に背中を叩いて促す。
「それじゃわいはこれで帰るわ、アニキ、さっきのこと京一はんにちゃんと言いや?」
そう告げて劉が去っていく気配がした…
心の準備がまるきり出来ていない…思わず泣きそうになってしまった龍麻に。
その場所から京一は告げた。
「ごめんなひーちゃん…混乱させてよ…」
泣きそうな表情で黙っていると。京一は躊躇いつつ近寄ってきてそれを告げた。
そうして手を伸ばしてポンポンと龍麻の頭を撫でる。
「でも嫌ってるわけじゃないって言ってくれて嬉しかったぜ?勢いでいっちまったけどさ…好きだっていったことは忘れていいからさ…いい相棒同士でいようぜ?」
なんと言ったらいいのか分らない…それでもおずおずと京一を見上げると柔らかく笑みを返される。
何時もの京一の笑みに龍麻は救われるものを感じて思わず頷いていた…

そうして京一と龍麻はまた元のように日々を過ごし…
だが違ったのは龍麻が少し京一の前で固くなってしまったこと…
龍麻からの否定はない…だが…意識してしまっているらしい龍麻に。
京一は分っていながら見ぬふりをして何時も通り振舞っていた。
硬くなってしまって少し距離をおかれてしまったことに。京一は少し寂しいものを覚えながら…
そうして2週間目の日曜…

「ひーちゃん明日神社行かないか?」
誘ったのは京一だった…告白する前良くいった神社。
そう…その場所を教えたのは京一だったが…
日曜は龍麻は家から外出することを好み、京一が素振りをするさまをじっと見て。
そこで数時間をぼうっとして過ごして。一緒にそこで過ごすようになってしまっていたのだ…
もっとも告白してからは行かなくなったが…
電話の向こう…少し躊躇ったような間とともにそれは告げられた。
「ん…わかった…それじゃ明日いくね…」
告げられて電話は切れた。
少し京一は笑む。完全に避けられているわけではないことに気づいて…

日曜…午後2時…
京一が来ると既に龍麻はきていた。
「早いなひーちゃん」
告げると龍麻は読みかけの本から目を上げて少し笑みを浮かべる。
「うん…暇だったから…」
告げてきた龍麻に京一は笑み返してそうして木刀を手に取る。
境内の前…
静かな引き締まるような少し肌寒い空気を切り裂くように京一は竹刀をかまえ素振りをする。
そうして…
素振りをする音とページのめくる音だけが響き、どれ位したか…
京一は一息ついて竹刀を置いて境内の上に上がり、そうして龍麻から少し離れて座る。
心地よい風…秋にしては暖かい陽気…そうして練習のあとの心地よい眠気…
そうして龍麻の気配と沈黙……
心地よさに誘われるように京一は目を閉じた……

龍麻は読みかけの本から目を上げる…
どうやら本に夢中になっていたらしい。
静かな境内にあたりを見ると京一は仰向けになって腕を枕にして眠っていた…
疲れたのだろうか…
起こさないようにしようと思いながらも龍麻は近寄っていた…
眠っている状態なら大丈夫だろうと…
「…」
そう京一に告白されてから京一の笑みをみたり傍にいると胸の動悸が鳴り止まないのだ…
キライではない…意識してしまった上での…胸の動悸…
だが混乱の方が遥かに大きい。
自らの感情を持て余して…何を話したらいいか分らず。
京一から少し間をおいていた…
眠っている京一の顔を龍麻はじっと見下ろす…
穏やかな顔…さらさらとした茶色の髪…
そうして何時も傍にいてくれる優しい京一の気配…
龍麻は恐る恐る手を伸ばして京一の髪に触れる…
さらさらした柔らかな髪…だが触っても京一は目覚めない…
龍麻はまじまじと京一の顔を見る…
(眠っててもカッコイイな…)
龍麻は吸い寄せられるように京一をじっと見る…
そうして無意識にその行動にでていた…
そっとかがみこみ眠っている京一の唇をそっと奪い…

そうして…その行動をとった瞬間。
我に返った龍麻は真っ赤になって慌てて離れる。幸い京一は眠ったまま…
(………っ)
起きていないことに気づいてほっとするが動揺は抜けない。
「き…きょういち…おきて」
動揺したまま勢い良くゆさぶり告げると京一の目は寝ぼけたように見開かれる。
「ん…?俺寝てたのかよ…」
悪い…寝ぼけた表情のあと首を振った京一に龍麻はやっとそれだけを告げる。
「ん〜ん気にしてない……あのね…て…手べたべたしてるから洗ってくるね…」
「ん、ああ…行ってこいよ…」
何をしてしまったのだろう…
龍麻はしどろもどろのまま慌ててそこを後にする。

行ってしまった龍麻を目で見送ったあと。
京一は唇に手をやる。間違いようもなくひーちゃんからのキス…
そう起きていたのだ…京一は。気配が近づいた段階で…
返事は未だにもらえていないが…
「ひーちゃん…」
動揺していたところをみると無意識にしてしまったらしい…
少しは期待をしてもいいのだろうか?
そっと見送り得も知れない幸せに京一は目を細めた。

「ど…どうしよ…京一起きてなかったよね…」
泣きそうな表情で龍麻は手洗いに駆け込む。
口実だったが律儀に神社の無人の手洗い場にきてしまっていた…
目の前には小さな鏡と斜め横には姿見らしき鏡がある…
小さな鏡には泣きそうなそうして真っ赤になった自分の表情が写っていた…
(きょういちのこと僕もそういう意味で…もしかして僕も好きだったのかな…)
とりあえずほてった顔をせめて冷やそうと水道をひねり顔を洗いかけ…
ふと気配に気がついた…そう斜め横の鏡から…
「……」
龍麻はおそるおそるそちらをむく…
同時に鏡から伸びている腕は龍麻の腕を掴んだ…
「!?」
そのまま強烈な力で引っ張られる…龍麻の小さな叫びは鏡の中に溶け込んだ。
そうして…静まり返った手洗い…そして数分後…その鏡から1人の少年が出てきた…
そう引っ張り込まれた緋勇龍麻が…だが表情は違っていた。
どこか違和感を感じさせる。そうおどおどした表情はない…
「っと…」
その少年は言葉をつげ目の前の鏡をみる。
見る間に気弱そうな表情を浮かべてその少年は笑みを浮かべた。
「こんなものかな…」
そう告げるとその少年は少し笑う。そうして出っ放しの蛇口を閉めた…
「きょういちの所にもどらなきゃ待ってるよね…」
もはや表情は違和感は感じることはなかった…緋勇龍麻そのもの…
小さく笑みを浮かべるとそれはゆっくりとその場を後にした…

時刻はもう夕刻だ…思ったより長く眠っていたらしい…
少し冷える空気に龍麻が戻ってきたら今日は帰ろうと告げようときめ。
少し遅い龍麻に京一は息をつく。
そうして迎えにいこうと立ち上がったとき声をかけられた。
「京一…ごめんね…待たせて…」
神社の奥から走ってきたのか息せき切って戻ってきた。
告げられた龍麻の言葉に京一は笑む。
「いいやまってないぜ?じゃ帰るか…もう夕方だしな…」
「うん…あ…京一今日遊びにいっていい?」
「ああかまわないぜ?」
振り返り京一は先に歩きながら答えを返す。
「ありがとう…」
そうして嬉しそうに笑みを浮かべた龍麻……
その笑みは京一が背をむけたとたん豹変する。ぞっとするような笑み。
だが気配は敵意のないまま…そのために京一は気づくことはなく…
そうして…2人は京一の家に向かった…

「ついたぜ」
一人暮らしをはじめている京一はキーを差し込んでまわす。
カチャリと開いた扉…京一は龍麻を促す…
「お邪魔します…」
上がりこんだ龍麻と共に京一もまた自らの家に入りカギをしめ…
「散らかってるけどな…入れよひーちゃん」
そうして京一自らも靴を脱ごうとし…龍麻にしがみ付かれることになる…
「ひーちゃん?」
問うた京一に…龍麻はそのままで告げる。
「京一好き…さっき分ったんだ…」
「ひーちゃん?」
驚いて龍麻の手を解いて振り返って見ると龍麻が俯いていた…
表情は見えない…そうして少し顔をあげて龍麻は告げた…
「きょういちが好きなの…」
「ひーちゃん?」
驚愕して京一は龍麻の顎を優しく捉え顔をあげさせる。
少し潤んだ目…
「だから…抱いていいよ…」
つぶやきとともに顎を捕らえている京一の手から逃れ。
京一にしがみ付いてきた龍麻に京一は突然の状況に呆然と見下ろした…

ここは何処だろう?
ボンヤリと龍麻は目を見開く。あたり一面の鏡…
そうして龍麻は起き上がる…誰もいない10畳ほどの床天井共に鏡張りのその部屋…
「!?」
見知らぬ場所に硬直し…そうして鏡の壁を叩く。
だがびくともしない…そうして出口すらないこの場所…
気を失う前に最後に浮かんだ記憶は。
口実にべたべたした手を洗おうと席をたった場所で、
突如鏡の中から手が出てきて腕をつかまれて引っ張られたこと…
「…ッ」
囚われている…?
龍麻は一息つくと黄龍を放つ。だが技を封じる結界が張られてるらしい。
それはびくともせず鏡はそこに在していた。
絶望的な状況の中龍麻は泣きそうになる…
「なんで…?」
告げた答えは返ることはなく…だが代わりに第三者の声が返ってくる。
(黄龍、起きたみたいだね…みなよ…)
何処からかの楽しそうな声…
そうして…不意にその目の前の鏡がクリアになる…
見えたのは…
僕と…京一?
(丁度いいところで目がさめたみたいだね、最中で君を目覚めさせようと思ったのに…いくら彼が精神抵抗高くても最中なら魅了の呪もたやすいしね…)
くすくす笑う声と共に。
その鏡の前…
その京一に抱きついている人物は京一にもたれかかり告げた。
「抱いて」
と…
冷水を浴びせられたように凍りついたように身体は動けなくなる…
魔物が縛り付けているのではなく…衝撃で…
「やだ…やだよ…きょういち…」
声は届かない…魔物が作り出した結界の中らしい…
叩いても技をうっても自分にはビクリとも動かすことは出来ない…
それはさっきの経験で体験済みだ…
「きょういち…やだッ」
(無駄だよ、聞こえないからさ。それにここに特殊な結界を貼らせて貰ってるしね、技も使えないよ。君の京一はあれを抱いて魅了されるんだ…一度抱いてしまえば君の京一はもう本当の君のことなど見向きもしないよ…残念だったね自らの感情に気づいたのにさ)
くすくす笑ってたたみ掛けるように告げられた言葉。見えない敵。
告げられた言葉を信用できないと言いたかったが…
それは作り出した偽者ではないと何処か感じていた…
意識を失った龍麻と入れ替わったのだろう…偽者の龍麻。
間違いなくあの光景は…本物…そう本物の京一だった。
あの表情…そうして持っている気配、間違えようもない好きな京一の…
そうして誘っている龍麻に化けたもの…気づかないまま京一はあれを抱くのだろうか?
耐えられなかった…自覚がなかったのだ…
見せ付けられて始めて分った…こんなに京一を好いていたことを…
混乱が上回っていたために掴みきれなかったこんなにも育っていた京一に対する自らの恋心を。
「やだ…ぁ…きょういち…」
自らに出来るのは呼ぶことと叫ぶことだけ…
耐え切れず龍麻はそこに座り込んで目を閉じてうずくまり耳をふさぐ。
京一が他の者を抱くこと、それから魅了によって京一が自らをもう見てくれなくなる…
敵の言葉の呪縛。
二重の痛みに心は悲鳴をあげる。耐えられない壊れそうな胸の痛み…
目の前の出来事から逃避するかのように…龍麻はポロポロと涙を流し続けた…

京一はその存在の髪を撫でる。
「きょういち…だいて…」
告げた目の前の存在…きょういちは龍麻の頬に手を当てて表情を見ようとした瞬間…
身体を凭れさせている存在ではなく…
”やだよ…ッきょういちッ”
ふいに別のところから悲鳴のような泣きそうな声が聞こえたような気がして京一は顔をあげる…
「どうしたの…きょういち…?」
見上げてきた龍麻。
「いや…なんでもねぇよ…ひーちゃん…」
抱きしめてやり京一は目の前の存在を見る…
「?」
だが不意に違和感を覚え京一は龍麻を見る。潤んだ目に流されそうになった京一だが…
「きょういち…抱いて…」
不安そうに告げられたその表情に不意に違和感を感じ京一は龍麻を見る。
いつものひーちゃんに見えるが…何処か違う…?
それに胸騒ぎ…じっと龍麻を見た瞬間から何処か第六感が警笛を鳴らしていた。
「きょういち?」
見上げてくるその目に京一は眉を潜める…目だ。
目の奥に揺らめくもの。不安と相反するような…いつもの龍麻とは違う目。
目だけは”不安”が混ざったものではなく。
妖艶な熟知した落とせる自信を持った相手をとろかすような表情を持っている…
「お前…誰だ?」
問いに龍麻は首をかしげる。
「きょういち…?何言ってるの?」
「…お前ひーちゃんじゃねぇ…ひーちゃんは何処だ?」
京一はその腕を掴みギリとねじ上げる。
「いたッ」
涙ぐんだ龍麻…だが京一にはそれが逆に違和感を覚えさせた…
なぜか感じ取れた違和感…
そうしてその瞬間目の前の存在の気配が変わる…
「案外馬鹿じゃないんだな…」
「!?」
敵か?!反応するより早く京一の前、それは京一を振り払い退いた。
「ひーちゃんは何処だ!?」
いつ入れ替わったのか?覚えがあるとすれば…そう一度龍麻が席を外したときだ…
「手がべたべたしてるから洗いにいってくるね…」
もしかしてあの時か…?
一瞬の隙を見逃さずニッと笑ってそれは京一の傍をすり抜けてそれは飛び込んだ…
そう…そこにあったやや大きめの姿見の中に…
「待てよッ!!」
とっさに京一は玄関においてあった木刀を取りその姿見の中に触れる。
「!?」
グニャリとゆがんだ鏡…そうして勢いも相まって京一の姿は其の中に飲み込まれた……

パタパタとその少年はおってくる気配を感じながら走る…
「しくじっちゃったよ…感がいいんだ…もう少しで黄龍の心を壊して物に出来たのに…心を奪われるほどの大切な奴を奪って心を壊しちゃえば絶対間違いなく黄龍を意のままに操れたのに…」
本人に自覚はなかったけどさ…あれみせつけたら絶対壊れるから操れると思ったのに…
小さく呟いてそうして少年は全力で走った…一番奥の小さな扉の奥へと…
「力与えてくれたお礼にあの方の為に意のままに操れる黄龍手に入れたかったんだけどな…ほんとだ…やっぱり手ごわいや…」
その少年は告げると扉を開く。
この世界で成仏することなくさ迷っていた自分に力をくれたその人物…柳生のところに戻るために…
そうしてその少年がその扉を閉めたとたんその扉は消失し消えうせた…
後に残ったものは…鏡で出来た通路の中…別方向の小さな扉のみ…
ただそこには静まり返った静けさが漂っていた…

「何処行ったんだ…?」
あたりは一面の鏡の通路だ…曲がり角を何箇所か曲がり。
走ってきて行き止まりになっているそこで京一は立ち止まる…
少年の姿はその通路にはなかった…追って飛び込んだもののしんと静まり返った通路のみ…
京一は木刀を握り締めて後を注意深く戻っていく…
そうすると…鏡の通路の一角に京一は扉を発見した…
ためしに引いてみるがびくともしない…
体当たりをかけてもびくともせずそこに存在する扉。
どういう構造になっているのか鍵穴もない…
京一は一息ついて木刀を構え気を静める…目の前の標的は動かないだけ的が絞れた。
そうして気を高め、気合とともに京一は木刀で一閃した。
「行くぜッ!!」
剣掌・鬼剄…全力で打ったその技に耐えかねたのか
その扉は音を立てて消えうせる…そうして空いた空洞。
京一は油断せず木刀を握り締めたまま気配を断って中に踏み込む…
そこにいたのは…
耳をふさぎ京一の名を呼びうずくまったまま泣きじゃくっている存在…
京一は目の前の鏡を見る…映されていたのは京一の部屋…
そうして泣いている存在。気配からしても間違いなくひーちゃんだ…
あの少年に怒りを覚えて…京一は唇をかみ締めて近寄る。
ひーちゃんは気づかない…
「…ひーちゃん…」
そっと告げるとビクリと震えて見上げてくる…
「きょ…いち…?」
泣いて座り込んだままの龍麻に京一はかがみ込み涙を拭ってやるが。
後から後から涙はこぼれてくる。
「なくなよ…俺はここにいるからさ…」
告げて抱きしめるとしゃくり上げたまま龍麻は京一にしがみ付いてくる……
「最初から気づいてやれなくてごめんな…ひーちゃん」
この部屋であの光景をどんな気持ちで見ていたのだろう…
自らへの怒りと少年への怒りと共に…京一は眉をしかめてただきつく龍麻を抱きしめた…

どれ位したか…龍麻がみじろきしたのに気づいて…
京一は抱きしめたまま龍麻を見下ろす。
「ひーちゃん…おちついたか?」
問いかけに龍麻はコクリと頷く…
「それじゃここ出ようぜ…あまりいい場所じゃないからな…」
告げた京一に龍麻は告げる。
「うん…」
嗚咽が少し残った状態で告げて龍麻は京一の助けを借りて立ち上がる。
「動けるならちょっと先に扉の外行っててくれよひーちゃん、破片散ると危ないからな…」
離れるのを恐れている龍麻の髪を優しく梳いてやり京一は龍麻を促す。
そうして不安げに扉の外にいった龍麻を確認して京一は木刀を構える。
「…いくぜッ!!」
怒りも重なった最高技。天地無双…京一の怒りはその部屋に張られた結界をも上回り…
目の前に写った京一の部屋の光景は派手な音とともに跡形もなくけしとぶ。
この通路の中気配がないことで、もう敵は逃げたのだと分っていた…
悪趣味な罠に京一は一度その割れた鏡をにらみ。一息ついて龍麻を振り返る。
「ひーちゃん待たせてごめんな…行くか」
そうして不安そうに佇んでいる龍麻のところに笑みを浮かべて足を向けた…

もときたところを通って京一と龍麻はそこに降り立つ…
京一が入ったのと同じ場所だったはずなのにそこは神社の手洗いだった…
そう…龍麻が入れ替わった場所…
でてからためしにその鏡に触ったがもうそこは入れることはなく…
硬い感触があるだけだった…
2人はそこを出る…もう暗くなっているそこは少し肌寒く…
僅かに身震いした龍麻に京一は上着を脱いで羽織らせてやる…
「きょういち…」
おずおずと見上げた龍麻に。京一は目を細める。
「いいから着てろよ…家まで送っていくからさ…」
笑んで龍麻の頭を撫でて龍麻を促す。
「うん…」
小さく告げて歩き始めた龍麻の隣、京一もまたゆっくりと歩調をあわせて歩き始めた…

そうして2人と無言のままゆっくりと歩いて20分後。
龍麻のマンションの前…ついたと同時に龍麻は顔をあげた。
「お願い泊まっていってくれる…?」
服を掴んで泣きそうな表情で見上げてきた存在に京一は息をつく。
忘れていたがひーちゃんの家も一人暮らしだった…
あんなことのあとでは心細いだろう…
「そんな顔するなよ…泊まっていくからさ…」
告げるとほっとしたような表情になる…よほど心細かったらしい…
京一の服を掴んだまま離さない龍麻に京一は安心させるように笑って。
「だから安心しろよ…とりあえずこんなとこじゃ風邪ひくから中入ろうぜ?」
そう告げ。京一は龍麻の背中を押して促した…

片付いた龍麻の部屋…
上がりこんでソファに勧められて京一はそこに座る。
「京一何か飲む?」
「ん?別にいいぜ?」
軽い会話のあと…ご飯を食べて風呂に入って…そうして時間は過ぎていき…
時計の針が12時を回った頃……ソファで眠ろうとした京一に。
龍麻が継げた言葉…
”京一お願い…一緒に眠って…”
余りにも不安そうだったから。
結局龍麻の願いで京一は一緒のベットに眠ることになってしまって…
「電気消すぜ?」
「うん」
返ってきた声と同時に京一は僅かに明かりがついている状態にして龍麻の隣にもぐりこみ。
京一は息をつく…
そうこの状態はある意味甘い苦痛だった…
早々に理性を壊さないようもう眠ってしまおうと目を閉じた瞬間。
暖かい温もりが京一にしがみ付いてくる。
「ひー…ちゃん?」
問い返すと龍麻は京一に顔を見せぬようにして小さく告げる。
”きょういちおねがい…抱いて…”
そう…それは京一の理性を揺るがすには十分すぎるほどのもので。
京一はだが理性を総動員させて押さえ込み静かに息をついて龍麻の方をむく。
「こういうのは衝動でするものじゃないだろ?…ひーちゃんは今日のことで神経高ぶってるんだ…今は…好きだって気持ちだけ受け取っとくぜ」
告げた京一に目の前の存在は小さく首を振る。
「京一…勢いじゃない…後悔なんかしないから…京一が本当に好きだから抱かれたい……」
ぎゅっと薄暗闇目を閉じてしがみ付いてきた存在に京一は目を落とす。
恐らくはっきりと龍麻が自分の感情に気がついたのは今日だ…
京一は腕の中にある存在をどうするべきか迷っていた。
何よりも大切で愛しい京一自身が欲していた存在。
だが…見ていても分る龍麻の僅かな不安と揺らぎ…
それが先ほどあったことと間違いなく関係していることが知れて。
だから京一はゆるく首を振る。
「ひーちゃん…今はやめようぜ?ちゃんと俺はひーちゃんのこと好きだしよ…それに無理しなくてもちゃんと俺はひーちゃんのものだぜ?」
そう…あんなことの後に抱くのは弱みに付け込むようで…嫌だった。
だからなだめるように告げて京一は龍麻の額にキスを落とす。
だが龍麻はそんな風に考えている京一の心を読み取ったのか見上げてくる。
「無理じゃない…京一が好きだから抱いて欲しい…京一が僕のものだっていうならその証が欲しい…お願い…」
もう限界だった…目の前の好いた存在の何よりも京一の雄をあおる声と懇願。
京一は龍麻の身体を柔らかく抱きこむ。
ビクリと震えた龍麻の身体。
「分ったよ…けど…後でやだっていってもやめられないからな…覚悟しろよ?」
京一は優しく龍麻の額にキスを落とし。それを龍麻の耳元で囁いていた……

龍麻はどうしたらいいか分らずにおずおずと龍麻は見上げる、
仰向けに押し倒され覆い被さるように手をついて龍麻を見ている京一。
薄暗闇で京一が少し笑む気配がした…
これから起こることに少しの怯えが混ざってしまう…
「きょういち…」
思わず京一の名を龍麻は呼ぶと暗闇越しに髪を撫でられる。
けれどその怯えよりあの光景が目に浮かんで。その怯えは胸の痛みと摩り替わってしまう…
京一を誰にも渡したくないという独占欲。
そうしてこんなにも好きだということを確認させられる。
動けない龍麻は京一にキスを落とされる。柔らかい啄ばむようなキスを幾度も…
そのくすぐったさに龍麻が耐え切れず唇を開くと京一は舌を龍麻の口内に滑り込ませる…
怯えたように逃げを打つ龍麻の舌を絡めとって。京一は貪っていく…
声を出せず…京一に翻弄されて…そうして飲みきれない唾液が龍麻の唇を伝って首筋へと零れる。
その感触に僅かに身を捩った龍麻を京一は漸く開放した。
そうして京一は龍麻のパジャマのうちへと手を這わせる。
そうして京一は首筋へと唇を持っていき零れた唾液を舐め上げる。
「っ…!?」
二重の刺激に跳ね上がる龍麻の身体…もっと乱れさせたくて京一は手を龍麻の肌に滑らせる。
ときおり龍麻の感じる場所に京一が触れるたびに。
びくびくと跳ね上がる龍麻を見ながら京一は愛しい存在の弱い場所を暴きだしていく。
龍麻の胸の飾りに唇を寄せ舐め上げたたとき…小さな甘い悲鳴が上がる。
そうして瞬時にその悲鳴は掻き消えた…
京一は龍麻をみる…快楽を堪えているのか…
唇を噛んで声をかみ殺して手はシーツを掴んでいる…
シーツの手はそのままにしておいてもかまわないが…
薄暗闇…京一は息をつく。
「ひーちゃん…唇噛むのなしだぜ…傷ついちまうからな…」
京一は胸元の飾りを手で愛撫してやりながら龍麻の唇を深いキスで奪う…
「…くふっ…っん…」
漏れる声は甘い…そうして堪える手段を無くして。
時折唇が外れた拍子に上がる声を聞きながら京一は次第に手を下にもっていく…
そうして京一は手を龍麻のパジャマのズボンに忍び込ませる。
「!?」
抵抗にあうより早く京一はそれを掴んで弄ってやる。
「やぁ…っ」
漏れる声が一段と甘くなり京一は龍麻自身に絡めた手をそのままに自身を追い詰めていく。
そうして途中で京一は口付けから開放してやる。
「ぁ…っふ…ぅ…」
もう声は抑える余裕はないらしい…そうして紡ぎ出される声は意味を成さず。
熱に浮かされたように許容以上の悦楽に身体を震わせている。
「も…やぁ…」
上がった龍麻の甘い声。そうして潤んだ目で見上げてくる焦点の合わない潤んだ瞳。
そうしていっそう強く刺激を与えると。
「やぁ〜っ」
甘い悲鳴を上げて京一の手をぬらしてぐったりと横たわった。
呼吸が荒い動く気力もないらしい目の前に横たわる存在に。
京一は煽られるものを覚えて息を呑む。
想像以上の艶っぽさに…京一の雄が刺激される。
「ひーちゃん…」
傷は付けたくはない…けれどそう理性はもたない…
京一は龍麻の身体を反転させて龍麻の服を脱がせうつぶせにさせる。
「京一…なに…?」
京一の姿が見えなくなったことにか怯えるような声があがる。
だが…堪えきれない今傷だけは付けさせたくない…
「ひーちゃん少し我慢な…怪我だけはさせたくないからさ…」
泣きそうな声に龍麻の背中にキスを落としてやることで宥め。
放ったもので濡れている手を龍麻自身に絡める…
そうして…京一は最奥に唇を寄せた。
「やあっ!?…そんなとこ…舐めたら…っ」
何をされるのか分った瞬間龍麻の声が泣き声に変わる。
そうして逃げようとした身体は易々と京一に引き戻された。
そう龍麻自身を掴まれている為に。
逃げる事はもう出来ず龍麻は羞恥と甘い責め苦にシーツに突っ伏して泣きじゃくる。
自身への与えられる刺激とそうして京一が舌を使って施す再奥への愛撫。
逃げようとした龍麻の自身を掴んだまま愛撫し龍麻の抵抗を奪っていく…
抵抗が無くなったところで京一は指を再奥に1本埋め込む。
京一が唾液で念入りにそこを慣らしたせいかそれはさしたる抵抗もなく埋め込まれた。
「やぁ…京一もうや…」
もう一本入れようとしたが流石にまだ無理らしい…
京一は突っ伏して泣きじゃくる龍麻を見ながらそこを探る。
そうしてそこに触れたのと同時に突如驚くほど跳ね上がった龍麻の身体。
「なに…!?やぁ!」
上がった悲鳴に多少強引だと想いつつも京一はその場所を執拗に攻め立てる。
「〜ッ」
龍麻の意思とは関係なく絡めている京一の手の中龍麻自身は更に大きくなる。
「ちょっと我慢なひーちゃん…」
もはや龍麻に聞こえているか分らないが…京一は告げてやり龍麻自身を手でせき止める。
行き場のない悦楽に引き込まれて上がった龍麻の甘い悲鳴。
それを聞きながら京一は更に龍麻に甘い責め苦を施していった……

せき止められてからどれ位したのか…
過度の悦楽に龍麻はもう泣きじゃくるだけしか出来ず……
指を増やされてそれすらも快楽と感じるようになった頃。
漸く龍麻は行き場のない甘い責め苦から開放される。
2度目の開放に龍麻の身体から完全に力が抜ける。
もう龍麻は完全に思考を失っていた…
だがぐったりとしていたのも僅かだった…
動く気力も無くなってしまった身体を優しく仰向けにさせられ足を抱え上げられて。
当てられたものと同時に直後押し入ってきたものに一瞬にして意識を引き戻されたから…
堪えきれないほどの激痛…龍麻は悲鳴を上げて一瞬にして硬直し。
「…っ」
逃げようと身体はずり上がり京一から無意識に逃げようと足掻いた。
が…その行動はかなわなかった…
乱暴ではないが京一にそれ以上の力で抱きしめられていたから…
「…ぁ…」
ジワリジワリと進入してくる京一自身と桁外れの激痛…
「い…たいよ…もう…やぁ…」
京一を見上げて泣きじゃくると。進入がとまる。
動きがなくなった事で龍麻は痛みはあるが僅かに息をつくことが出来た。
しかし激痛による痛みとともに涙が意思とは関係なくこぼれる。
「京一…もう…やだ…」
しゃくり上げて目の前の人物を見ると京一自身も辛い表情で。
「ごめんな…もう少しだからよ…」
告げるとなだめるかのように額にキスを落とされて。
そうして京一は動きを再開させた。
「も…やだぁ…お願…い…死んじゃうよ…」
龍麻が泣きじゃくってもう嫌だと泣きじゃくると。
なだめるようなキスを受けそうして…京一の動きが止まる。
「ひーちゃん……こっちに意識してみろよ…な?」
同時に耳元で囁かれて龍麻自身を襲った刺激。
手を伸ばした京一が龍麻自身を刺激して意識を散らそうとしてくる。
そうして悦楽を理解し一瞬力が抜けるたび襲う激痛。
ジワリジワリと京一に貫かれてそうして涙で前が見えなくなった頃。
漸く進入がとまった…
「っく…ん…っく…」
京一にしがみ付いて龍麻は痛みとともに異様な圧迫感にか身を震わせる。
一瞬でも動けば襲う痛みが龍麻を怯えと駆り立てて。
そうして龍麻の身体をすくませてしまう。
「ひーちゃん…ごめんな…爪立てててもいいからよ…直ぐ探してやるからな…」
「な…に…?…っ!?」
告げられると同時にしゃくり上げている龍麻は京一に唇を奪われる。
同時にゆっくりと京一自身を出し入れされて龍麻は鋭い悲鳴を上げる。
だがそれは京一の口内に掻き消えて。同時に京一の手がまた龍麻自身に触れられる。
ゆっくりした緩慢な動きだがそれは龍麻にとって苦痛以外の何物でもなく。
だが…それは次第に自身の刺激により悦楽に切り替わる。
そうして悦楽も混じり始めた頃、京一からのキスから開放される。
痛みから逃れるように龍麻はその悦楽を追い…
そうして京一にある一点を貫いている京一自身で突かれたとき。
完全にスイッチが切り替わるように龍麻の身体に変化が起きた…
痛みと悦楽の混じった状態から完全な悦楽へと…
「やぁ…っ!?」
唐突な変化についていけず。
苦痛ではなしに。甘い悲鳴を上げ逃げようとした龍麻の身体を抱きしめて京一は笑む。
「見つけたぜ…ここだろ?ひーちゃん?」
同時にそこだけを執拗に突かれる。同時に与えられる自身への愛撫。
「きょう…いち…やぁ…ったすけ…て…」
龍麻は唐突に切り替わり訪れた悦楽の恐怖に怯え。
京一に何度助けを求めただろう…
そのたびに龍麻はなだめる様に甘い貪るような深いキスを貰い。
引き出された許容以上の悦楽に龍麻は乱れ。
京一の腕の中余裕のなくなった京一に身体を揺さぶられて更に悦楽に乱れさせられて…
そうして龍麻は京一の開放とともに。京一を受け入れたまま龍麻もまた自身を解放し…
そうして意識を失う前僅かに聞こえた言葉…
告げられた京一からの言葉と啄ばむような優しいキス…
「すきだぜ?ひーちゃん…」
「……」
龍麻が何か言おうにも嫌が応にも疲れによる睡魔は龍麻の意識を奪っていく…
その声を聞いたのが最後。そうして龍麻は意識を失っていった…


そうしてそれから過ぎる日々…


あれから変わったこと…
京一と龍麻が友人から恋人同士になったことが一つ…
それにより家賃は折半で少し広めの龍麻のマンションの方に京一が住むようになったこと…
それから…時折休日にけたたましく鳴り響く目覚まし時計。
「わっ?!…京一…時間ッ遅れるよ…ッ」
何時ものように反射条件で飛び起きて慌てて揺さぶる存在に京一は目をあける…
寝起きはいい方ではなかったが…
龍麻の泣きそうな悲鳴だけはいつも京一を嫌でも瞬時に覚醒に促す。
秋のやや肌寒い空気の中…
泣きそうにな表情のまま見下ろしてくる存在に京一は苦笑して手を伸ばして。
傍らにいる存在を抱きしめてまた布団の中に引き込む。
「き…きょういち…遅刻しちゃうよ…」
抱きしめられたまま。
わたわたと慌てて泣きそうになって告げた存在に、京一は苦笑を浮かべる。
「ひーちゃん…忘れてないか?」
今日…日曜だろ?
告げるとあ…と龍麻は気づいたような決まり悪げな表情になる。
「またやっちゃった?」
そうして途方にくれたように告げられた言葉。
そうなのだ…龍麻自身朝が弱いらしく…
数個のけたたましい目覚し時計をセットしている…
京一はもうあまり欠席できる日数がない。
そう、サボりたくてももう後がないという状況で。
京一自身も朝が弱いという点では平日はそれで助かっているというところもあるのだが…
休日となると話は別だ…
何時ものように時々無意識に土曜の夜にまで目覚ましをセットしている龍麻に。
気づけば京一が休みの前日は全て確認して解除して止めているのだが…
それを忘れると…今のような現状になる…
「ご…ごめんね京一」
泣きそうなままの龍麻に。
「かまわないけどな…」
目を細めて柔らかく告げて京一は龍麻の額にキスを落とす。
「せっかくの休日だから二度寝しようぜ…」
「うん…」
おずおずと京一の提案に抱きしめられたままコクリと頷いた龍麻…
一度飛び起きたものの。
秋の朝の外気の冷えの寒さに身震いし。日曜だと知って安心したのか。
少しまだ眠たかったらしく京一の腕の中で温もりに安心したように息をついて。
又まどろみ始め直に眠ってしまった何よりも大切な愛しい存在。
京一は無防備で安心しきった表情に目を細め、そっとキスを落とす。
あの敵はあれから姿を見せることはない…
だが何時かまた会うような気が京一にはしていた…
「ま…そのときは容赦しねぇけどな…」
京一は龍麻に聞こえないように今はない見えない敵に向かって小さく呟くと。
息をついて龍麻に目を落とし、優しく見つめる…
「おやすみな…ひーちゃん」
そっと腕の中の龍麻のぬくもりを感じながら京一は告げて。
京一もまた惰眠を貪るためにまたゆっくりと目を閉じた……




大作を有難うございますー!!
しかも裏仕様(喜)・・うふふ・・京一×龍麻!!
まさかこのカップリングで頂けるとは思わなかったので
驚きつつも、嬉しかったのです(笑)・・わーい!!
やはり最後は愛の力なのですね(微笑)