☆☆☆シナイ山ではこんなことに気をつけましょう☆☆☆

シナイ山に行く途中で出会った犬。
食堂で一休みしようと車を停めると軽やかに駆け寄ってきたので、秘技・ワンワン弁当を繰り出した。

ところが菓子パンやチーズはウホウホ食べるくせして、普通のパンだと匂いを嗅ぐのみ……。憎!!

甘いパンもチーズも持っていないと分かると、急速に興味を失われた。なんか悔しい。

顔だけ見るとコリー風の面長でハンサムなのに、トータルバランスで損している野良犬。ずん胴だ。

<寒いっ!>

厚めの上着を着ていこう。
我々姉妹がシナイ山に登ったのは5月初旬、事前に友人から「あったかくしてきてねんv」と念押しされていた。
だが、山なんて近所の六甲山くらいにしか登ったことないくせして、「寒いったってエベレストじゃあるまいし、たかが標高2285mじゃーん!エジプト人って大げさだなぁ」とナメてかかったのが大間違い。
そんな身の程知らずの我々の頭上にその後、シナイの山神の鉄槌が振りおろされることになる……。

とにかくここがエジプトだとは信じられないくらい寒い。
ヒィヒィ言いながら登っている内は寒さに気付かないが、山頂に着いたとたん温まった体からあっという間に体温が奪い去られ、一瞬でアルマジロ化するというシステムである。

ユニクロの野暮ったいフリースを着ていたヘボピーですら歯をガチガチいわせていたんだから、カッコつけてゴルチェのペラいジャケットしか着ていなかった私に至っては......凍死寸前。
カウチンセーター、毛糸の帽子にマフラー、と完全装備の欧米人を軟弱者と鼻であざ笑った自分に罰を与えたい。

そんなアルマジロな人のために、山頂には3,4件の休憩所が完備されており、一杯5ポンド(百円)という映画館内で売ってる生ビールのようなボリ価格のチャイ(お茶)で暖をとりつつ、夜が明けるまでそこで休める。

ただ長居は無用!
定期的に小屋の外に目配りしておかないと、あとから登ってきた人たちにご来光鑑賞のグッドポジションが埋め尽くされてしまうので、うかうかせず早めに場所取りするのも重要だ。

早めに到着して小屋の中でまったりしていた私も、ハッと気付いて小屋から飛び出すと、目を付けていた場所にはでかい欧米男の生け垣が出来ていたもんだから、もーあせりまくり!半泣きで他の場所を探しているうちに、崖から落下して山頂からふもとまでそのまま転げ落ちそうになるくらいあわてた。

また、寒さに震える方には、数え切れないほどの観光客の体を優しく包んできた毛布も一枚5ポンドいや10ポンドだったかな?で貸してくれる。
ただ、ぜんぜん清潔好きではない私の目から見ても、体がかゆくなりそうな代物だったので、神経質な人は自分でガッチリ防寒して行くが吉。

なお、シナイ山頂では、この貸し毛布の呼び込みが「クレオパトラ〜!」「アリババ〜!」「クレオパトラ〜!」「アリババ〜!」と肌を刺す夜明けの空気を震わせている。

女性には「クレオパトラ」、男性には「アリババ」と呼びかけるようだが、なんで男が宝を奪われるマヌケな盗賊アリババなのか?「男は誰でも欲張りな女(クレオパトラ)の前ではアリババ」ってことなのか?どうでもいいけどその真相は今もって不明である。

標高千メーター地点あたりでたゆたうラクダ君。彼が見つめるのは峻厳なシナイの山々。

山は登りより下りの方がキツいと言うが、働き者のラクダ君とラクダ使いは、
帰路でもちゃんとこうやって足がヨロヨロのカモを待ってくれているのだ。


<暗いっ!>

懐中電灯を持っていこう。
あらゆる場所が煌々と照らされた国に住む日本人は、エジプトに到着してまず、街が全体的に暗いことにちょっとした衝撃を受けるだろう。

カイロの中心部は日本並みに明るいものの、ミニヤやルクソールやアスワンは一本裏道に入るとそもそも街灯すらなかったりする。

あってもあんまし明るくない上に色がオレンジ色だったりしてやたらとメランコリックなムード。そこへどこからともなくアザーン(一日五回のイスラムの祈りをうながす呼びかけ)が聞こえてきたりすると「仕事たまってるだろうなぁ......」と気分は急速にたそがれてくる。

日本ではとっくに照明をつけるような時刻に街のレストランに行くと、準備中かと思いきや、すでに薄暗い中でお食事中の先客で満席だったりしてびびらされる。

まっくらな中、一軒だけぽつんと灯りをともして営業中のウエディングドレス屋さん。マッチ売りの少女が炎の中に見た夢の世界みたいだ。


夜の高速道路でも、ヘッドライトを点灯せずに猛スピードで突っ込んでくる対向車のなんと多いことか!エジプト人に言わせると「ライトをつけるとライトの寿命が縮まる」からだそうだが、縮まるのはこっちの寿命だよっ!
けれどこれも慣れの問題なようで、エジプトの運転手は今夜もライトをつけず悠々と運転している。

こんな無茶な荷を積んだトラックが無灯火で激走してきたら……。
思わず死を覚悟する一瞬。

おっと、シナイ山から話が逸れてしまった。エジプトでは町中でもそんなに明るくない、いわんやシナイ山は......と言いたかっただけなのだ。

灯りがあるのは登山口のビジターセンターのみ。それ以降は闇、闇、ひたすら闇。
我々が登った日は、月は三日月、満天の星空だったが「星明かりを頼りに夜道を歩く」なんてそんなロマンチックシーン、実際には無理だと知った。もうボーイズラブ小説には使えないネタだ。

懐中電灯を忘れた人はガイドに頼るか、他の登山客が来るのを待って、そのあとをカルガモのヒナのようにくっついて行こう。

日中は暑いからだろう。ショッピングゾーンは夜がとっぷり更けてからの方がにぎわっていた。
並べるのも片づけるのもめんどくさそうな移動おもちゃ屋さん。

郷愁を誘うオレンジ色の灯りに照らされながら、動物たちは故郷の夢をみているのだろうか。


<トイレがないっ!>

トイレは登山直前に済ませておこう。
山頂に至る道に売店はいくつもあるが、ズバリ掘っ建て小屋なのでトイレなど完備していない。ガイドブックによると山頂にもトイレがあるそうなのだが......私にはちょっと分からなかった。三位一体聖堂があり時折修道士がお祈りに来ているそう
だが、ここももちろん「トイレご自由にお使い下さい」という場所ではないので、トイレはホテルか登山口にあるビジターセンターで済ませて行くのが安全。

......とは言うものの、中にはヘボピーさんのように突発的な便意に襲われる方もおられることと思う。
そういう時には恥ずかしいなんて言わずに、行きがけにそこらでやってしまおう。ちょっと離れると鼻をつままれても分からないくらいの暗闇がどこまでも広がっているので、ある意味やりたい放題。誰からも貴女のお尻は見えないのでご心配なく。

ただ、明るい陽の光に照らされる帰り道には「ちょっとそこらで」というのは無理かもしれない。
私は「エジプト・トイレレポート」を先生に提出するため、ひたすらトイレポイントをチェックしつつ下山したのだが、どうも用を足せるような岩陰はなさそうだ。
もちろん、下山道からかなり離れたらあるのだろうが、下手に道から離れると足元がデンジャラー。パンツを半分おろしたまま崖下に転落......なんて羽目になりかねない。

下山時は人が集中して、道は各国人種が数珠つなぎ状態。そんな世界の人々の好奇の視線をさえぎってくれるような巨岩が、下山三分の二あたりのポイントに一つだけあったが、裏に回ってみても微妙に人目にさらされる角度だったので、下山途中のトイレはやっぱり諦めるしかなさそうだ。

365度どこからでも排泄シーンを鑑賞可能な下山途中の風景。
羞恥プレイ上級者向け。



<キツいっ!>

自分の体調とはよ〜く相談しよう。
↑これは主にヘボピーさんの言だな。

私もヘボピー同様運動不足。加えて古代エジプト遺跡と違い、シナイ山は私が萌えパワーを推進力にできる場所じゃないはずなのだが、私にとっては想像したほどキツくなかったよ。え?もう山頂なの?あっけないなぁ!ってカンジ。

ただ、観光業の友人の経験によると、ツアーで引率した中年紳士が体調不良のまま登頂したのはいいが、なんと山頂で心臓発作!
幸運なことにちょうど「三位一体聖堂」が開いており、そこで担架を作って皆で担いで下山、そのままイスラエルの病院へ搬送したそうだが、その後、紳士がどうなったかまでは彼は知らないそうだ......ぶるっ。

このように体調不良のまま登ると、自分が辛いだけではなく下手すると大騒動になるのでそこら辺よく考えよう。


<風もキツいっ!>

コンタクト者は眼鏡を忘れず持っていこう。
山登り自体はそれほどキツくなかったものの、私は「顔に吹きつける強烈な風」に悩まされた。

裸眼では一歩たりとも歩けない超ド近眼な私は、ハードコンタクトにゴミが入るのを恐れてソフトコンタクトをしていたのだが、風に吹かれてコンタクトがパリんパリん!風よけのサングラスをすると、ただでさえ暗い夜道が墨ベタ塗りでまるきり座頭市状態......

仕方なく途中の休憩スポットでメガネっ子に変身!だからシナイ山頂で撮影した写真は、すべてが寒気で鼻を赤くした髪ボサボサのメガネっ子姿で写っている。
電球一個の薄暗い山小屋でドキドキしながらコンタクトの着脱をするくらいなら、近眼の方ははじめからメガネで登山した方がいいかもね。