『ぜんぶ、全部』



「うわー・・・ほんとに、ランドセル背負ってるよ」
 明るい陽射しが差し込むリビング。
 フローリングの床に寝そべって、何やら熱心に眺めて
いた龍麻は、しみじみと感嘆の声を上げた。
「・・・・・いい加減、止めねぇか、先生・・・」
「やー、もう邪魔すんなよ」
 ウキウキと言った様子の龍麻の、その傍ら。片や憮然と
いった表情をあらわに、床の上に広げられた大きな分厚い
冊子を奪い取ろうとするのに。
 その手を払い除け、龍麻は上目遣いに探るように、その
充分すぎる程大人びた貌を見上げた。
「良いじゃん、今日はお前の誕生日なんだからさ」
「その俺の誕生日に、どうして俺の嫌がることを、するの
かねぇ・・・」
 深々と溜め息をつきながら、村雨は龍麻が喜々として
眺めている冊子-----思い出のアルバム、とかいうベタな
タイトルが付けられた、それを見遣った。
「・・・・・御門の野郎・・・」


 数日前。所用で、浜離宮を訪れた龍麻は、出迎えた芙蓉
に挨拶もそこそこに、不遜に佇む御門に駆け寄ると、その
貌に満面の笑みを浮かべ、こう宣った。
「村雨の、ちっちゃい頃の写真とか、見たいな」
「分かりました、すぐに手配させましょう」
 即答かい、と村雨が胸ぐらを掴みかねない勢いで詰め寄る
のにも、御門は涼しい顔をしたままに。
「他ならぬ、龍麻さんの頼みです・・・諦めなさい、村雨」
「そう、諦めなさい、村雨」
 御門の口調を真似て、にんまりと笑いながら言う、龍麻の。
そんな表情さえ、とてつもなく可愛らしいと、つい見愡れて
しまう。そんな自分に項垂れつつも、やはりどうしたって、
結局のところ龍麻には逆らえない訳で。
 そして、今日。村雨の誕生日当日に、御門は龍麻御所望の
品を、熨斗付きで届けさせたのである。


「あはは、ちっちゃいねぇ・・・」
 楽しげに笑う龍麻を眺めつつ、ちらりとアルバムへと視線
を落とせば。そこには、所謂すっぽんぽんで写真に収まる、
村雨祇孔御年1歳の姿が。
「・・・・・何処見て言ってんだ」
「えー、だって祇孔って何となく、赤ちゃんの頃からズル剥け
なイメージ、ない?」
「・・・・・・・・・・」
 どういうイメージなのだ。
「勘弁してくれよ、先生・・・」
「ま、それはともかく・・・ほんと、可愛いね」
 龍麻の、あまりな物言いに、ガックリと肩を落としつつも、
やれやれと顔を上げて、視線を向ければ。
「・・・・・」
 赤ん坊の頃の村雨の姿を克明に写した、それらを愛おしげ
に見つめる龍麻の、その表情に。
 目を奪われて。
「祇孔は、俺に見られるの嫌がってるけど」
 俺はね。
 すごく、嬉しいんだ。
 俺の知らない、ちっちやい祇孔が、いっぱいで。
 見せて貰えて、本当に嬉しい。
「・・・・・先生」
「有難う、祇孔」
 今更かも、しれないけれど。本当に驚くほどに、綺麗に
微笑う、その貌に。
 言葉を失ってしまって。
「ああ、こっちの御遊戯してるのも可愛いなぁ・・・ふふッ
抱き締めたくなっちゃう」
「・・・・・龍麻」
 それでも。
 どうにか、名を呼んで。
 そろりと、伸ばした手でもって、半ば強引な所作で。
 龍麻を引き寄せ、その腕の中に。
 しっかりと抱き締めてしまえば。
「祇孔・・・?」
「抱き締めて、くれよ」
「いま、抱き締めてるのは、祇孔の方なんだけど・・・」
 困ったように笑う、それでもその声は穏やかで。
 やがて、ゆっくりと背に回される腕。
 体格差からいって、どうしたって龍麻の方が抱き締められ
ている感は、否めないのだけれど。
「・・・・・龍麻」
 でも、その温もりに。
 存在に、いつだって。
 抱き締められているのは。
「可愛いね、祇孔」
「この俺に、そんなこと言えるのは、あんたくらいだ」
「・・・ふふッ」
 耳元で笑う吐息が、くすぐったくて。
 微かに、それでも確実に煽られていく、ままに。
 ゆるりと弧を描く、薄紅色の唇に自分のそれを、そっと掠め
るように。そして、確かめるように押し当て、舌先でつつけば
何の躊躇いもなく、口腔に誘い込まれるままに。
 柔らかな舌に絡め、存分に吸い。
 敏感な上顎の粘膜を舐め上げれば、ピクリと震え。そして、
ゆっくりと弛緩する身体を、床の上覆い被さるように、共に。
「あ、ッ・・・」
 器用に、着衣をはだけさせ。首筋から、胸元へ丹念に唇と舌
でもって、その白く滑らかな肌を堪能して。
 胸元の、薄く色付いた飾り。龍麻の、弱いところを。ペロリ
と舐め上げ、そして甘噛みしながら吸い付くようにすれば。
「や、ッあ・・・ああッ、ん・・・」
 あからさまに上がる、嬌声の。その甘やかな響きに、村雨の
欲も、存分に煽られる。
「イイ声だ、・・・もっと聞かせてくれよ・・・」
 もっと、乱れさせたくて。執拗に、そこを愛撫し続ければ。
「ッ、も・・・そんなトコ、・・・ッほんと、・・・・・祇孔
・・・赤ちゃん、みた・・・い」
「この状況で、そういう事言うかねぇ・・・」
 ククッと、喉の奥で笑いながら。赤く濡れ、固くなった突起
を指先で押しつぶすようにして、また悲鳴のような嬌声が上がる
のを聞きながら、唇を下肢へとゆっくりと移して。
「まぁ、・・・・・あんたのミルクは、好きだぜ・・・先生」
 揶揄するような、響きに。
 龍麻が、抗議の声を投げ付ける間も、なく。
「ひャ、ッ・・・ん、・・・んッ」
 いつの間にか、下着ごと引き降ろされ、膝の辺りで纏わりつい
ていたデニムパンツを、蹴るような仕種で取り払われ。
 無防備にさらされた、そこに。
 熱く濡れた舌が絡み付き、そして飲み込まれた口腔、喉の奥が
引き込むように、吸い上げて来るのに。
「ああッ、祇孔・・・や、ッ・・・・・」
「言わねぇのかい、・・・赤ん坊みたいだって」
「ん、ッ・・・違、・・・そん、な・・・・・ッ」
 勃ち上がったものを口で奉仕されながら、そろりと後孔を探り
隙を突くようにようにして埋め込まれた指が、内壁をじわじわと
解して。その巧みな愛撫に、声は上擦るばかりで。震える指が、
下肢に埋められた村雨の頭、その髪をどうしようもなく掻き乱す。
「ほら、・・・・・いっぱい、飲ませてくれよ」
「は、・・・・・ッあ、ああァ・・・・・ッ」
 軽く歯を立て、きつく吸われて。
 抗う術もなく、龍麻は村雨に促されるままに、その口腔に白濁
した精を放った。
「あ、・・・・・ん、ッ・・・」
「・・・・・旨かったぜ、・・・龍麻」
 ゴクリと、音を立ててそれを飲み下し。そのまま舌は、既に数本
の指でもって解されていた、蕾をねっとりと舐め上げ。
「ん、ッ・・・」
 その感触に、微かに震える身体にのしかかり、脚を左右に大きく
割り開きながら、腰を押し進め。
「・・・・・あ、ッ祇孔・・・・・ッ」
 既に充実させていたそれを、先端をゆっくりと飲み込ませ。
「・・・どう、だい・・・・・」
「祇孔、・・・・・熱、い・・・大きい、・・・ッ」
「まだまだ、こんなもんじゃ・・・ないぜ」
「ひ、ャ・・・・・う、ッ・・・あああァッ・・・」
 龍麻の腕が、背に縋り付くと同時。
 根元まで、一気に突き込む。
「祇、
孔・・・ッあ、・・・・・すご、・・・ッ」
「・・・狭くて熱くて・・・あァ、こんな絡み付かせて・・・・・
このままでも、イけそうだな・・・」
 押し入れたまま、身じろぎせず。肉襞の締め付ける心地よさに
上擦った声を漏らせば。
「や、・・・・・して、動いて・・・・・ッ」
 もどかしげに、腰を揺らめかせながら。
 涙に潤んだ、深い色の瞳が。
 真直ぐに、村雨を捕らえる。
「もっと、・・・・・祇孔を、ちょうだい・・・」
「・・・・・ッ逆らえねぇ、な・・・あんたの、御強請りには」
 求められる、ままに。突き入れたまま軽く揺さぶると、抜ける
ギリギリまで一旦引いたそれを、また奥へと捩じ込むようにして
突き上げる。
「は、・・・・・んッ、ふ・・・あァ・・・」
 激しく抜き差しを繰り返しながら、合間を縫うように絶えまなく
喘ぐ唇を、啄むように口付ける。
「きついな・・・放っとくと、食いちぎられちまう・・・」
「ッ祇孔、の・・・が、大きい・・・から、ァ・・・ッ」
「は、ッ・・・・・光栄だな」
 満足げに、口の端を吊り上げ。
 勢いのまま、龍麻の肢体を折り曲げるようにして、深く奥まで
その肉剣でもって貫けば。
「ッ、あ、ああァ・・・・・ッ」
 その衝撃だけで、龍麻は高い嬌声と共に2度目の精を放ち。絶頂
による強い締め付けに、村雨もまたその内壁へと、激しく迸って。
「・・・・・龍麻」
 汗ばむ身体を、重ねるようにして。
 快楽の余韻を分かち合うように、どちらともなく触れ合わせた、
唇。その口付けを、しだいに深いものにして。
 まだ、互いの内に燻る熱を自覚しながら、額を突き合わせるよう
にして、極至近距離。瞳を、覗き込んで。
「・・・・・ね、祇孔・・・」
「ん・・・?」
「ちっちゃい祇孔も、・・・おっきい祇孔も・・・・・大好きだよ」
「・・・・・そうかい」
 柔らかく微笑む、貌に。
 村雨は、微かに苦笑する。
 もしかしたら、彼は気付いていたのかもしれない。
 写真の中。龍麻を惹き付けた、幼かった頃の自分に。少しだけ、
嫉妬めいたものを感じていた、ことを。
 彼のことだから、おそらく。
「全部・・・・・大好き・・・どっちも、抱き締めたい」
「・・・・・有難うよ」
 引き寄せられるままに、また口付けを落として。
 ゆっくりと、しなやかな肢体を抱き起こせば。繋がり合った部分
が、また新たな熱を生み出して。
 そこに、ふたり。
 溺れていく。
「・・・・・今度、あんたの赤ん坊の頃の写真も、見せろよ」
「んー、・・・・・」
「ま、今のあんたも食い付きたい程、可愛いんだがな」
 そう言いながら、白い喉元に噛み付くように口付ければ。微かに
くすぐったそうに笑いながら、ふと思い出したように。
 龍麻が、囁いた。

「幾つになったか知らないけれど、誕生日おめでとう祇孔」
「・・・・・引っ掛かる言い方だな、先生」

 軽い抗議の意味も込めて、肩口に噛り付けば。
 返って来るのは、やはり楽しげな笑い声と、そして。
 微かな、甘い吐息。

 それがまた、艶めいたものに、変わるまで。
 何度でも、今日は。





村雨祇孔くん、御誕生日おめでとうーvvvvv
・・・・・幾つに、なったの・・・(真顔問い)??
作中で龍麻が言ってた、「ズル剥け」発言(ヲイ)は
ワタシの感想だったりします・・・(目線逸らし)。
ともあれ、ささやかながら御誕生日お祝SSを♪
・・・・・初めてですよ、村主(頬染め)。